したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

('、`*川魔女の指先のようです

132名無しさん:2017/12/25(月) 22:53:48 ID:ZLy5QeVs0
______________________∧,、___
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V`´ ̄ ̄

基地で起きた火災は倉庫を全焼させ、保管されていた全ての兵站を灰燼へと変えた。
保管に優れるコンテナでも、爆発と爆炎、そして高熱には耐えられなかったという事だ。
死者は五名。
重軽傷者は合わせて二〇名にも及んだ。

基地の管理権が移行した翌日に起きた不祥事に対し、駐屯基地の責任者であるテックス・バックブラインドは緊急会議を開いた。
その場にいるのは彼を含めた三人だけ。

第一に優先して行うと決定したのは、この不祥事が事件ではなく事故である事を強調するため、情報操作を行う事だった。
地元の新聞社、ラジオへと情報を素早く提供し、イルトリア軍の爆薬に対するぞんざいな管理体制を公表した。
勇敢な五人の軍人が命がけで行った消火活動の甲斐あって、被害は基地の内部だけに留まったと流布した。
当然、事実は異なる。

むしろイルトリアの兵站の管理は万全であり、明らかに何者かの細工によって倉庫が焼失したのである。
また、死亡した五人も射殺、そして爆殺と言う形で殺されている。
残された残骸から分かったのは、倉庫を吹き飛ばした人間は複数の爆薬を使って倉庫の扉、弾薬、フェンスを同時に爆破させるトラップを仕掛けた。
不運にも定時確認にやってきたフロレスタノがその起爆の鍵となり、倉庫は月まで飛ぶこととなった。

次に、兵舎三階から基地全体の監視を行っていた二組の狙撃チームは、体中にNATO弾を受け、死亡した。
倉庫の爆発によって暴発した弾ではなく、明らかに狙われた射撃だった。
その証拠に、焼けた床からライフルと薬莢が見つかっている。
だが距離にして一〇〇メートル。

それも、難しいとされる下方からの射撃を、弾倉一つを使い切って成功させている。
死体から発見された銃弾の数が二三発と言う点から、使い切る必要すらなかったのかもしれない。

それが第二の会議の主題だった。

全滅させたはずの基地に、生き残りがいた。
それも、恐ろしく射撃に精通した人間が。
下方から上方への射撃は、考えているよりもずっと高度な計算が必要になる。
弾道の特性、そして周囲が燃えているという環境。

低倍率のスコープから一〇〇メートル先の標的を狙い撃つだけの技量は、並の狙撃手には出来ない芸当だ。
それを可能にしたという事は、並ではない射手が生き延びていることを示している。

テックスはその話を聞いた時、体の震えを隠すことが出来たのかどうか、不安になった。
陸軍のトップとして生きてきて、一人の兵士に恐れを抱いたことはそう何度もない。
特に、大将に昇格してからは初めての事だった。
彼の勘は生き延びたのが狙撃手であることを告げるのと同時に、その者がこれから彼らに対して報復行動に出ることを確信させた。

たった一人。
されど一人。
一人の狙撃手が戦況を逆転させた例など、数えきれないほど知っている。
だからこそ彼は、狙撃手に対して人一倍警戒心を持っていた。
彼らを見くびれば、一個小隊は軽く全滅する。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板