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('、`*川魔女の指先のようです

110名無しさん:2017/12/25(月) 22:23:06 ID:ZLy5QeVs0
ヒッキーから離れた場所に陣取る海軍所属のジョルジュもまた、その光景を見て戦闘が知らぬ間に始まっていることに気付いた。
確認していた兵士が慌てて動く様子を見て、観測手のスクイッドが指示を出す。

「四時の方向に向けて風が流れています。
防弾着を抜くのは難しそうなため、足を狙えますか?」
  _
( ゚∀゚)「ばっちりだ」

単独で哨戒をしていた男の脹脛を吹き飛ばす。
風の影響で若干弾が右にそれてしまい、致命傷には成り得なかった。
男の手にあるライフルの銃腔が閃光を放つが、この距離で弾が当たらないことを知っているジョルジュは瞬きひとつせずに棹桿操作を済ませ、第二射を男の額に命中させた。

ロックンロールミュージックの始祖とも言える〝ジョルジュ・ビー・グッド(凄腕のジョルジュ)〟という歌にもじって呼ばれる彼の渾名は伊達ではなく、
狙撃はロングディスタンス家の言わばお家芸、伝統的に引き継がれてきた才能であった。
それを証明するかのように第三射が新たな兵士の喉を撃ち抜き、冥府へと落としていく。
廃莢がスムーズに行われ、陸、海の二人の狙撃手はその腕前を競うかのようにして次々と銃弾を敵兵へと浴びせ、死体の数を増やしていく。
電撃戦は速度が何よりも重要であり、その速度が増せば増す程作戦の効果は上がっていく。

今や形勢は完全にこちらが有利であり、相手はこちらの位置さえ把握することが出来ていない。
この混乱の中、どれだけ成果を出せるかは各人の腕次第である。
反撃など、決して許しはしない。

それまで銃声を隠してきたグレート・ベルの鐘の音が鳴り終わっても、その銃撃は止むことはなかった。
時代に刻まれる戦争の戦端は切って落とされ、後は猛火が野を焼き払うのと同じように、ただその本質を発揮するだけである。

銃声が街に届くようになり、それに怯えた人々が悲鳴を上げて近くの建物へと逃げ込んでいき、
それまで穏やかだった島が途端に恐怖におびえ竦んだ空気に支配されるが、銃声はほどなくして止んでしまう。
それは悲鳴に臆して銃爪を引くことを躊躇ったのではなく、狙撃手達がこれ以上弾を当てる標的がいなくなったことを意味し、
同時に、その一連の射殺劇が鐘の鳴り響いた一分ほどの出来事だったことを意味していた。

狙撃出来たのは最終的に確認しただけで一一人となった。
それが基地を哨戒していた人間全員であることは、観測手達の報告から分かっており、つまり、残りは基地の中にいる人間だけという事になる。
つまり、作戦はいよいよ制圧へと移行するわけだ。
すでに二人の偵察係が基地に向かっており、潜入が可能な状態となったのかどうかを聞き次第、陸軍の狙撃チームがその増援に回り、海軍が狙撃による援護を行うことになっている。
海上からこちらに向かっている海兵隊のチームも陸軍と合流し、基地の制圧を行う。

十一人のイルトリア人の屍を積み上げたことは彼らの戦闘意欲を掻き立て、恐怖を忘れさせていた。

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基地入口が完全に無力化したことを建物の影から双眼鏡で確認したパレンティ・シーカーヘッドは、隣でデイパックの中に隠していたライフルを組み立てるハインリッヒ・サブミットに視線を向け、頷いた。

彼らに配給されたライフルは銃身を切り詰め、より小型化したM4カービンライフルである。
当然、嵩張る高倍率のスコープは付いておらず、近距離でその真価を発揮するホロサイトが付いているだけだ。
それでも、これからの作戦内容を考えればこれで十分とも言える。
基地の中に入れば遠距離よりもむしろ近距離での戦闘が予想されるため、あまり倍率が高いと支障が出てしまうことから、この倍率のホロサイトが最も戦闘向きであると彼らは考えていた。
ただし、ハインリッヒには〝マスターキー〟が与えられていた。

「ハインリッヒ、準備は出来ているな?」


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