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('、`*川魔女の指先のようです

106名無しさん:2017/12/25(月) 22:19:08 ID:ZLy5QeVs0
「聞こえませんでした!ですが、方角はティンカーベルの方からです!」

銃声さえ聞こえれば距離が分かるが、音は全く聞こえなかった。
砕けたガラス、そして二人の死に際から辛うじて銃弾の飛んできた方向は分かった。
不審船の消えた方向からの銃撃。
決してこの二つは無関係ではないだろう。

無線でこの事態を報告することも出来ないため、ニクスは手帳に克明に記入することにした。
万が一、この二人が死ぬことがあっても、この手帳が真実への道標となる。

ニクスの手帳に生暖かい血がかかったのは、彼がペンを取り出した正にその瞬間の事だった。
壁に空いた一つの穴。
その先にあるのは、否、あったのはテーロスの頭部だった。

そしてそれが、ニクスの見た最期の光景となった。

______________________∧,、___
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V`´ ̄ ̄

グレート・ベルが鳴り響く三〇分前、イルトリアのティンカーベル駐屯基地には穏やかな空気が流れていたが、
緊張感が失われているというわけではなく、それぞれのやるべきことを理解した軍人らしい無駄のない動きが見せかけの平穏を作り出しているのである。

アサルトライフルの安全装置を解除した状態で肩から提げ、入り口の警備を行うのはヴェル・バーノフ二等兵とバスクール・ドランチェフ兵長の二名である。
二人は激しい内戦が続く地域での長期駐屯と戦闘経験があり、このような事態に直面しても動揺することはない。
同様に、近くを通りかかった人間や車輌にも注意を配り、僅かな変化や不審な動きに対して抜かりなく即応出来る体制が整っていた。

二人は特に市街戦での戦闘に長けており、万が一ティンカーベル市街で戦闘が発生したとしても作戦を遂行出来るだけの技量を備えている。
この二人がペアとして選抜されたのは、二人がかつて同じ作戦で同じ部隊にいたことを考慮しての事である。
戦場を共にした者同士の絆の強さは、窮地に立たされた際にその者達が生存する確率と部隊の生還率に大きく貢献し、延いては作戦そのものの成功率に関わってくる。
また、バスクールはスペイサーと同じ隊に所属していたことがあり、今回の増援に際して彼の無念を晴らしたい思いがあり、任務に対して並々ならぬ意欲が垣間見られた。

彼らが手にするH&KG36Kアサルトライフルはイルトリアが正式に採用している銃で、その精度、汎用性、操作性、耐久性は非常に優れたものとして知られている。
彼らのライフルには通常の弾倉よりも三倍の弾が装填されたドラムマガジンが装着されており、多数を相手にしても引けを取らないように備えていた。

守衛所と門の前で一時間ごとに交代しつつ、二人は定時連絡を欠かさずに行い、不審者情報も逐一報告した。
今の段階で不審車輌などは見当たらなかったが、警備場所の交代までの残り三時間で何かが起きないとも限らない。
油断した時にこそ最悪がやって来ることを二人は良く知っていた。

一方、基地内部の哨戒を担当するギリアン・クリスティ上等兵、メルヴィン・ライス兵長、トリスタン・フィリップス兵長、
そしてパーシ・カルディコット上等兵もまた、ライフルの安全装置を解除した状態で基地周辺に張り巡らされた金網と有刺鉄線の傍を歩きながら、不審な点がないかをくまなく確認していた。
基地を囲む金網は特殊合金で編み込まれているが、バーナーや油圧カッターを使えば簡単に切断することが出来てしまうため、信頼性は絶対ではない。

基地への侵入を試みる人間が知るとしたら間違いなく夜を狙ってくるだろうが、準備として昼間の内に下見に来る場合が非常に多い。
警備の手薄な個所の金網に目星をつけ、暗闇に紛れてそこから侵入されると、一気に基地全体の守備力が低下し、籠城することが困難となってしまう。
防ぐ手立てとして有効なのは、こまめな哨戒と侵入しにくい環境を作り出すことぐらいだが、人員が不足している現状ではどうしてもそれが難しくなってしまう。
二人一組で哨戒するべきであることは重々理解していたが、状況が状況であるだけに単独での行動が余儀なくされていた。


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