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余命一ヶ月の大魔王様

1名無しさん:2017/09/11(月) 00:49:56 ID:5sRP9lVM0
この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

2名無しさん:2017/09/11(月) 00:51:20 ID:5sRP9lVM0
゚ ・ 。: .゚:. 。* o・ :゚゚ 。゚  :∴゚ ・ 。: . ゚:. 。*  o・:゚゚ 。 ゚:∴。:  ゚。
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3名無しさん:2017/09/11(月) 00:52:00 ID:5sRP9lVM0
20XX年 7/7

( <●><●>)「はいどうも、今日はわざわざ来てくれてありがとう」

(-@∀@)「はあ、まあ、呼ばれましたので」

( <●><●>)「退院してから調子、どう?」

(-@∀@)「たまに眩暈はありますけど、なんとかなってるみたいです」

( <●><●>)「そりゃ良かった。送り出しといて倒れられたら怒られちゃうからね」

(-@∀@)「大丈夫だから退院したんじゃないんですか?」

( <●><●>)「いやいや、原因不明だったよ。あのときは」

(;@∀@)

( <●><●>)「今日はその原因がわかったから、呼んだわけだよ。安心したまえ」

4名無しさん:2017/09/11(月) 00:52:40 ID:5sRP9lVM0
(   <●> )σ「ちょい君、そうそう。ありがとう」

( <●><●>)□「これ、君のレントゲンから余計な情報を省いたやつね」

(-@∀@)「はあ」

( <●><●>)「ほらみて、ここ」
      ρ

釣り鐘型の肋骨の合間に白い影が浮かんでいる。

( <●><●>)「これ、君の心臓。ね」

(-@∀@)「へえ、これが」

( <●><●>)「ん、で、ここがなんとなく黒っぽいの、わかる?」
      ρ

(-@∀@)「あー、ほんとだ。ぽつんと灰色っぽくなってますね」

( <●><●>)「これ、君の致命傷ね」
      ρ

(-@∀@)「えっ」

5名無しさん:2017/09/11(月) 00:53:16 ID:5sRP9lVM0
( <●><●>)「心臓がね、裂け始めてるの」

ぎょろっとした目をさらに見開いて、医師は口角泡を飛ばした。

( <●><●>)「筋繊維がいくつかまとまりながら、少しずつ解けていくんだ。
        蕾が花開くようにね。その見た目から、死の花とか呼ばれてる」

( <●><●>)「始めに死の花が観測されたのは2年前、A国ね。
        ヨーロッパのE国やアジアのM国でも発見されてる。
        でも全体としてみればとても希少な症例だよ。おめでと」

(;@∀@)「いやおめでとうって言われても・・・・・・治してくださいよ」

( <●><●>)「ごめん、無理。これ、不治の病だから」

(;@∀@) !?

6名無しさん:2017/09/11(月) 00:54:01 ID:5sRP9lVM0
(;@∀@)「いやあの、え? フジ?」

( <●><●>)「富士山でも藤の花でもないよ」

(-@∀@)「治らない?」

( <●><●>)「うん」

(;@∀@)「・・・・・・うそでしょ」

(;@∀@)「このご時世に不治の病なんてあるんですか? 撲滅してないんですか?」

(#<●><●>)「ハァー!? いきなり何を言い出すんだい?
        未だ風邪の原因すら解明出来てない人類が? 病気を? 撲滅? ハァー!?」

7名無しさん:2017/09/11(月) 00:54:34 ID:5sRP9lVM0
(;@∀@)「だって、そんな、聞いたこともない病気だったし」

( <●><●>)「箝口令が敷かれてるんだよ。
        致死率100パーセント、原因不明。広めたら混乱必至だからね」

(;@∀@)「100パーセントって・・・・・・」

( <●><●>)「ついでに言うとこの病気、気づかないまま発症しているケースも多い。
        心臓に空いた穴から血液が漏れ、脳の機能が低下し、意識不明。
        目に見える状態は心臓発作による突然死と変わらないんだよ」

(;@∀@)「・・・・・・」

( <●><●>)「噂によると痛みもほとんど伴わないらしい。眠るように死ぬ。
        2ちゃんねるなんかじゃ理想の死に方トップだなんて持て囃されているね」

8名無しさん:2017/09/11(月) 00:55:15 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)

(-@∀@)「死ぬんですね、僕」

(-@∀@)「なんで僕に教えてくれたんですか」

( <●><●>)「嫌だった?」

(-@∀@)「いや、別に。箝口令なのにどうして言うのかなって」

( <●><●>)「死に至る病のときは、僕は誰にでも説明するよ」

( <●><●>)「家族の方がいればまずはそちらに言うけれど」

(-@∀@)「あー、僕、家族全員死んでるんで。独り身だし」

( <●><●>)「そうそう、だから君に教えざるをえなかった」

9名無しさん:2017/09/11(月) 00:55:49 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)「僕が嫌って言うとは思わなかったんですか」

( <●><●>)「もしもそうしだったら謝るつもりだったよ」

(;@∀@)「言ってから謝っても遅いと思うんですけど」

( <●><●>)「でも結局、嫌じゃなかったんっでしょ?」

(-@∀@)「まあ、どっちかといえば」

( <●><●>)「ほら、いいんだよ」

(-@∀@)「・・・・・・はあ」

10名無しさん:2017/09/11(月) 00:56:35 ID:5sRP9lVM0
( <●><●>)「生命保険は入ってるよね?」

(-@∀@)「一応」

( <●><●>)「厚労省で難病指定されてるから給付金来るよ」

(-@∀@)「お、マジっすか。臨時収入」

( <●><●>)「死ぬ直前まで動けはするけど、仕事続ける?」

(-@∀@)ゞ「いやー、死ぬってわかってるとちょっと・・・・・・」

( <●><●>)「うん、会社の方も早めに人員補充に動きたいだろうし」

( <●><●>)「スムーズに退職できるよう会社向けに一筆しておくよ」

(-@∀@)「ありがとうございます」

( <●><●>)「ちなみにご職業は?」

(-@∀@)「公務員っす」

( <●><●>)「なら余裕だ。いくらでも替えが効くだろうし」

(-@∀@)「ほんとっすね」

11名無しさん:2017/09/11(月) 00:57:24 ID:5sRP9lVM0
( <●><●>)「あと何か知りたいことはあるかな?」

(-@∀@)「あー、あの」

(-@∀@)「僕の余命ってどれくらいですか?」

( <●><●>)「あ、やべ、伝え忘れてた」

(-@∀@)「ちょww」

( <●><●>)「ごめんごめん。君の状態だとだいたい一ヶ月だよ」

(;@∀@)「いっ!?」

12名無しさん:2017/09/11(月) 00:57:56 ID:5sRP9lVM0
( <●><●>)「これでも早期発見だよ」

(;@∀@)「はあ・・・・・・まあそんなもんか」

( <●><●>)「やりたいことはやっておきな」

(-@∀@)「別に趣味とかないんですけど」

( <●><●>)「ふうん。知らんよ、僕は」

(-@∀@)「そうっすよね。すいません」

13名無しさん:2017/09/11(月) 00:58:46 ID:5sRP9lVM0
待合室は心地よい暖かさに満ちていた。
中庭に面した、身の丈ほどの窓を通して、
木漏れ日が絶え間なく降り注いでいたからだ。

ふかふかのソファに座り、身を埋める。

深く息を吸う度に、肺が大きく膨らんで、
口をすぼめて吐き出せば、肋骨が沈んでいく。

身体の調子はすこぶる良かった。
刻一刻と死に向かっているなんて、到底信じられそうにない。

朝日向さんと名前を呼ばれ、医師からの封筒を受け取ると自動ドアを潜り、
木漏れ日とは違う凶悪な陽射しに目を庇いながら、僕は病院を後にした。

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

14名無しさん:2017/09/11(月) 00:59:19 ID:5sRP9lVM0
動揺がないとは言い切れない。
現に鼓動はハイペースになっている。

だけど涙は流れそうもなかったし、
身悶えするような気概もなかった。

一ヶ月後に僕は死ぬ。

10年前、僕がまだ高校生で、世の中の諸々の至らなさに
青臭く身悶えしていた頃にその宣告を聞いていたら、
もっとずっと素直に嬉しがっていたかもしれない。

社会人という呼び名は言い得て妙だ。
僕はもはや社会の枠組み無しには規定できない。
社会をはずれたところでは、僕の定義は求められない。

15名無しさん:2017/09/11(月) 00:59:55 ID:5sRP9lVM0
10年前に話していた友達はみな遠くへ行き、連絡も皆無になった。
人相も大分変わっているだろうから、会ってもわからないかもしれない。

疎んでいた家族が段階的に死んでからはますます孤独になった。
丁寧に悔やんだりするのもバカらしくて、無碍にしている間に時間が経った。

日中は社会人をして、部屋に戻って飯を食い、布団を敷いて寝る。
朝が来たら布団を畳み、飯を食い、また社会人として復帰する。

そんな毎日が僕の全てになっていた。
それなのに死ぬと医師に聞かされたとき、
僕は不本意にも、肩の荷が下りた心地がした。

16名無しさん:2017/09/11(月) 01:00:28 ID:5sRP9lVM0
仕事を辞めるという発想は、正にそのとき浮かんだものだ。
勢いのまま医師に伝え、こうして紹介状を持たされた。

手続きを済ませれば、僕は無事身分を失う。
部屋にいるときの自分が延々続くことになる。

何がしたいわけでもない。
なのにひたすら、身体が軽い。

国道にて、渋滞に巻き込まれるのに心底嫌気が差した僕は
脇道に逸れ、蛇行する一方通行を南へと下っていった。
東に折れれば元の道に戻れると高を括っていたのだが、
うまい具合には曲がれずに、次第に速度を落としていった。

17名無しさん:2017/09/11(月) 01:01:01 ID:5sRP9lVM0
田園を臨む小路を時速30キロでひた走る。
深く色付き始めた緑色は僕の目に痛かった。

小高い丘の麓に幟の並んでいて、
七夕祭りの文字が棚引いていた。

小学生の、確か三年生の頃だったと思う。
僕はまだ、瓶底眼鏡を掛ける前だった。

クラスの入り口に七夕飾りをつけることになり
朝の会7月初めのにて銘々に短冊が配られた。
帰りの会に集計して、7月7日に飾るという試みだ。

18名無しさん:2017/09/11(月) 01:01:43 ID:5sRP9lVM0
言い出したのは暑苦しい担任の教師だったけれど
僕を含めた当時のクラスメイトはまだまだ純粋で
先生が言うことには従うものだと信じ切っていた。

今にして思えば、真面目な人が多いクラスだった。



ふざけようと画策したのは、残念ながら僕だけだった。



耳の裏に汗の流れるのを感じた。

19名無しさん:2017/09/11(月) 01:02:10 ID:5sRP9lVM0
大したことではない。ほんの少し注目を集めてしまっただけだ。
それでも嫌な思い出という奴は、いつまでたっても胸に残る。

アクセルを踏み込み、エンジンを吹かした。
七夕祭りの幟が排気ガスに蒔かれるのを確認すると
ようやく見つけた細い農道に強引に割り込み国道に出た。

渋滞に並ぶ車は未だに遅々として進まなかった。


≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

20名無しさん:2017/09/11(月) 01:02:42 ID:5sRP9lVM0
(-、-トソン

(-@∀@)「・・・・・・」

アパートの、僕の部屋の扉には
見知らぬ女性が寄りかかっていた。

パンツスーツには折り目が綺麗についている。
社会人一、二年目か、あるいは就活中の学生か。
いずれにせよ、僕よりさほど年は離れていないようだ。

ただし、見覚えはない。

(-、-トソン「う、う〜ん」

21名無しさん:2017/09/11(月) 01:03:12 ID:5sRP9lVM0

      '_
(-@∀@)、

(゚、゚トソン「あ」

一瞬息が詰まった。

赤みがかった瞳はこの国では物珍しくて
それ以上に、なぜだか不安に駆られた。

深く関わるのはやめた方が良いのかもしれない。
それが僕の、彼女に対する第一印象だった。

22名無しさん:2017/09/11(月) 01:03:43 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚;トソン「す、すいません! 私、疲れてて」

その人は焦った様子で首を振り、深々と頭を下げてくれた。

(-@∀@)「あ、いや、そんなお気になさらず。
        まだ顔色悪いみたいですけど大丈夫ですか」

(゚、゚トソン「平気です。元々青白っぽい感じなので」

(;@∀@)「・・・・・・そうですか。とりあえずそこ、どいて」

(゚、゚トソン「ああ! はい、すいませんでした」

また頭を下げるその人を横目に、扉の鍵を差し込んだ。
まさか押し入ろうとしないよな、と怖々しながら振り向くと、
女性の赤みがかった双眸が僕の瞳の位置にあった。

23名無しさん:2017/09/11(月) 01:04:27 ID:5sRP9lVM0
(;@∀@)「ひっ!」

(゚、゚トソン「・・・・・・」

悲鳴は確実に聞こえただろうに、女性は無反応でいる。

(-@∀@)「な、なんですか」

開きかけていた扉を強めに閉める。
僕と女性の背丈は近い。が、体格差はある。
万が一のときに備えて腕に力を込めた。

(゚、゚トソン「すいません、あの」

(-@∀@)「はい」

(゚、゚トソン「元気すぎません?」

24名無しさん:2017/09/11(月) 01:05:00 ID:5sRP9lVM0
(;@∀@) ・・・・・・???

(゚、゚トソン「えっと、これ、聞いたらショックかもしれないんですが」

(゚、゚トソン「あなた、一ヶ月後に死にますよ」

(-@∀@)「・・・・・・はい」

(゚、゚トソン

(゚、゚トソン「はい?」

(゚、゚;トソン「え?? 一ヶ月ですよ!?」

(-@∀@)「ちゃんと聞こえましたよ」

25名無しさん:2017/09/11(月) 01:05:31 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚;トソン「なんでそんなに冷静なんですか?」

(-@∀@)「そりゃあ、知ってるからですね」

(゚、゚;トソン「??? どういうことですか?」

(-@∀@)「ええと」

病気に関する事情はなるべく秘匿すべきことなのだろうか。
頭の中に過ぎる不安を感じながら、なるべく端的に、
呆けた様子の女性に対し、自分の病状を説明した。

26名無しさん:2017/09/11(月) 01:06:08 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚トソン「はー、死の花ですか」

感心した様子で女性は言った。

(-@∀@)「知ってました?」

(゚、゚トソン「いや全然。また随分変な病気が出てきましたね」

(-@∀@)「また?」

(-、-トソン「死の直前まで動ける病気。なるほどこりゃわからんわけだ」

首を傾げる僕を無視して女性は一人腕を組み、
十分わかったとでもいうように頷きを続けていた。
当然僕には何のことだかさっぱりわからない。

27名無しさん:2017/09/11(月) 01:06:39 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)「で、あなたいったい何なんですか」

気持ち力を込めて、続けた。

(-@∀@)「突然余命のことを当てられて驚きましたけど、占いかなにかですかね。
      だとしたら大したものだと思います。駅前で露天でも開いたら良さそうです。
      でも今の僕は別に占いとかそういうの信じないんで。求めてないですので。
      あ、まさか今占ったから支払えとかバカのこと言わないでくださいよね。
      僕に用が無いんだったら早いところいなくなってください。はっきりいって迷惑」

(゚、゚トソン「あなたに会いに来たんですよ」

28名無しさん:2017/09/11(月) 01:07:10 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)「は?」

(゚、゚トソン「申し遅れました。私、こういうものです」

スーツのポケットから掌サイズのケースを取り出し
小気味よい音とともに開く。中には名刺が詰まっていた。
そのうちの一枚が僕の胸もとにに突きつけられた。



┌───────────────────┐
│ 命の最期のお力添えを            ..│
│ 収集運搬処分業(産業廃棄魂・一般廃棄魂)│
│ (株)フォーチュン・クーリエ          ..│
│                                │
│ 営業 兎村トソン       ∩∩      ..│
│ USAGIMURA TOSON   (・×・)<にゃあ.│
└───────────────────┘

29名無しさん:2017/09/11(月) 01:07:57 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)「・・・・・・なんすかこれ」
    ρ

(^、^トソン「あ、それですか〜、実はですね、これはですねえ、
      うふふ、う・さ・ぎ なんですよお。かわいいでしょ」

(#@∀@)「ちっげーよ! 絵ピンポイントじゃねえよ、全部だよ全部!!」

(゚、゚;トソン「え、え、な、全部って言われても、どこから」

(-@∀@)「この、なに、おたく廃棄物業者ってこと?」

30名無しさん:2017/09/11(月) 01:08:31 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚トソン「いえ、廃棄魂業者です」

(-@∀@)「コン・・・・・・魂? タマシイ?」

(゚、゚トソン「ですです」

(-@∀@)□「あー、ほんとだ。魂だ」

(-@∀@)「・・・・・・ごめん、やっぱりよくわからないんだけど」

(゚、゚トソン「はあ、驚かせないようこっちの方式に則ったんですが、だめですか」

(-@∀@)「残念ながらいたずらにしか見えませんが」

31名無しさん:2017/09/11(月) 01:09:06 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚トソン「うーん」

(゚、゚トソン「じゃあ、もっとはっきり言います」

(゚、゚トソン「昔ながらの言い方をするなら」

(゚、゚トソン「死神です」

(-@∀@)

(-@∀@)「え、本気?」

(゚、゚トソン「残念ながら」

あなたはあと一ヶ月で死にます。

今日一日で何度も聞いた宣告をトソンは生真面目に繰り返した。

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

32名無しさん:2017/09/11(月) 01:09:37 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)「いやだから死ぬことはもうわかったって」

伝えたいことがあるから、とトソンが散々いうものだから
最終的には勢いに負かされて、部屋の中に入れてしまった。

なるべく綺麗な座布団にトソンを座らせる。
他の座布団は黴びているため、僕は畳に直で座った。

(゚、゚トソン「なんか、すっきりした部屋ですね」

(-@∀@)「物欲がないもので」

六畳間の中央に卓袱台、壁際に箪笥と三段の本棚。
パソコン机に置いたノートパソコンは埃を被っている。
余計な物は置かない。掃除は時折で間に合っていた。

33名無しさん:2017/09/11(月) 01:10:12 ID:5sRP9lVM0
淹れ立てのお茶を卓袱台の上に二つ並べると、
スマートフォンを充電器のケーブルに差し込んた。

(-@∀@)「で、話って?」

(゚、゚トソン「焦らないでくださいよ」
旦⊂

(#@∀@)

(^、^トソン「お茶、久しぶりなんですよ〜、嬉しいなあ」
旦⊂

ズズッ

34名無しさん:2017/09/11(月) 01:10:43 ID:5sRP9lVM0
(-@∀@)

(-@∀@) ズズッ
  つ旦

トソンは目を細めながらお茶を嗜み
会話らしい会話はまったく起きず
僕は静かに窓の外を眺めていた。

日はゆっくり沈んでいき、名残惜しげな夕空は、
トソンの瞳と同じような赤を最後に残して消えていった。

35名無しさん:2017/09/11(月) 01:11:26 ID:5sRP9lVM0
夜になった。

街の灯りが遠くにずらっとならんで見える。
夏休みにはまだ早い、平日の七時過ぎ。
世間はまだまだ通常稼働だ。

(゚、゚トソン「朝日向さん」

(-@∀@)「名乗りましたっけ、僕?」

(゚、゚トソン「表札」

(-@∀@)「ああ」

36名無しさん:2017/09/11(月) 01:11:58 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚トソン「一日目が終わりましたね」

(-@∀@)「・・・・・・そうだね」

(゚、゚トソン「あと一ヶ月、何をして過ごすおつもりですか」

何も考えてない。

はっきり答えればそうなってしまう。
言い訳を考えても、頭の中は真っ白だ。

(-@∀@)「でもさ、実際何もできねえって」

37名無しさん:2017/09/11(月) 01:12:28 ID:5sRP9lVM0
卓袱台に肘を突き立てると、貧弱な脚部が軋んだ。
頬杖になり、大きめに溜息を漏す僕に向かって、
トソンは湯吞を啜ったまま瞳をじっくり向けていた。

(-@∀@)「貯金を叩けば、そりゃそれなりに遊べるだろうけど
      飲める込めるほどのことがあるわけじゃないですし
      もうじき死ぬってのに遊ぶのも虚しさだらけじゃないですか」

(゚、゚トソン「そのわりには悲しんでもなさそうですけど」

(-@∀@)「悲しむだけの心残りがないんですよね」

38名無しさん:2017/09/11(月) 01:13:07 ID:5sRP9lVM0
一人暮らしをして間もない頃は、意味もなく夜更けに歩いたこともあった。
遊びほうけるわけでもなく、酔っ払って足下のおぼつかない連中や
怒鳴ったり叫んだりしている輩を下に見ながら、音を聞いて歩いて進む。

楽しかったとはおぼろげながらに思うけど
何が楽しかったかと言われるとうまく答えられない。
誰にも親しくなれない自分を錯覚で慰めていただけだ。

(-@∀@)「ていうか、トソンさん死神なんですよね?
      それって早回しできないんですか?」

39名無しさん:2017/09/11(月) 01:13:43 ID:5sRP9lVM0
(゚、゚トソン「死を、ですか?」

(-@∀@)「ええ。もうなんか、一ヶ月も長いんですよ。正直」

仕事という居場所も捨てる。趣味の世界は元々ない。
何者でもない自分には、もはや何も残っていない。

だから。

(-@∀@)「廃棄してくれません? これ、もういらないんで」

40名無しさん:2017/09/11(月) 01:14:13 ID:5sRP9lVM0
胸を指差しにやける俺に

(゚、゚トソン「無理ですね」

と、トソンは断じた。

(-@∀@)「死んでないからっすか?」

(゚、゚トソン「そうですね。無理に引き剥がすような力ないですし」

(-@∀@)「ふうん」

41名無しさん:2017/09/11(月) 01:14:47 ID:5sRP9lVM0
だったら、と僕は立ち上がる。
鼓動がまた早まっている。
勢いつきすぎ、ふらつきながら、台所へ。

(゚、゚;トソン「朝日向さん!」

トソンは叫び、俺の裾を握った。

(-@∀@)「なんです、トソンさん」

(゚、゚;トソン「包丁は、痛いですよ。切腹だって介錯人がいるでしょ」

(-@∀@)「・・・・・・他に得物がないんですよね」

(゚、゚#トソン「だから、死のうとしないでくださいって!」

42名無しさん:2017/09/11(月) 01:15:25 ID:5sRP9lVM0
トソンに引っ張られ、僕は畳に尻餅をついた。
鈍い痛みが腰のあたりに広がった。

(-@∀@)「いって・・・・・・」

(゚、゚#トソン「いいですか、自殺した魂は、汚いんですよ」

指を一本突き立てて、トソンは教え諭すような口調になった。

(゚、゚トソン「飛び降りてばらけたら魂も土地にばらけますし
     自傷しまくったら死んだのに気づかず呻き続けるし
     もう、本当に、錯乱した魂って汚くて嫌いなんですよ」


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