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終わる世界を旅するようです

4 ◆1d/TyX49hk:2017/08/27(日) 00:43:45 ID:EJlpVWY20
『あの鯨が出たから、今度は沢山消えるだろうね』

「あの魚…くじらは、わるいやつなの?」

ぼくは驚いて拳を握りしめた。けれど、青年はその言葉に、違うよと首を横に振った。

『鯨はただ、寂しがりやなだけなんだ。寂しいから、沢山連れていってしまうんだ』

ぼくは納得できなくて、ぐっと押し黙る。目頭が熱くて、ひどく、胸の裡がつっかえそうだった。
唾を飲み込んで、言葉を飲み込んで、ぼくは青年の顔を見た。

「……ぼくだって、寂しいよ」

青年はぼくの言葉に少し驚いた顔をしてから、優しくーーー本当に優しく笑って、ぼくを抱きしめた。温かな雫が、肩を濡らした。
それに、ぼくはまた泣き叫びたくなる。
ふざけるなとか、やめてくれだとか、そんな言葉を飲み込んで、ぼくは歪んだ青空を睨みつけた。


だって、もうすぐ青年は消えるのだ。
この世界からも、ぼくの記憶からも。


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