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CARGO!!
100
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:51:47 ID:Eo9hzRWw0
('□`)「そんじゃ……出発と」
*(‘‘)*「ぱつー」
ブレーキを踏み込みキーを回す。一度では掛からなかったので、二度、三度
随分ともったいぶったエンジンがため息のように動き出し、アクセルを踏んだ
ゆっくりと、揺れないように、慎重に
('□`)「……」
バックミラー越しに、あいつらが手を振っている
やがて曲がり角へと差し掛かり、その姿は見えなくなった
('□`)「……」
*(‘‘)*「ぶっぶ、ぶっぶ」
静かな、ドライブだ。いつもの騒がしさとは無縁の、エンジン音だけが響く車内
何となく伸ばした右手で、カーステレオの再生ボタンを押した
♪Alan Cumming - I shall be released
https://www.youtube.com/watch?v=ENkkx9GqFbU
('□`)「……」
*(‘‘)*「おうー♪おー♪」
('□`)「お気に召したか?そりゃ何よりだ」
101
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:53:02 ID:Eo9hzRWw0
音に寄って来た無脳種を避けながら、空港へ走る
追いかけてきたものもいたが、軽く加速をすれば諦めてくれた
('□`)「……」
道路の案内標識が、空港への道筋を示す。すでに目と鼻の先だ
国際線ターミナル。ここが一番近いだろう
('□`)「……」
*(‘‘)*「んー?」
('□`)「ご到着、だ」
ロビーへの玄関口。見張りの生存者の顔すらわかるほどの距離
その入り口を取り囲むかのように、車や椅子や机などのバリケードが設置されている
ここからは、車は入れそうにない。降りて入り口を探すにも、無脳種が辺りを徘徊している
( ,,^Д^)「こっちだ!!こっちへまわれ!!」
見張りが手を振り誘導をしたので、それに従う
( ,,^Д^)「この先に搬入口がある!!そこから入ってくれ!!」
('□`)「はいよ……」
右手にぐるりと回ると、それらしき下り坂が見えた
しばらく下ると、中型トラック一台がすっぽりと入れそうなほどのシャッター口。そこでは
(;'□`)「ッ」
その周辺でうろちょろしていた無脳種が、生存者によって『処理』されていた
手慣れている。銃も使わず、鈍器や刃物で、あっさりと殺している
今更、俺は虎の穴に入り込むだと認識した。正体がバレたら、そこに無脳種と共に放り出されるのは俺と……
102
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:54:35 ID:Eo9hzRWw0
*(‘‘)*「がう、あー」
(;'□`)「……大丈夫だ、任せろ」
右手でハインの腹を優しく叩く
安全が確認され、シャッターが開いた。パーカーのフードを目深に被り、少しでも身元がバレないようにする
徐行で、その中に入っていく。いよいよ、勝負の時だ
人数は、無脳種を処理していた二人に、シャッター内で待機していた三人の、計五人
それぞれが銃器を携帯している。銃口は、此方に向いていた
コンコン、と窓が叩かれる。パワーウィンドウを下げた
( ・∀・)「降りてくれ、身体検査をしたい」
(;'□`)「ゲホッ、その必要はない……」
( ・∀・)「何?」
(;'□`)「俺はすぐに……ゲホッ!!ゲホッ!!」
(;・∀・)「アンタ、大丈夫か……?」
口ぶりでは心配をしていたが、右手の拳銃がカチリとなったのは聞き逃さなかった
時間は掛けられない。強引に……ここでこそ強引にいかなければ
103
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:55:16 ID:Eo9hzRWw0
(;'□`)「俺は、俺はもう、長くない。この場所で病死しちまったら、アンタらにも迷惑が、ゴホ、掛かる」
(;'□`)「だ、だが、この子だけは……この子だけが、心残りだ……タダでとは言わない。トランクに、拾った武器がある。だから……」
『娘』を
(;'□`)「……」
*(‘‘)* 娘を
この期に及んで、俺は何を躊躇っている!?『娘』と言えばいいだけだ!!
それで終わる!!この苦しみも、靄も晴れる!!バケモノとしての旅を、続けられるだろうが!!
(;・∀・)「そ、その赤ん坊か?」
(;'□`)「……ああ」
(;'□`)「『娘』を、頼みたいんだ……」
動いていない心臓が、キュウと萎んだ気がした
104
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:56:00 ID:Eo9hzRWw0
从゚Xナ从「おい、確かにすげえ数の武器と弾薬が入ってる。ありがたいぜ」
(;・∀・)「待て。勝手に……」
(;'□`)「いいんだ……身勝手を言ってるのは此方だからな……」
顔面をピアスとメイクで彩ったパンク・ガールがトランクの荷物を持って行く
対価は支払った。後は連中の良心次第だ
(;'□`)「疑わしいなら、ゲホッ、その子の身体検査をしてくれ……」
(;・∀・)「……いいや、大丈夫だ。引き受けるよ」
(;'□`)「ありがとう……すまない……」
男は助手席側に回り込み、ドアを開けた
*(‘‘)*「うにゅ?」
(;・∀・)「……別れを済ませてくれ」
(;'□`)「ああ……」
*(‘‘)*「どっく」
(;'□`)「……」
105
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:56:50 ID:Eo9hzRWw0
(;'□`)「お前は神に愛された子だ。俺達が居なくなっても、強く元気に生きられる」
*(‘‘)*「……」
(;'□`)「たらふく食って、大きく育て。ゲラゲラ笑って、絶望を跳ね除けろ」
*(‘‘)*「ひっ……」
(;'□`)「誰かを想い、恋をしろ。お前は器量良しだ。男なんて引く手数多だろう」
*(‘ )*「ひっ、ひっ……ふえっ……」
(;'□`)「サヨナラだ、ハイン」
*(;;)*「びえええええーーーーーーーーーーー!!!!!」
.
106
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 11:57:30 ID:RfqGJOE.0
くっそおもしろい
仕事遅刻確定するほど
107
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:58:11 ID:Eo9hzRWw0
泣くな、頼む
(;・∀・)「よっ、しょ……っと。ハハ、元気だ、本当に……」
*(;;)*「びえっ、びえええええええええええええ!!!!!」
最後の最後に、抵抗をしないでくれ
(;・∀・)「確かに、受け取った」
*(;;)*「びゃあああああああああ!!!!!」
ここがお前のいるべき場所なんだ。俺らバケモノと一緒にいるべきじゃないんだ
(;・∀・)「な、なぁ、アンタもッ……そ、そうか……わかった……良き旅路を」
*(;;)*「あああああああああああああ!!!!どっく!!どっく!!」
忘れてくれ。俺も、忘れるからよ
(;・∀・)「出るぞ!!開けてくれ!!」
*(;;)*「どっく!!うううううううううう!!!!」
頼む、泣くな。俺の名を呼ぶな
108
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:59:10 ID:Eo9hzRWw0
(; □ )
……じゃあな、元気で
109
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:59:41 ID:Eo9hzRWw0
「びえええええええええ、びえっ、びええええええええええええええええ!!!!!!!」
搬入口から出て、空港から遠ざかっても
ハインの泣き声が、延々と耳の中で響いていた
110
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:01:46 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
('A`)「……」
(´・ω・`)「……おかえり、どうだった?」
声を掛けられて、初めて俺は帰って来たのだと気づいた
助手席を見る。主を失ったチャイルドシートが味気なく乗っかっていた
左脇が重く感じて来たので、ホルスターと拳銃をそこに投げ入れる。使わなくて本当に良かった
終わった。『荷物』を、彼女の父親が望んだであろう本来あるべき居場所へと、受け渡した
('A`)「なんか良い奴っぽい男が、引き取ってくれたよ」
(´・ω・`)「イケメン?」
('A`)「めっちゃイケメンだった」
( ^ω^)「やっぱりイケメンは正義」
身元もわからない赤ん坊をすんなり受け取ってくれた
バンディットのような生存者もいれば、彼の様な誠実を貫く生存者もいるんだな
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「……ま、一先ずお疲れさんだお」
('A`)「……うん、お疲れ」
111
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 12:04:06 ID:NRxJ5GS.0
今泣いてるわ
112
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:05:28 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
誰も口を開かなかった。すぐさまこの場から離れようと提案する者もいなかった
( ∵)「……」
唯一、喋らん奴がテーブルと椅子を出し、湯を沸かし始める
人数分のマグカップにコーヒーの粉末を入れた
それぞれ、何も言わずに席に着いた。語る言葉が見つからないまま
喋らん奴は干し人肉をイトーイに差し出す。フンフンと鼻を鳴らしてから、咥えて受け取り前足で支えて食べ始めた
('A`)「……」
静かな、打ち上げだった。まるで長い長い夢から覚めた朝のように
ゾンビは夢を見ない。だがこの一週間は夢のようであった
生存者を食う俺らが、餌である赤ん坊と行動を共にして、楽しんだり苦しんだり、寂しがったり
身は軽くなったが、地に着ける足にフワフワと浮かぶ感覚がする
腹にぽっかりと穴が開いて、スカスカになった気分だ。俺も、恐らく、あいつらも
*(‘‘)* ハイン
お前は、ガッツリと持って行きやがったんだな
お前と出会ってから、俺達が抱いた『何か』を
113
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:07:23 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「……あのさ」
マグカップに半分ほど残ったコーヒーがすっかり冷めきった頃、ショボンが口を開いた
(´・ω・`)「一応、数日様子を伺わねえか?」
(;^ω^)「……」
('A`)「……まだ未練があんのかよ」
もう、勘弁して欲しい。あんな思いはコリゴリだ
あの身を引き裂かれるような気持ちをもう一度蘇らせたくはない
('A`)「飲んだら、行くぞ。言ったよな?生存者に引き渡すまでと」
(;^ω^)「……ドクオ」
('A`)「くどいぞ。これ以上の干渉はしない。大体、様子なんてどうやって見るんだよ。『すいません、うちの子どうですか?』なんて訪問するのか?」
(;´・ω・`)「それは……」
「出来るよ」
声は、足下から聞こえた
('A`)「……出来るって、どうする気だよ」
以`゚益゚以「……」
('A`)「イトーイ」
114
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:08:13 ID:Eo9hzRWw0
以`゚益゚以「あのね、ボク、スクラップを使って盗聴器、作ったんだ」
(;´・ω・`)そ「盗聴……ッ」
以`゚益゚以「うん。それを、ビコーズに頼んで着けて貰った」
(;^ω^)「ビコーズって……」
( ∵)「……」
(;'A`)「こ、こいつか?」
以`゚益゚以「うん」
オイオイ名前あったのかよ。なんで犬が知ってて俺らが知らねーんだよ
待て待て、盗聴器?そんなもんどのタイミングで……あっ
(;'A`)「ハインの服に着けたクローバーのブローチか!!」
以`゚益゚以「そうだよ」
なんてこった用意周到過ぎる。本当にこいつお犬様か?有能なんてレベルじゃねーぞアフターケアまで考えて……
いや、例え盗聴だろうと干渉が過ぎる。もし問題があれば、こいつらは何をしでかすかわからない
(;'A`)「だ、ダメだダメだ!!放っておくのが一番なんだよ!!これ以上関わっても誰も得しない!!」
(;´・ω・`)「安心は出来るだろ!!憂いは残らない!!お前だって気になってる筈だ!!」
(;'A`)「ッ……いいか!!終わった!!終わったんだよ!!夢は醒めた!!バケモノに戻るべきなんだ!!」
(#´・ω・`)「お前ッ……!!」
(#^ω^)「うるせえお!!!!」ドンッ!!
(;'A`)そ「ッ!!」
(;´・ω・`)「ブーン……」
115
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:09:00 ID:Eo9hzRWw0
以´゚益゚以「キューン、キューン……」
(;^ω^)「あっ……ご、ごめんお……」
テーブルに叩きつけられた拳の音に、熱くなった頭が冷めていく
( ∵)「……」
喋らん奴……ビコーズだけが、静かにコーヒーを啜った
(;^ω^)「……ドクオの気持ちも、ショボンの気持ちもわかるお。でも、ここで言い争ってても平行線だお」
(;^ω^)「だから……一度確かめて見ても、いいじゃないかお?折角、安全圏から様子を伺える手段を、用意してもらったし……」
(;'A`)「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
クソ、結局……いや、ブーンの言う事も尤もだ。言い争っていても、ショボンは折れないだろう
これで納得するってんなら、時間を無為に消費せずに済むのだから
(;'A`)「……わかった」
(´・ω・`)「……」
(´-ω-`)「わがまま言って、悪い」
(;'A`)「……」
116
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:11:09 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「……」
マグカップの中身を飲み干したビコーズが立ち上がり、倉庫代わりの牽引車へ向かって歩き出す
持ち出したのは、捨てられた軍用車から拾ってきた無線機だ。ただのスクラップだと思っていたが、使えるようにしていたのか
蓄電器に繋ぎ、ダイアルを回して周波数を合わせる
( ^ω^)「離れていても使えるのかお?」
以`゚益゚以「たぶん」
特有のピーガー音を鳴らしながら、無線はじりじりとハインの居場所を探る
じれったい時間だった。いっそ、故障か不良で繋がらなければとも思った
この時、俺は『シュレディンガーの猫』を思い出していた
あれは確か、箱の中にいれた猫が一時間後生きているか死んでいるかは開けてみるまで分からないという思考実験だった筈だ
今、俺たちはその『箱』を開けようとしている。本当に、これでいいのか?
ショボンは確かめることで『安心できる』と言った。だがもし、向こうでのハインの立場が危ういものだったら?
不安を通り越して、『危機感』を覚えるだろう。じゃあ次に取る行動は?諦めて旅を続けてくれるか?
(;'A`)「……」
『開けてくれるな』。いっそのこと、わからないまま過ごすほうがいい
苦しんで死ぬかもしれないが、幸せに生きているかもしれない
じれったく曖昧な絶望と希望を、時間で風化させてしまえばいいじゃないか
(;'A`)「なぁ、やっぱり……」
『止めよう』。口から出た言葉を遮るかのように
無線機から、一発の銃声が響いた
.
117
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:12:05 ID:Eo9hzRWw0
('A゚)「」
≪……え……ガキ……こ……≫
待てよ、なぁ
≪誰……み……≫
『大丈夫』と言ったよな?『引き受ける』と、言ったよな?
≪……人……せ……やめ……≫
何を揉めてんだよ。そこは安全なんだろ?
ハインは、無事なんだろ?
118
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:14:06 ID:Eo9hzRWw0
(;´・ω・`)「なんっ……クソッ!!」
初めに動いたのは、ショボンだった。双眼鏡を手に、空港が見える場所まで駆けだした
呆然としていたブーンも後を追う。俺は動けずにいた
以#`゚益゚以「ウルル……」
イトーイは黒く染まった歯茎をむき出しに、無線機の向こう側へ威嚇をする
どうにもならないのだろう。ハインにつけたのは『盗聴器』だ。発信は出来ても受信は出来ない
ここでようやく、俺の足はゆっくりと動き出した。ショボンとブーンの元へと踏み出そうとしたが
( ∵)「っ」
ビコーズに肩を捕まれ、立ち止まった
('A゚)「なん……だよ……」
( ∵)「……」
無線機、いや、『スピーカー』を指さす
イトーイお手製といえども盗聴器の精度はそれほど良くなかったらしく、断片的な会話しか拾えなかったが
罵声と怒号の隙間に、微かだが、僅かだが、聞き覚えのある声が聞こえてきた
≪アア……ビァアアア……!!……≫
ハインの泣き声が
119
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:15:39 ID:Eo9hzRWw0
(;'A゚)「生き……」
生きている。『まだ』、生きている
別れてから一日も経っていないのに、ひどく懐かしく思える
( ∵)「……」
今度は力強く肩を抱かれ、ショボン達の場所へと連れていかれる
ビコーズの歩幅に俺の足は着いていかず、幾度か縺れながらもなんとかたどり着いた
(;´ ω `)「……」
(; ω )「……」
空港がデカい施設だと言えども、双眼鏡で内部の様子を詳しく伺えるワケが無い
にも関わらず、二人は全てを理解してしまったかのように呆然自失と立ち竦んでいた
猫の入った箱ではなく、『パンドラの箱』を開けてしまったかのように
肉眼でも、空港の異常は確認できた。これまでバラバラに動いていた無脳種が
まるでコミコンの開場を待つ参加者のように、一か所に集まり始めている
(;'A`)「貸せッ!!」
ブーンの手にぶら下がる双眼鏡を半ば強引に奪い取り、レンズを覘く
120
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:16:42 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「何だってんだよ……!!」
音や臭い、無脳種を引き寄せる要因は様々だが、一番はやはり『餌』を視認した時
奴らは罠も障害物も、距離も高低差も関係なく一心不乱に突っ込んでいく
食欲のみに支配された、無脳種特有の機械的な習性。例え女子供であろうとも
(;'A゚)「ッ……!!」
『窓からロープでぶら下げられ、泣き叫ぶ赤ん坊』であろうとも、習性には抗えない
(;'A゚)「……」
まるで『生餌』だ。生きたまま針に掛けられた小魚のようだ
無脳種の手の届かない位置にいるものの、それも施設内にいる生存者の采配次第で上下が出来る
何のために、何の意味があって、わざわざ赤ん坊を……!!
これが、お前の『終わり』なのか。ハイン
(;´ ω `)「……間違っていた」
ショボンから、絞り出すような声が聞こえる
(;´ ω `)「俺たちがゾンビだから……ハインは生存者だから……そんな枠組みで、あいつの居場所を決めつけたのが……」
(#´ ω `)「まだ……半日も経っちゃいねえんだぞ……それを……この扱いか……!!」
(;'A`)「ショボン」
(#´ ω `)「クソがッ!!」
121
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:17:57 ID:Eo9hzRWw0
俺の呼びかけを無視して、ショボンは車へと駆け戻っていく
(;'A`)「待て!!」
その場にいた全員が後を追う。ショボンはわき目も振らず運転席へ乗り込んだ
エンジンを掛けようとした手を、掴んで止める
(;'A`)「何をするつもりだ!!」
(#´ ω `)「何を……?決まってんだろ、取り戻しに行く」
(;'A`)「ッ、ダメだ!!言っただろ!!生存者に引き渡せば終わりだと!!何があろうとも関わらねえと!!」
(#´ ω `)「そんなもん……」
ショボンの左手が伸び、俺の胸倉を掴み上げた
(#´゚ω゚`)「聞けるかァッ!!!!」
(;'A`)「ぐっ……」
(#´゚ω゚`)「見ただろうがお前も!!あれが人のやる事か!?赤ん坊をバケモノおびき寄せるためにぶら下げてんだぞ!!」
(; A )「っ……」
とにかく、頭を冷やしてもらうしかない。それで当初の約束を思い出して、諦めてもらう他ない
しょうがねえだろ。生存者にも事情があって、善意だけじゃ動ける状態じゃないんだって
それに、取り戻すっつったってどうするつもりなんだ?今しがた、ハインと一緒に大量の武器をくれてやった
空港は無脳種に対応した要塞になってるはずだ。それに、ハンターだっている。四人と一匹で、何が出来るんだってんだ
(; A )「……だったら」
『説得』を、理性的に、なだめ掛けるようにしなければ
122
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:19:16 ID:Eo9hzRWw0
(#'A`)「だったら何だってんだよ!!!!!」
だが、激情が俺の冷静さを全て塗りつぶした
(#'A`)「俺らだって人間を食った!!良い奴だろうと悪い奴だろうと構わず、時にはふざけながらぶち殺した!!」
(#'A`)「何が違うんだよ!!俺らと空港にいる連中は!!それを棚に上げて、今更ヒーロー気取りか!?」
(#´゚ω゚`)「だっ……」
(#´゚ω゚`)「だからって放って置けるかァ!!ああ、俺らはバケモンだ呪われた死体だ!!地獄がお似合いのクソ野郎どもだ!!」
ショボンは俺の剣幕に一瞬怯んだが、すぐさま怒号を返した
(#´゚ω゚`)「だがハインは違うだろ!!こんなクソみてーな世の中でクソみてーな俺らに拾われて、それでもキラキラ笑ってた!!」
(#´゚ω゚`)「幸せになるべき『人間』だろ!!あんな、あんな結末で良い筈がねえ!!」
(#'A`)「誰にもあいつの結末を決める権利はねえ!!それに取り戻してどうするんだ!!どうせ待つのは感染か死だけだ!!」
(#´゚ω゚`)「それでも今!!!!死ぬよりはよっぽどマシだッ!!!!!」
(#'A`)「このッ……!?」
殴ってでも止めようとした瞬間、ぐいいと襟首を引かれ道路を転がった
(#'A`)「……お前もかよ、ブーン」
(;^ω^)「……」
這いつくばりながら、投げ飛ばした主を見上げる
ブーンは神妙な顔を此方へ向けることなく言葉を紡いだ
123
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:20:33 ID:Eo9hzRWw0
(;^ω^)「約束……破って悪いけど、俺もショボンと同意見だお」
(#'A`)「……」
(;^ω^)「銃声が聞こえた時、なんか、自分の中じゃ結構冷静だったお。『ああ、殺されたのか』くらいの認識だった」
(;^ω^)「で、でも、あの場所で生きていて、助けを求めて泣いてるのを見てたら、それはただ自分を誤魔化していただけに過ぎないって気づいたお」
(;^ω^)「別れたくない。助けに行きたい。これが俺の、俺たちの正直な気持ちだお」
(#'A`)「……」
どいつも、こいつも……!!
(#'A`)「それは、俺を裏切ってでも成し遂げたい物事か?」
(;^ω^)「違うお!!」
(#'A`)「違わねえよ!!現に今、危険を犯してまで助けに向かおうとしてんじゃねえか!!」
(;^ω^)「気持ちは同じだから!!!!」
(;'A`)そ「ッ!?」
124
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:21:17 ID:Eo9hzRWw0
(;^ω^)「俺たちは知ってる!!お前が誰よりも仲間想いだってことは!!だからこうして、気持ちに背いてまで俺たちの身を案じてくれている!!」
(;^ω^)「俺も、ショボンも!!ちゃんとわかってる!!これが自分の我儘だってことくらい!!お前が正しいことくらい!!」
(; A )「……」
(;^ω^)「だから……俺たちだけで助けに向かうお。一日経って、帰って来なかったら、その時は……」
(; A )「言うなッ!!やめろ!!」
行かないでくれ
(´-ω-`)「……怒鳴って悪かった」
行かないでくれ!
( ^ω^)「帰ってくるつもりだけど、『元気で』」
行かないでくれッ!!
(; A )「い……行くなァッ!!」
(;^ω )「……」
(´-ω-`)「……出すぞ、乗れ。ブーン」
125
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:50:52 ID:Eo9hzRWw0
そうだ、タイヤをパンクさせてしまえ
そうだ、あいつらの両足を切って、頭が冷めたころに治してやれ
そうだ、フロントに張り付いてダダこねてしまえ
様々な方法が浮かんだが、身体は実行に移さなかった
ドアが閉まり、エンジンが唸り、空港に向かって走り出した時になっても
(; A )「……」
( ∵)「……」
以´゚益゚以「クゥーン、クゥーン……」
その場には、蹲る俺と、ビコーズと、イトーイが残った
(; A )「……馬鹿が。赤ん坊なんて、また拾えばいいじゃねーか」
誰に聞かせるでもなく、口から文句が零れ落ちる
(; ∀ )「お、俺たちは腐れ外道のゾンビだぞ?一匹の、小腹を満たす程度の餌に何を執着してんだか」
面白くもないのに、口角は勝手に上がった
(; ∀ )「は、はは、でも清々したぜ。身勝手でうるさい連中が消えたんだ。ガキみてえな正義心に目覚めた痛々しい奴らなんて、こっちから願い下げだ」
言葉とは裏腹に、アスファルトを強く引っ掻いた爪が剥がれた
(; ∀ )「な、なぁ?ビコーズ?お前もそうだろ?こ、これから静かになるけど、落ち着いた旅が出来るんだ。なぁ?」
同意を求めようと、無口な仲間に声を掛けた
126
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:51:29 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「いいや、全く」
(;'A`)「えっ……?」
127
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:52:33 ID:Eo9hzRWw0
次の瞬間、顔面に膝蹴りが飛んでくる
ブーンに投げ出された時よりも強く地面を転がった
(;'A゚)「……???」
そんな事より、これまで一度も喋らなかったこいつが口を開き
あろうことか暴力まで振るったことに衝撃を受けた
( ∵)「黙って聞いてりゃ……さっきからベラベラとどうでもいい詭弁を並べやがって」
胸倉を掴み、持ち上げられる
華奢な見た目からは考えられない力強さに、喉が詰まった
(#∵)「あいつらは本心に従った!!お前はどうだドクオ!!」
(;'A`)「何を……」
(#∵)「答えろ!!」
(; A )「……」
本心?さっき言ったばかりじゃねえか。なんでわざわざ、終わった問題を掘り起こしやがる
俺が間違っているかのように、責め立てんじゃねえよ
(# A )「今、更……何も口出ししなかった奴がっ……偉そうに説教するんじゃねえ……ッ!!」
(#∵)「ああ!!俺は何も口出ししなかったさ!!だから今!!ここで!!お前に言うべきことを言う!!」
(#'A )「じゃあ言ってやるよカカシ野郎が!!赤ん坊なんてくだらねえ!!俺の命をかけてまで救ってやる義理はねえ!!」
(#'A`)「俺たちはゾンビだ!!人間を食らい、死者を増やし、世界を終わらせる存在だ!!ハインを拾って、食わなかったこと自体間違ってたんだ!!」
(#'A`)「欲望のままに貪って過ごす俺たちに!!生存者の子供を育てるなんて出来るわけねえだろ!!」
128
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:54:20 ID:Eo9hzRWw0
(#∵)「なら何故今まで食わなかった!!自分でケリを着けられた筈だ!!」
(#'A`)「知ったことかよ!!ただの気まぐれだ!!」
(#∵)「別れ際にハインに掛けた言葉も気まぐれだったのか!?」
(;'A`)そ「ッ!!」
ビコーズがポケットからインカムを取り出し、眼前に突き付けた
そうか、『盗聴器』。こいつ、聞いて……
(#∵)「生存者!!ゾンビ!!世界!!俺たちの命!!ハインの身!!そんな建前なんざ聞いちゃいねえ!!」
(#∵)「『お前』だ!!お前がどうしたいか!!それが『本心』だ!!ゾンビらしく、自分勝手に、自己中心的に……」
(#∵)「『欲望』を曝け出してみろよ!!!!」
.
129
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:55:08 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)
(; A )「っ……」
130
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:56:45 ID:Eo9hzRWw0
【 *(‘‘)* 】
最初に見た時は、衝撃だったな。こんなに可愛い赤ん坊に出会ったことが無かった
連れてきた父親を、放って置かずにちゃんと埋葬してやればよかった
【 *(*‘‘)* 】
ハインの為に物資を集めたり、設備を増やしたり
普段の狩りや探索と違って、新鮮だった。ミルクから感染しやしないかヒヤヒヤしたが、何事もなかった
【 (´^□^`) 】
面倒はショボンに任せっきりだったな。ミルクからオツムやら、夜泣きまで見事にこなしていた
ベビーシッターで培ったと言っていたが、本当はもっと別の理由があったかもしれない。聞けずじまいだったが
【 ( ^ω^) 】
あいつが最初にやらかした時は、頭が真っ白になった。本当に人騒がせな奴だ
でもその後は、ちゃんと弁えて遊んでやっていた。ハインも、ずっと楽しそうに笑ってた
【 *(*‘‘)* 】
名前を呼ばれた夜、実は少し嬉しかった。あれが無かったら、俺は自分の弱さに負けて食ってしまったかもしれない
それからハインを避け続けたのは、これ以上関わると引き返せなくなると思ったから。生存者に、引き渡せなくなると思ったから
【 *(;;)* 】
ああ、手放した時は泣いていたな。赤ん坊ながら、別れを察したんだろう
あの時、心に抱いたのは『罪悪感』だったか?いや、違う。有脳種になってから忘れていた、人間の……
身を引き裂かれるような『愛おしさ』だ
.
131
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:57:38 ID:Eo9hzRWw0
( A )「……いたい」
本音を塗り固めていた、嘘と誤魔化しのメッキが剥がれていく
目頭に、じんわりと熱が広がった。瞳の奥から、何かが込み上げてきた
(;A;)「一緒に、いたい……!!!!」
押し込んでいた想いが、涙と共に溢れ出す
(;A;)「ハインと、ショボンとブーンと……お前らともずっと一緒に旅をしたい!!」
(;A;)「おっ、お、俺だって!!助けたいさ!!助けて抱きしめて、『ごめんな』って謝りたい!!」
(;A;)「でっ、でも!!こ、怖いんだよ!!死んじまうかもしれない、お前らを失うかもしれないって思ったら!!動けなかった!!」
( ∵)「……」
以`゚益゚以「……」
(;A;)「俺は空港の、生存者たちを見た!!バンディットや他の生存者たちとは違って、あっさりと無脳種を狩っていた!!」
(;A;)「そんな連中に……クソ、クソォ!!俺ぁ、タマ無しの臆病者だ!!赤ん坊見捨てて逃げちまった方がいいって、そう思っちまった!!」
( ∵)「……」
以`゚益゚以「……」
(;A;)「ううう〜〜〜〜!!!!クソ、チクショウ……!!!」
132
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:58:41 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「……ドクオ」
胸倉を掴んでいた両手が、今度は俺の両肩を掴む
涙で視界が滲むのも本当に久しぶりで、ビコーズの顔はぼんやりと歪んでいた
( ∵)「俺も、あいつらも、お前が逃げても隠れても、責めたりはしない。お前の『怖い』という感情を否定しない」
( ∵)「だから、『選べ』。後悔しない選択をしろ。お前は本心を打ち明けた」
(うA )「……グスッ」
( ∵)「どこで、何をするか。欲望のまま選べ。確かに世界は終わっていて、生存者もゾンビも俺達も全部クソだ」
( ∵)「それでも、いや、だからこそ、今の世界は『自由』だ。誰にも縛られず、誰にも裁かれない。さぁ……」
( A )「……」
( ∵)「どうする?」
『どうする』?決まってる。泣いて喚いて、本音ぶちまけて……
ここで退いたら、男が廃る
('A`)「……」
133
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:59:38 ID:Eo9hzRWw0
そうだ、俺は『有脳種』。欲望のままに人を殺し、喰らうバケモノ
人の理性と感情と知性、ゾンビのパワーと不老不死を併せ持つ、『この世界に適応した存在』だ
何を恐れることがある。空港にいるのは多少活きの良い『餌』だ。パンにビビる奴どこにいるんだ?
('A`)「……」
生存者を……バンディットを狩った時と同じだ。バケモノの怖さを見せびらかし、上から押しつぶすかのように殺しちまえ!!
奴らの巣を徹底的に叩き、燃やし!!屈辱と苦痛を存分に味わわせてやる!!
('A`)「往こう」
覚悟は出来た。ショボンやブーンと同じく、『身勝手』を突き通す覚悟が
( ∵)「そうこなくっちゃな」
以`゚益゚以「ワンワン!!」
ビコーズがトラックの運転席に、イトーイが隣に座る。俺も助手席に乗り込んだ
( ∵)「音楽をどうぞ、Mr.DJ」
('A`)「ああ……一ついいか?」
( ∵)「なんだよ」
('A`)「どうして今まで喋らなかった?」
( ∵)「ああ、アッハッハ。いや、なに、ウケ狙いだ」
(;'A`)「……」
( ∵)「アッハッハッハッハ!!行くぞ!!」
開いた口が塞がらないまま、ウォークマンの再生ボタンを押した
134
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:00:16 ID:Eo9hzRWw0
♪Nickelback - Burn It To The Ground
http://blog.livedoor.jp/saqauten/archives/cat_605074.html
.
135
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:02:06 ID:Eo9hzRWw0
トラックが道路上の車を撥ね飛ばし、車体がガクリと揺れた
『少々荒いドライブになるぞ』。ほんの数分前の運転手の言葉だが、少々所の話じゃない。舌噛みそう
(;'A`)「無脳種の数が減ってる……」
( ∵)「ショボンが連れて行ったんだろう。もしかしたら、到着したころには既に地獄絵図かもな」
二人の後を直ぐに追ったつもりだったが、茫然としていた時間が思ってた以上に長く、ニ十分近くが経過していた
切り替え遅ぇんだよ俺。そんなんだから童貞のまま死んだんだよ。あれ?可笑しいなまた涙が
(;'A`)「俺も傍目でしか見ていないが、結構な要塞に仕立て上げられていた。無脳種の集団だけで攻め落とすには時間が掛かるぞ」
( ∵)「なるほど……所で、その要塞は大型車が突っ込むことも想定して築かれた物なのかな?」
(;'A`)「えっ、いや、わからん……バリケードとかは車やら椅子やらで作られ……お前まさか」
( ∵)「折角だ、派手に行こうぜ」
ビコーズは鮮やかな手並みでシフトレバーを動かし、ギアを上げていく
(;'A゚)「ヒィッ」
以`゚益゚以「ムグ」
思わず隣のイトーイを抱きしめてしまうほど、前例のない猛スピードでトラックは走る
右側のサイドミラーが標識のポールによって吹っ飛び、フロントガラスにはゴミやら小石やらなんやらがビシビシとぶつかって皹を作る
( ∵)「ハハァ!!見えたぜ!!」
(;'A゚)「はぇ?」
バリケードで覆われた玄関口には、無脳種が殺到していた
時折、『パパパ』と連続したフルオートの銃声が複数聞こえた
136
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:03:01 ID:Eo9hzRWw0
( ,;^Д^)
俺を誘導した見張りを始めとした、生存者の応戦部隊が戦っているらしい
(;'A`)「ショボンとブーンは!?」
(;∵)「そんな事より伏せろォ!!」
咄嗟にイトーイに覆いかぶさり頭を下げる
瞬間、フロントガラスとシートの背もたれに風穴が複数開いた
(;'A`)「撃たれ……無事か!?」
(;∵)b「大丈夫だ!!致命傷で済んだ!!」
(;'A`)「なら良……くねぇなぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!死ぬ奴だなそれ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
(;∵)「胸に一発当たったくらいで有脳種が沈むか!!」
まるで戦艦ミズーリ乗務員のような頼もしさだ。でも紛らわしいんで致命傷とか言うのやめて欲しい
(#∵)「つっこむぞ!!つかまれッ!!」ウォンッ
(;'A`)「ッ!!」
無脳種の列をまとめて轢き殺し、バリケードに衝突する
ひと際大きく車体が跳ねた後、ゆっくりと左手に傾き横転した
(;'A゚)そ「オギャーーーーーーーーーーーーーース!!!!!!」
フロントからサイドまで窓ガラスは全て粉々
荷台の物資や水のタンク、牽引しているオンボロ車、まとめて全滅だろう
137
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:05:03 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「痛った……くねえけど、無茶すんじゃねえよ!!」
以` 益 以「」
( ∵)「ぼんやりしてる暇はねえぞ!!このトラック吹っ飛ばす!!」
(;'A`)「ハァ!?何!?」
( ∵)「爆発させるっつってんだよ!!出るぞ!!」
以`゚益゚以そ「フゴッ」
(;'A`)「お、おう!!」
ビコーズはイトーイと一緒にフロントから、俺はドアを蹴破り、車内から飛び出す
後方からはなだれ込んだ無脳種のうめき声と足音、そして現在進行形で食われている生存者の叫び声が響いた
( ∵)「こんな事もあろうかと、イトーイと一緒にトラックを魔改造してて良かったぜ」
(;'A`)「どういう想定してんだよ……」
( ∵)「爆発オチを所望された時に一発ドカンとぶちかましてやろうと思ってな!!」
(;'A`)「え、ええ〜……」
( ∵)「さぁ走れ走……おっとォ!?」
ポップコーンの様に床が弾ける
二階へ繋がるエスカレーターから、無数の生存者がライフルを発砲しながら近づいて来ていた
( ∵)「こっちだ!!」
(;'A`)「ッ!!」
動きながらの射撃だ。命中精度が良いとは言えない
それでも流れ弾が頭に当たるだけでゲームオーバーだ。それに、受ける傷は少ないに越したことは無い
両手で頭を庇いながら低い姿勢で荷物預かり所の受付カウンターに身を隠した
138
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:06:08 ID:xx5fqGZI0
ずっと無言だった奴が急にこんな熱い奴になって戸惑うわ
139
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:06:09 ID:cAdFD4320
クッソ…おもしれえ…
今年はまた本気で優勝狙ってやがる…
上質なゾンビ映画の脚本みてぇだ
140
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:06:32 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「ど、どうする?」
以`゚益゚以「キューン」
( ∵)「予定に変更は無い!!」
(;'A`)「い、いや、無脳種がこっちなだれ込んでくるから任せてもいいんじゃね?」
( ∵)「……」
(;'A`)「……」
以`゚益゚以「?」
( ∵)つ凸 スッ
(;'A`)「えっ何そのあからさまなボタン」
以`゚益゚以「起爆ボタンだよ」
(;'A`)「ご丁寧に説明どうも」
( ∵)「キラークイーン……」
(;'A`)「待て待て待て待てオイオイオイオイ」
( ∵)「第一のb以`>益<以∴「ヘブシッ」あっ」ポチッ
(;'A゚)「ピィ!!」
141
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:07:28 ID:Eo9hzRWw0
. -‐ニ ̄ニ‐- .
_/ \_
=二 ̄ / ',  ̄二= ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
 ̄7'' ―― ___ ―― 戈 ̄
――― 从,,i ; `. 、 .尢r、―――――― ンオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
/\じ'jl|此ト=メ i;_,,爻,,i| 刈ゞメ
``‐ヾ:;!Iヅ 〃!iメト辷-" ^
.
142
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:08:22 ID:Eo9hzRWw0
(;'A゚)「」
以´゚益゚似そ「キャインキャイン!!」
( ∵)「……」
(´∵)「ひえ〜……木っ端微塵や……」
(;'A゚)「ばっ、ば……馬鹿かお前!!!!!!!!」
腹の底まで響く爆発音、背中をドンと殴られたような衝撃、カウンターを乗り越えて頬を舐める熱風
チラリと様子を確認してみると、トラックは炎上。無脳種だか生存者だかわからねえ肉片が、チリチリと焦げながら壁に張り付いている
心地よい景観を作り出していたであろう天窓は吹っ飛び、鉄骨がむき出しになった天井から、大人一人を余裕で下敷きに出来るような瓦礫が落ちた
それより今まで一番大人しかった奴が一番のイカレだった時の俺の気持ちわかる?ブーンでもまだ多少弁えるぞ
( ∵)「だってやりたかったんだもん!!」
『もん』じゃねえよ気持ち悪いな
( ∵)「いや大丈夫だってそんな気持ち悪い表情作ってで睨むなよ」
('A`)「睨んでねえし、表情を作ってもいない」
( ∵)「個性があって羨ましいな……おおっと、こいつはやべえ」
瓦礫は落ち続けている。身体が燃えようとも構わず侵入してきた無脳種が押しつぶされ、枯葉色の華を派手にぶちまけた
ロビーはもうダメだ。いずれ全て崩れ落ち、進退ままならぬ場所になるだろう
143
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:09:04 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「敵……を、気にしてる場合じゃねえな」
( ∵)「俺は見てみたいぜ〜?トラックが爆発して天井から瓦礫が落ちて、それでも構わず突っ込んでくる無脳種をぶち殺す命知らずをよ」
('A`)「そんなイカレコミック・ヒーローみてーな生存者がいるわけが……」
<イイイイイイイイイイイイイイイイイハァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
('A`)「!?」
( ∵)「!?」
_
(#゚∀゚)「死ね死ね死ね死ねクソゾンビ共がァァァ!!!!!!!」
いたよ。腰だめに構えたミニミをぶっ放すイカレ野郎が
(;'A`)「ど、どうする?生存者はあいつ一人っぽいけど」
( ∵)「弾ギレ……を待つ暇は無さそうだな。かと言って飛び出せばお前の顔面よりはマシな肉塊が出来上がるだけだ」
('A`)「お前の顔面を個性豊かにしてやろうか」
( ∵)「……おい、待て。イトーイは?」
('A`)「は?」
い……ない!!マジでいない!!どこいった?瓦礫に潰された!?ちゃんと待てが出来る子なのに!!
少なくともブーンよりは賢い子なのに!!!!
144
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:09:28 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「理由もなく勝手に離れる奴じゃねえ……どこに……!!」
(;'A`)「……いたぞ!!あそこだ!!」
カウンターから頭を出して見てみると、瓦礫を掻い潜りながら軽快に走る
以`゚益゚以「ハッハッハッ」
イトーイの姿。その行き先は
_
(#゚∀゚)「ハーーーーーーーーーーハハハハハ!!!!」
銃声と建物の崩壊音で耳がバカになってるバカ
145
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:10:18 ID:Eo9hzRWw0
_
(#゚∀゚)「ハハハハハハ!!!!」
以#`゚益゚以「グルォアッ!!!!!!」
_
(;゚∀゚)そ「ハぁ痛ッんんんんんんあああああああああああああ!!!!!!!??????」
真横から飛びつき、首筋を肉食獣の牙が食いちぎる
仰け反った銃口が放物線を描き、弾丸が崩れた天井から覗く空へと吸い込まれていった
( ∵)「ワォ」
('A`)「グロ注意」
<ひぎゃあああああああああああああああああ!!!!!ひっあ、ひいいいいいいいいいいい!!!!!
<あ……がっ、ゴポォ、き……
バカの結末なんて大抵こんなもんだろう
( ∵)「とにかくチャンスだ!!行くぞ!!」
('A`)「おっしゃ!!」
カウンターを跳び越え、一目散に空港の奥へと走り出す。その時
(;'A`)「ッ!!イトーイ!!」
(;∵)「チッ!!」ダッ!!
以`゚益゚以「ワン?」
口元をバカの血で染めたイトーイがいる位置の天井が
(;'A`)「逃げろォォォーーーーーー!!!!!」
大きく、崩れ落ちた
146
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:13:26 ID:Eo9hzRWw0
(;∵)「来いッ!!」グイッ
以`゚益゚以そ「ワン!?」
真っ先に駆け出したビコーズが、イトーイを抱きかかえ
(;'A゚)「」
その姿を、瓦礫の雪崩がかき消した
(;'A゚)「……嘘だろ」
余りにも呆気なく、目の前で仲間が死んだ。二人も
(;'A゚)「……ぎっ」
ガクリと崩れそうになった膝を、叩いて無理やり力を込める
今にも喚きだしそうな口は、奥歯を食いしばり飲み込んだ
まだ、礼も言ってなかったのに!!
(;'A゚)「……クソ」
(#'A゚)「クソォォォーーーーーーーーーーー!!!!!!」
だが、俺は覚悟をした。身勝手を突き通すために、何かを失う覚悟を
二人の犠牲に、足を止めるわけにはいかない。ロビーの崩壊はまだ進行している
進もう。ハインが待っているから―――――
147
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:14:19 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
(;'A`)「迷った!!」デデドン!!
と、勇んで進んだのは良いが
来た事も無い空港じゃ土地勘もクソも無かった
今は国際線搭乗口付近。正面ロビーの地獄からは考えられないほど無脳種も生存者もいない
しかし、『いた』形跡は確かに残っていた。血、もしくは腐った体液を流して倒れる人型の肉がそれだ
(;'A`)「ええい、どうして空港ってのはこうクソ広いんだよ!!」
ハハ#ロ -ロ)ハ「フリーズ!!」
(#'A`)「うるせえクソビッチ!!口がお精子くせえんだよ!!」
女子トイレから飛び出してきたブロンド女が拳銃を向けて警告をしたが
そんなもん当然聞かず腹に蹴りをくれてやる
ハハ;ロ -ロ)ハ・'.。゜「ゲロッ!!」
手ごたえならぬ『足ごたえ』は十分だ。口からはゲロと血がニキビを潰した時の膿のように噴出し
背中からは血飛沫が舞った。真っ二つに折れた背骨が、肉と皮膚を貫通して飛び出したのだろう
(#'A`)「こいつは頂いていくぜ」
手を放れた拳銃を拾い、マガジンを抜き取り残り弾数を確認する。残り五発か
『SIG SAUER P220』。精度の良い拳銃だが、マガジン容量が少ないのが難点だ
(#'A`)「ねえよりマシか……」
いつものように背中側のベルトに差し込み先を目指す
こんな事なら拳銃置いて来なきゃよかった
148
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:15:02 ID:Eo9hzRWw0
辺りからは銃声や悲鳴が聞こえていたが、まともにかち合ったのはさっき殺した女が初だ
どれだけ遠くにいるのかわからないが、とにかく音が聴こえる方に向かえばいい
「ヴァアア……」ガンッ!!
「オオオオ……」ガンッ!!
('A`)「おっ」
二匹の無脳種が、スタッフ・ルームの扉を叩いているのを見つけた
奴らの行動原理は『食欲』。餌にしか興味を示さず動かない
('A`)「……」
足下を見渡してみるが、使えそうな物は落ちていない。拳銃は弾が勿体無い
('A`)「ハァーーーーーー……」
同胞を襲うようで少々……いや、やっぱ全然気もなんも引けねーわ
とにかく気にせず、頭を拳でぶち抜かせて頂いた。これだから無脳種は汚くて嫌なんだ
('A`)「……」
拳銃を引き抜き、左手でドアノブに触れる
一呼吸を置き、一気に開け放った
(#'A`)「ッ!!」
(メ;・∀・)「!!」
中には案の定『生存者』が。それも、血の臭いをプンプンとさせている
互いに拳銃を向け、一瞬の硬直。この男には見覚えがあった。ハインを受け取った優男だ
149
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:15:54 ID:Eo9hzRWw0
彼の傍らには
从 Xナ从
頭を撃ちぬかれたパンク・ガール
肩の『咬み傷』と、床と壁に付着した血しぶきを見るに、どうやらゾンビになる前に『ケリ』を着けたらしい
(メ;・∀・)「……君は、あの赤ん坊の?」
(#'A`)「ああ……」
男の拳銃を持つ腕にも、同様の咬み傷。最早長くは無い
手前の頭を撃ちぬかなかったのは、最後の一発を彼女に譲ったからだろう
(#'A`)「お前、言ったよな?『引き受ける』と。なら何故ハインをあんな目に遭わせた?」
(メ;・∀・)「っ……そうか、見ていたのか……だから彼らはッ……あんなに怒り狂って……」
(#'A゚)「ッ!!」
怒り狂っているのは、俺も同じだ
男の拳銃を蹴り飛ばし、自分が持つそれのグリップで頬を殴りつける
そして、胸倉を掴んで持ち上げた
(#'A゚)「その傷だと以て半日でお前は世界人口の大半を成す連中のお仲間になる」
(#'A゚)「頭をぶち抜いて殺すのは、今のお前にとっちゃ救いでしかねえ。だが、痛めつける事は出来る」
(メ; ∀ )「グッ……」
(#'A゚)「苦痛はお望みじゃないだろう?楽にして欲しければ、無駄口叩かずさっさと答えろ」
きっと、ここでの正しい質問は『ハインの居場所はどこだ?』だろう
だが、聞かずにはおけなかった。人間でありながら、悪魔の所業を行った
(#'A゚)「何故ハインをあんな目に遭わせた?」
生存者の腹の中って奴を
150
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:17:28 ID:Eo9hzRWw0
(メ;・∀ )「アレが……僕の本意だと思ってるのか……?」
(#'A゚)「じゃなきゃなんだ?無脳種の皆様にお披露目したくて、渋々あんな方法を取ったのか?」
(メ;・∀ )「違う……!!僕じゃない……!!」
ふと、靴に僅かな振動が起こった
(#'A゚)「……」
見ると、血の斑点がポツポツと出来上がっている
血の出どころは、咬まれた男の腕……ではなく、『太腿』から。脚を伝って滴り落ちていた
(#'A゚)「……撃たれたのか」
(メ;・∀ )「この場所は……既に終わってた……ハンターが現れてから……」
なるほど、無線から聞こえてきた銃声は『これ』か
(メ;・∀ )「確かにっ……彼らには武力があった……経験も……」
(メ;・∀ )「だが傲慢でもあった……空港を訪れた生存者も、病人や怪我人……彼らに取って『使えない』と判断を下された者は、受け入れを拒否された……」
(メ;・∀ )「常に見返りも……求められた……食料、水、酒に女……この城の、王……いや、暴君として……君臨していた……」
(メ;・∀ )「そんな彼らが……益にも得にもならないっ、赤ん坊を……受け入れるワケがなかった……良心が、残っていると信じていたが……」
(#'A゚)「……すると、てめぇはこう言いたいわけか?『僕は抵抗したがハンターがハインを窓からぶら下げた致し方なかったすまない許してくれ』と」
(メ;・∀ )「……」
(#'A゚)「……チッ」
151
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:23:22 ID:Eo9hzRWw0
例えどんな理由があろうと、ハインは危険に晒された
生存者に……目の前のこいつに対する怒りが収まる訳じゃない
俺は聖職者でもねえし、心が広い一般人でもねえ。自由で勝手な『ゾンビ』だ
(#'A`)「ハインの居場所は?」
(メ;・∀ )「展望フロア……廊下を右手に真っすぐ進み、突き当りをまた右……」
(メ;・∀ )「とはいえ、もう……遅いかもしれないが……」
(#'A`)「黙れ。俺は最後まで諦めない」
胸倉を突き放し、男に背を向ける。どうせ拳銃は弾ギレで、脚は使いもんになんねえ死にぞこないだ
そうだ、冥途の土産をくれてやろう。『彼ら』と言ったな。ハンターは『複数』いたって事だ
(#'A`)「……ミニミを担いだバカはハンターか?」
(メ;・∀ )「……ああ、そうだ」
(#'A`)「喜べ、奴は死んだ。バカに見合った、バカらしい死に方でな」
(メ;・∀ )「そりゃ……胸がすくような気持ちだ」
(#'A`)「……」
(メ;・∀ )「待ってくれ、キミは何者だ……?」
(#'A`)「……」
何度も何度も、殺す直前の生存者に聞かれた質問だ
俺はいつもこう答えた。『知ってどうする?』と
だが答えてやろう。ハインの為に脚を撃たれた、誠実な男の為に
(#'A`)「……『バケモン』だ。飛び切りのな」
振り返り、弾丸を一発頭にくれてやる
(メ ∀ )
('A`)「……礼だ。じゃあな『人間』」
152
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:24:20 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
(;'A`)「……どうなってやがる」
展望フロアはもぬけの殻だった。いや、確かに『激戦』を想像させる痕跡は残っていた
床を覆う無脳種の死体。八つ裂きにされた『食い残し』
( 、 メ川「ア、カヒュッ……」
その中で、まだ息のある女が残っていた
(;'A`)「おい、赤ん坊は!?」
( 、 メ川「だ……れ……?」
瞳は明後日の方向を向いている。まともに見ることも叶わないのだろう
左の鎖骨から腹にかけて、身と皮膚を抉り取られていた。これでもまだ生きているのは、『感染』が進んでいる証拠だ
しかし、こうなってからそう時間が経っているようでは無さそうだ
(;'A`)「赤ん坊だ!!お前らが窓から吊り下げた赤ん坊!!無事なのか!?」
( 、 メ川「……つ、れ……った……バケ、もの……」
(;'A`)「ッ……!!」
ショボンとブーンはハインを回収したらしい。だが、この目で確かめるまで安心できない
(;'A`)「どこへ……どこへ向かった!?」
( 、 メ川「カヒュッ……ゲボッ、アアア……」
最後の溜息を吐き、口からどす黒い血を大量に吐き出した女は
無脳種特有のうめき声を鳴らし始めた。時間切れだ
153
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:25:12 ID:Eo9hzRWw0
<アアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!
(;'A゚)そ「ッ!!」
ショボンの声だ。無脳種をおびき寄せる、あの特有の叫び声!!
このエリアから更に奥から聞こえてきた。移動して……いや、恐らく『逃げている』!!
(;'A゚)「ショボン!!!!」
起き上がろうとした女の頭を踏みつぶし、声の元へとひた走る
頼む、間に合ってくれ。ビコーズやイトーイのような最後を見るのは、もう沢山だ
(;'A゚)「クソ……クソッ!!」
この期に及んで、自分の弱さが怨めしくて堪らない
俺があの時、怯えずにハインの救出に乗っておけば。ビコーズやイトーイに気を使わせず、同行させておけば!!
何にも変わっちゃいなかった。生前からの臆病さは死んでも治っちゃいなかった!!
(;'A゚)「ッ……!!」
(メ;´ ω・`)
(; ωメ)
――――見つけたッ!!!!
154
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:26:35 ID:Eo9hzRWw0
呼び寄せた無脳種の群れから、何かを庇うように蹲る二人の姿
(,#メ゚Д゚)「オラオラオラオラクソザコがァ!!」
(*;゚ー゚)「ギコ君、早く!!」
男女二人が、追いかけてくる無脳種の頭を的確に撃ち抜きながら階段を駆け上っている
(,#メ゚Д゚)「こいつはオマケだ」
男が腰のホルスターから、『卵』を抜き取り、ピンを抜いた
(;'A゚)「手榴……!!」
考えるより先に、腕が動いた。男が投球モーションに入ったのと、俺が駆け出し、拳銃を向けたのはほぼ同時
(#'A゚)「っっっっせるかァァァ!!!!!!!!!!」
残り少ない弾数を、構わず全部撃ち尽くす
(,;メ゚Д゚)そ「うおっ!?」
その内の一つが手すりに命中し、火花を散らした。驚いた男の手から手榴弾が零れ落ち
階段を一つ、二つと跳ね、床に転がった。二人の、すぐ傍に―――――
(;'A゚)「ッ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
引いてしまいそうになる脚に、更に力を込め加速する。無謀でも無茶でもここで前に出ねえと!!
こんな場面だが、俺は今まで観た映画のシーンを思い出していた
『キャプテン・アメリカ』や『キングスマン』。周りに遮蔽物がない場合、手榴弾の爆発をどう防ぐか。その答えが映し出されているからだ
155
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:26:57 ID:7CnT/yQ.0
ドクオは自分本位な考えだなー
156
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:27:40 ID:Eo9hzRWw0
(;'A゚)「ッッッラァ!!」
無脳種の一体にタックルをぶちかまし、そのまま手榴弾を覆い被さるように倒れ込む
爆破した際に八方へ飛び散る『破片』を、肉の盾で防ぐのだ
(;'A゚)「ッッッ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
歯をギュッと食いしばった。手榴弾の起爆は、ピンを抜いてから三秒だっけか五秒だっけか
クソ、『長ぇ』。たった数秒が、ここまで長くk
(; Aメ)そ「ガッ!!!!」
耳から脳内を貫くような、『ボン』という鈍い爆発音と共に、無脳種の腐った腸が汚泥の間欠泉のように噴出した
塞ぎ切れなかった細かな破片が、胸元から顔面までグサグサと突き刺さっていく
:(; Aメ):「カヒュ、ヒュウ……」
右側の視界が黒く染まっている。どうやら、『潰れちまった』らしい
157
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:28:23 ID:Eo9hzRWw0
(;^ωメ)「!!!!!」
(メ;´・ω・`)「!!!!!!」
や、やいのやいの、言うんじゃねえよ。耳も少々怪しいんだ
待ってろ、今そっちに行くからよ
:(#'Aメ):「 !!!!!」
無事な左側の視界も、左右に揺れている。脚は痙攣を起こしたかのように震えていた
二人を中心に集まってくる無脳種に、軽く押されるだけでぶっ倒れそうだ
:(#゚Aメ):「 !!!!!」
それでも前に、前に、前に!!
無脳種を掻き分け、肘で殴りつけ、二人の―――――
「おぎゃあああああああああ!!!おぎゃあああああああ!!!!」
;(;゚Aメ):「!!」
―――――三人の元へ
158
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:29:21 ID:Eo9hzRWw0
:(;'Aメ):「……!!」
後から後からやってくる無脳種に押し込まれるような形で
たった数メートル足らず先の『目的地』に、ようやく到達することが出来た
そこで、俺の足はガクリと崩れ落ち使い物にならなくなる
どうやら、ここが俺達の終着点らしい
(メ;´・ω・`)「ハ、ハハ……遅、かったじゃねえか……」
ショボン
(;^ωメ)「待ち……くたびれた、お……」
ブーン
*(;;)*「おぎゃあああああああああ!!!!おぎゃああああああああ!!!!」
そしてハイン
(メ;´・ω・`)「しくっ……じ、ちまった。怒りに任せて、無脳種を呼びッ……このザマだ……」
:(;'Aメ):「……」
俺達は、けたたましく泣き声を上げる奴らにとっての『ご馳走』を守るかのように肩を組んだ
四方八方から手が伸び、服を掴み、皮膚を削ぎ、肉を徐々に剥がされていく
ショボンは無脳種を『遠ざける』事も出来るが、この物量とハインの泣き声があっては、その手は意味を為さないようだ
159
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:29:58 ID:Eo9hzRWw0
(;^ωメ)「首謀者の……ハンターも、逃がしちまったお……ごめん……」
:(;'Aメ):「ア……」あやまるな
:(;'Aメ):「……」
クソが、声帯もやられてやがる。今際の際に言葉を交わすことも許してくれねえってのか。神様
これが罰ってんなら、甘んじて受け入れてやる。だが……
*(;;)*「びえっ、びええええええええええ!!!!」
この子だけは、この子を巻き込むのだけはやめてくれよ
:(;'Aメ):「……」
祈るだけ、無駄か。最後に、こうして出会えただけでも救いなのだろう
:(;'Aメ):「……」
(メ;´ ω・`)「……」
(; ωメ)「……」
オイオイお前ら、これから地獄に逝くってのに
:(;'∀メ):「……」
(メ;´ ω^`)「……」
(;^ωメ)「……」
笑ってんじゃねえよ。全く
160
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:30:32 ID:Eo9hzRWw0
:(;'∀メ):「……」
(メ;´ ω^`)「……」
(;^ωメ)「……」
.
161
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:31:25 ID:Eo9hzRWw0
(;'∀メ)「……」たのしかったぜ
(メ;´ ω^`)「俺もだ」
(;^ωメ)「俺も」
.
162
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:31:49 ID:Eo9hzRWw0
.
163
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:32:16 ID:Eo9hzRWw0
「グルルルルゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
.
164
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:33:13 ID:Eo9hzRWw0
「イーーーーーーーーーーーーーハァ!!!!!!!!ハレルヤァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
.
165
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:35:08 ID:Eo9hzRWw0
(;゚Aメ)そ「ッ!!」
地獄の番犬のような唸り声、オツムが焼き切れた悪魔のような高笑い
黙示録を思わせる弾丸の咆哮が俺達の頭上を通り過ぎ、イナゴの如く無脳種を食い荒らしていく
(;^ωメ)そ「なんだお!?誰だお!?」
(メ;´・ω・`)そ「誰の声だ今の!?」
(;゚Aメ)「……」
俺が、俺だけが聞いた声だった
「本日フライト予定の『F・U・C・K13号便 地獄行き』は、急な弾丸の嵐によりキャンセルですっと」
俺を奮い立たせ、愚直に仲間を助けに走り、死んだと思っていた男――――
「ワンワン!!グルルルル!!」
率先して窮地から道を切り開き、瓦礫に押しつぶされたと思っていた愛犬――――
( ∵)「ビコーズ・エアー。またのご搭乗をお待ちしています」
ビコーズと
以#`゚益゚以「あっち行け!!ウウーー!!」
イトーイの、姿が
166
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:37:29 ID:6zGwL1k.0
ビコーズイケメンすぎかよ………
167
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:37:36 ID:Eo9hzRWw0
(メ;´・ω・`)(;^ωメ)「「喋らん奴ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」」
( ∵)「ビコーズな。チッ、しつけぇクソ共だな……こっちも弾ギレか」
銃口から煙を上げる『ミニミ』を手放したビコーズは、奥から新たに走り寄ってきた無脳種の群れの前に立つ
( ∵)「食い止める!!ハインをあやしてサッサと追い払えショボン!!」
(メ;´・ω・`)「お、おうよ!!でもお前どうやって……」
( ∵)「俺の能力は『戦闘向き』だ。心配すんな……」
ビコーズが両腕を振るうと、仕込み刃のように手首から『鋭利な白骨』が飛び出す
(#∵)「よっとオラァァァァアアアアアアアアアイ!!!!!!!!」
先頭の無脳種の大口に右手の『刃』を押し込み、気合いの入った雄たけびと共に横に薙ぐ
刃の軌道上にいた数体の無能種の首が容易く断ち切られ、砂の入ったボールのように鈍い音を立てながら転がった
切断面からは焦げた臭いと僅かな煙が上がり、それが『高熱』によるものだと物語っていた
以#`゚益゚以「グルルルルルル!!!!」
イトーイも無脳種に飛び掛かり、顔面の肉を噛み千切る
(メ;´・ω・`)「よ、よぉ〜しよしよし、いい子だから、いい子だから泣き止んでくれ……!!」
*(;;)*「びええええええ!!びえっ!!びえええええええええ!!!!」
後は、ハインが泣き止んでくれれば……
168
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:38:41 ID:Eo9hzRWw0
しかし、相手は赤ん坊だ。『はいそうですか』とすんなりと泣き止むわけがない
ましてや、ゾンビの集団に狙われている最中だ。大人だって泣き叫びたくなるほどの恐ろしさだろう
『泣き止んでくれ』なんて、酷な話だ。怖いものは怖いのだから
(;'Aメ)「……」
(;^ωメ)「ドクオ……?」
例えば、クローゼットの中にいる『ブギーマン』に怯える子供に、親は何をしてやれるか
『あれはただの暗闇だ』と諭すか?明かりをつけたまま眠ることを許可するか?
お袋は違った。今やもう顔も、飯の味も思い出せないが
今、この時、この場に限って、救いの手を差し伸べるように鮮明に記憶が蘇っていく
*(;;)*「びえええええええええええええええ!!!!!」
小難しいテクニックも、面倒も無かった。お袋はただ、幼い『想像力』という悪魔に苛まれる俺の頭にキスをして
(;'Aメ) 大丈夫
(;'∀メ) ママがついている
と、笑いかけてくれたんだ
それが、どれだけ安心したか。どれだけ、救われたか
169
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:39:45 ID:Eo9hzRWw0
(;^ωメ)「は……ハハ、こ、こんな時まで笑わせるなお」
(メ;´^ω^`)「ククッ、相変わらずブサイクなツラだ。笑うと特にひでぇ」
二人から、いつもの軽口が飛んでくる。罵倒の一つでも飛ばしたい所だが、今は甘んじて受け入れてやる
なぁハイン。お前も俺の顔を見てゲラゲラ笑ってただろう?忌々しい顔面だが、お前が喜んでくれるならブサイクも悪かねえ
(;'∀メ) 頼む
*(;;)*「びえええ!!びええええええええええ!!!!」
(;'∀メ) 笑ってくれ、笑ってくれ
*(;;)*「びえっ、び……」
(;'∀メ) 笑ってくれ!!!!!!!
.
170
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:40:36 ID:Eo9hzRWw0
*(;;)*「……」
*(;;)*「どっく」
(;'∀メ)「!!」
*(;;)*「どっく、ヘッ、イヘヘ、どっく、どっく!!」
(;'∀メ)
ああ、神様。アンタって奴ァ
*(*;;)*「どっく!!どっく!!えひっ、えひひ!!」
俺が産まれた瞬間から、とっくに『特別』を与えて下さってたんだな
171
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:41:17 ID:Eo9hzRWw0
「ススススススススーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッア!!!!!!!!!!!!!!」
無脳種を追い払う、ショボン独特の気持ち悪い叫びが
この日、最後の記憶となった―――――
172
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:41:43 ID:Eo9hzRWw0
.
173
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:43:09 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
*(‘‘)*「だー」
新しい『住処』であるトラックに荷物を積み込む手を止め、チャイルドチェアから呼ぶ声に応える
('A`)「どうした?」
*(‘‘)*「あう」
たどたどしい手つきで指さす先には、蝶々が一匹フワフワと飛んでいた
『もっと近くで見たい』と暴れ出す前に、抱きかかえてやる
('A`)「今年も暑くなるぞぉ」
*(‘‘)*「うー?」
174
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:43:58 ID:Eo9hzRWw0
夏の始まりを知らせる蝶は、風に揺られて気ままに飛び
そのまま、『人の原型』を僅かに残した黒焦げの山に止まった
『あの日』くたばった無脳種の成れの果てだ。傷も完治しない内に運び出してガソリンブチ撒いて燃やしたやつ
放っておいたら腐って衛生的にヤバいからな。クッソ適当だが、これもまぁ火葬ってことで勘弁して欲しい
生存者に関しては、今更説明するまでも無いだろう?あんだけ派手に暴れ回って電源設備が無事だったのマジで奇跡。冷蔵庫パンパン
( ∵)「赤ん坊を誘拐する事案発生」
売店からかっぱらったDVDが入った箱を持ってきたビコーズが、冗談めかして話しかけてくる
今までは無口で何考えてるかわからない野郎だったが、この一か月で結構なお喋りだと思い知らされた
俺らが見てない所で、イトーイとは会話をしていたらしい。なんでお犬様とのコミュニケーションを優先してんだよ
( ∵)「今夜はポイント・ブレイクかバッド・ボーイズ2、どっちにする?」
('A`)「俺向きなのは?」
( ∵)「どっちが先かだ」
('A`)「ホット・ファズで」
( ∵)「最高のチョイスだ」
サイモン・ペグとニック・フロストのコンビはどの作品も最高だ
175
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:46:05 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「身体の調子は?」
('A`)「右目がちょいと不自由になっただけで、後は問題ねえよ」
( ∵)「お前の唾でその顔面がちょっとはマシになれば良かったのにな」
('A`)「ハイン言うたれ」
*(‘‘)*「め!!」
( ∵)「この仲良しさんめ」
この空港に一か月足止めされてたのは、主に治療とこの住処を用意するためだ
俺とショボン、ブーンの傷は……まぁ詳細は省くが端的に行ってヤバかった。俺とか顔面の右半分千切れかけてたし喉にも穴開いてた
それが唾つけただけで治るんだから有脳種って怖い。ただ、潰れた右目だけは再生できなかったので生存者の物を一つ失敬して癒着させた
若干見えづらくなったが、完全失明に比べりゃ御の字だ。これも唾着けて眼孔に押し込んだらちゃんと機能するって何なんだよこえーよ
('A`)「残りの荷物は?」
( ∵)「連中が持ってくる。積んだらいよいよ出発だな……っと、噂をすれば」
( ^ω^)「デブのご帰還じゃ!!道を開けろ!!」
(´・ω・`)「デブって歩くだけで邪魔だよな」
('A`)「止まってても邪魔」
( ^ω^)「常人の二倍の包容力あるんですぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜↑」
*(‘‘)*「ぱっぱ!!」
(*´^ω^`)「おお〜う!!おいでハインちゅあ〜〜〜〜ん!!パパがギュッとしてあげよう〜〜〜〜〜!!」
両手に抱えていたパンパンのボストンバッグを落として近づいてきたショボンに、ハインを手渡してやる
なんだかんだ言って一番懐かれてるんだから正直嫉妬してしまう。今度食事にウンコ入れよう
176
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:48:04 ID:Eo9hzRWw0
▼・ェ・▼「よいしょ」
('A`)「人間味よ」
トラックの最終チェックをしていたイトーイが、車両下から這い出てくる
姿が違うって?ちょうどダルメシアンの革で作ったコートが落ちてたもんだから、上手い事こう、な?
クルエラ・デ・ビルでもいたのかね?あんなガリガリのババア食っても不味そうだが
▼・ェ・▼「ガソリン満タン!!いつでも走れるよ!!」
( ∵)「ご苦労さん。さぁお嬢様方!!馬車に乗り込みな!!」
( ^ω^)「苦しゅうなくてよ」
( ∵)「お前の中のお嬢様感」
( ^ω^)「わっかんねーおそんなもん。謎のフリすんなお」
バッグを荷台に放り込み、簡単だが最終チェックをする
食料、水、オーディオにDVDの山。それと武器弾薬に、赤ちゃん用品
('A`)「荷物はこれで最後だな?」
着替えの入ったボストンバッグを置いて、確認を取る
(´・ω・`)「いいや、まだ残ってるぜ」
('A`)「あ?」
(´・ω・`)「一番大事なモンがな」
そう言って、ショボンは荷台に乗り込む。イトーイとビコーズもそれに続く
(´・ω・`)「さ、これで『全部』だ。運転よろしく頼むぜ。お姫様は特等席にどうぞ」
*(‘‘)*「うー!!」
('A`)「……」
177
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:48:49 ID:Eo9hzRWw0
なるほど
(´^ω^`)
( ^ω^)
( ∵)b
▼・ェ・▼
*(‘‘)*
『荷物』、か
.
178
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:50:31 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「行き先は?」
シートベルトを閉めながら、助手席のブーンが聞いてくる
そういや、次の目的地についてなんも話し合わなかったな。っつーことは、俺の裁量で決められるってワケだ
('A`)「さぁな?自由な旅だ。好き勝手やろうぜ」
( ^ω^)「おっお!!殺して、奪って、食らう!!」
('∀`)「ああ、お前が言った通り『今までと同じ』だ」
( ^ω^)「こいつぅ!!」
ゾンビに犬に、赤ん坊。ごった煮の『荷物』を積んで旅を続けよう
生存者にハンター、バンディット。それに無脳種まで敵に回っちまったが、上等だ
こちとら天下の有脳種。ゾンビのタフさに人間の知性
そして可愛い『お姫様』を抱えた、この世界に適応した最高のバケモノ――――
('∀`)「精々、楽しもうじゃねえか」
誰にも縛られず、誰にも裁かれない、自由でクソッタレな終末の世界を
.
179
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:50:59 ID:Eo9hzRWw0
(* ^ω^)「フフ……」
(*'A`)「フフッフ……」
(´・ω・`)「いやかっこつけてる所悪いんだけど早く出せよ」
( ∵)「すげー気持ち悪いわ」
▼・ェ・▼「キューン」
*(‘‘)*「へっ」
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「行くか……」
( ^ω^)「ヘコむわ……」
('A`)「腹は」
( ^ω^)「はいはいヘコまないヘコまない」
180
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:51:47 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「さーて、そんじゃ……」
エンジンを掛け、アクセルをゆっくりと踏み
('A`)( ^ω^)(´・ω・`)「「「出発!!」」」▼・ェ・▼(∵ )
*(*‘‘)*「ぱつー!!」
ウォークマンの再生ボタンを押した―――――
.
181
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:52:38 ID:Eo9hzRWw0
♪
https://www.youtube.com/watch?v=4Ba_qTPA4Ds
.
182
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:53:36 ID:Eo9hzRWw0
CAST
♪
♪
('A`)
(ヽ )ヽ ドクオ
〜ノ ヽ
♪
('A`≡'A`)
/( )ヾ
< > ♪
♪
ノ
('A`)
( (7 ♪
< ヽ ピッ
183
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:54:01 ID:Eo9hzRWw0
♪ ♪
( ´^ω^) ))
(( ( つ ヽ、 ♪ ショボン
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
♪
(( (^ω^` )
♪ / ⊂ ) )) ♪
((( ヽつ 〈
(_)^ヽ__) ♪
184
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:54:54 ID:Eo9hzRWw0
∩
r( ^ω^ )ノ _<ハァーーーーー、ぽっちゃりぽっちゃり!!
└‐、 レ´`ヽ
ヽ _ノ´`
( .(´ ♪
`ー
ブーン
♪
m( ^ω^ )m<ぽっちゃりよーーーーーーーーーーーい!!
└‐、 r┘
ドシ ┌┘ └┐♪ ドシ
!l 」_ 」  ̄ ̄ {__L !
185
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:56:58 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)<〜♪ ビコーズ
ζ
[ ̄]'E
.  ̄
186
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:57:23 ID:Eo9hzRWw0
以`゚益゚以 ワンワン!!
イトーイ増井
.r'"''、
iー 、 ,iー-、 .゙l l,,_
i゙ l /ヽ、 .!, .゙'" ヽ.
l ,l` l, ミ l , r .iヽ l
| ,l' ゙l, ゙l, ./ .l/ / .! .!
l' l _ ゙l ゙l │ i゙.l ,ト--″ l
'l l_,ノ゙ | l、 丿 .! .∨ .,..、 l゙
'l, ゙ l " l. : ,i┐゙‐'゛ ゙l
ヽ,,,,,,..ノ `''''" ヽ,,,,,,..-'―′
187
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:57:58 ID:Eo9hzRWw0
__
/ノへゝ
|\‘‘)*<あう〜♪
\_ ̄ ̄ヾ ハイン(ヘリカル沢近)
\__/
188
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:58:32 ID:Eo9hzRWw0
使用楽曲
♪Vanessa Redgrave - True Color
♪Tom Jones - If I Only Knew
♪NieR:Automata - 遊園地廃墟
♪Nickelback - Burn It To The Ground
ED theme
♪MKTO - Classic
.
189
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:59:18 ID:Eo9hzRWw0
原作
Cargo
https://www.youtube.com/watch?v=gryenlQKTbE
.
190
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:59:57 ID:Eo9hzRWw0
『CARGO!!』
THE END
191
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 14:01:12 ID:QFqRCOZ.0
最高でござった
とても面白かった
乙
192
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 14:05:15 ID:R7LBhfIc0
乙
優勝出来ると良いな(核爆)
193
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 14:05:28 ID:D6tCl7K20
どいつもこいつもイカレてるしイカしてたわ 最高だった乙
194
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 19:57:41 ID:RfqGJOE.0
読みおわったあとの爽やかな気持ちがたまらん
195
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 20:47:40 ID:6Vl2kjM60
最高
196
:
◆TflJu3mvXc
:2017/08/27(日) 01:27:28 ID:8zNg4C9k0
【業務連絡】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
【
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1500044449/257
】
【
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1500044449/295
】
197
:
名無しさん
:2017/08/27(日) 04:47:29 ID:CPtGrPfg0
タイトル見ただけで分かってたけどこの世界観最高すぎだろ
198
:
名無しさん
:2017/08/27(日) 09:01:36 ID:wSE4372g0
乙
終わった世界で一番ゾンビになりきろうとしてたドクオが一番人間らしいと言うのが何ともな
めっちゃ面白かったぜ
199
:
名無しさん
:2017/08/27(日) 16:31:30 ID:GNZgj/GY0
イカれて逝かれてるけどイカしてる作品でした!
200
:
名無しさん
:2017/08/28(月) 03:25:13 ID:xQ7Ns5aY0
>>170
ここ大好き
201
:
名無しさん
:2017/08/28(月) 13:13:41 ID:d/Gzvc1Q0
乙
最高だった いろいろ狂ってて面白かった
202
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 15:25:21 ID:3qCnyyYE0
清々しい余韻、内容も最高に熱くて濃密だった
203
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 15:53:28 ID:qmlWP.iM0
控え目に言って最高だった
これハリウッドで映画化してもらおうぜ
204
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 18:15:14 ID:EqtAhZ5.0
ゾンビ版フルハウスって感じで楽しく読めた、乙
205
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 18:33:12 ID:z4g8M1fg0
最高すぎる
もっと読まれてくれ
206
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 03:48:49 ID:janbl6520
おつ
ドクオの、ゾンビになったのに言い訳やら逃げやらで良くも悪くも人間らしいところが感情移入しやすかったし
ショボンやブーンも含めて三者三様で役割もハッキリしていた。
イトーイのメカニックなところが後の伏線になっているのや、ビコーズをあえて喋らないキャラにして……ってのも良かった。
ハインが大きくなっても皆一緒にいる幸せなイメージが想像できる。
とても面白かった。
207
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 12:48:02 ID:JCqZI5Eg0
乙
もっとだ
もっと読ませてくれえぇぇぇぇぇぇ!!!!
ほのぼのでいいからさぁぁぁぁぁ!!
208
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 13:20:17 ID:TzXwOPUg0
映画一本見たあとと同じ気持ちだわ
コメディで熱くて名作へのリスペクトもふんだんにあって最高
超面白かった! 乙
209
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 15:53:25 ID:Wz4zJ9pw0
面白かった
210
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 17:37:09 ID:7LHMboKM0
おつ
手放しに美しいとは言えない世界と人々だけど、とっても綺麗な物語だと思った
先の事を考えるとどうあがいても不安が付きまとうけど、それでも希望を願わずにいられない
211
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 22:21:46 ID:Gv6ctfjg0
断言すっけどこれが映画化されるなら俺は間違いなく万札出してでも見る。
212
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 22:22:53 ID:IqkXrETQ0
ロードムービー&ゾンビパニック人情コメディとか欲張り過ぎでしょ
よくまとまってた、面白かったです。乙!
213
:
名無しさん
:2017/08/31(木) 18:48:32 ID:cZh.fDKA0
乙
214
:
名無しさん
:2017/08/31(木) 19:55:21 ID:TgUu5wVA0
乙!!!!!
215
:
名無しさん
:2017/08/31(木) 21:53:24 ID:UX7/KDxI0
ゾンビなのに人間ドラマって感じだった…最高だった乙
216
:
名無しさん
:2017/09/02(土) 09:22:07 ID:KyBTUEik0
乙
なにこれしゅごい…お世辞抜きで映画化してほしい
ゾンビモノは敬遠しがちだけど読んでよかった
217
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 05:25:16 ID:QuGO7uLc0
http://imgur.com/a/o3A7Q
投票はまとめてになるのでとりあえず支援
最高でした…
218
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 17:59:41 ID:CAlQLeXI0
>>217
すげえ好き
あんたも最高
219
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 19:26:53 ID:Y3K9JO7Q0
乙 なんて最高な外道共なんだ
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2428.jpg
220
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 20:49:22 ID:rGE7k/k20
>>219
かっけえええええ
221
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:01:30 ID:dCRw/Qo60
>>220
ビコーズがビコーズだやべぇ
これで深夜アニメでやって欲しい
222
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:02:01 ID:dCRw/Qo60
おうふ安価ミス
>>219
な
223
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:22:43 ID:QPS1QON20
http://i.imgur.com/TpXU9JU.jpg
こっちにも貼った方がいいのかしらん
悔しいけど最高だったよ
224
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:52:08 ID:DcHmEb.c0
>>223
鉛筆なのにふいんきぱねぇ
ドクオめちゃくちゃ好き
225
:
名無しさん
:2017/09/04(月) 00:49:33 ID:vrG7ViWA0
>>189
いいねこれ
226
:
名無しさん
:2017/09/05(火) 20:56:59 ID:JTLZoduo0
数年前原作で泣かされた自分がそれ以上に号泣させられるとは思わんかったよ。
投票はまとめてのつもりなんで先に感謝をこめて貼らせていただく。
最高にイカす外道共をありがとう!
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2436.png
227
:
名無しさん
:2017/09/05(火) 22:54:47 ID:po4xwB920
ポップでいいね!
なのによく見るとエグいってところが作品にマッチしてていい感じ!
228
:
名無しさん
:2017/09/06(水) 01:22:26 ID:H9P4LG8U0
>>226
ええのうええのう
229
:
名無しさん
:2017/09/06(水) 22:31:06 ID:KZYCnuUM0
>>226
すごくすき
230
:
名無しさん
:2017/09/08(金) 23:36:02 ID:oIwu7QkI0
最高でした!
https://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1360867.jpg
作品絵を描かせていただきました
231
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 06:23:38 ID:EP0wiW3c0
最高やったよ
232
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 08:54:44 ID:6jsiz75g0
ロメロが亡くなった日、朝まで遊んでて家帰ってニュース観て愕然としたんだよなぁ。
途中で触れてくれてありがとう
233
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 14:23:44 ID:7vMN7O3U0
おめでとう!
234
:
◆HS4z8y6JHc
:2017/09/17(日) 20:59:14 ID:HV5vSS6I0
あとがき
結果発表から一日経ちましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか
僕はあの後テンション爆上がりの中ダーツ行ってパズドラ始めて一万円ぶち込みました。なんか風神ってのが強いらしいですね
お陰様で総合一位、MVP一位、作者四位を頂きました。まさか本当に優勝できるとは思わんやん普通
当初なら天華百剣元ネタにした男まみれ作品を書くつもりだったんですが、嘘予告に投下して間も無く更に本スレでも言及しちゃったんで
『アカン絶対バレる』と思い、前々から書きたかったゾンビ物に着手した次第です。天華百剣には既に六万円つぎ込んでます
このお話の元ネタは、本編の最後にお伝えした通り『Cargo』という、一風変わった短編ゾンビ映画です
ゾンビに噛まれた父親が、赤ちゃんを生存者に届けるためにゾンビの習性を利用して……ってストーリーですね。泣けるんだよなぁ
これがもしゾンビに拾われたらという、IFを独自設定を加えて書きました。ゾンビに知性を持たせたらアカンって荒木飛呂彦大先生も言ってたのに
元ネタはもう一つあります。ニコラス・ホルト主演のゾンビ映画『ウォーム・ボディーズ』です
ゾンビである『R』が生存者のヒロインに一目惚れをして、周辺のゾンビを巻き込んで徐々に変化していくというストーリー
赤ん坊に関わったことでクソウンコ野郎共だった有脳種が変化していく展開は、この映画の影響が大きいです
*(‘‘)*の名前をハインにしたのは、ラストで成長したハインを書こうと考えていたからなんですが
今のエンドの方が爽やかでいいなぁと思い結局本編で回収は出来ませんでした
続きはあるのかと言う意見もありましたが、この作品はこれ以上書くと間違いなく蛇足になるので無いです
最終的に宇宙とか行ってジェイソンと戦ったりなんてこともあり得るので無いです。鎮守府の続きすらまだ書けてないのに
きっちり映画一本分くらいのイメージで書いていたので、自分では綺麗にまとまったと思ってます
『映画化してくれ』という感想が多く目につき、作者としては大変嬉しい限りなのですが
そもそも原作のCargoがマーティン・フリーマン主演で映画化するんですよね
http://www.cinema-frontline.com/2016/09/movie-news-cargo.html
←これ
なので公開したらこれ観に行ってください。そして今絶賛上映中の韓国産ゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』も観に行け
https://www.youtube.com/watch?v=k3829dsZyzY
←予告編
僕の中のゾンビ映画ランキングを塗り替えた作品です。クソ泣けます
いつも通りクソ長いあとがきですが、主催、まとめを始め作品を読んでくれた方やMVP及び通常投票をくださった方
絵投票をしてくださった方々に感謝を申し上げます。絵は全部保存しました。嬉しみ半端なかったです
仕事が忙しかったり艦これSS書いてたりゲームしてたりで何かと頻繁な更新は出来ませんが
今後とも飽きるまで楽しんでくれたら幸いです。ありがとうございました
最後にひとつだけ言わせてください
235
:
◆HS4z8y6JHc
:2017/09/17(日) 21:00:18 ID:HV5vSS6I0
罰ゲームのクソ映画五本立てやりませーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!
\ 丶 i. | .l ヽ ../ /
\ ヽ i. .| .r ‐、 l ヽ ./ /
\ ヽ i | .| ○ |,.r'、__〉 ./ / お疲れさまでした
\ ,.rー⌒ト - イ、 /
人、__>´ `ー 、, ヽ' -‐
ー l r', |ヽ l、B l H|
__ l / │ ヽ―'^7' --
二 /,べ 〉==/⌒、 .= 二
 ̄ // / ノ  ̄
-‐ | ( ̄~7 ‐-
ヽ_l /ヽ
/ ソ ./ ヽ
/ ._,.へ_r・' ノ⌒、 ) ヽ \
/ 'ーー-l /ーー'´ .丶 \
/ / / ..し'.| i, 丶 \
/ / / | i, 丶 \
236
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 21:25:35 ID:Zn1LXZ8w0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ = 完 =
237
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 22:51:39 ID:o3I6UVik0
クソっ、チクショウめ!
238
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 23:18:39 ID:mW4lCqcg0
乙乙w優勝おめでとう
239
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 23:47:09 ID:WbTQCkUA0
新感染良かったよねぇ。 父親の成長譚として最高。
日本でもアレくらい面白いゾンビ映画作られないかなぁ。。。
乙!
240
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/04(火) 23:53:28 ID:rNWdNHQU0
( A )
産まれたての赤ん坊は、真っ先に母の乳を求める
『食欲』。育つ為、生きる為、悦びの為に、誰一人の例外なく抗えない欲求
( A ) グチャ……ニチャ……
後に、終生の友となり家族となる『あいつら』も同じく
( A ) ボキ……ゴク……
始まりは、気が狂うほどの空腹―――『食欲』から始まったらしい
( A ) ジュル……ブチッ……
そう言った意味では、同じなのかもしれない
( A )「オ……」
『人』として産まれるのと、『ゾンビ』として産まれ変わるのは
241
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/04(火) 23:54:22 ID:rNWdNHQU0
('A )「オ……」
('A`)そ「オイやべえなんだ血まみれじゃねえかビビるわ」
('A`)「美味しい」ベロンチョ
.
242
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/04(火) 23:55:17 ID:rNWdNHQU0
Chapter.1 Lucky man
.
243
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:00:59 ID:flMwVd.20
ウォーキング・デッド。誰かが奴らをそう呼んだ。全く、上手い事言いやがる
世界の死は、『歩くような速さ』で進んでいるのだから
('A`)「全くなんだってんだ……」
住み慣れた汚ぇアパートの部屋はいつも以上に取っ散らかってる
ガラスバキ割れーのソファーぶっ壊れーの、知らんオッサンが腸グチャグチャになっておっ死んでやがりーので
('A`)「あーあー……」
俺ん家でパージでも開催されたのかよって位の荒れっぷりだ。いま正に世界中がエブリディパージフェスティバルみてーなもんなんだが
しかし解せない。生まれて二十数年が経つが、肥満の国らしからぬガリガリボディでナード界の最底辺に位置する俺が
割と恰幅の良いオッサンと『殺し合って』、『勝ち』、尚且つ『食う』まで達成するとは。人類史に刻むべき快挙なんじゃないだろうか
('A`)「ハァ……」
そもそも、殺されるまでも無く俺は死ぬつもりだった
エブリディパージフェスティバルが幸いして、大量のアルコールと睡眠薬が手に入ったのでサクッと逝こうとしたのに
クソ、役に立たねえなダニエル。この百数十年、散々酒乱の人生を台無しにしといて俺一人も殺せねえのか琥珀色の小便が
痛い思いしてでもこいつの角で頭ぶつけて死ねば良かったかもしれねえ。腹いせに空き瓶を軽く蹴っ飛ばすと、何かしらんが粉砕した
('A`)「ええ……?」
状況に対する困惑は当然ある。しかし取り乱す程でもなく、冷静を保ち続けられる奇妙な落ち着きもあった
この返り血で染まった俺の身体の事もあるし、さっきまで食いちぎってたオッサンの汚ぇ腕の事もある
脂肪たっぷりの上腕部には『Cindy』の入れ墨。うわわわわ、若い頃にテンション上がって恋人の名前掘った痛い男の腕食っちまったよ
('A`)「あーもー……」
お国柄を大げさに表現するのなら、『ああ、神よ!!』とでも喚き散らしてたのだろうが、代わりに口から出てきたのは下品なゲップの音だった
鉄の臭いが口内に充満する。奥歯に何かが引っかかってる感触があり、指で挟んで取ってみると分厚い人の皮膚だった
244
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:02:53 ID:flMwVd.20
('A`)「あー……」
パニックを起こして然るべきなのだろうが、依然として気分は落ち着いていた
第一に『満腹感』があったからだ。金さえあれば幾らでも飲み食いできていた時代とは違い、今は日々を食いつなぐのに精一杯
満たされているとは則ち『幸福』とも言い換えられる。久しく感じていなかった多幸感が、異常による恐怖を抑えているのだろう
('A`)「フゥー……」
そして落ち着きとは『余裕』だ。ここに到るまでの行程を正確に思い出すには最適の状態と言える
そもそも、俺は何故死のうと思ったのか。先ずはそこから考えよう
('A`)「えーと……」
確か、ゾンビから逃げてきたであろう女を色っけ出して助けようとしたのがそもそもの始まりだ
ブロンドのスタイルが良い美女が一人で行動してる時点で違和感を感じるべきだったが、長い孤独期間と溜まった性欲で感覚が麻痺してたのだろう
ヒーローさながらに救出し、あわよくば……などと飛び出したは良いが、あれよあれよと言う間に連中のお仲間に取っ捕まって手酷く痛めつけられた
まぁ、奴らが全部悪いたぁ言わねえよ。こんな世の中だ。誰だって人を欺いてでも生き延びたいに決まってる
だが因果応報という言葉もある。俺が持ってた物資を粗方奪い、さぁ後始末だとばかりに拳銃を突きつけられた瞬間、これまたタイミングよく『捕食者』が現れた
手垢の付いたB級映画かよってくらいの実に鮮やかな襲撃により、その場は大混乱。俺もなんとか『人』の手からは逃げおおせたのだが
245
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:07:27 ID:flMwVd.20
('A`)「うん……」
ゾンビにとっちゃ俺も餌の一つに過ぎず、右手にガブリと噛み付かれてしまった
まぁ、この場に原型とどめてボーッと突っ立ってる時点でそいつからも逃げられたのは察しが着くだろう
だが、古来から伝わる伝統的パターンを鑑みれば、噛まれた段階で『詰み』だと解くことも出来る
だから俺はせめて苦しまずに逝こうと睡眠薬を酒で流し込んで死のうとした
よくよく考えれば頭をぶち抜かないと蘇るじゃねえか。この期に及んでヘタレが先行していたらしい
で、意識が遠のいて目が覚めたらこのザマだ
薬と酒でオツムがイっちまったからと言って、腹一杯になるまでオッサンの肉を食らうか普通?
('A`)「そうだ、傷は……」
せめてもの抵抗として止血だけはしていた右手を確認する。痛みはなかった
暴れた時に緩くなったのであろう布を取っ払うと、そこには幾らか小さくなった噛み傷が残っていた
('A`)「ええ……?」
『治りかけている』。皮膚細胞が数多くの治癒行程を取っ払って直接結びついたかのような迅速さで
そしてもう一つ異常があった。肌に血の気が全くない。それは右手だけに留まらず、全身が『奴ら』のような有様だった
246
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:09:30 ID:flMwVd.20
('A`)「うむむ」
これは無事、世界人口の大半を占める連中の仲間入りを果たしたと言うことなのだろうか
いやいや、それにしても異常が多すぎる。傷のこともそうだし、そもそも俺は『思考』が出来ているではないか
『お仲間』も総じてそうなのか?まさか。頭を使って行動しているようにはとても見えない
それに、奴らの生傷は決して治らないままだ。四肢が捥がれても、肉を求めてジタバタともがき続ける悲しい存在の筈だ
('A`)「……」
よーく傷を観察してみると、ゆっくりとだが確実に塞がっている。何が作用したらこうなる?
左手の親指でなぞってみると、血の他の物が付着した。粘り気のあるそれは、血を舐めとった時についたのだろう
('A`)「……」
もしやと思い、その粘液を傷口に垂らしてみる。すると、活力を取り戻したかのように傷口の治癒は進み
ものの数秒の内に、目を凝らさないとわからないくらいに完治してしまった
('A`)「なるほどね」
『唾液』。これが謎の答えらしい
247
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:13:32 ID:flMwVd.20
('A`)「さて……どうしたもんかね」
以上の状況を整理すると、俺は立派にゾンビとして転生した。転生?胸に手を当てても心臓は動いてないけど、転生?まぁいいや
人を食う事に関してだけ言えば、胸を張って主張しても問題ないだろう。しかしオツムと唾液に関しては?
俺は別に奴らの研究者でもなんでもない。検証など一度も行ったことはないし、その余裕もなかった
つまり、考えるだけ無駄なのでは?解決策など有りはしないだろう。死人は絶対に生き返らないのだから
('A`)「……」
思考を持つゾンビ。なんかの映画で観たな。そいつらは総じて『生まれ変わって清々しい』と宣っていた
正直クソつまんねー映画だったが、まさか自分がそうなるとは。今となってはそいつらの気持ちもわからなくはない
物の試しに、空き瓶を拾ってみる。皹が入っていないことを確認し、強く握りしめた
('A`)そ「うおっ!?」
薄い氷でも割ったかのような手ごたえが広がり、瓶底が俺の足先に落ちた。痛くはないが反射的に右足を引く
なんてこった。生まれてこの方『パワー』なんてもんに縁がなかった俺が、たちまちスーパーマンじゃねえか
(;'A`)「ハハ……ハハハ……いやどうすんだよこれ……」
生前……生前?まぁ生前でいいや。生前もコミュニティとやらから逸脱していた人生だったが、まさか人でもゾンビでもない存在になるとは
さぁ、いよいよ孤独が加速してきた。どうする?これまで通り『人』として生きるか?それとも、『ゾンビ』らしく人を襲って食つなぐか?
(;'A`)「……へっ」
何をバカな。どっちにしろ同じだ。俺は一つの選択肢を選び、しくじった。『死ねなかった』
イエス様が直々に天国への階段から蹴り落とし、地獄の悪魔が慰めに贈り物をしてくれた
人を食うからなんだ?絶望したか?いいや、『NO』だ。むしろ胸の奥底からマグマのように高揚感が溢れ出してくる
(*'A`)「へへ……ははははは!!」
やれるとこまでやろう。行けるとこまで行こう
終わった世界で拾った命、コソコソと引きこもるのはやめだ
248
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:15:40 ID:flMwVd.20
('A`)「っしゃ!!」
頬を叩いて気合を入れ、汚れた服をその場に脱ぎ捨てクローゼットを開く
ボストンバッグに衣類と万一に備え隠していた水と食料、一応、余った『ダニエル』も放り込んで肩にしょい込む
おっと、ポスト・アポカリプスを生き抜くには先立つものも必要だな。季節外れのサンタクロースは、『飯』と一緒にプレゼントも届けてくれた
('A`)「こいつは貰っていくぜ」
ガバメントと替えのマガジンが差し込まれたホルスターを抜き取り、腰に回し着けた
狩猟用の二連式ショットガンを拾い、メイトリックス大佐さながらに担いで見せる
('A`)「様になってるか?ん?」
右頬が大きく裂け、虚ろな瞳を向けるオッサンは一言
「ヴァァ」
と返事をした。うむ、好評でなによりだ
('A`)「部屋は譲るよ。じゃあなMr.ミートパイ。シンディによろしく伝えといてくれ」
部屋の鍵を投げ渡し、颯爽と後にしようとして忘れ物に気が付いた
('A`)「おっと……これこれ」
人類が生み出した中で最も偉大な発明品。『ウォークマン』だ
(*'A`)「行ってきます!!」
住み慣れた我が家に永遠の別れを告げ、二段飛ばしで階段を駆け下りた
息は全く上がらない。脚に乳酸が溜まっていく気配もない。ロビーの扉を開け放った時には、世界から祝福されたかのような爽快感に満たされた
そして、アパートの前に駐車されている車を見て、思わず天に向かって投げキッスをしてしまった
249
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:17:40 ID:flMwVd.20
(*'A`)「ああ、ミスターミスターミスター!!アンタって野郎は最高にイケてやがる!!」
足まで用意してくれてるたぁ気前がいい。運転席に乗り込んでキーを確認すると、なんと挿しっぱなしであった
なんてこった。生まれ変わった途端、幸運の女神様から熱烈なアプローチを受けっぱなしだ
(*'A`)「オーケーオーケー……落ち着け……」
キーを回すと車が嘶きを上げた。実に甘美な響きだ。惚れ惚れする
シートベルトを締め、バックミラーを調整する。不意に映った俺の顔面は、血色の悪さとニヤケ面が加わり更に酷かった
構うものか。誰が俺をあざ笑えると言うんだ?今や俺以外の連中は死人か『パン』だ。笑えるものなら笑ってみろ
(*'A`)「さぁ、行くぜ行くぜ行くぜええええええええええええええええッ!!!!」
クラッチを踏み、ギアをローにいれ、アクセルを思いっきり踏み込む。映画さながらの急発進と共に
ウォークマンの再生ボタンを押した―――――
250
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:19:14 ID:flMwVd.20
CARGO RE:Member
.
251
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:23:42 ID:flMwVd.20
今日はここまでだし続きはいつでるかわからん
当初はおわはじ祭用に書いてたものなんですが、めんどくなって途中で投げた過去編です
百選ありがとうってことでプロローグだけ投下しました。本当にありがとうございます
じゃあ艦娘の続き書く作業に戻ります
252
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 02:38:08 ID:wQCTPmnQ0
まじかこれは期待
253
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 15:21:15 ID:l.BwGISI0
続き来るなんて予想できねぇよ乙
前日譚だけじゃなく後日譚も見たい(強欲)
254
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 17:32:48 ID:yj7y30u60
うわーまじか嬉しいぞおつおつ
楽しみにしてるよ
255
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 18:01:14 ID:WtpeOdbg0
おつおつ
イトーイと喋らん奴と合流するところが楽しみだ
256
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 01:11:03 ID:sbMmLd9s0
おっつおっつ
こっちもあっちも楽しみやで
257
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 14:11:31 ID:BJqNHRrU0
うおお、乙
Mr.ミートパイって言い方めちゃくちゃ洋画で好き
258
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 16:36:24 ID:06ooiGyc0
楽しみすぎる
259
:
名無しさん
:2021/02/10(水) 12:22:25 ID:KlXba6Ag0
ブーン系で一番好きな作品
続き待ってるよー!!!!
260
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:09:57 ID:sUPUImyY0
不測の事態ってのは、大小の規模に関わらず対処しにくいもんだが、大きければ大きいほど迅速な処置が求められる
しかし案の定というか想定の範疇というか。この『日出る国』は初動からミスの連発だった
検討に検討を重ねて対応が追いつかなくなる及び腰の与党に、喚くだけで足を引っ張る役立たずの野党
頭にアルミホイル巻きたがりの一部の国民は、ここぞとばかりに声高々に陰謀論を唱え、考える事をやめたアホ共が続々と洗脳され、暴徒と化した
治安は日に日に悪化の一途を辿り、都心から次々と蝕まれるように機能を停止していった
たったの三年と少しで、この国はゾンビ蔓延るアポカリプスに早替わりってワケだ
お国が全部悪いとは言わねえよ。人が人を喰うような惨状、本来なら銀幕の中だけの出来事だ
例えバケモンになったとは言え、家族でも友人でもない他人だろうが頭なんざぶち抜きたくもねえだろうし、まともな連中には出来もしねえだろう
『感染』が、『愛』や『情』や『慈悲』を上回った結果が、ご覧の有様ってだけだ。最も、その三つが世界を劇的に改善した前例も、俺が知る限りでは無いんじゃなかろうか
その後はまぁ、お察し頂けるだろう。生き残った人々は、跋扈する生きる屍から身を隠しつつ、滅びた街で慎ましく暮らしている
崩壊前と変わらない点と言やぁ、生きる為の労働は相変わらず着いて回るのと
人口が激減しても尚……いや、『激減したからこそ』、他人を良いようにダシに使う連中は後を絶たない事だ
261
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:12:12 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「さて……」
生憎、俺という人間はどうにも賢しく立ち回れるお利巧さんじゃなかった。幸いにも腕っぷしだけには恵まれていたので、廃墟漁りやコミュニティからの依頼なんかでなんとか食い扶持を稼いでいる
Win-Winなんてご高尚なビジネス用語もあるが、人をこき使う側の要望はいつだって『無償の奉仕』だ。仕事に難癖付けて報酬をケチったり渡さなかったりなど日常茶飯事だった
なら、報酬を前払いで貰えばいいんじゃないかって?そんな気前の良い奴、崩壊前にだっていねえよ。だけど―――――
(;´メ)ω(メ`)「勘弁してクレメンス……勘弁してクレメンス……」
(;メ)ω(メ)「前が見えねえ」
(;メ)A(メ)「お顔パンパンマン」
クソ野郎に報復しても罪に問われないって点じゃ、少しは生きやすくなったんじゃねえかな
262
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:13:24 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「俺ぁ、ご要望の円盤をキッチリ持ってきてやった。JK、痴漢、ロリ、OL、寝取られ、人妻、熟女、キモオタが大好きなゲイポルノまで。わざわざゾンビの巣窟になってる買取MAXに潜ってな。ついでに『シリコンの穴』まで用意してやった。俺なりのサービスさ」
(´・_・`)「その見返りが、ツナ缶三つ?驚いたね。チンポ野郎が三人揃っても、勘定一つロクに出来ねえんだからな」
『お宝』が詰まった段ボールを蹴とばすと、中から赤裸々な女性が写されたパッケージが散乱した
小汚いずっこけ三人組は、情けない悲鳴を上げてそれらをかき集める。思わず笑いがこみ上げるほど滑稽な姿だった
(´・_・`)「どう落とし前付ける気だ?ええ?」
(;´メ)ω(メ`)「まま、待ってくれ先生!!報酬はこれだけじゃあない!!ちゃんと他にも用意してある!!」
(´・_・`)「イカ臭ぇ手垢のついた中古DVDならいらねえよ」
こいつらはご察しの通りアダルトビデオの販売で生計を立てている。サービス業の衰退により娯楽が限られる昨今、こういった映像媒体の需要は高い
『命を懸けるまでもない物』だからこそ、安全に手に入るなら多少値が張っても欲しくなる。消費者心理をついた商才には舌を巻くが、俺のような流れの『仕入れ担当』を甘く見たのが運の尽きだ
(;´メ)ω(メ`)「へへへ……この世界で最も価値のある報酬は何だと思う先生?」
(´・_・`)「命か?」
マチェットを床に突き立てると、商人共の顔から媚びるような薄ら笑いは掻き消えた
263
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:14:13 ID:sUPUImyY0
(;´メ)ω(メ`)「安全!!安全だ!!BBZに載ってたんだ!!ここから少し行った先に、物好きな女が一人で立てこもってるバンカーがある!!」
『Bulletin Board Zombi』。通称『BBZ』。徘徊する習性を持つゾンビに、情報を書いた紙やらホワイトボードやらを首からぶら下げ、不特定多数の生存者に向けて発信するイカれた『歩く掲示板』だ
主に生存者コミュニティの場所や、使用可能なセーフハウス、救助要請などが記されているが、大半が悪戯か罠で当てにならない
(´・_・`)「何かと思えば……」
(;´メ)ω(メ`)そ「待ってくれこれはガチだ!!俺らも何回か部下を遣わして取引もした!!奴さん、ガッポリ溜め込んでいるみたいで優雅な暮らしを送ってる!!」
(´・_・`)「ほぉー?その女をくれてやるから見逃せってか?見下げ果てたクズ共だな。やっぱ一人残らず殺すか?」
(;メ)ω(メ)「はい!!こいつクズなんですお!!ぶっ殺してくださいお!!」
(;メ)A(メ)「本当にクズなんです!!支払いケチろうって言ったのもこいつなんです!!一人なら余裕でぶっ殺せるだろって!!」
(;´メ)ω(メ`)そ「ハァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!??????俺は冗談のつもりだったのに部下を焚きつけたのはお前らじゃねえかブサイク共が!!!!!!!責任転嫁やめてくれますーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!?????」
(´・_・`)「よし、わかった、いいから……ああ、要点だけ話せ。すぐに」
ヤバい本当に殺したくなってきた
264
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:15:49 ID:sUPUImyY0
(;´メ)ω(メ`)「その女が人手を募集してんだ!!それもとびきり腕の立つ用心棒をな!!俺の手下も何人か立候補したが、全員門前払いだった!!だ、だがアンタなら申し分ない!!しょ、紹介状も書いてやるよ!!な!?」
(´・_・`)「見返りは?」
(;´メ)ω(メ`)「タンマリ非常食を積んだ、水洗トイレとユニットバス完備かつ浄水機能付きのバンカーで、ブロンド美女との同棲生活だ!!これ以上ない暮らしが出来るんだぜ!?」
安全な水、腐ってない飯、清潔なトイレに熱いシャワー。かつて当たり前のように享受していた『普通』は、今じゃ手の届かない贅沢品となった
胡散臭いが、魅力的だ。騙されたと思って行ってみるのもアリかもしれない
(;´メ)ω(メ`)「へ、へへ!!千載一遇のチャンスだぜ先生!!AV数十本の調達なんて安いもんじゃねえか!?なぁ!!」
(´・_・`)「……」
何を早合点してるのか知らんが、『これで手打ち』とは一言も言っていない。奴らの『商品』が詰まったリュックを二つほどひっくり返し、中を空にして投げ渡した
(;´メ)ω(メ`)「へ?」
(´・_・`)「そいつがパンッパンになるまで、水と食料を詰めろ。バンカーまでの地図と紹介状も忘れんなよ」
(;´メ)ω(メ`)「あの、いや……チャンスを……」
(´・_・`)「裏切りの代償にしちゃ、安いもんじゃねえか?それとも、『もっと高い支払い』をご所望か?」
マチェットを引き抜くと、三匹のクズは弾け飛ぶように立ち上がって物資倉庫へと一目散に駆けていった
後に残されたのは俺と、ゾンビみたくうめき声をあげる、ぶちのめした十数人ほどの手下共だけだ
(´・_・`)「ボスは選んだ方がいいぞ兄弟」
ツナ缶を開け、遅い昼食を摂り始めた
265
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:17:13 ID:sUPUImyY0
―――――
―――
―
(´・_・`)「こんな住宅地にねぇ……」
愛車の軽トラを走らせること二時間。寂れた地方の住宅地に、件のバンカーはドンと聳え立っていた
高さ二メートルほどの塀と有刺鉄線で囲われた、コンクリート作りの豆腐建造物。正面入口も重厚な鉄のゲートで閉ざされており、蟻の子一匹も侵入させないという気概すら感じられる
(´・_・`)「それに……」
塀を登って侵入しようとした不届者も過去にはいたのだろう。周りには衣服が焦げた死体が幾つか転がっていた
有刺鉄線には高電圧の電流まで流しているらしい。この家の持ち主はよっぽどのプロレスファンとみたね
門にはインターホンと、あからさまな監視カメラが設置されている。排他的な佇まいに少々気が引けるが、意を決してチャイムを鳴らした
(´・_・`)「ごめんくださーい」
返事の代わりに、軋んだ音を鳴らしてゲートが開く。『来るもの拒まず』のスタンスか
背後に迫っていたエプロン姿のゾンビを蹴飛ばして、エンジンかけっぱの愛車に乗り込みお邪魔させてもらった
266
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:18:15 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「立派なお宅だこと」
車三台分の広々とした駐車スペースに乗り入れると、ゲートはすぐさま閉じられた
車から降りると、こうもあっさり迎え入れられた理由が一目瞭然だった
庭には一切の飾り気がなく、ただコンクリートの打ちっぱなしが広がっているだけ
同じ材質の建物には、本来正面にあるはずの『ドア』が見当たらない。その代わりかは知らんが、壁際に宅配ボックスらしき箱が設置されていた
窓は幾つかあるが、大の大人が通れるようなサイズはなく、室内の様子も窺えない
(´・_・`)「えーと……」
【どちら様かしら?】
(´・_・`)そ「うおっ」
宅配ボックスの辺りにスピーカーでも取り付けているのか、噂通り若い女性の声が聞こえてくる
この腐敗と自由と暴力の真っ只中に、『女』であることを隠さないとは随分と不用心だが、セキュリティが万全であるという証でもあるのだろう
(´・_・`)「あー、用心棒を探してると聞いてな。ビデオ屋の紹介状もある」
【紹介状?いらないわ】
(´・_・`)「ホンマ役に立たんな……」
期待はしていなかったが、クズなどこんなもんか
267
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:19:15 ID:sUPUImyY0
【私が求めているのは、信頼に足る力を示す事だけ。そこに他人の評価なんて一切介入する余地はないわ】
(´・_・`)「お手柔らかに頼むぜ面接官様。それで?ここでアンタの気が済むまでスクワットでもしようか?」
【結構よ。もうすぐ着くから】
(´・_・`)「はいy」
頭上に影が差し、咄嗟に車から離れた。程なくして運転席のルーフは、上空から降ってきた『ヒトガタ』に踏み潰される
(;´・_・`)「クソッ!!バッタか!!」
変異体、『バッタ』。異常発達した脚力で飛び跳ねる厄介ゾンビだ
垂直に6メートル跳躍出来るこいつなら、高々2メートル程度の塀など軽く飛び越えられる。嫌な奴に目をつけられちまったな
(;´・_・`)「おい嬢ちゃん!!俺が良いっつーまで出てくるんじゃねえぞ!!」
返事は無い。暖かい声援に涙を禁じ得ないよクソッタレ
268
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:20:01 ID:sUPUImyY0
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
血脂で汚れたスーツに、薄ら寂しい頭頂部。割れたメガネの中年リーマン風バッタは、社訓斉唱でもするかのように汚い声を張り上げる
(#´・_・`)「フーッ……」
「アアッ!!!!」
ぺちゃんこになった軽トラを蹴飛ばして、バッタは大口開けて突っ込んでくる
奴お得意の黄金コンボだ。『怯ませて狩る』。これで何人もの『ご馳走』にありついたのだろう
(#´・_・`)「シッ!!」
右袖と襟を取り、一本背負いで頭からコンクリートに叩きつける
受け身すら取れないザコのバッタは、投げられるがままだ。頭蓋と首の骨が折れる確かな手応えがあった
「ア……」
ここまでやれば暫くは動けない。腰の鞘からマチェットを抜いて、二、三度ほど頭を『小突いて』やれば、処置は完了だ
(#´・_・`)「……」
そのまま暫く後続を待ち構えていたが、今のところ他の気配は感じられない
そもそも変異種自体がレア個体だ。群れをなされてたまるか
(;´・_・`)「フーッ……」
目立った音沙汰は無い。野良ゾンビが騒ぐ様子も無さそうだし、警戒は解いても良いだろう
しかし、殺風景とはいえお庭を汚してしまった。車もお釈迦になったし、幸先が悪い。ごめんねってしたら許してくれるだろうか
269
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:21:25 ID:sUPUImyY0
【入って】
(;´・_・`)そ「うおお!?」
ダンマリだった彼女が、俺の苦慮を容赦なく切り裂く。口から心臓飛び出るかと思った。実はもう出てんじゃない?これ元の場所に戻せる?
建物へと向き直ると、ボックスのすぐ側の壁がポッカリと抜けて中へ入れるようになっていた
恐らく、自動ドアをカモフラージュしていたのだろう。盗人が塀を越えたところで、入口がわからなければ手の付けようがない。抜け目のない設計だ
(;´・_・`)「テストは良いのか?」
【終わったわ。次は面接】
(;´・_・`)「終わっ…………ああ、クソ……」
少々の時間を要して、ようやく事態を理解した。このバッタは偶然現れたのではない。『呼び出された』のだ。俺の力量を測るために
ここを紹介したビデオ屋は、当然知っていた筈だ。送り込んだ手下が『門前払いされた』ってこたぁ、後は言わずもがな
つまり、俺は二度もあいつにハメられたってわけだ。やっぱり皆殺しにしとけば良かった
【早くして】
(´・_・`)「労いの一つくらい掛けたらどうだ?人でなしさんよ」
【言い得て妙ね。気に食わなければ出て行っても構わないけれど?】
嫌な女だ。車もお釈迦になったってのに出ていけるワケもない
マチェットを鞘に納め、豆腐ハウスに踏み入れようとして、ふと足を止めてしまう
【どうしたの?】
(´・_・`)「いや……」
武装解除を指示してこない。余程の能天気か、それとも『家の中』までセキュリティたっぷりか
恐らく後者だろう。クズは俺に隠し事をしていたが、『安全である』事に偽りはなさそうだ
それと、奴は女を『ブロンド美女』と言っていたな。そんじゃ、人でなしの女がどんなツラしているのか、拝みに行こうかね
270
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:22:10 ID:sUPUImyY0
―――――
―――
―
ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい」
白衣を着た家主は、アイランドキッチンから盆を手に俺を出迎えてくれた
(´・_・`)「てっきり、俺はレーザーでサイコロステーキにされる廊下とか期待してたが」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさいね。予算が無くて」
殺風景な外観に反して、中はごく普通の内装の部屋だ。リビングに辿り着くまで罠らしい罠も無かった
空気の埃っぽさもなく、空調の効いた室内では、俺の小汚さが余計に際立つ。服くらい着替えれば良かった
ξ゚⊿゚)ξ「掛けて頂戴。お茶を淹れるわ」
噂に違わぬ金髪蒼眼。やや化粧は濃いものの、『美女』と呼ばれるだけはある気量持ちだが
汚い野郎が刃物ぶら下げて踏み込んできたってのに、眉一つ動かしやしない可愛げの無い女だった
(´・_・`)「お構いなく」
ξ゚⊿゚)ξ「そう身構えないで。別に取って食いやしないわよ」
(´・_・`)「アンタはどうだか知らんが、今し方『お友達』に喰われかけた所でね」
ダイニングチェアに腰掛けると、テーブルにティーカップとお茶請けのクッキーが並べられる
ポットから注がれる紅茶の香りに、一瞬だけ先程の理不尽を忘れてしまった
そもそも、彼女はゾンビけしかけるようなサイコ女だ。お茶に一服盛ってムカデ人間手術してくるに違いない。あんなもん観なきゃよかった
271
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:23:13 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「あんな真似しといて、よく落ち着いていられるな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。あなた、賢い人だもの。真っ先に逆上して襲ってこないのがその証明」
(´・_・`)「……」
どうやら、面接は既に始まっていたらしい。武装したまま踏み込ませたのもテストの内ってわけか
ξ゚⊿゚)ξ「賢さとは、何もお勉強の為だけにあるものじゃない。一歩立ち止まって観察し、目一杯思考を巡らせて、自分の中で最良の答えを見つけて行動する……」
ξ゚⊿゚)ξ「思慮深さもまた、賢者たる者の条件と思わない?」
(´・_・`)「知らねえよ」
オラ段々腹立ってきたぞ
272
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:24:13 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「俺は仕事をしに来た。それ以上でもそれ以下でもない。アンタと茶をしばきに来たわけでも、車をスクラップにしにきたわけでもねえんだ」
(´・_・`)「サッサと本題に入れ。無いなら俺はこれを飲んだら出て行く」
女は自分の紅茶を淹れ終えると、向かいの椅子に腰掛ける。防音がしっかりしているからか、壁に架けられた時計の針の音がクッキリと聴こえてくる
急かしはしたが、彼女は此方を品定めするかのようにジッと見据えるばかりで口を開こうとしない。これ以上は時間の無駄だ。アチアチのお茶をとっとと頑張って覚悟決めてカッコつけて一気に飲み干そうとカップを持ち上げ
(´・_・`)「……?」
何かこう、名状しがたい気色の悪さがふと湧いて出た。本来あるべきものがあるべき場所に無いような違和感
他人の家だとか初対面を相手しているとか、そういうレベルの話ではない。もっと人として大前提な部分で、何かが欠けている
(;´・_・`)そ「ッ!!!!????」
その正体に気づき、思わずカップを落としそうになる。時計の針の音が聞こえそうなほど静かな部屋の中で、本来聞こえねばならない音が欠けていた。彼女の『呼吸音』だ
ダースベイダーやウォーズマンほど大袈裟で無くとも、会話の区切りや、ふとした瞬間に『息遣い』は表れるものだ。どれだけ取り繕おうとも、『生き物は無意識のうちに呼吸をする』。特殊な訓練でも受けない限り、完璧なコントロールなど出来ない
目の前の女は微動だにしない。自分のカップを両手で包み、身じろぎどころか呼吸による胸郭の運動も見られない。息を止め、人形かロボットのように此方をジッと見据えてくる
何にせよ、気付いた以上『生き物』として見ることは出来なくなった。精巧なマネキンを相手にしているかのような悍ましさが背筋を伝う
273
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:24:59 ID:sUPUImyY0
ξ゚⊿゚)ξ「どうかした?」
(;´・_・`)「息してなくない?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。それが何か?」
あっけらかんと認められる。『さも当然』のような口振りがタチの悪い冗談に思えてきて、喉から乾いた笑いが漏れた
(;´・_・`)「あはははーはぁ……なんだ、その……息苦しくない?」
ξ゚⊿゚)ξ「お気遣いどうも。人前じゃ『する』ように心がけているわ。でも今は面接中だからね」
(;´・_・`)「関係あるのか?その……息を止めることに?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。観察眼と……バケモノを前にしてどのような反応をするか確かめる為に」
仕事がどうのこうの言ってる場合じゃないのかもしれない。自称『バケモノ』の女がマトモな例を見たことがないからだ。中学生くらいのガキならキショいだけで済むが、成人済みだと目も当てられない
カップを置いて、お暇しようと立ち上がる。すると女は、握手を求めるように手を差し出した
(;´・_・`)「あー……もうとっくにその段階は過ぎてるんじゃねえか?」
ξ゚⊿゚)ξ「これで最後よ。気に食わなければ出て行ってくれて結構」
274
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:25:50 ID:sUPUImyY0
女の眼光からは、『握手をしなければ、絶対に出ていかせない』という強い意志を感じる。随分とお気に召されたらしい
少し躊躇ったが、たった数秒くれてやれば済む話だ。サッサと終わらせて、悪い夢でも見たことにして忘れよう
(;´・_・`)「妙な真似はするなよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「何のためにオモチャを持ち込ませたと思っているのかしら?」
女はもう片方の手を、テーブルの上に仰向けにして乗せた。『何も握っていない』というポーズだ
相手は丸腰の女。片や俺は武装した男。本来なら警戒すべきはあちら側だ。彼女なりの意思表示か
(´・_・`)「エロビデオ屋の連中よりかは、マシな部類かもな」
ξ゚⊿゚)ξ「それは光栄」
バケモノかもしれないが、彼女の行為には気高さを感じられた。敬意を表す意味も込めて、差し出された手を握り返す
(;´・_・`)そ「ウワッ!!!!!!?????」
そしてすぐさま手放した
275
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:28:02 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「アンタ……」
冷たい掌であった。冷え性どうのこうのなんてものじゃなく、『氷でも握ったかのような』、骨身に染みる冷たさだったのだ
彼女はさっきまで、カップを両手で包んでいたのだ。俺が飲むのを躊躇うほどに熱い、淹れたての紅茶が注がれたカップを
俺に出されたカップと、彼女のカップを見比べれば一目瞭然だった。俺の紅茶は今だに湯気を上げているが、彼女の紅茶はこの短時間で冷め切っていた
(;´・_・`)「何のつもりだ?雪女にでも憧れてんのか?だったら出る作品間違えてんじゃねえのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「作品?」
(;´・_・`)「ああ悪い今のは無しで」
思わず妙なセリフを口走ってしまう。腰に手を当てて天井を仰ぎ、何とか気持ちを落ち着かせる
もっと的確な質問があるだろ。最早受け身対応が出来る余裕すらも消え失せたのだ。単刀直入に問わねばならない
(;´・_・`)「アンタ誰だ?何が目的だ?」
ξ゚⊿゚)ξ「津出 玲奈。元研究員。あなたには北海道網走までの護衛をお願いしたいの」
(;´・_・`)「研究員?網走?」
ξ゚⊿゚)ξ「この国で最も堅牢だった研究所がそこにあるのよ。尤も、今はどうなっているかわからないのだけれど」
(;´・_・`)「マジで言って……」
よりによって北海道の上の方。旅客機なんて飛んじゃいないから、陸路か海路で向かわねばならない
目的地に到着するまで、どれほどの旅程になるか見当もつかない。塞がれている道など無数もあるし、船を出せる生存者を見つけられるかも定かではない
勿論、どこに行ってもゾンビはうろついているし、物資目当ての賊にだって遭遇する。コミュニティに属さず旅をするってことは、襲われるリスクと常に隣り合わせだ
276
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:28:46 ID:sUPUImyY0
ξ゚⊿゚)ξ「少なくとも、補給に関しての心配は無用よ。ここのようなバンカーは全国に幾つもあって、私と一緒なら自由に利用できるから」
(;´・_・`)「そりゃあ心強いな。見返りは?」
ξ゚⊿゚)ξ「バンカーのマスターキーとアクセスマップ。目的を果たしたら、あなたは好きな土地で一生困らない水と食料に囲まれて、穏やかな最期を迎えられるわ」
(;´・_・`)「素敵だね……」
安全な住処に水と食料。この世界で考えられる、最も価値のある報酬だろう。それを全国どこでも使い放題とは、命を懸ける価値は確かにある
しかし、この依頼を受けるにはもう一つハッキリと確かめねばならないことがある
(;´・_・`)「アンタ、人間じゃないよな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。最初から説明するより、ある程度体験してもらった方が受け入れやすいと思ったから」
彼女は卓上のウェットティッシュ……化粧落としを一枚取り、頬を拭った。そこには―――――
(;´・_・`)「っそだろおい……」
血の気が引いた死体を連想させる、『青白い肌』が隠されていた
277
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:29:49 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「なん……?」
これまで俺は、様々な変異体と遭遇した。先ほどのバッタもそうだし、全身の筋肉が鉄のように硬直する『ブリキ』も、人の声真似をして誘き寄せる『インコ』にも遭遇した
だがこれまで、ただの一体も『意思疎通が出来るゾンビ』には出遭ったことがない。奴らは生存者を見るや否や、食欲に従って喰らいついてくる恐ろしい獣なのだから
ξ゚⊿゚)ξ「海外じゃ、何体か目撃例があるのだけどね。日本もこれから増えていくんじゃないかしら」
(;´・_・`)「増えていく……?」
ξ゚⊿゚)ξ「私の目的は、『私たち』を全滅させる手段を確立させること。そのカギは『ここ』に眠ってる」
彼女は額を指で小突く
(;´・_・`)「私たち……ってのは……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……殆どが元同僚。今となっては、生存者にとって最も警戒しなければならない敵」
ξ゚⊿゚)ξ「その名も『有脳種』。生前と変わらぬ思考力を保ちながら、人を喰らう『進化した個体』」
.
278
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:30:31 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「……」
言葉を失った俺を他所に、文字通り『人でなし』の彼女は話を進めた
ξ゚⊿゚)ξ「信じるも信じないも結構よ。恐ろしいなら、今すぐ殺してくれても構わない。でも、きっと後悔することになるんじゃないかしら?」
(;´・_・`)「後悔?世界を救う手段を奪うことに対してか?」
ξ゚⊿゚)ξ「まさか」
ここで初めて、彼女は微笑んだ
ξ゚ー゚)ξ「ゾンビを裏切ったゾンビと、綱渡りのような冒険の旅が出来るのよ?こんな楽しいこと、他にある?」
(;´・_・`)「……ッ」
エロビデオ屋の言葉を思い出す。『この世界で最も価値のある報酬は安全である』。ごもっともだ。反論の余地もない完璧な正論だ
しかし人は時にスリルを求める。ホラー映画もそうだし、ジェットコースターだってそうだ。法定速度を超過するまでアクセルを踏み込んでみるのもいい
彼女の殺し文句は、命知らずのバカへ向けたお誘いだ。アドレナリンドバドバの、過酷で血なまぐさい旅へのチケットだ
(;´^_^`)「ハハ……ハハハハハ!!!!!!」
腹の底から笑えるほどに、アホくせえものだった
279
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:31:38 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「ハハ、ハァー……アンタ、相当の人でなしだな」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、あなたが言えた義理かしら?ここまで話を聞いて、逃げようとも襲い掛かろうともしなかったのは、あなたが初めてよ」
(;´・_・`)「だろうよ」
今度は此方から手を差し伸べる
(´・_・`)「小練 詩音だ。道中の護衛、しかと仕った」
ξ゚⊿゚)ξ「よろしく、詩音」
契約の締結として、考える死体と握手を交わした。相変わらずゾッとするほど冷たいが、不思議と気分は昂揚した
『斯くして、イカれた男と死体の女は、危険な旅への第一歩を踏みしめたのであった』。そんな洒落た語り口を思い浮かべながら―――――
280
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:32:04 ID:sUPUImyY0
CARGO!! ‐Reversi‐
.
281
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:32:37 ID:sUPUImyY0
続きは期待しないでください
282
:
名無しさん
:2025/06/16(月) 23:41:17 ID:1vOPuSn.0
投下!?!!!!?!?!?
投下!?!!!?!?!!!??!?
283
:
名無しさん
:2025/06/17(火) 20:00:41 ID:dkzER.7E0
うおーーーーー!楽しみだ!
284
:
名無しさん
:2025/06/17(火) 21:59:03 ID:yUcgFaoI0
投下やったーー
285
:
名無しさん
:2025/06/18(水) 02:04:28 ID:CPAL2vcA0
いいや期待するね!
286
:
名無しさん
:2025/06/22(日) 00:57:01 ID:3jmgtgX20
うおおおおおお!!!
287
:
名無しさん
:2025/06/23(月) 19:27:51 ID:NXGgTRxw0
変異体もゾンビもののロマンだよね!乙!
288
:
名無しさん
:2025/08/21(木) 00:30:54 ID:HqQ1q8ug0
これで期待しないは嘘だぜ
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