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CARGO!!
1
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:33:30 ID:Eo9hzRWw0
【cargo】:貨物 船荷 積み荷
.
2
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:35:28 ID:Eo9hzRWw0
こうなってからいつも思い出すんだが、『ひまわり』っつー絵画で有名なゴッホ
彼の絵は死後に評価され始めたらしく、生前はほとんど売れなかったらしい
皮肉な話だ。巨額の富を得られる才能があったのに、死んでから認められるとは
彼の話が今の俺とどう関係があるかって?そうだな、キモは『死んでから』っつーことか
生前の俺は特筆すべきところも無い平凡な人物だった。例えるなら、履歴書に書く自己PRを考えるのに苦労するような人生か
特に打ち込んだ趣味も無く、特に入れ込んだ恋人もおらず、特に高い目標も無く、特に理想の生き方も持ってない
悪行はしなかったが、かと言って善行を積んだかと問われると、そうとも言い切れない
楽し気に生きている者を羨ましがることはあっても、その陰で行っている努力を見習おうとも思わなかったし
腕っぷしや才能に胡坐を掻きふんぞり返る連中に足蹴にされても、Twitterで陰口を叩くくらいしか出来ない臆病者だった
まぁ、見ての通りドラマや感動とは無縁の、面白味のないありがちな人生さ。ティーンのガキを卒業した俺は、そういうもんだと割り切ってた
だがある日、神様かそれに準ずるヤバい何かが、俺を含むその他大勢の人生をマルっと変えちまった
何が起こったかって?わかりやすく言うなら『バイオハザード』か
ウイルスだか呪いだか何だか知らねえが、世界中で死者が蘇り人間を貪り喰い始めた
案の定、死者は死者を生み出し、あっという間に地球をゾンビのダンスフロアに変えちまった
かく言う俺も真っ先にゾンビになっちまったクチでね。えっ?じゃあどうしてこうやって語り掛けてるのかって?
3
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:36:36 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「なんでだろ……?」
平凡な人生だったが、『死んでから』の運はブッチギリで良かったらしい
俺はゾンビになって初めて、その他大勢とは違う『特別』となった
(´・ω・`)「じゃあ人間オナホ作るからそいつの手足持って」
( ^ω^)「任せろ」
(;´・_ゝ・`)「あ、い、嫌、やめ」
(´^ω^`)「せーのっ♪」
(;´ _ゝ `)「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!」
(;´・ω・`)「あっダメだ結構千切りにくい」
( ^ω^)「だから骨から折らないとダメだっていったじゃんかお。『127時間』って映画観たかお?」
(´・ω・`)「おうネタバレやめろや。喋らん奴、ちょっとなんかこうハンマー的な物持ってきて」
( ∵)
(´・ω・`)「持って来いよ」
( ∵)
(´・ω・`)「なんか喋れや」
そして、俺と同じく『特別』な連中と共に、ゾンビらしい人生を謳歌している
4
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:37:08 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「……」
('A`)「そいつ男じゃね?」
(´・ω・`)「男にも穴はあるんだよなぁ」
('A`)「……そう」
人間オナホとかいいから早く食わせて欲しい
5
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:37:37 ID:Eo9hzRWw0
『CARGO!!』
.
6
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:45:37 ID:Eo9hzRWw0
ゾンビは大まかに二種類に分けられる
皆さんご存知の、ただ食欲と言う本能に支配され行動する『無脳種』と
生きてる人間と同じく、ある程度の正気があり思考することが出来る『有脳種』
比率としては……俺が出会った中じゃ今の所二人
( ∵)
怪しいの一人
無脳種については今更詳しく説明する必要もねえだろう。臭い、うるさい、なんかキモい
ホラー映画の一大ジャンルとして確立したが、最も無個性で最もぶち殺された雑魚クリーチャー
脅威としては『大勢で襲い掛かる』『噛みつかれると感染しゾンビになる』
後はー……『知らない間に車の後部座席に隠れている』とかか?まぁゾンビじゃなくてもそれくらいやるか
最近だと『CELL』っつー映画。アレはゾンビとは違う気もするが、武器を持って暴れ回ってたな
機動力に関しては作品により様々だが、『28日後…』っつー映画以降、全力で走るゾンビが主流になったな
『ワールド・ウォーZ』は流石にやり過ぎだが。しかし残念で仕方がない。続編の製作が決定していたのに、こんな事になっちまってファック
生存者の方々には気の毒で仕方が無いが、この無脳種も全力で走ってくるタイプのゾンビだ
そして俺達、『有脳種』のご紹介だ。無脳種とは違い複雑な思考……読み書き計算、会話によるコミュニケーションを行える
また、肉体のパフォーマンスも生前より格段に上昇。腐ることも無く正常に機能する
器用さについても同様。スマホの操作から銃の分解及び組み立て、車の運転まで熟せる
欲だけに支配されない自制心を持ち、理性的に行動することが出来る。『ゾンビ処刑人』を観たか?『ゾンビコップ』でもいいが、アレと似たようなもんだ
(´・ω・`)「本日ご紹介するのは人骨で作ったこの椅子でございます。シートには鞣した人皮をふんだんに使用。お洒落なインテリアとしても最適でお客様にピッタリの一品かと」
( ^ω^)「座り心地は?」
(´・ω・`)「勿論最悪」
( ^ω^)「いらねえ」
あの行動が理性的かと聞かれたら首を傾げるしかないが、人肉を貪り食うだけの有象無象と比べりゃまだマシな……マシか?
どうも身体とお脳が『こう』なっちまってから、生前の感性が失われちまったようで
まるでスイッチを入れたかのように『人間』から『ゾンビ』の常識へと切り替わってしまった
生きてる人間は『愛すべき友人』ではなく、家畜と同じ『食べ物』として。皮や骨などの余剰部分は製作の材料として
レンタル・ビデオショップに並ぶスプラッタ・ホラーは軒並みフード・ポルノ映像に早変わり
常人から見りゃサイコパス極まりない存在だが、今じゃこっちが大多数を占める世界の常識だ
『正気』に関しても、ゾンビとしての意味合いが強い。まともだからってパンに慈悲を掛けたりしないだろう?
7
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:47:03 ID:Eo9hzRWw0
もう一つ、世界を混沌へと突き落としたイカレの神様は、ありがたい事にプレゼントをしてくださった
有脳種は『X-MEN』よろしく、それぞれに特別な能力を持つ。例えば
(´・ω・`)「ここの冷蔵庫ってまだ機能してたっけ?」
ショボンは特殊な『鳴き声』で無脳種を誘導できる。呼び寄せたり、遠ざけたりと
( ^ω^)「中身は地獄だった」
ブーンは筋線維が異常に発達し、常人とは比べ物にならない運動能力を持つ。見た目はただのデブだ
( ^ω^)「ほれドクオ。お前の分」
('A`)「どうも……いやすね毛濃いなぁこいつ」
『クリスピークリームドーナツ』の皿にドチャリと水っぽい音を立てて男の汚ぇ脚が乗せられる
荒く引き千切られた断面から新鮮な血が滴り落ち、テーブルと俺のズボンを濡らした。やだ……バッチィ……
世界が滅ぶ前はこの店も大勢の客で賑わい、この皿にも、肥満体国たらしめるカロリーの塊が乗っかってたのだろう
そしてこの俺の唾液にはゾンビの肉体を癒着させる成分が含まれている。頭以外なら切断されようが撃たれようがすぐさま元通りだ
まぁ、仲間からは最悪なまでに嫌がられるが。俺だって野郎の傷口なんかに唾を塗りたくりたくねえよ
( ∵)<ムシャモグゥピチャクチャ
こいつはわからん。食い方汚ぇな
8
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:49:08 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「バーナーで炙れよ。羽根をむしった鳥もこうやって産毛を焼きとるんだと」
('A`)「焼けた毛の臭いが肉にこびり付くから嫌だ」
( ^ω^)「ゾンビの癖にグルメ気取ってんじゃねーお」
('A`)「おまいう」
こうして、俺は『死んでから』才能と友人に恵まれ、終末の世界を旅しているってワケだ
以`゚益゚以「ワンワン!!」
おっと、お前の紹介を忘れていたな。ゾンビ犬の有脳種、元ダルメシアンのイトーイだ
生前はご自慢だったであろう白黒の斑模様をした毛皮はまとめて剥ぎ取れてしまい、今じゃ文字通りの『丸裸』になっている
以`゚益゚以「車直った」
('A`)「さよけ……」
もう一度言おう、ゾンビ『犬』の有脳種、元ダルメシアンのイトーイだ
犬でありながら人の言葉を喋り、尚且つエンジニアとしての才能に目覚めた、ある意味では世界一賢い犬と言えるだろう
以`゚益゚以「それ食べたら骨だけちょうだい」
('A`)「うん」
俺はもうあれこれ考えるのをやめた
9
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:49:33 ID:Eo9hzRWw0
('A`) ムシャァ……
('A`)「毛が歯に挟まって……気持ち悪い……」
( ^ω^)「文句多い奴だお」
(´・ω・`)「このご時世、お腹いっぱい食べられるだけありがたいと思えよ」
以`゚益゚以「骨ちょうだい」
('A`)「やいやい言うなよ……」
( ∵)
('A`)「お前は喋れ」
10
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:51:00 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「そろそろこの辺も……あむ、潮時じゃねえか?」
モロコシ感覚で太腿に噛り付く。毛の感触さえ除けば程よく脂が乗ってて美味い部位だ
(´・ω・`)「昨晩の襲撃で派手にやり過ぎたからなぁ。何人か逃がしちゃったし」
(´・ω・`)「あーーーーーーーーー!!!!!何人か!!!!!!逃がしちゃったしなーーーーーーーーー!!!!!!」
( ^ω^)「いやしょうがない。『Song for MARION』のサントラが置いてあったあの店が悪いお」
狩りは大体この二人頼みだ
ざっくり説明すると、ショボンが無脳種を誘導し生存者の住処を襲撃
慌てて出てきた獲物を、身体能力に長けたブーンが死角から捕獲する。言わば、ゾンビを使った追い込み漁だ
俺と喋らないあいつは何やってるかって?一応、出入り口を塞いだりしに行くから、役立ってないわけじゃない
ショボンもブーンも、労働に見合った対価だのなんだのと文句を言わないので此方としてはありがたい限りだ
そんで昨晩の出来事なんだが、ブーンが生存者を追っている最中
飛び込んだレコードショップ内で好きな映画のサントラを見つけ足を止めちまった結果
生存者を何人か逃がす失態を犯してしまったのだ
( ^ω^)「でもめっっっっっっ……ちゃ良かったやろ?」
(´・ω・`)「ぐうの音も出ない。涙腺枯れてなかったら涙不可避だった」
これの何が不味いかって、有脳種の存在と危険性を他の生存者に広げてしまう事だ
無脳と有脳の決定的な違いを挙げるならば、『意思がある脅威』だろう
例えば、無能種は『雨』だ。身体を濡らせば風邪を引いてしまう可能性のある気象だが
『傘を差す』『屋根の下に入る』など、簡単な対処法でそれは防げる。まぁ、危険度は段違いだが、単純な例えとしてな
対し有能種は明確な意識を持って生存者を襲う『獣』だ。逃げようと走れば追いつかれ、隠れようとも臭いでバレる
状況に応じ多種多様の行動を起こす敵に対して、人は敏感に反応するものだ。それも命が脅かされるなら尚更に
これが無脳種であるならば、切羽詰まった状況でもない限り積極的に殺しに行こうとはしないだろう。弾の無駄だし
だが『俺ら』なら話は別だ。身近に迫った脅威はサッサと取り除いた方が、枕を高くして眠れる
11
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:52:32 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「遠くに逃げて貰った方が……此方としちゃありがたいけど」
(´・ω・`)「どうだろうなぁ。こいつら『空港を拠点にしてるハンターと合流す』云々言ってたから」
('A`)「そこまで言ったなら『る』まで言っちゃえよ……」
ま、当然その脅威を取り除くことを生業としてる生存者もいるわけだ
(;^ω^)「正直二度とハンターとは殺り合いたくないお……」
一度かち合ったことがあるが、その時はブーンが四肢断裂まで追い込まれてしまった
運よく生存者の中にクソマヌケがいたお陰で、そのハンターはブーンにトドメを刺す前に『誤射』でおっ死んでくれたが
あの時はこの身体になって初めて恐怖を覚えたね。俺の唾ももうなんかカッスカスになったね
以`゚益゚以「骨」
('A`)「お前は呑気だなぁ……ほれ」
以`^益^以「わぁい骨!!骨うれしい!!ガリガリガリガリガリ」
顔面がグロくて喋って車の改造とかすることを除けば、ほぼ犬の性格と挙動のイトーイは尻尾を振って骨にしゃぶり付いた。可愛いなぁ
(´・ω・`)「かといって後戻りもつまんねえだろ。クイノコシティにもヌマオタウンにも目ぼしい物資は殆ど残ってねえから、人も居つかないだろうし」
('A`)「いっそ足を伸ばしてギャクサイまで行く?」
以`゚益゚以「燃料持たないよ?」
('A`)「あ、そっか……」
ショボンが広げた地図を眺めながら、次の目的地を模索する
バツ印が付いた箇所は、これまで巡った場所。クソ広いシタラバ合衆国のほんの一部しか埋まっていないが、結構遠くまで旅をしてきた
12
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:53:41 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「どっちにしても補給は必要だお。その点に関しては空港は魅力だけど……」
不死身のゾンビでも、車には乗るし水も……まぁ飲まなくても死にやしないが、あった方が良い。身体の調子が違う
人間以外の食い物もたまには食いたいし、新しい映画を観たりゲームもしたい
死して尚、欲望は尽きることは無い。人間って奴はほとほと救いのねえ存在だよな
(;´・ω・`)「んん〜〜〜〜〜〜…………」
(;'A`)「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん………」
(;^ω^)「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん…………」
以`゚益゚以「ガリガリガリガリ」
( ∵)
(;´・ω・`)「……とりあえず」
('A`)「うん」
( ^ω^)「お」
(´^ω^`)「踊ってから考えますかーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
( ^ω^)「OK!!ミュージックスタート!!!!!!!!!」
♪Vanessa Redgrave - True Color
https://www.youtube.com/watch?v=AbBz4tE2Icg
(´・ω・`)「エア涙が止まらん」
( ^ω^)「いつ聴いても魂(こころ)が震える」
('A`)「踊る気ゼロじゃねーか。しんみりするのは後にしろよ消すぞ」
真面目に考える気もゼロかよこいつら
13
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:57:25 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「こことか面白そうじゃねえ?ディーコ遊園地」
(;^ω^)「お前……正気か……?」
('A`)「えっ何?」
(;^ω^)「詐欺師姉妹と童貞青年とゾンビハンターが待ち構えてる死のゾーンだお……?」
('A`)「いやそれ映画……」
(´・ω・`)「縁起は悪ぃわなぁ」
人間には人間の死亡フラグがあるように、ゾンビにもゾンビの死亡フラグがある
例えば、HENTAIゲームの主人公っぽい野郎とサムライ・ソードを持ったハイスクールガールの前に立つなだとか
ショッピング・モールで縦横無尽に走り回るカメラマンと出会うなだとか
片腕をチェーンソーに改造したスーパーマーケット店員には近づくな、とかな
('A`)「それ言ったらどこも行けなくなっちゃうだろ……」
( ^ω^)「ゾンビ映画にはフラグが溢れてんだお。ゾンビとは無縁の世界を目指していけお」
('A`)「鏡見ろ」
( ^ω^)「やだ……だらしのないぽっちゃりフェイス……?」
(´・ω・`)「しかも血色がクソ悪い。いっそ海でも行くか?」
以`゚益゚以「燃料」
(´・ω・`)「車も良いが船旅はどうだ?川を下って行けばおのずと海に到達するし」
以`゚益゚以そ「かしこい!!」
(´・ω・`)「お前はいい子だなぁ」
14
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:58:25 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「川もやべーんじゃねーかお?水場は人間の生活圏になってる場合もあるし」
('A`)「いざって時に逃げ出せないしな……」
(´・ω・`)「ゾンビって生き辛くね?」
('A`)「死んでる」
(´^ω^`)「こいつぁ一本取られたぜ!!ガハハ!!」
とは答えたものの、実際俺達は『死んでいる』のか『生きている』のか、ハッキリとわかっちゃいない
ゾンビという存在は生死の判定が曖昧だと思う。心臓が止まっていても、身体が動けば『生きている』と言っても良いのか
身体が動いても、個々の魂とやらが抜けてしまえば『死んでいる』と言っても良いのか
有脳種になると更にややこしくなる。身体も動き、意思もあるが心臓は止まっている。これは『死』のカテゴライズとして扱われるのだろうか?
『チャッピー』っつー映画だと、人間の意識をデータ化してロボットにインストールする展開があったが、これを『生』と捉えて良いのだろうか
('A`)「ふーむ……」
それでも、『死』が怖いと感じるのは、『生』あっての物だと思う
('A`)「じゃあもう……こういい感じでスッと行ってパッとアレして……」
( ^ω^)「ああもうそんな感じで良いと思うお」
(´・ω・`)「やだ適当……でもそのノリ、アタイ嫌いじゃないわ……」
( ∵)
('A`)「何か言えや」
(∵ )
('A`)「そっぽ向かれた……?」
15
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 09:59:20 ID:Eo9hzRWw0
その時
以`゚益゚以「!」
イトーイの生々しい肉色の耳がピクリと動くのを見て
(;'A`)「ッ……」
俺達は一斉に口を噤んだ。『物音』の合図だ
( ^ω^)「……」
ブーンは、手短にあるコーヒーポッドを構え
(´・ω・`)「……」
ショボンは先ほど『メシ』の手足をぶち砕いた大振りのハンマーを手に取る
('A`)「……」
俺は怪我したらめんどいので奥に引っ込んだ
(´・ω・`)「……」
ゆっくりと、かつ不定期なリズムで地面を擦る音が近づく
聞き覚えがあり、俺達には害を為さない存在が発する物だとはわかってはいたが、油断は出来ない
ショボンは割れた窓から、こっそりと音の主を確認する
16
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:00:26 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「なんだ無脳種か……」
「ヴァアァァ……アア……」
『食事』の叫びにつられてやってきたのだろうか、向かってくるのは一人の無脳種
食ってる最中にワラワラ集まってこられると面倒なので、ショボンがあらかた遠くまで追い払っている筈なんだが
どうも奴さんは『ご新規』らしい。余所の場所から行く当ても無くフラフラと歩いてきたのだろう
('A`)「イトーイ、何か変わった臭いはするか?」
一応、トラップの可能性もある。無能種に爆薬を括りつけりゃ歩くカミカゼ・ソルジャーの完成だ
イトーイは優秀(かわいい)なので火薬等の臭いも嗅ぎ分けられる。俺なんて見た目も中身もクソですよクソ
以`゚益゚以「フンフンフン……」
ズル剥けの鼻をヒクヒクと動かしたイトーイは
以`゚益゚以「美味しいの臭いがする」
('A`)「は?」
腐れ無脳種には程遠い何かを嗅ぎ分けた
(;^ω^)「な、なぁ……あの無能種、何か可笑しくねえかお?」
ブーンの言葉に、俺達は改めてその無能種を観察する
肩越しから一本の棒が伸び、先端には何かの臓物を詰めた袋が括りつけられ、無能種の顔先で揺れている。その姿はまるで……
17
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:01:10 ID:Eo9hzRWw0
(;´・ω・`)「鼻先にニンジンぶら下げられたロバかよ……」
的確な比喩だ。それ以外に思い浮かばない
目の前にあるご馳走にありつこうと、延々と歩き続ける残酷な永久機関
(;´・ω・`)「悪趣味極まりねえな……」
('A`)「そこの悪魔のいけにえの美術スタッフが総力を挙げて築き上げたみたいな椅子作ったのお前」
(;´^ω^`)「パードゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン???????????????????????????????」
確かに生存者がわざわざ無脳種を捕まえてこんな仕掛けをしたのなら、性格が死霊のはらわた並みに腐ってると言わざるを得ない
何の為に?面白いからか?生前恨みを抱えていた人物だからか?それとも別の理由があるのか?
「あう……」
(;'A`)そ「!?」
悶々と巡る考えを遮ったのは、無脳種には決して発せられない『瑞々しい声』だった
(;^ω^)「い、今の……!!」
ブーンが先ほどまで『活きが良かった』人間オナホ(男)を蹴飛ばし、ドアを開け放つ
客の出入りを伝えるベルの音に、そいつはゆっくりと此方を向いた
18
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:02:11 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「気をつけろよブーン!!何があるかわからないぞ!!」
(;^ω^)「チェストバスターが出てきた時はよろしく頼むお」
(´・ω・`)「何をよろしくすりゃいいんだよ地球外生命体相手に」
('A`)「ゾンビに加えてエイリアンまで登場されたらもう人類死ぬしかないじゃない」
『同類』ゆえ襲い掛かってくることはないが、ハンターが仕掛けた罠の線も拭いきれない
俺はやだぜ爆発四散したあのデブをジグソーパズルみてーに組み立てんのは
(;^ω^)「……」
ブーンはコーヒーポッドを盾の様に構えながら、そいつを観察する
「うぶぶ」
(;^ω^)「!!」
ブーンが声の正体に気づいたらしい。無脳種の背中に回って、何かを両腕に抱える
(;^ω^)「……バーフバリ」
('A`)「は?」
(´・ω・`)「は?」
19
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:02:51 ID:Eo9hzRWw0
(;^ω^)「マヘンドラ・バーフバリーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
高々と掲げたのは―――――
*(;;)*「ほぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
―――――赤ん坊、だった
('A`)「……?」
(´・ω・`)「……?」
('A`)「いやなんでバーフバリ2?」
(´・ω・`)「シヴァガミ妃かよ」
ここにいる全員の、脳内処理能力の低下をひしひしと感じたのであった
20
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:03:40 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
('A`)「……」
*(‘‘)*「あう、ぶぶぶ」
*(*‘‘)*「キャッキャッ」
('A`)「おうなにわろてんねん」
( ^ω^)「鏡見れば理由が一発でわかるお」
(´・ω・`)「顔がきっっっっっっしょいからな」
('A`)「死ね」
( ^ω^)「死んでる」
赤ん坊の腹には、『My Name is Heinrich』と太字のペンで走り書きをされていた
見た感じ健康状態に異常は見当たらず、ゾンビを前にしても怖気づかない肝っ玉も持ち合わせている
(´・ω・`)「Heinrich……ドイツの人名だぞ?しかも男性の」
( ^ω^)「でもほら、オチンコ付いてないお。ナイっすチンチン」ペシペシ
('A`)「お巡りさんこいつです」
以`゚益゚以「美味しいの!!美味しいの!!」
('A`)「待て」
以`゚益゚以「ワン!!」ピタッ
('A`)「賢い」
21
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:05:03 ID:Eo9hzRWw0
さて、思いもよらぬ拾い物をしてしまった
(´・ω・`)「恐らく……奴は親父だったんだろうな」
背負った『荷物』から解放された無脳種は、また目の前の肉を追って先へ先へと歩いて行った
恐るべき執念と言うべきか、死の間際のひらめきと言うべきか。とにかく、敬意を払うべき男だったと思う
しかし運が無かった。生存者でもなく、のたれ死ぬでもなく、あろうことか『ゾンビ』に拾われるなんてな
( ^ω^)「赤ん坊の肉は初めてだお。どんな味がするかね?」
('A`)「羊肉もマトンよりラムの方が臭みがねえしな……」
『量』こそ少ないが、子供の肉ってのはどの家畜も等しく美味いと相場が決まっている
無駄に筋肉質じゃないし、骨も柔らかいのだろう。ほっぺたから手足までプルプルと瑞々しい
肺もヤニで黒く染まってる事もねえだろうし、レバーがアルコールでボロボロになってる事もない
脳はどうだろうか?知識や思い出を溜め込む前の、皴の無いそれはどんな味がするだろうか?
思わぬご馳走を運んでくれた父親と天にまします我らが父には祈りと感謝を捧げないとな
( ^ω^)「ほーらベイビー、今からおじさんのお腹の中を探検しようかお〜?」
ブーンが赤ん坊を抱き上げ、大口を開ける。足から食っていく算段なんだろう
(´・ω・`)「踊り喰いとは豪気だなぁ大将。少ないんだから俺らの分も残しとけよ」
( ^ω^)「見つけたもん勝ちの精神」
('A`)「食い意地と体形が汚い」
( ^ω^)「体形は関係ないだろ死ね」
('A`)「死んでる」
22
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:05:50 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「それでは、いっただっき……」
*(*‘‘)*「キャッキャッ、あぶぶぅ」
( ^ω^)「……」
*(*‘‘)*「えひっ、えひっ」
( ^ω^)「…………」
赤ん坊……『Heinrich』という名の女の子は、大口開けたブーンを前に無邪気に笑い、足をバタつかせた
ブーンは口を閉じ、ゆっくりとHeinrichを胸元まで降ろす
(;´・ω・`)「どうした?」
( ^ω^)「マジ無理しんどい」
('A`)「は?」
( ^ω^)「いや、ちょっ……抱いてみ?」
Heinrichをショボンへと手渡したブーンは、どっと疲れたとも言いたげに眉間を抑えた
(´・ω・`)「いくら赤ん坊だって言ってもお前、飯には変わり……」
*(*‘‘)*「ばぶ……キャッキャッ」
(´・ω・`)「変わり……」
*(*‘‘)*「へう!!いうう!!」
(´・ω・`)「……」
23
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:07:03 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「尊い」
( ^ω^)「だろ?」
(;'A`)「頭……」
(´・ω・`)「可笑しくない」
( ^ω^)「常時まとも」
('A`)「ハンニバル・レクターみてーな食生活続けてた奴らの言うセリフじゃない」
(´・ω・`)「ん」
(;'A`)「ん?」
(´・ω・`)「ん!!」
順は俺に回る。ショボンは既に言語すら怪しく
なんかツンデレキャラが照れ怒りながら弁当差し出すみたいな感じになってた。きしょかった
24
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:07:31 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「なんだってんだよ……っとと」
*(*‘‘)*「きゃい!!」
手の平に真っ先に伝わってきたのは、『柔らかさ』
ついで、布越しに『温もり』が続く
('A`)「……」
*(*‘‘)*「ぶふぅ、ぶふふ」
死体の身には、余りにも熱い『生の温もり』
バケモノの俺達を拒絶しない、『無邪気な笑顔』
('A`)「……」
久しく忘れていた、『命の尊さ』ってやつが
*(*‘‘)*「キャッキャッ!!」
太陽の光のように、赤ん坊から降り注いでくる
25
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:08:17 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「……」
もしも俺の涙腺がまともに機能していたのなら、涙の一つや二つ溢しただろう
しかし、古今東西『バケモノ』は涙を流さないと相場は決まっている
代わりに零れ落ちたのは――――
('A`)「最高みヤバい」
語彙力無くした腐女子のツイートみたいな言葉だった
( ^ω^)「それな」
(´・ω・`)「わかる」
('A`)「語彙力が死んだ」
続けて、喋らん奴にも渡してみる
( ∵)
( ^ω^)「喋れお」
(´・ω・`)「喋れよ」
('A`)「いや見ろ」
(*∵)
('A`)「若干顔が綻んでる」
( ^ω^)「煉瓦でぶん殴っても表情を崩さなかったこいつが……?」
(´・ω・`)「何してんだお前」
( ^ω^)「いや……ムシャクシャして……遊ぶ玩具欲しさに……」
('A`)「一番厄介なサイコパスがここにいた」
26
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:09:00 ID:Eo9hzRWw0
イトーイの前にも座らせてみた
以*`゚益゚以「ハッハッハッ、キューン、キューン」
先ほどまで飯の匂いで興奮していたこいつも、大好きな飼い主を前にした犬の様に腹を見せて鼻を鳴らす
めっちゃ可愛かった。犬って生皮剥がれてもこんな可愛い生き物なんだなと再認識した
*(*‘‘)*「うー、う、わ!わ!」
(*´^ω^`)「そうだよ〜、わんわんだ〜。賢いなぁハインちゃんは」
('A`)「ハイン?」
(´・ω・`)「一々Heinrichって呼ぶのも煩わしいだろうがわかんねえかなぁだから童貞なんだよ死ね」
('A`)「お前が死ね……って」
いやちょっと待て。この流れ、まさかとは思うが……
(;'A`)「そ……育てる気?」
(^ω^ )「……」
(・ω・` )「……」
('A`)「こっち見ろやオイ」
(^ω^ )「だってもう食べるとか無理じゃん……」
(・ω・` )「だからって放置するわけにもいかないじゃん……」
なんてこった。こいつらの奇行には散々振り回されて……特に止めようともしなかったが
この展開は正直予想外だった。今頃は墓穴から起き上がりゾンビ世界を満喫しているであろうジョージ・A・ロメロ監督だって思いつかないだろう
(;'A`)「お前ら本気か!?ゾンビだぞ俺ら!!それが、おま……生きてる赤ん坊を育てるだぁ!?」
(^ω^ )「もう決めたし?」
(・ω・` )「代案あるならどうぞ?」
27
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:10:05 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「ぐぬ……」
ロクに考えもせずこの態度。心底ぶっ殺してえと、なんならキアヌ・リーブスのゾンビ連れてきて関節極めつつヘッドショットしてもらいてえとも思ったが
ここぞって時に俺の脳みそは一発解決なアイデアを閃かねえと来た。腐ってるのだろうか?こんな事なら防腐剤を常飲しときゃよかった
(;'A`)「……」
*(‘‘)*「?」
おいそんな目で見るなハインちゃんとやら。俺だって……クソ、神様って奴はとことん残酷だ
いっそこの赤ん坊にもさっきぶっ殺して食った『餌』と同じ認識を与えてくれりゃあ、俺もここまで悩まずに済んだのに
(;'A`)「……」
『食いたくない』『殺したくない』『死なせたくない』
マトモな人間なら当たり前の感情が、今となっちゃ狂気そのものだ
そう、そうだ。俺達は『ゾンビ』。生きてる人間を貪り食うモンスターだ。生と平穏に程遠い存在なんだ
それに、世界は既に終わっちまってる。生き長らえて、何になるってんだ
兄弟と玩具の取り合いをしたり、プールで水遊びをしたり、クリスマスにプレゼントを開けたり、イースターを祝ったり
クリスピークリームドーナツで友達と駄弁ったり、かったるい授業に欠伸をしたり、更年期を迎えてイライラしている親と喧嘩したり
初恋が終わったり、初めてのキスを経験したり、恋人と手を繋いでセントラルパークを歩いたり、タイムズスクエアで新年を迎えたり
当たり前の日常も、ちょっとした特別も、最早過去の産物だ。明るい未来など待っていない
今、生存者達に残されているのは、『不安』と『衰弱』、それに大勢の『外敵』だけだ
生き長らえて、何になる?一時の同情や庇護欲で、厳しい世界を味わわせるならいっそ――――
(;'A`)「……」
*(‘‘)*「ばぶ」
(;'A`)「こ……」ろしてしまうべきなのに
俺には、それを口から伝えることが出来なかった
28
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:10:58 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「こ……?」
(´・ω・`)「こ……?」
( ∵)
以`-益-以 スヤァ……
('A`)「……」
(#'A`)「アァイ!!!!!」ガンッ!!
以`゚益-以そ「フゴッ」ビクッ
壁に一発、頭突きをかます。痛覚はとっくに死んでいるが、皮膚がへしゃげる気持ち悪い感触がした
( ^ω^)そ「うわ、頭可笑しくなった」
(´・ω・`)「顔も可笑しい」
('A`)「可笑しいのはお前らだクソ」
唾を掌に吐き出し、額に擦り付ける
自分のものだとわかっていても、進んでやりたい行為では無いが仕方ない。放っといたら更に顔面崩れるし
とにかく、今の一発で切り替えた。世界は終わってて、生きる価値は無い。だが
('A`)「他の生存者に引き渡すまでなら、認めてやるよ」
そんなこと、有脳種として選ばれた『俺』には知ったこっちゃねえ
勝手に生きて、どこかでのたれ死んでくれたらそれで結構だ
29
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:11:58 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「……ま、その辺が妥協点だろうな」
( ^ω^)「僕らも引き際弁えてるお。ちょっとだけ!!先っちょだけだから!!」
('A`)「それ奥まで挿入る奴のセリフじゃねーか」
('A`)「ご飯やる、オシメ替える、ちゃんと最後まで面倒見る。出来なかったら余所に捨てて来ますからね!!」
(#´・ω・`)「出来らぁっ!!」
(#^ω^)「膝小僧擦りむいたってやり遂げてやるお!!」
('A`)「超不安」
っべーなもうホントこれで良かったのだろうか
事なかれ主義は死んでからも治っていないらしい
*(*‘‘)*「らっ!らっ!」
(´・ω・`)「ほら!!ハインちゃんもそう言ってる!!」
( ^ω^)「賢くて可愛いってもう最強すぎるお……」
('A`)「ハァーーーーーー……」
だが、この結論を出した自分に安堵しているのも事実だ
今ここで殺してしまえば、こいつらとの軋轢が生じるし、俺も多少気分が悪くなる
ほんの少し、ほんの少し面倒を見てやればいいだけだ
*(*‘‘)*「うぅー」
('A`)「……」
('∀`)「仕方ねえな、全く……」
30
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:12:20 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「笑顔きっしょ」
( ^ω^)「下痢流してない便器の中みたいな笑顔」
('A`)「殺すぞ」
こいつらはいつか殺そう。固く心に誓った
31
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:13:00 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
「アア……ヴァァ……」
(´・ω・`)「はいちょっとゴメン。どいて」
「ヴァァ……ギギギ……」
(´・ω・`)「どけっつってんのにわかんねえゾンビだな殺すぞ」
('A`)「死んでる」
俺達は、もうしばらくこの街に滞在することにした
赤ん坊用品の調達と、今後の方針をじっくり考えるためだ
( ^ω^)「六番レジへどうぞ!!」
('A`)「やめろ地上最強のカメラマンやってくんぞ」
今はゾンビで溢れたスーパーマーケットを物色中だ。ハインは喋らない奴に預けた。多分大丈夫だろう、多分……
生存者がこんな場所を歩こうものなら物音一つでアブナイお友達大集合だが
俺らがいくらドチャガチャしようと、食えない物に無脳種は興味を示さない
32
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:13:42 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「やーっぱ水や食料はあらかた持ってかれちまってんな……」
(´・ω・`)「ドクオ、ちょっと片足上げて」
('A`)「んー」
(´・ω・`)「よいしょっと……」
('A`)「いや待て何を穿かそうとしてんだお前」
(´^ω^`)「パンパース」
('A`)「ほれ」ボキィ!!
(;´゚ω゚`)「指アアアアアアアアアア――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!!!!」
( ^ω^)「ちょ、無脳種集まってくるからちょっと黙って?」
\ウヴァア……/ \チィィィィ……/ \コォォォ……/
( ^ω^)「ほらー、もー」
(´・ω・`)「だってこいつが」
('A`)「だってこいつが」
( ^ω^)「めんどいし邪魔だから早く追い払えお」
(´・ω・`)「ススススススススーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッア!!!!!!!!!!!!!!」
ショボンのキモい声により、ワラワラと集まってきた無脳種は蜘蛛の子散らすようにこの場から去っていく
33
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:18:35 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「とりあえずオムツや哺乳瓶、着替えは確保出来たが……飯だよな問題は……」
( ^ω^)「粉ミルクはあったお」
('A`)「あるんかい」
( ^ω^)「でも真水がさぁ……」
(´・ω・`)「備えはあるが憂いが残る量しかねえもんな」
('A`)「ここんとこ雨も降ってねえしな……」
飲料水を手に入れる方法は三つ
一つ、行く先々のスーパーや病院などで見つける
二つ、生存者から奪う
三つ、雨水を利用する
どれも運に左右される方法だ。サバイバルの辛い所だな
雨水タンクや、昨日襲った連中の置き土産が幾らか残ってはいるが
赤ん坊が口にする物だ。出来ればボトル飲料水を使いたい
34
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:19:22 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「最悪、雨水を蒸留させたものを使うしかねえだろ」
( ^ω^)「飲ませても大丈夫なのかお?」
(´・ω・`)「ほぼ純水だからよろしくは無い」
('A`)「じゃあダメじゃん……」
(´・ω・`)「だから最悪の場合な」
そして、赤ん坊を育てるに当たってもう一つ重大な問題があった
('A`)「俺らの『体質』にも気をつけなきゃあな」
( ^ω^)「お前は特に顔面の体質が酷い」
(´・ω・`)「見るに堪えない」
('A`)「もっと見るに堪えない顔面にしてやろうか」
( ^ω^)「オタクって直ぐキレるよな」
(´・ω・`)「煽り耐性ゼロ」
('A`)「俺にも我慢の限界ってのがあるんだよなぁ……」
35
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:22:41 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「わかってるよ。ウイルス的な何かの温床になってる俺らが赤ん坊のミルク作ったりオシメ替えたりすんのはやべぇってんだろ?」
('A`)「最初から素直に理解を示せばいいのにほんとめんどくせえクソ共だな死ね」
( ^ω^)「死んでる」
('A`)「ええいそれはもうええわい」
ミルクを飲ませたらいつの間にかゾンビになっていただなんて、笑い話にもなんねえ
ゾンビ足らしめるウイルスの苗床である俺らは、生存者以上に衛生管理に気を使わなきゃならない
(´・ω・`)「ふむ……多少面倒だがクリーンウェアを作るか?」
('A`)「クリーンウェア?」
(´・ω・`)「ほらアレだよ。ウイルスパニック映画とかでよく見る宇宙服みたいなやつ」
( ^ω^)「俺らがパニックの一端を担ってるんですがそれは」
('A`)「クリーンされる対象をクリーンウェアの中に閉じ込めると言う矛盾」
(´・ω・`)「お前ら文句多いな」
('A`)「作れんの〜〜〜〜〜?」
(´・ω・`)「ゾンビ界きってのクリエイティブアーティストのショボン様に任せとけ」
(;^ω^)「……」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「任せとけっつってんのになんだお前らその顔」
(;^ω^)「だって……なぁ?」
(;'A`)「悪魔のいけにえの美術スタッフが総力を挙げて築き上げたみたいな家具ばっか作ってんじゃん……」
(´^ω^`)「てめーらも家具に組み込むぞぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜??????????」
36
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:23:14 ID:Eo9hzRWw0
不安ではあったが、考えあっての提案だろう。渋々任せることにした
(´・ω・`)「これとこれとこれとこれと……」
ショボンは衛生用品売り場の品物を片っ端からカートへと放り込んでいく
(´・ω・`)「邪魔」ガンッ
「ヴォォ……」
ショップ店員のゾンビにカートで体当たりをしていくショボンを尻目に俺達は
('A`)「何キロ?」
( ^ω^)「なんか『ERROR』ってアルファベットが並んで……」
('A`)「それ測定できないレベルのデブだよ」
( ^ω^)「ヘコむわー」
('A`)「腹はヘコまねーけどな」
( ^ω^)「やかましいわ」
電子体重計で遊んでいたりした
37
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:24:02 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
買い物(火事場泥棒)を終え、拠点にしているクリスピークリームへと戻ると
\オギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!/
けたたましい泣き声が出迎えた
(;∵) オロロ
それより俺はあの無表情を長年崩さなかった奴の狼狽える姿の方が衝撃だった
*(;;)*「ひぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
(´・ω・`)「おーおー泣いとる泣いとる。くっさ」
( ^ω^)「やだ……ドクオ、この歳になって……?」
('A`)「いやどう考えてもそこの赤ん坊だろ粗相したのは」
( ^ω^)「顔面が粗相だったからついうっかり」
( >ω^)「ごめんおッ♪」テペヘロォ
('A`)「ゾンビに洗剤飲ませたらどうなるか実験してみるかぁ」
( ^ω^)「身体に悪い」
(´・ω・`)「いくらデブだからって洗剤まで飲むなよ使うんだから」
( ^ω^)「あの、ひょっとしてデブを排水溝か何かだと思ってないかお?」
(´・ω・`)「同じようなもんだろ」
( ^ω^)「切ない」
38
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:25:09 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「オシメ替えるかお?」
(´・ω・`)「待て待て、準備してからだ」
ショボンは拝借した買い物かごから衛生用品を並べていく
液体石鹸、アルコールジェル、除菌ウェットティッシュ、マスク、業務用の使い捨て塩ビ手袋や雨合羽等々
以*`゚益゚以「おやつ!?おやつ!!」ハッハッハッ
(´・ω・`)「おやつ違う離れろ」
以´゚益゚以 キューン
('A`)「ほーらイトーイ、ボールだ。取って来い!!」
お気に入りのゴムボールを店外へ放り投げると、舌をダランと垂らし一目散に追いかけていく
床に点々と残る涎となんか謎の黒い液体の跡を見て、軽く溜息を吐いた
(;'A`)「イトーイもなんとかしなくちゃな……」
( ^ω^)「言ったら自分でなんとかする気もするけどNE!!」
(´・ω・`)「お前らより頭良いもんな。喋らん奴、ハインもうちょいあやしとけよ」
(;∵)
*(;;)*「びええええええええーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
下半身の気持ち悪さを涙と鼻水でグチャグチャになった顔面と、人気のない街に響き渡る大きな泣き声で訴えかける
奴はハインを抱きかかえたまま上下に揺らして気を紛らわせようとしているが、効果の程は無さそうだ
39
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:26:14 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「さて、先ずは俺らの感染力はどの程度影響するかについてだが」
(´・ω・`)「見ての通り、服越しのスキンシップ程度じゃゾンビにはならないらしい」
確かに、奴に抱きかかえられているハインにその兆候は見られない
そもそも、ゾンビ化した父親と―どれくらいの時間ああしていたのかは定かでは無いが―行動していたのだ
(´・ω・`)「次に、直接肌が触れ合うスキンシップだが……ブーン」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「ハインの素肌を触ったか?」
( ^ω^)「おーん……触られてはいるお」
(´・ω・`)「じゃあ大丈夫だな。俺ら一応身だしなみには気を使ってるし」
汚い、臭い、ウザいはゾンビの代名詞だが、こうして意思を持っている以上、有脳種は人間と同じく『不衛生』に対する嫌悪感はある
生前の習慣、例えば食前の手洗いなんかも欠かさず行うし、洗濯すれば身体も洗う。まぁ、ある種のプログラミングされた反復行動みたいなもんだ
それに、『身だしなみ』は飯……生存者を出し抜く前提条件でもある。小汚ぇ奴が近寄って来るより、ある程度小奇麗な奴の方が第一印象が良いからな
(´・ω・`)「誠に不本意な事に俺らの傷は全部あのド不細工野郎の唾で治ってるから、血液感染の心配もとりあえず無し」
('A`)「おう感謝せえよ」
( ^ω^)「ザッス」
(´・ω・`)「ッス」
('A`)「雑ゥ」
40
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:27:22 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「となると、やっぱり粘膜からの感染が一番危険だ」
( ^ω^)「た、食べないよー!!」
(´・ω・`)「黙れフレンズ。危惧する行動は大きく三つ」
ショボンは人差し指を立て
(´・ω・`)「ハインが俺らの唾液や血が付いた物を口にしてしまう」
続けて、中指を立て
(´・ω・`)「爪で素肌や粘膜付近を傷つけてしまう」
最後に、薬指を立てる
(´・ω・`)「ミルクに俺らの液が混ざる。これらは絶対に避けないといけない」
(´・ω・`)「お前ら可愛いからって絶対にキスとかすんじゃねえぞ」
('A`)「お前が一番やりそう」
( ^ω^)「マジそれ」
(´・ω・`)「愛に溢れてるからな」
( ^ω^)「『28週後…』の再現やりそう」
('A`)「あー……」
(´・ω・`)「あーじゃねーよ赤ん坊に目ぇ潰されて堪るか」
41
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:28:28 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「とにかく、常に細心の注意を払わなきゃいけない。特に……」
ショボンは除菌シートで組まなく手を拭き、更にアルコールジェルを擦り付け
その上で、塩ビ手袋を両手に嵌めて、新品の紙オムツを取った
(´・ω・`)「上の口と下の口付近はな」
(;^ω^)「赤ん坊に対してその揶揄は流石に引くわ」
(;'A`)「キモ……児童ポルノ所持者……」
(´・ω・`)「オーケー今のは俺の言葉が悪かった。オイ、ここに寝かせろ」
テーブルに、これまたスーパーマーケットでかっぱらってきた新品の毛布を敷き、そこに寝かせるように指示を出す
奴は割れ物を扱うかのようにそーっとハインを置いた。相変わらず、サイレンの様に泣き声を響かせている
*(;;)*「びえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
(´^ω^`)「おー、ヨチヨチ。おじさんがすーぐウンチッチポイしてあげゆからねー」
(; ω )「ヴォェッ」
('A`)「余りの気持ち悪さにブーンがつわり迎えた」
(´・ω・`)「あら何ヶ月かしら?巫山戯てねえでちゃんとやり方見て覚えろ」
そう言うと、ハインの衣服をテキパキと脱がした後
紙オムツのテープを剥がし、躊躇なく中身を公開した
(´^ω^`)「ウホー!!大漁じゃないか!!」
(;'A`)「くっせ……早く処理しないとブーンが食うぞ」
( ^ω^)「デブをバキュームカーか何かかと思ってる節ある?」
('A`)「同じようなもんじゃん」
( ^ω^)「傷つく」
42
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:30:18 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「しかし……案外、近くでゾンビ化したのかもしれねえな」
('A`)「あ?」
(´・ω・`)「いや……俺らに拾われるまでクソしてなかったってのは、つまりそういう事なのかなと。そこの袋取ってくれ」
('A`)「ああ……ホレ」ガサッ
赤ん坊が排便する周期には詳しくないが、成人だって一日一回はクソをひり出す。なら、もっと短いスパンになるのだろう
人間がゾンビ化するまでの時間は、受けた傷により変わる。腕を噛みつかれたくらいなら、一日二日
致命傷なら、死後早くて数分でゾンビ化する。なんともデタラメなウイルスだ
ハインを背負っていた父親は、恐らく前者だろう。そして、人間が、ゾンビが、徒歩で移動できる距離など高が知れている
('A`)「その辺、幸運だったかもな。運ばれてる最中に泣きわめけば、たちまち無脳種の餌だ」
(´・ω・`)「さぁて、どうだろうな……もしかしたら、とことん神様に嫌われてるかも知れないぜ?」
『神様』。その言葉に、乾いた笑いが出た
そりゃそうだ。親父が死んでる。これだけで最大級の不幸の筈だ
しかも父親が望んでいたのは、『生存者』に拾われる事だったろう。それが、自身が亡くなる原因となったゾンビに拾われたと来た
*(*‘‘)*「あーう、きゃい!!」
そんな皮肉な運命も知らず、ケツを綺麗に拭かれたハインは満足そうに笑い声を上げる
幸運か、不運。俺達には彼女の立場を決める権利など無いのだろう。きっと、それは神様にだって言えることだ
('A`)「ほれ、今日の晩飯」ガサッ
( ^ω^)「いらんお」
('A`)「ブーン晩飯いらねーんだってよーーーーーーーーーー!!!!!!!」
( ^ω^)「ちゃんと説明しなきゃわかんねーか?なぁ?」
そして俺はブーンの晩飯にこのクソをこっそり混ぜる事を決意したのであった
43
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:31:29 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
( ^ω^)「ピットマスターは言っていたお。SPGがあれば大抵なんとかなると」
('A`)「ああ、胸やけしそうな奴な」
(#^ω^)「ピットマスター達には敬意を払えェ!!!!!!」ドン!!
('A`)「うわ、突然キレる若者」
バーベキューコンロの炭が爆ぜる。網の上では、切り分けられた人間オナホ(男)の腹肉が火にチロチロと舐められ、脂を滴らせていた
ゾンビと言えど味覚はある。生で齧るのも良いが、たまには調味料を振りかけて焼いた肉も味わいたい
ブーンは見かけによらずアウトドアが趣味だったようで、たまにこうしてワイルド(雑な)料理を作ってくれるのだ
( ^ω^)「今夜はこいつでご機嫌だぞマーサ」
マーサって誰だよ
(´^□^`)「ほーれ、ミルクでちゅよー」
傍らでは、雨合羽を着こみマスクを着けたショボンが、ハインにミルクを与えている
塩ビ手袋と袖をビニールテープでくっ付け、肌の露出を極限まで抑えたお手製の『クリーンウェア』だ
手袋は毎回交換している為、不衛生になることは無い。枯渇が一番恐ろしいが、たんまりと積み込んだのでしばらくは安泰だろう
*(‘‘)* チュッチュッチュッチュッ
ゾンビが用意したものと知ってか知らずが、哺乳瓶の中身はみるみる内に減っていく
ああ、俺も腹が減ったな。心臓を始めとした臓器はまとめて機能してない癖に、胃袋だけは絶好調みたいだ
いや、腸とかも多分機能してるっぽいよな……ウンコ出るしな……無能種は出ねえのになんでだよクソ
44
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:32:24 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「それにしても手慣れてるおね。子供がいたのかお?」
そうだ。オムツ替えといい、ショボンは気味が悪くなるほど赤ん坊の扱いに慣れている
なんか、こう、家庭とか持つような男に見えな……見え……つーか……
('A`)「似合わねーーーーーーーーーーーーーーーーーー……」
( ^ω^)「マジそれ」
(´・□・`)「お前らの正直な所は気に入ってるが、時々本気でぶち殺したくなるわ」
*(‘‘)*「あう」
(´・□・`)「おっと」
食事を終えたハインの背中をポンポンと叩き、ゲップを促す
*(‘‘)* アァス
ゲップか今の?
(´・□・`)「ハイスクール時代にベビーシッターで荒稼ぎしてたんだよ。『昔獲ったなんとやら』ってな」
('A`)「どっちにしろ似合わねーじゃねーか」
( ^ω^)「つーかシッターってそんな稼げるバイトでもねーお?」
(´^□^`)「ついでに奥様の股座の寂しさを癒してあげてたりね!!!!」
('A`)「それでこそショボン!!」
( ^ω^)「いよっ!!天も慄くクソ野郎!!」
(´^□^`)「よせやいよせやい!!!!!!」
45
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:33:03 ID:Eo9hzRWw0
(´・□・`)「いやガチでこの話を掘り下げるのやめて欲しいんだけどな。ブーン超えの超巨体に圧し掛かられた時は流石のオチンポ様も根元から折れ曲がるかと思ったし」
('A`)「詳しく聞くのはやめとこう」
(´・□・`)「流石に『父親』から依頼された時は逃げた」
( ^ω^)「見境……あったのかお……」
(´・□・`)「お前が俺にどんな印象を抱いていたのか理解したよ」
*(´`)* ウトウト
(´・□・`)「おっと、おねむか。寝かしつけてくるわ」
( ^ω^)「あいお」
ショボンはハインの背中を撫でつけながら、モーターホームの居住スペースへと向かった
大型トラックを改造したもので、屋根には発電用の太陽光パネルと野外用スピーカー備え付けている
中は、床に固定されたベッドと冷蔵庫、電灯に冷暖房。それと、イトーイの犬小屋等
それと、雨水タンクと倉庫兼用のオンボロ自家用車を牽引している。結構な重量になるのでスピードはあんまり出ない
後なんかバッテリーとかなんか色々積んでるけど説明クソ面倒なんで堪忍して欲しい
要点だけ伝えると、今日ここに新しい物が追加された。ベビーベッドだ
これもスーパーマーケットから持ってきたもので、俺達の寝床同様に床に固定した
更に急ブレーキや突然の事故にも対応できるようにチャイルドシート+なんかゴチャゴチャしたクッション的何かも追加
イトーイが張り切ってアレよアレよと言う間に設置しちまうもんだから、呆気に取られ説明あんまり頭に入らなかったからこれも堪忍してくれ
そもそも犬だから説明下手なんだよ。そこも可愛いんだけど
46
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:39:12 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「イトーイと喋らん奴は?」
('A`)「散歩行った」
( ^ω^)「へぇ……で、手に持ってる使用済みオムツで何をしようとしてんだお?」
('A`)「お前だけに特別なご馳走を作ってやろうと思って……」
( ^ω^)「世が世なら訴えてる所だお」
('A`)「そんな事言っても結局最後は食うんだもんなぁ」
( ^ω^)「食わねーよ馬鹿か」
軽く舌打ちを交わし合い、クソの臭いを漂わせる袋を遠くへと投げ捨てる
かつて人の往来で賑わってた頃ならちょっとしたテロ行為だったろうが、今じゃ世界のどこもかしこもゴミと瓦礫と歩く死体だらけ
放置された生ごみが詰まったコンテナとなんら変わりはない。文句を言われる筋合いも無いのだ
47
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:41:29 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「あー」
折り畳み椅子にドカリと腰を下ろし、空を見上げた
ネオンや外灯が仕事をしなくなった世界では、星の明かりが存分に幅を利かせている
('A`)「どーなっかねこれから……」
( ^ω^)「なるようになるお。今までと同じ同じ」
肉の焼き加減を確かめながら、デブは呑気な返事を返す
確かに幾度となく危険に見舞われてきたが、こうして安定した旅を続けていられるくらいの余裕がある
ゾンビのタフさに人間の知性、二つを併せ持つ有能種は荒廃した世界の環境に適しているのだ
俺はいつもこいつらに『お前は心配性の気がある』とよく言われるが、自分でも多少はそう思っている
('A`)「……」
(´・ω・`)「考え事か?」
しばらくポケーっとしていると、缶ビールを数本抱えたショボンが戻ってきた
('A`)「娘を取り戻しに来たブライアン・ミルズからどうやって逃げ切れるかを考えてた」
(´・ω・`)「娘誘拐した時点で詰みだろ」
( ^ω^)「どう言い逃れしても殺されるやつ」
('A`)「ジョン・ウィック雇うしかねーか……」
(´・ω・`)「あいつほぼ私怨でしか行動してなかったけどな」
( ^ω^)「3公開前に世界終わったのマジクソだと思うお」
48
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:44:26 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「なーんつって適当なことほざきやがる時ァ大体真面目な考え巡らしてるってのはお見通しだ」
('A`)「テメーは俺のママかよ」
(´・ω・`)「俺の子ならもっとハンサムに産まれる」
('A`)「自惚れが過ぎる……おっと」
投げ渡された缶ビールを、取り落としそうになりながらも辛うじてキャッチする
『冷たい』。痛覚が消えても温度感覚が消えなかったのは、こういう時に嬉しい
('A`)「今日は贅沢だな?」
(´・ω・`)「旅の仲間が増えたんだ。祝わないとな」
( ^ω^)「新メンバー寝てるんですがそれは」
『仲間』。その言葉に、俺は心から賛同出来なかった
ショボンとブーンに続いて、プルタブを起こす
(´・ω・`)「一人と一匹がまだ帰って来てないが、先に始めちまうか」
( ^ω^)「ほいじゃ、乾杯」
('A`)「乾杯」
(´・ω・`)「おっぱい」
喰う事を躊躇い、保護することを選んだとは言え
やはり俺達はゾンビで、ハインは『生存者』だ。深い溝がある
あくまで一時預かりをしている身に、必要以上の情を掛ければ……
('A`)「……」
いや、感傷が過ぎた。どうせすぐに別れるのだ
心配性は俺の悪い癖。いつも通りのバケモノとしての日常が帰って来るだけだ
49
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:45:04 ID:Eo9hzRWw0
(* ^ω^)「チンチン!!」
(*´^ω^`)「チンチン!!」
(* ^ω^)「おっぱい!!」
(*´^ω^`)「おっぱい!!」
('A`)「……」
速攻で出来上がり小学生並みの知能に成り下がった二人を放置し、焼き上がった肉を手に取った
('A`)「……」モグ
やはり『人』は美味い。抗いようもなく、また抗う気も無いバケモノとしての美食を堪能した
50
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:45:55 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
( ^ω^)「ほーれ、たかいたかーい!!」
*(*‘‘)*「キャッキャッ!!」
( ^ω^)「ひくいひくーい!!」
*(*‘‘)*「キャッキャッ!!」
( ^ω^)「ブサイクブサーイク!!」
('A`)「おい」
*(*‘‘)*「ブフォwwwwwwwwwwwwww」
('A`)「このガキ……」
翌朝。俺達は改めて行き先を地図を広げて協議していた
(´・ω・`)「確かに空港にはハンターがいるっつってたが、確定したわけじゃねえだろ?」
('A`)「だとしても一度覗いとくのは筋だろ。物資的な意味でもよ」
51
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:46:38 ID:Eo9hzRWw0
今までは気の向くままの自由な旅だったが、ハインを拾ったことで状況が変わった
ハインの『生存』と『引き渡し』を重点に目的地を決めなければならない
現段階で持ち合わせている情報は、空港にいると噂されるハンター。これも、生存者が『いる』と確定したわけではない
ネットインフラすら死んでる現在、直接確認しなければ分からないのは俺達も生存者も同じだ。そこには危険が付きまとう
安全圏と噂される場所が無脳種によって陥落されていたなどザラにあるし、その逆も然りだ。排他的な生存者なんかもいるし
まぁ、それでも奴らと比べて俺らの方が格段に安全なのは保障されている。無脳種とか基本的にこっちに関心持たないからな
だが、やはりハンターとなれば話は別だ。死ぬ危険性が格段にあがる
しかしそれだけ『生存者』にとっては安全な環境だと言う事だ。赤ん坊の引き渡し先には持って来いだろう
('A`)「ここを無視して通っても、生存者に会えるかどうか、そもそもハイン用の物資にありつけるかどうかすらも怪しい」
('A`)「なら、多少俺らが危険な目に遭っても空港を目指すべきだ。そりゃわかってんだろ?」
(;´-ω・`)「まぁ……そうだがよ」
いれば万々歳、いなけりゃ潤沢な物資を得られる。リスクに見合うリターンはある
('A`)「決まりだな」
(´・ω・`)「んもう……強引なんだから……レイパー……強姦魔……アナルファッカー……」
('A`)「言いがかりにも程がある」
( ∵)
地図を畳んで仕舞うと、テーブルの上に喋らん奴が淹れたコーヒーが人数分置かれた
昨日の散歩で見つけたらしい。思わぬ土産物で昨日の宴がさらに騒がしくなったのを思い出す
52
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:49:27 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「ありがとよ。久々だなぁコーヒーも。オフィスで出されてたクソマズイ泥水を思い出すぜ」
('A`)「えっ泥水飲んでたの?キッショ」
(´・ω・`)「アスペかよ比喩に決まってんだろ」
湯気を立てるそれを一口。キリリとした苦みが舌を走り、脳を刺激する
正直な話、ブラックは生前から好きじゃなかったので砂糖かクリープが欲しい所だ。粉ミルクを失敬してしまおうか
( ^ω^)「ほーれ」
*(*‘‘)*「うきゃー♪」
ブーンに高く持ち上げられ、歌うように笑い声を上げるハイン
発見から半日強。端から見た所、身体に異常は無い様に見える
('A`)「……その、なんだ、どうだ。ハインの様子は?」
(´^ω^`)「おやおや?素っ気なくしてても内心気になる系?告っちゃいなよ?!!」
('A`)「何を?いや真面目に」
(´・ω・`)「あーあーわかってる。充血なし嘔吐なし異常発汗なし顔色良し。いたって健康体だ」
('A`)「そう、か」
今しがたショボンが挙げた状態は、ゾンビ化の予兆として有名な一例だ
俺がこうなった時も、派手にゲロをぶち撒け汗と喘ぎが止まらなかった
とりあえずは、接触による感染は無いと見てもいいだろう。もちろん、油断は出来ないがな
('A`)「食わずに生かしておいた生存者を、みすみす無脳種にしてしまうなんざ気分が悪いからな」
(´・ω・`)「想像しただけで気が狂いそう」
('A`)「とっとと生存者に引き渡しちまえばこの関係もそれまでだ。今は赤ん坊でも成長したら俺らを殺すハンターになるかもしれねえ。それが怖ぇよ」
(´・ω・`)「そんな言い方ねえだろ……だから童貞のまま死んだんだよ」
('A`)「有脳種の最悪な所ってオチンコ勃たなくなることだよな」
(´・ω・`)「マジそれ」
子供を残す必要が無いと見なされたのか、三大欲求の一つは欠落しちまっている
日本のHENTAIコミックじゃゾンビでもバンバンヤってたのに。世の中とは儘ならぬもんだ
53
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:50:46 ID:Eo9hzRWw0
*(*‘‘)*「うっ、うー!!」
ブーンによって上へ下へと動かされるハインは「もっと」と言いたげに足をバタつかせる
あれくらいの頃は何でも楽しいんだろうな。だからってさっき俺の顔面を嘲笑したのは忘れないが
( ^ω^)「お?もっとやって欲しいって?しょうがないにゃあ……」
なんかキモい語尾を付けながら、ブーンは揚々と建物の外へと出て行く
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
( ∵)
顔を見合わせる。言葉にしなくても、常に無表情な喋らん奴からですら伝わってくる『嫌な予感』
あいつは調子乗りだ。割と無茶な事を実践しては痛い目に遭う。痛覚が無く頑丈で、身体能力が飛び抜けていたら特に
『慢心』っつー死んでも治らねえ病気を抱え込んでいるらしい
それでも。それでも赤ん坊を相手にしているのだ
テメーが痛い目に遭うような無茶をハインにも強いるとは考え難い。考え難いが
(´・ω・`)「いやオイ待てデブ」
マグカップを置いて足早に後を追うだけの危機感はあった
54
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:51:40 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「よーし、行くお!!」
案の定、嫌な予感は的中した。ハインを抱えたまましゃがみ込み、空を見上げている
この体勢、やることは一つだろう。赤ん坊を抱きかかえたままパンツの中にクソをひり出す特殊プレイで無ければ
(;´・ω・`)「やめろ馬鹿野郎!!」
( ^ω^)「たかい……」
ショボンの制止も聞かず、クソデブは力を込める
もともとデブだった身体が、一回り大きくなった。有脳種の筋力をフルに稼働させている証拠だ
(#^ω^)「たかいッシャオラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」ブォンッ!!!!!
予備動作抜きでいきなり最高速で発射されたロケットのように、ハインは空高く
(;'A゚)「」
空高く
(;´゚ω゚`)「」
空高く
( ^ω^)「……っべー」
それこそ、豆粒に見えるくらい高く舞い上がった
55
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:52:06 ID:Eo9hzRWw0
/きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!\
歓声か悲鳴か、とにかく大声を上げながらハインは上昇し、そして
/うきゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!\
重力に従い、落下する
(;'A゚)「おま、あれ死……オイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
( ^ω^)「ちょっ、静かにしてて集中してるから」
なんでこんな落ち着いてんだこいつ殺すぞ
( ^ω^)「二歩右……いや一歩左……もう一歩左か」
(;´゚ω゚`)「いや元の位置に戻ってんぞ!!」
( ^ω^)「大丈夫、デブを信じろ」
誰の所為だと思ってんだ
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「落としたら……ごめんな?」
さっきの自信はどうした
56
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:52:54 ID:Eo9hzRWw0
*(*‘‘)*「ううーーーーーーーーーーーー!!」ヒュウオオオオオオ!!
( ^ω^)「よし……ここォ!!!!!!!!!」
風を切りながら落ちてきたハインを、落下地点ドンピシャで
(#^ω^)「Wassyoi!!!」
受け止めた!!ゴウランガ!!これがデブのワザマエ!!!!
*(*‘‘)*「キャーイ!!うう〜♪」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「口から心臓出るかと思った」
('A`)「お前……」
俺は落ちてたレンガを拾い
(´・ω・`)「……」
ショボンはわざわざ廃屋の扉をぶっ壊して持ち構えた
( ∵)「……」ボキボキィ バキバキィ ゴキャ
喋らん奴は指を鳴らした。瓦礫で殴られても無表情を貫いたらしい男とは思えない威嚇行動だ
57
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:53:56 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「ちょっと……ハイン置いてくるから待ってて」
(´・ω・`)「四十秒で戻ってこい」
('A`)「殺す」
( ^ω^)「俺も男だ。ケジメはつけてやる」
*(‘‘)*「うにゅ」
デブ(ゴミクズクソ野郎)はハインを大事に抱きかかえ、クリスピークリームへと歩き出す
俺たちはその背中に殺意むき出しの目線でにらめつけた。絶対殺す。最低でも内臓はみ出すまでグチャグチャにする
(´・ω・`)「回復有効範囲ってどれくらいだったっけ?」
('A`)「お脳が無事なら何とかなる」
(´・ω・`)「お前の限界、試してみないか?」
('A`)「そそる」
前言撤回。お脳もシェイクにしてやる
以`゚益゚以「おはワン」
('A`)「露骨な犬アピール」
入れ替わりにお寝坊のイトーイが鼻を舐めながら歩いてくる
以‘゚益゚以「さっきブーンが赤ちゃん置いて走ってった」
(#´゚ω゚`)「逃げやがった!!!!!!!!!!」ダッ!!
(#'A゚)「待てオラ!!!!!!!!!!!!」ダッ!!
( ∵)「!!」ダッ!!
以*`゚益゚以「狩りごっこ!!!!???僕もやる!!ワンワン!!!!」ダッ!!
ブーンのお粗末な逃亡劇は、猟犬の血を受け継いだイトーイ全力の追走によりわずか数分で終了したのであった
58
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:56:20 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
(メ)ω(メ)「シテ……コロシテ……」
(#'A`) 、「ペッ!!!!!!殺せねえのがホント残念だぜ!!!!!なぁショボン!!!!」
(´・□・`)「今ミルクの最中だからそのゴミに構ってる暇ねえんだ。ごめんな?」
*(‘‘)* チュッチュッチュッチュッ
(メ)ω(メ)「辛辣すぎる……おつらい……」
宣言通りとまでは行かないが、ピザの具に乗せても違和感が無いくらいグッチャグチャにしたブーンを、嫌々ながら唾を吐きかけて治療してやる
これに懲りて無茶をするのを止めてもらえれば幸いだが、恐らく忘れた頃になんかやらかすんだろう
次は足先から骨をも砕くミキサーでグチャグチャにしてトイレに流す
(#'A`) 、「かーーーーーーーーーーー!!!!ペッ!!!!!!!オエエ!!!!!」
(メ)ω^)「いやもう既にゲロの範囲j(#'A`)「ああん!!!!????」アッハイごめんなさい生きててごめんなさい」
(´・□・`)「死んでる」
(メ)ω^)「はい」
59
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:57:07 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「身体の感覚が……なんか鈍い……神経繋がってない感覚するお……」
('A`)「驚きだな。神経が通ってたとは」
( ^ω^)「泣きそう」
(´・□・`)「ハイン、見ろ。今からあのバケモノが滑稽な見世物を始めるぞ」
*(‘‘)*「だう〜」
( ^ω^)「いやそんな期待を込めた目で見つめられても困るお」
誠に遺憾ながら原型近くまで回復させてやったブーンはおぼつかない足取りで立ち上がる
唾やら体液やらで非常に汚い。臭い。本来のデブらしい生き物(バケモノ)に仕上がってる
('A`)「身体洗って来い。 ハインが汚れたら感染しちまうだろ」
( ^ω^)「誰の所為だと」
('A`)「喋らん奴!!チェーンソーもってこい!!」
( ∵) ウィンウィンウィイイイイイン!!!!!!
( ^ω^)「自業自得でsいや用意周到過ぎるほぼノータイムでエンジン掛けてんじゃねえお」
こいつ結構根に持ってんじゃねえのか?
60
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:58:56 ID:Eo9hzRWw0
(´・□・`)「よっと」ポンポン
*(‘‘)* アアス
(´・□・`)「そんじゃ、そろそろ身支度するか」
('A`)「あの豚が身体洗ってる内に出発しようぜ」
<タイヤパンクさせとくお
<ワンワン!!!!グルルルル!!!
<ああーーーーーーーーーーー!!!!!嘘です申し訳ありませんお!!!あーーーーー!!!困りますお犬様!!あーーーーーー!!!!あーーーーーーー!!!!!困りますお犬様!!!!あーーーーーーー!!!!困ります!!!!あーーーーーーーーーー!!!!!!
('A`)「イトーイほどほどにしとけよ!!!!俺もう唾出したくないからな!!!!」
<尻はやめろ尻は!!!!
(´・ω・`)「腹壊すぞ!!!!!」
<俺の心配!!!!!!!!!
61
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 10:59:54 ID:Eo9hzRWw0
ゴミを捨て、クリスピークリームに置いていた物資を積み込む
イトーイはトラックの最終チェックを行っていた。デブは身体洗ってた
('A`)「これは?」
(´・ω・`)「いるやつ」
('A`)「これは?」
(´・ω・`)「いらんやつ」
*(‘‘)*σ「あう」
(´・ω・`)「ブサイク」
('A`)「イケメン」
*(‘‘)*「ぶっちゃ」
('A`)「イケメン!!」
*(‘‘)*「ぶっちゃ!!」
(´・ω・`)「この歳でもうまともな審美眼持ち合わせてるのか。将来有望だな」
('A`)「教育が悪い」
('A`)「食料の貯蔵は……まぁしばらく持つだろ」
余った肉は燻製にして保存済みだ。腐った肉も食えなくはないが、味に問題がある
他にも、既製品の保存食や缶詰、お菓子等を積んでいる。空腹は楽しい旅に支障をきたすからな
以`゚益゚以「チェック終わった。いつでも走れる」
( ^ω^)「身体洗った。先にベッド行ってる」
(´・ω・`)「死ねクソブタ野郎」
( ^ω^)「ああんいけずぅ」
身ぎれいにした豚は親指を噛んだ。キショイと思った
62
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:00:54 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「さって、行きますか……」
物資、食料、俺らにハイン。『荷物』は全てトラックに乗った
本日一人目の運転手は、僭越ながら俺が務めさせて頂く。キーを差し込み、回す
エンジンは軽快に唸り声を上げ、数日ぶりの出番に身を震わせる
( ^ω^)「お客さん、シートベルトは?」
助手席に座ったブーンは、荷台と繋がる窓からショボン達に声をかけた
(´・ω・`)「オーライ大将。安全運転で頼むぜ」
*(‘‘)*「ばぶ!!」
以`゚益゚以「ワンワン!!」
( ∵)
( ^ω^)「機内の安全を確認っと」
('A`)「よっしゃ、しゅっぱ……の前に」
ドリンクホルダーに差し込んでいたウォークマンに手を伸ばす
ご機嫌なドライブにはご機嫌な音楽を、だ
('A`)「……こいつだな」
♪Tom Jones - If I Only Knew
https://www.youtube.com/watch?v=hqDEn7uUhFc
('A`)「改めまして、出発っと」
シフトレバーをローに入れ、アクセルを踏んだ
荒い鼻息を吐くかのようにガスが吹きだし、タイヤが前進を始める
また、新しい景色を見る旅が始まった
63
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:01:22 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
( ^ω^)「昨日勇気出してチンチン食べてみたんだお」
('A`)「うん」
( ^ω^)「意外と食えた」
('A`)「人食ってる立場から言えた義理じゃないが、悪食が過ぎるんじゃね?」
( ^ω^)「次は玉に挑戦する」
('A`)「ビル・ボスかよ」
( ^ω^)「正直あのシーンに影響された」
64
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:04:57 ID:Eo9hzRWw0
空港まで『真っすぐ』行けば三日足らず。過積載の為スピードが出ないからだ
しかし、ブーンとショボンの要望で数々の道草を食っていくことになった。故に到着予定は一週間後だ
('A`)「つーか結局遊園地行くのかよ」
( ^ω^)「映画と現実の見境くらいついてるお。トゥインキー中毒のハンターなんていないって!!」
('A`)「既に映画みたいな世界になっているんですがそれは」
そもそも自分がモンスターになってる自覚すら無くなってそうだ。これだからデブは
( ^ω^)「チンチンを串刺しにした時は流石に膝が震えた」
('A`)「痛い話すんなよ」
( ^ω^)「俺らのチンチンが傷ついたらお前に舐められると思ったら食欲が失せる」
('A`)「俺がお前らの身体を舐めた事があったか?そもそも俺が舐めると思った?死んで?」
( ^ω^)「冗談じゃん……お?」
('A`)「どうした?心筋梗塞?」
( ^ω^)「いや心臓動いてないし……そうじゃなくて、あそこ怪しくね?」
ブーンが指さす先には、複数の車が横並びで道路を塞いでいる
道路脇にも、車が複数。あからさまに放置されていた
65
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:05:37 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「怪しみ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
( ^ω^)「あからさま〜〜〜〜〜〜〜……」
『絶対に通さないぞ』という強い意志を感じる。馬力を上げて突っ切っても良いが……
('A`)「罠だと、なぁ……」
( ^ω^)「爆発しそう」
('A`)「物資燃える方向の罠はねえだろ」
( ^ω^)「あそっか。賢いお」
('A`)「お脳が腐ってんじゃねえのか」
( ^ω^)「そこまで言う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????」
ブレーキを踏みこみ、停車する
荷台から、ショボンが顔を覗かせた
(´・ω・`)「どうした?」
('A`)「道路が車で塞がってる。見てくるわ」
(´・ω・`)「銃いる?」
('A`)「セガールが銃を持ったら弱体化するだろ?」
(´・ω・`)「お前はセガールじゃない」
('A`)「せやった」
66
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:06:29 ID:Eo9hzRWw0
素直に拳銃を受け取り、背中側のベルトに差し込む
更に一つずつ、窓からヘルメットが差し出されたのでこれも受け取った
('A`)「ブーン、援護頼む」
( ^ω^)「任せろ」
(´・ω・`)「銃は?」
( ^ω^)「チャック・ノリスが銃を持ったら弱体化するお?」
(´・ω・`)「お前はチャック・ノリスじゃない」
( ^ω^)「せやった。でも斧で頼む」
('A`)「ショボンは運転席に回ってくれ。いざとなったら強行突破で」
(´・ω・`)「そりゃ良いが、出来るだけ無しの方向でな」
('A`)「はいはい……」
有脳種だけならまだしも、今は赤ん坊を抱える身だ。無茶は出来ない
しっかし、周囲に無脳種の群れがいたら楽だったのだがなぁ。まぁたまには身体張らねえと
( ^ω^)「無茶はやめようなぁ」
('A`)「口を開くなデブ」
( ^ω^)「ひぃん」
67
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:09:29 ID:Eo9hzRWw0
問題の障害物だ。この手に潜んだ可能性は三つ
① 偶然の産物
② この先にゾンビが大量発生した為、通行止め
③ 生存者から物資を奪う『バンディット』の罠
('A`)「……めんどくせえなぁ」
さて、一つ一つ考察してみるか
① 偶然にしてはあからさまな封鎖だ。ここを通る生存者も少なくなかったはず。俺らが通る前に撤去されてるんじゃないか?
② まだわからないが、それなら書置きか何かが残っているはず。保留
③ この線が一番濃い。『空港にハンターがいる』という噂を餌に生存者を狩っているのでは?
('A`)「……」
車は完全な横並びではなく、人が一人通れるくらいの距離をおいて、右車線左車線と交互に配置されていた
遠目からでは無差別に見えても、近くに寄れば作為的な置き方だ。やはり罠か
('A`)「待ってろ」
( ^ω^)「はいお」
メットを被り、拳銃を抜く。先頭列の車の間を抜けてゆっくりと歩く
車は十列ほど続いている。一つ一つ中を確かめて行きながら前に進む
当然、生存者どころかロクな荷物すら入ってない。ガソリンが残ってたら御の字だな
('A`)「ヘイ!!」
呼びかけてみるが、返事は返ってこない。オーディエンスのノリが悪い。アリーナ冷めてる
携帯だって数世代前から返事してくれるのに。冷たい世の中になったもんだ
68
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:10:05 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「……」
六、七、八列。そろそろこの障害物も終わりに近い
拳銃の撃鉄を起こし、左手で銃把の底を支えた。射撃は苦手だが、威嚇程度には扱える
('A`)「……」
九、十、抜けた。無意識に、舌は上唇を舐める
襲撃は、無い。だが、道路には新しい障害物が敷かれている
('A`)「スパイク……」
警察や軍が使用するような、暴走車両用の『スパイクストリップ』だ
無理やり押し通ろうとした車を、ここで止めるのだろう。二重罠だ
('A`)「ブー……!!」
(#゚∋゚)「動くな!!」
(#゚д゚ )「銃を捨てろ!!」
ブーンに呼びかけようとした瞬間、道路脇の車両から湧き出る生存者共。ちょい遅かったか
69
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:12:29 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「……」
ひーふー……五人。恐らく、予備数人
携行武器はアサルトライフルに、サブマシンガンか。ヤダなぁ、身体グチャグチャになる奴じゃん
うち二人は俺に、一人はブーン、そして残りはトラックに向かった
(#゚∋゚)「聞こえなかったか!!捨てるんだ!!従えば命まで奪いはしない!!」
しかし……随分とオマヌケなバンディットもいたものだ
物資が目的なら『サッサと撃ち殺せばいい』。わざわざ脅しかける必要はない
そもそも、物資を奪われ荒野に投げ出された生存者がどうなるか。想像できないほど馬鹿でもねえだろう
餓死か、食われるか。早かれ遅かれくたばるのだ
('A`)「人間だなぁ」
良心最後の呵責というやつか。奪っておいて命だけは見逃す、無自覚の傲慢を感じる
そりゃ、俺もこいつらも元は普通の人間だ。環境が俺たちを悪にしたってんならしょうがねえだろう
('A`)「……」
笑える。俺も奴らも、同じ穴の貉だ。獲物をわざわざ苦しませてから食うような胸糞悪いバケモノだ
決定的な違いがあるとすれば、俺たちはバケモノとしての生き方を否定しないし、後悔しない
奴らは『良心』という旧世界の歪な型に嵌った、ある意味では哀れな存在だ
どうした?楽しめよ?略奪者なら略奪者らしく
('∀`)「……」
全部ごっそり奪ってみろ
70
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:19:49 ID:Eo9hzRWw0
(;゚д゚ )「待て、こいつ顔色が……ッ!!!!」
('A`)「バン」
向かって右の男の額を撃ち抜く。弾丸は頭蓋骨を貫通し、割れた水風船のように中身をぶちまけた
(#゚∋゚)「お前ッ!!」
ライフルが火を噴くと同時に、拳銃を左側の男に投げつけた
ゾンビと言えど撃たれながら標準を合わせるなんて器用な真似は出来ない
(; ∋゚)そ「ガッ!!」
俺の胴体に両指で数えられるほどの風穴が空いてしまったが、頭をぶち抜かれなきゃ問題はねえ
拳銃は上手く顔面にヒットし、引き金を引いたまま男は仰け反った
('A`)「あらよっと」
熱を帯びた銃身を掴み、捻る。ライフルはたやすく俺の手の内に収まった
('A`)「あ、あら?」
奪ったそれでサッサと殺そうとしたが、弾丸は全て撃ち尽くされている。面倒だな
(;゚∋゚)「ヒッ、撃て!!殺せ!!」
腰が抜けたらしい男は、鼻血を流しながらジタバタと這いずりながら待機させていた仲間に指示を出す
道路脇の車体から銃口が複数覗く。クッソめんどくっせ
('A`)「オラ来い!!」
(;゚∋゚)そ「ぎっ!!はな、放せぇ!!」
髪の毛を引っ掴み、近くの車へと引きずり身を隠す
アスファルトが何度か弾けたが、一発も当たらなかった。ノーコンが
71
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:21:50 ID:Eo9hzRWw0
(;゚∋゚)「やめr」
('A`)「うるせえ」
右手で首を掴み、へし折って黙らせる
血走った眼球がぐるりと上を向き、口からごぼりと血の泡が噴き出した
ガリクソオタ野郎だった俺でも、有脳種になれば握力もロック様並だ
つまみ食いをしたいところだが、今の最優先は……
('A`)「こいつこいつ」
ホルダーに差し込まれた新しいマガジンを抜き取り、リロードを行う
ブーンは……どうでもいいけどトラックが心配だ。荷台開かなきゃ大丈夫か
('A`) チラッ
( ^ω^)「デブアックス!!」
あ、大丈夫だわ。デブ無双始まってるわ
お前射線上で暴れまわるんじゃねえよ治すのめんどいんだよ
('A`)「……」
問題はあの補欠人員だ。ブーンなら車押して距離詰められるんだが……
あっ、別に車にこだわる必要なかったわ。盾の代わりなんて幾らでもあるじゃん
72
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:22:54 ID:Eo9hzRWw0
(#'A`)「よっこらぁい!!」
ライフルを一度車に立てかけて死体を放り投げ、けん制する。銃声が幾つか響いた
その隙に車体の横へ回り、肘でガラスを割って縁を掴んだ
(#'A`)「せぇいッ!!」
そのまま力任せにドアをむしり取る。内側の取っ手を左手で掴み、盾のように構えた
ライフルを再度拾い、窓の縁に銃身を乗せ安定させる
(#'A`)「オラオラァ!!」
威嚇射撃を行いながら近付いていく。当てる必要はない
近付きさえすれば、後は殴って殺すだけだ。チョロすぎて笑う
(#'∀`)「ワハハハハハ!!!!!!!」
気分はターミネーターだ。俺も液状化とかしたい
('A`)「うおっと」
扉の盾がバチバチと弾ける。焦ってるな
頭が冷静なら逃げた方が得策だと思うが、好都合だ
73
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:23:58 ID:Eo9hzRWw0
ミ,,#゚Д゚彡「回り込むぞ!!」
('A`)「あっそれはやばい」
数の利を忘れてた。俺も冷静じゃない
ミ,;゚Д 彡・'.。゜「死nゲバッ」
車体から身を躍らせて現れた男の頭に、斧が突き刺さる
('A`)「……」
( ^ω^)b「はーーーーーーーー!!!!!俺ってば最高ーーーーーー!!!!!」
('∀`)b「ナイスプレイ!!」
( ^ω^)「笑顔きっしょーーーーー!!!!!」
('A`)「褒めたのに」
すでに一仕事終えたブーンが斧を投げつけたらしい。よくあの場所から当てたな
さて、残り一人
('A`)「……」
「く、くそ……!!」
威嚇射撃は止まった。リロードの最中だろう
俺のライフルも撃ち尽くした。邪魔でしかないので捨てていく
74
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:25:36 ID:Eo9hzRWw0
('A`)そ「悪い子どーこ…うおっ!!」
車体をのぞき込むと、拳銃の弾丸が横切り、とっさに顔を引っ込める
あまり様子見に時間を掛けるとライフルのリロードを済ませられる。めんどい
('A`)「よっこら!!」
扉を車体の向こう側に放り投げ、直ぐに回り込む
川;д川「ッ!!」
狙い通り、下敷きになっている。車の扉といえど結構な重みがあるからな
髪の長さから見て、こいつは女か。ブーンが喜ぶな
('A`)「おっとォ!!」
川;д川そ「ギャッ!!」
空いてる手で拳銃を向けられたが、構わず扉を踏みつけて圧迫する
弾丸は的外れな方向へ飛んでいき、スライドがオープンのまま固定され弾丸が尽きたことを伝える。そのまま、圧力をかけていった
川;д川「あ……あんた、何者……?」
('A`)「知ってどうする?誰に伝える?あの世でお仲間との酒の肴にでもするのか?」
川;д川そ「ぐ……ああッ!!やめて、苦し……!!」
('A`)「因果応報だ。奪って食ってたんだろ?お前らと同じことをやるだけだ。安心しろ」
('∀`)「美味しく平らげてやるからよ」
川;д川「待ッ……」
75
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:26:01 ID:Eo9hzRWw0
足の裏に、枯れ枝が折れたような感触が広がった
.
76
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:27:33 ID:Eo9hzRWw0
――――
―――
―
('A`)「……よく考えたら、こいつらにハイン渡せば良かったんじゃね?」
(´・ω・`)「バンディットに赤ん坊を育てられるわけねえだろ。捨てられて終わりだ」
以*`゚益゚以「美味しい!!ワンワン!!」モグムッシャ
煩わしいトラブルではあったが、結果的に『食料』と物資が増えたのでプラスだった
特に武器弾薬が美味しい。近寄って殴るより安全だからな。ゾンビが銃撃ってくるホラー映画って大体クソだよな
( ^ω^)「冷蔵庫パンパンなんだけど……」
('A`)「食えば?」
( ^ω^)「腹もパンパンやねん」
('A`)「満腹の概念があったんだな。デブの癖に」
( ^ω^)「お前らデブ嫌いなん?」
(´・□・`)「熱い」
('A`)「臭い」
( ^ω^)「肥満体国の三割敵に回したな?知らんぞお前ら」
勿体ないが、詰め込めない分の『食料』は穴に埋めた
他にも車を退かしたりなんやりしたらすっかり日が暮れた。幸先がクソ悪い
77
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:28:13 ID:Eo9hzRWw0
*(‘‘)* チュッチュッチュッ
(´・□・`)「今夜は野営するか?」
('A`)「……」
ブーンが暴れまわったおかげで、トラックに損害はなく、荷台のメンバーは無傷だった
だが……
*(‘‘)* アアス
('A`)「……俺は進みたい」
( ^ω^)「お?急がなくてもよくねーかお?」
('A`)「そうだけど……」
こいつらは、気に留めなかったのか?
今日の襲撃で、もしかすると……
( ^ω^)「ドクオ?」
(;'A`)「いや……今日は休むか……」
馬鹿か俺は。終わったことを気にしてどうする
そもそもこんな襲撃なんて、頻繁に起こることじゃねえだろ
寝よ。今日の見張りは喋らん奴担当だし
( ∵)「……」
('A`)「コーヒー好きだなお前」
( ∵)「……」
('A`)「いや寝るから……いらん……」
荷台に上り、ベッドに寝転んだ
いつもより大分早い就寝だったが、直ぐに眠気が襲ってきた
有脳種になってから、夢は見ていない
78
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:29:14 ID:Eo9hzRWw0
( A )「……」
親がいた筈だ。兄弟もいた筈だ
長い間一緒にいたし、仲も悪くなかった
俺はクズだったが、家族を蔑ろにするほどのクソ野郎でもなかった
人並みに、家族を想い愛していた筈だ
だが、思い出せない。顔も、生きてた頃の想いも
お袋の飯の味も、親父と見たショーの内容も、弟と歩いた学校への道筋も
だから、わからない。何が正解か
*(‘‘)*
俺は、あの赤ん坊にどう接すればいいのか
ショボンは上手くやっていると思う。ミルクやオムツの世話は任せっぱなしだ
ブーンもブーンで、無茶をやらかしたが、ハインを楽しませてやっている
喋らん奴もイトーイも、二人に比べれば控えめだが、あの赤ん坊の為に働いている
それも、楽しそうに
俺はどうだ?確かに食うのは躊躇ったが、その後何かをしてやったか?
手放すことだけに、必死になっている気がする。それが為になると思っているからだ
それが正解か?
想いによる行動か、『お荷物』からの解放か
確かに気苦労が増えた。それは間違いない。あいつらも同じだろう
だが、見てみろ。あいつらは『楽しそうだ』
79
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:29:58 ID:Eo9hzRWw0
今日の襲撃で、ハインが死ぬ可能性もあった
それでもあいつらはそんな不安を抱える素振りすら見せない
いつもと変わらず、それ以上に旅を楽しんでいる
俺だけだ。俺だけが不安を抱えている
俺だけ、俺が、俺が俺が俺が!!!!
( A ) 俺だけが!!!!!!
('A゚) 苦しんでいる!!!!!!!!
不安に!!!!!バケモノには理解できない感情に!!!!!!
*(‘‘)* この!!!!
('A゚)
*(‘‘)* 赤ん坊によって!!!!
80
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 11:30:40 ID:JmK0We020
むちゃくちゃ面白いな…
81
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:30:44 ID:Eo9hzRWw0
そうだ、きっと最初の感情が間違っている
ハインを食わなかったのは、きっと気の迷いだったのだ。雰囲気に飲まれたのだ
ゾンビに、バケモノに、そんな感情など残ってる筈がない
*(‘‘)*
('A゚) そうだ、バケモノ本来の『役割』を果たせ。あの時すべきだったことをしろ
('A゚) 食え、食え、食え!!!頬に噛みつき、柔らかな肉を頬張れ!!
('A゚) 終わらせろ!!この茶番を!!家族ごっこを!!邪魔な荷物など捨てていけ!!
*(‘‘)*「どっく」
(;'A゚)「ッ!!!」
82
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:31:42 ID:Eo9hzRWw0
俺は何をしている?寝ていた筈だ。何故ハインを抱きかかえている?
俺は何をしようとしていた?何を考えていた!?
*(‘‘)*「どっく」
(;'A゚)「名前……」
俺の、名前か。は、はは、三日足らずで名前を覚えたか
( ^ω^)「スヤスヤ!!!!!!!」
(´-ω-`)「ぐーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
以`-益-以「ンゴゴ……」
(;'A`)「……」
今夜はもう、眠れそうにない
*(‘‘)*「うー?」
(;'A`)「悪いな、起こしちまって……」
ハインをベビーベッドに戻し、タブレットPCを手に取った
見張りを交替してもらおう。映画でも観ながら、夜を越そう
*(‘‘)*「んぶぶ」
(;'A`)「……クソ」
口から零れた悪態の行方は、俺にすらわからなかった
83
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:32:45 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
(´・ω・`)「日本のアニメってOPで走るよな」
('A`)「……」
(´・ω・`)「シカトは辛い」
('A`)「あっごめん何?」
(´・ω・`)「日本のアニメってOPで走るよな」
('A`)「シカト案件だった」
(´・ω・`)「コミュ障が」
二日が経ち、道草の一つである遊園地に到着
なんか電源生きてたんで、遊具乗り放題だった。寄ってきた無脳種はショボンが遠ざけた
ゾンビランド案件は今の所ない。美人姉妹がやって来たら速やかに離れちまおう
(´・ω・`)「ここ数日、心ここにあらずだな」
('A`)「チンチン」
(´・ω・`)「心ここにあらず所の話じゃなかった。お前がそんな適当な態度を取る時は……」
('A`)「ママかよ」
(´・ω・`)「端折んな」
84
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:34:32 ID:Eo9hzRWw0
俺らの目の前では、メリーゴーランドがメルヘンな光と音楽をまき散らしながら回っている
♪
https://www.youtube.com/watch?v=tn6iL1JkCHQ
( ^ω^)ノシ「パパーーーーーー!!撮って撮ってーーーーーー!!!!!」
*(‘‘)*「だうあーーーーーー!!!!」
(´・ω・`)「はいはい」
ショボンはベンチから立ち上がり、木馬に乗ってはしゃぐデブとハインをカメラに収める
ハインはともかくデブの絵面がキツい。木馬ギッシギッシ言うとるやろ
( ∵)ノシ
無表情ではしゃがれるのもキモいんだけど。キャラが掴めねえあいつ
(´・ω・`)「ハインが気がかりか?」
('A`)「……」
(´・ω・`)「無言は肯定と受けとるぜ」
('A`)「……まぁな」
以`゚益゚以「クゥーン……」
ベンチの下で寝転んでいたイトーイが、鼻を鳴らして俺の顔を見上げた
軽く頭を撫でてやると、また顔を降ろしメリーゴーランドをぼんやりと眺める。手に着いた体液を軽く振り払った
85
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:36:34 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「ほれ、除菌シート」
('A`)「悪い」
ショボンから受け取ったウェットシートで手を拭きとる。ここ数日で随分衛生観念のレベルが随分と上がった気がする
(´・ω・`)「よっこら……悩みがあるなら聞いてやってもいいぜ?」
('A`)「……」
(´・ω・`)「おいおい、そこは『上から口調が気に入らねえ』っつー所だろうが」
('A`)「……悩み、か」
(´・ω・`)「違うのか?」
どうだろう。『悩み』であることは間違いない
だが、こいつらに伝えるまでも無いような気がする。どうせ、期間限定の悩みだ
ならいっそ、別の質問をしよう
('A`)「……ハインが邪魔だと思ったことは?」
(´・ω・`)「は?無いけど?」
即答かよ
(´・ω・`)「そりゃ、手間は掛かるけどよ。ガキなんてそれが当然だしな」
('A`)「だが、今はこんな時代だ。子供抱えるリスクはデカいんじゃねえ?」
('A`)「それに……先日の襲撃や、感染で命を落とすかも……」
(´・ω・`)「……なんだ、お前」
('A`)「ん?」
(´・ω・`)「ずっとハインの心配してたのか」
86
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:37:43 ID:Eo9hzRWw0
('A゚)
ハインの、心配……?まさか、俺は俺の気分の問題で、面倒を見ているだけ……
(;'A`)「……」
気分?気分なら、ここ数日優れてねえじゃねえか
軋轢や胸糞悪さからは、確かに逃れられた。代わりに、別の靄が心を覆っている
(´・ω・`)「自分で気づいてないようなら言ってやるがよ。お前、結構ハインに気を使ってやってるぞ」
(;'A`)「……そんな事」
(´・ω・`)「素っ気ない態度取ってる割には、衛生に気を使ってるしブーンが無茶しやがった時もマジで怒った。それに……」
(´・ω・`)「出来るだけ早く生存者を見つけてやりたいって気持ちは、ここにいる誰よりも強く感じるしな」
(;'A`)「それはっ、ただお荷物を減らしたいだけで……」
(´・ω・`)「『情を掛けると、別れが辛い』」
(;'A゚)そ「っ……!!」
87
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:38:25 ID:Eo9hzRWw0
ハインを拾った夜。乾杯をした時の、ショボンの言葉
俺は、ハインを『仲間』とするのに賛同できなかった。何故か、いや、自分で否定を……
(´・ω・`)「お前、優しいからな。俺らが危ねえ事しようとしてる時に制止してくれる。そういう存在ってのは結構ありがてえモンだぜ」
(;'A`)「それはっ……俺に被害が出ないように……」
(´・ω・`)「じゃあハインは?別に生存者に会えずにくたばっても、お前には何の被害も損もねえぞ?」
(;'A`)「ああ!!その通りだ!!どこで死のうと俺の知ったことか!!」
(´・ω・`)「じゃあどうしてあの夜、ハインを食わなかった?」
(;'A゚)「」
こいつ、起きて……!!
88
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:39:16 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「真剣にやべえと感じたら止めようと思ったんだがな、名前を呼ばれて躊躇ったじゃねえか」
(;'A゚)「……」
(´・ω・`)「……ふぅ、悪い。別に責めようってワケじゃねえ。この話はここで終いにしよう」
(;'A`)「ッ……どうして、気づいていながら黙ってた……?」
(´・ω・`)「別に?俺はただ」
(´・ω・`)「お前もハインが好きなんだから、二度とあんな事しねえだろうって思っただけだ」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「さって、俺は姫様のお食事の準備をしてくるぜ。撮影役は任せた」
ショボンはデジカメを俺に手渡すと、トラックへ向かって歩き出す
俺はその背を見送ることも出来ず、手の平に収まったそれに目線を落とした
89
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:40:53 ID:Eo9hzRWw0
以`゚益゚以「ドク……」
(; A )「一人に、してくれ……」
以`゚益゚以「……」
イトーイは素直に言う事を聞き、ショボンの後を追った
メリーゴーランドから放たれる光が視界を横切り、楽しげでありながら、どこかもの悲しさを感じるBGMが遠慮なく耳へとなだれ込む
(; A )「……」
クソ、失敗だった。心の靄は更に濃くなっていく
俺はもう、俺が何かわからない。ゾンビなのか、そうでないのか
始めて、無脳種が羨ましく思えた。食欲だけに従う、恐れ知らずの生きた屍
悩みも葛藤も、不安も恐怖も無い、無敵の存在。弾丸に穿かれようとも、失う物はないのだろう
始めて、有脳種である事を疎ましく思えた。感情を持ち、死して尚『死』に怯えるバケモノ
悩みも葛藤も、不安も恐怖も確かにここにある。俺を蝕み、苦しめている
生存者であるならば、ただ己の良心と正義に従って、ハインを受け入れられた
無能種であるならば、何も感じず腹に収めればいいだけだった
神に選ばれた、『特別』な存在。人間とゾンビを掛け合わせた、矛盾
(; A )「……」
そう思っていたが、どうやら違うらしい。この、胸に渦巻く靄は正に
(; A ) 『呪い』だ
.
90
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:42:03 ID:Eo9hzRWw0
その日から、俺はハインと出来るだけ関わらないようにした
*(‘‘)*「でっぶ」
( *^ω^)「おっほwwwww俺の事デブって呼んだお!!お前らがデブデブ言うから」
*(‘‘)*「ぱっぱ」
(´・ω・`)「完 全 勝 利」
( ^ω^)「信じて送り出した赤ん坊が他人の男をパパと呼ぶ事案」
('A`)「……」
( ^ω^)「ドクオ!!お前もブサイク呼ばわりされるお!!」
('A`)「いや……俺アニメのOPで走らなきゃならないから……」
( ^ω^)「何言ってんだお前」
('A`)「じゃ」ダッ!!
( ^ω^)「ついにお脳のお腐れが加速し始めたかお……」
(´・ω・`)「……思春期なんだよ。放っておいてやれ」
( ^ω^)「童貞だから致し方ないのかお……」
( ∵)「……」
*(‘‘)*「どっく……」
91
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:42:56 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「……」
遊園地を離れ、展示品が根こそぎ奪われた美術館や
藻と魚の死骸で水槽が濁り切った水族館
アンプや捨てられた楽器が埃を被るライブハウス
色とりどりの花と雑草に、羽虫が不快な音を鳴らす植物園
廃墟の客は俺らを除けば、無脳種ばかりだった
灰色だ。どこまでも灰色しか広がっていない
('A`)「こんな、味気ねえものだったかなぁ」
ついこの間までは、『刺激』があった気がする
錆びで覆われた鉄管が血脈のようにうねる工業地帯も
無脳種になって延々と檻を歩き回る動物の園も
風が吹き抜ける音が暗いトンネルの中から不気味に響く地下鉄も
それが今では、酷く無機質に思える
('A`)「……」
ハインという生存者と出会ってから、いずれ手を離れる赤ん坊と旅をしてから
刺激的だった場所全てに、虚しさとやるせなさを感じる
『ああ、やっぱり世界は死んでいるんだ』
有脳種という立場から新しい目線で見てみると、改めてそう思う
『場所』自体に恐怖を感じないのは、恐らく俺がもう死んでいて、暗闇から集団で襲い来る天敵がいないから
代わりに、ただただ虚しさが沸き上がるのだろう
('A`)「……」
だからだろうか
92
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:43:29 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「遂に……」
( ^ω^)「うん、到着したお」
*(‘‘)*「あー?」
( ∵)「……」
以`゚益゚以「キューン」
生存者の住処となっている『空港』を目の当たりにした時、とても眩しく見えたのは
.
93
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:45:42 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「侵入口は地下鉄と道路からだな。だが、周りには無脳種の群れが集まっている」
物陰に身を潜ませながら、双眼鏡で辺りを確認する。見張り台と思われる場所には、スナイパーが立っていた
ハンターがいるという噂がこれで濃厚になった。生存者にとって、これ以上安全な場所はないだろう
ただし、周りには無脳種が群れをなして徘徊している。獣に囲まれている餌の籠にも見えたが
逆に言えば、あれだけの数に侵入されていないのは、セキュリティに細心の注意を払っているからだろう
( ^ω^)「怪しまれずにハインだけ預けるにはどうすればいいのだろうか?」
(´・ω・`)「テレビのナレーションみたいな喋り方のデブ」
( ^ω^)「デブをディスりたいだけか?デブだって生きてるんだぞ?」
('A`)「……」
近づくだけなら、まぁ大丈夫だろう。今、イトーイと喋らん奴が、道路に放置された車両の一つを修理してる
ガソリンも余剰分を流し込めば、空港に近づく程度の働きはしてくれる筈
だが気掛かりは幾つかあった。まず、『赤ん坊だけ』を預けることの怪しさだ
生存者であれば、そして家族であれば、知らない他人に子供を預けて安全圏から離れるなどしないだろう
俺が受け取る立場なら、当然訝しむ。罠を警戒するだろう
そして先日逃した『生存者』だ。理性と知性を持つ有脳種の存在を知らされていたら、警戒度は更に上がる
ハイン共々『ズドン』なんてことも十分ありうる。じゃあどうするか?
('A`)「……病気」
( ^ω^)「デブは病気じゃない」
('A`)「ちげーよ病人の振りして近寄ればいいんじゃねえのかって」
94
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:46:41 ID:Eo9hzRWw0
病人、それも末期の危篤状態の振りをして近づく
幸いにも、俺らの顔色は常に最悪だ。違和感はないだろう
ついでに手土産の一つや二つくれてやればいい。実益と、良心。この二つを攻める
(´・ω・`)「……悪くねえな。土産ならバンディット共から奪った武器と弾薬をやればいい」
( ^ω^)「ちょうど、マスクやら手袋やらあるしNE!!」
それでも賭けではあるだろうが、赤ん坊連れた病人にいきなりぶっ放すようなクズじゃない限りは大丈夫だろう
(´・ω・`)「よし、じゃあお前行けドクオ」
('A`)「えっ」
えっ俺?
(´・ω・`)「お前が一番病人っぽいわ。ガリだし」
( ^ω^)「うんお。デブは生活習慣病以外じゃ病気しないから」
(´・ω・`)「それに何人も一緒に行ったらまた怪しいしな。切羽詰まった状況をアピールしねーと」
( ^ω^)「喋らん奴とか絶対無理だお?イトーイにさせる?」
(´・ω・`)「殺処分待ったなし」
95
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:47:08 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「お、俺……でも……」
*(‘‘)*「ううんぬ」
最後の別れが、俺でいいのだろうか。ハインを避けて過ごしてきた俺で
(´^ω^`)「それに……俺らだと、躊躇っちまいそうだ」
( ^ω^)「うん……」
(;'A`)「……」
二人は笑った。今にも泣きだしそうな顔で
ゾンビに涙は流せない。これが、精いっぱいの感情表現なんだろう
二人とも、手放したくないのだ。それでも俺が最初に言った『生存者に受け渡すまで』という期限を守ってくれた
楽しんでいるだけじゃなく、ちゃんとハインの今後も考えていたのだ。これが正解だと、最初から理解していたのだ
(;'A`)「わかった……」
俺が言い出したことだ。最後の責任は、俺が果たさなければならない
(´・ω・`)「危険な仕事だが、お前ならやれるさ」
( ^ω^)「なんかあったら、俺らが全員ぶっ殺しにいくから安心しろお」
('A`)「ダメだろ」
96
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 11:47:22 ID:7CnT/yQ.0
ケツ筋野郎?
97
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:48:45 ID:Eo9hzRWw0
以`゚益゚以「整備、できた……」
空港から十二分に離れた場所にトラックを止めていた
移動用の車両は問題なく動くらしい。喋らん奴がイトーイの体に付いたオイルをふき取っていた
( ^ω^)「手土産と、ハインの荷物っと」
ブーンはトランクに荷物を詰め込む
着々と、準備は進んでいく。誰一人文句を言うことなく、滞りなく
(´・ω・`)「よーしよし、いい天気だねー」
*(‘‘)*「おー」
('□`)「フー……」
( ^ω^)「一応持っとけ」
('□`)「……」
手渡された拳銃を、パーカーで隠した脇のホルスターに仕舞う
使う機会が無いことを祈ろう
('□`)「ゲホッ、ゴホッ」
咳をするのも、久しぶりだ。有脳種になってから病気とは縁がなく、やり方を忘れてやしないか心配だったが
体は覚えているものだ。生きていた頃の、健康を保持するための反射運動を
98
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:50:12 ID:Eo9hzRWw0
('□`)「……行くわ」
運転席に乗り込み、ドアを閉めた。助手席には、チャイルドシートがセットしてある
(´・ω・`)「……じゃあな、バイバイ」
( ^ω^)「元気で。飯たらふく食わせてもらえお」
以`゚益゚以「クゥーン……」
それぞれが、ハインに別れを告げる
( ∵)「……」
喋らん奴はハインの服に、どこかで手に入れたのであろうクローバーのブローチをつけてやった
これがあいつなりの、別れの挨拶なのだろう
それから、ショボンの手によってチャイルドシートへと乗せられる
*(*‘‘)*「おっ、お!!」
新しい景色を、環境を見るたびに、ハインはこうして笑う
これから別れだと、理解していないのだろう。ただの、俺との楽しいドライブだと
(´・ω・`)「気をつけてな」
('□`)「……ショボン」
(´・ω・`)「なんだ?」
('□`)「……」
99
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:50:42 ID:Eo9hzRWw0
今、こいつには言わねばならない。もしかすると、帰ってこれなくなるかもしれない
('□`)「……ありがとよ。信じてくれて」
(´・ω・`)「……」
(´^ω^`)「なんてこたぁねえよ。ダチだろ?」
('□`)「……」
やはり、俺は死んでから恵まれているらしい
('□`)「ああ、そうだな」
その一言で、幾らか救われた気がした
100
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:51:47 ID:Eo9hzRWw0
('□`)「そんじゃ……出発と」
*(‘‘)*「ぱつー」
ブレーキを踏み込みキーを回す。一度では掛からなかったので、二度、三度
随分ともったいぶったエンジンがため息のように動き出し、アクセルを踏んだ
ゆっくりと、揺れないように、慎重に
('□`)「……」
バックミラー越しに、あいつらが手を振っている
やがて曲がり角へと差し掛かり、その姿は見えなくなった
('□`)「……」
*(‘‘)*「ぶっぶ、ぶっぶ」
静かな、ドライブだ。いつもの騒がしさとは無縁の、エンジン音だけが響く車内
何となく伸ばした右手で、カーステレオの再生ボタンを押した
♪Alan Cumming - I shall be released
https://www.youtube.com/watch?v=ENkkx9GqFbU
('□`)「……」
*(‘‘)*「おうー♪おー♪」
('□`)「お気に召したか?そりゃ何よりだ」
101
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:53:02 ID:Eo9hzRWw0
音に寄って来た無脳種を避けながら、空港へ走る
追いかけてきたものもいたが、軽く加速をすれば諦めてくれた
('□`)「……」
道路の案内標識が、空港への道筋を示す。すでに目と鼻の先だ
国際線ターミナル。ここが一番近いだろう
('□`)「……」
*(‘‘)*「んー?」
('□`)「ご到着、だ」
ロビーへの玄関口。見張りの生存者の顔すらわかるほどの距離
その入り口を取り囲むかのように、車や椅子や机などのバリケードが設置されている
ここからは、車は入れそうにない。降りて入り口を探すにも、無脳種が辺りを徘徊している
( ,,^Д^)「こっちだ!!こっちへまわれ!!」
見張りが手を振り誘導をしたので、それに従う
( ,,^Д^)「この先に搬入口がある!!そこから入ってくれ!!」
('□`)「はいよ……」
右手にぐるりと回ると、それらしき下り坂が見えた
しばらく下ると、中型トラック一台がすっぽりと入れそうなほどのシャッター口。そこでは
(;'□`)「ッ」
その周辺でうろちょろしていた無脳種が、生存者によって『処理』されていた
手慣れている。銃も使わず、鈍器や刃物で、あっさりと殺している
今更、俺は虎の穴に入り込むだと認識した。正体がバレたら、そこに無脳種と共に放り出されるのは俺と……
102
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:54:35 ID:Eo9hzRWw0
*(‘‘)*「がう、あー」
(;'□`)「……大丈夫だ、任せろ」
右手でハインの腹を優しく叩く
安全が確認され、シャッターが開いた。パーカーのフードを目深に被り、少しでも身元がバレないようにする
徐行で、その中に入っていく。いよいよ、勝負の時だ
人数は、無脳種を処理していた二人に、シャッター内で待機していた三人の、計五人
それぞれが銃器を携帯している。銃口は、此方に向いていた
コンコン、と窓が叩かれる。パワーウィンドウを下げた
( ・∀・)「降りてくれ、身体検査をしたい」
(;'□`)「ゲホッ、その必要はない……」
( ・∀・)「何?」
(;'□`)「俺はすぐに……ゲホッ!!ゲホッ!!」
(;・∀・)「アンタ、大丈夫か……?」
口ぶりでは心配をしていたが、右手の拳銃がカチリとなったのは聞き逃さなかった
時間は掛けられない。強引に……ここでこそ強引にいかなければ
103
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:55:16 ID:Eo9hzRWw0
(;'□`)「俺は、俺はもう、長くない。この場所で病死しちまったら、アンタらにも迷惑が、ゴホ、掛かる」
(;'□`)「だ、だが、この子だけは……この子だけが、心残りだ……タダでとは言わない。トランクに、拾った武器がある。だから……」
『娘』を
(;'□`)「……」
*(‘‘)* 娘を
この期に及んで、俺は何を躊躇っている!?『娘』と言えばいいだけだ!!
それで終わる!!この苦しみも、靄も晴れる!!バケモノとしての旅を、続けられるだろうが!!
(;・∀・)「そ、その赤ん坊か?」
(;'□`)「……ああ」
(;'□`)「『娘』を、頼みたいんだ……」
動いていない心臓が、キュウと萎んだ気がした
104
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:56:00 ID:Eo9hzRWw0
从゚Xナ从「おい、確かにすげえ数の武器と弾薬が入ってる。ありがたいぜ」
(;・∀・)「待て。勝手に……」
(;'□`)「いいんだ……身勝手を言ってるのは此方だからな……」
顔面をピアスとメイクで彩ったパンク・ガールがトランクの荷物を持って行く
対価は支払った。後は連中の良心次第だ
(;'□`)「疑わしいなら、ゲホッ、その子の身体検査をしてくれ……」
(;・∀・)「……いいや、大丈夫だ。引き受けるよ」
(;'□`)「ありがとう……すまない……」
男は助手席側に回り込み、ドアを開けた
*(‘‘)*「うにゅ?」
(;・∀・)「……別れを済ませてくれ」
(;'□`)「ああ……」
*(‘‘)*「どっく」
(;'□`)「……」
105
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:56:50 ID:Eo9hzRWw0
(;'□`)「お前は神に愛された子だ。俺達が居なくなっても、強く元気に生きられる」
*(‘‘)*「……」
(;'□`)「たらふく食って、大きく育て。ゲラゲラ笑って、絶望を跳ね除けろ」
*(‘‘)*「ひっ……」
(;'□`)「誰かを想い、恋をしろ。お前は器量良しだ。男なんて引く手数多だろう」
*(‘ )*「ひっ、ひっ……ふえっ……」
(;'□`)「サヨナラだ、ハイン」
*(;;)*「びえええええーーーーーーーーーーー!!!!!」
.
106
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 11:57:30 ID:RfqGJOE.0
くっそおもしろい
仕事遅刻確定するほど
107
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:58:11 ID:Eo9hzRWw0
泣くな、頼む
(;・∀・)「よっ、しょ……っと。ハハ、元気だ、本当に……」
*(;;)*「びえっ、びえええええええええええええ!!!!!」
最後の最後に、抵抗をしないでくれ
(;・∀・)「確かに、受け取った」
*(;;)*「びゃあああああああああ!!!!!」
ここがお前のいるべき場所なんだ。俺らバケモノと一緒にいるべきじゃないんだ
(;・∀・)「な、なぁ、アンタもッ……そ、そうか……わかった……良き旅路を」
*(;;)*「あああああああああああああ!!!!どっく!!どっく!!」
忘れてくれ。俺も、忘れるからよ
(;・∀・)「出るぞ!!開けてくれ!!」
*(;;)*「どっく!!うううううううううう!!!!」
頼む、泣くな。俺の名を呼ぶな
108
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:59:10 ID:Eo9hzRWw0
(; □ )
……じゃあな、元気で
109
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 11:59:41 ID:Eo9hzRWw0
「びえええええええええ、びえっ、びええええええええええええええええ!!!!!!!」
搬入口から出て、空港から遠ざかっても
ハインの泣き声が、延々と耳の中で響いていた
110
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:01:46 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
('A`)「……」
(´・ω・`)「……おかえり、どうだった?」
声を掛けられて、初めて俺は帰って来たのだと気づいた
助手席を見る。主を失ったチャイルドシートが味気なく乗っかっていた
左脇が重く感じて来たので、ホルスターと拳銃をそこに投げ入れる。使わなくて本当に良かった
終わった。『荷物』を、彼女の父親が望んだであろう本来あるべき居場所へと、受け渡した
('A`)「なんか良い奴っぽい男が、引き取ってくれたよ」
(´・ω・`)「イケメン?」
('A`)「めっちゃイケメンだった」
( ^ω^)「やっぱりイケメンは正義」
身元もわからない赤ん坊をすんなり受け取ってくれた
バンディットのような生存者もいれば、彼の様な誠実を貫く生存者もいるんだな
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「……ま、一先ずお疲れさんだお」
('A`)「……うん、お疲れ」
111
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 12:04:06 ID:NRxJ5GS.0
今泣いてるわ
112
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:05:28 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
誰も口を開かなかった。すぐさまこの場から離れようと提案する者もいなかった
( ∵)「……」
唯一、喋らん奴がテーブルと椅子を出し、湯を沸かし始める
人数分のマグカップにコーヒーの粉末を入れた
それぞれ、何も言わずに席に着いた。語る言葉が見つからないまま
喋らん奴は干し人肉をイトーイに差し出す。フンフンと鼻を鳴らしてから、咥えて受け取り前足で支えて食べ始めた
('A`)「……」
静かな、打ち上げだった。まるで長い長い夢から覚めた朝のように
ゾンビは夢を見ない。だがこの一週間は夢のようであった
生存者を食う俺らが、餌である赤ん坊と行動を共にして、楽しんだり苦しんだり、寂しがったり
身は軽くなったが、地に着ける足にフワフワと浮かぶ感覚がする
腹にぽっかりと穴が開いて、スカスカになった気分だ。俺も、恐らく、あいつらも
*(‘‘)* ハイン
お前は、ガッツリと持って行きやがったんだな
お前と出会ってから、俺達が抱いた『何か』を
113
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:07:23 ID:Eo9hzRWw0
(´・ω・`)「……あのさ」
マグカップに半分ほど残ったコーヒーがすっかり冷めきった頃、ショボンが口を開いた
(´・ω・`)「一応、数日様子を伺わねえか?」
(;^ω^)「……」
('A`)「……まだ未練があんのかよ」
もう、勘弁して欲しい。あんな思いはコリゴリだ
あの身を引き裂かれるような気持ちをもう一度蘇らせたくはない
('A`)「飲んだら、行くぞ。言ったよな?生存者に引き渡すまでと」
(;^ω^)「……ドクオ」
('A`)「くどいぞ。これ以上の干渉はしない。大体、様子なんてどうやって見るんだよ。『すいません、うちの子どうですか?』なんて訪問するのか?」
(;´・ω・`)「それは……」
「出来るよ」
声は、足下から聞こえた
('A`)「……出来るって、どうする気だよ」
以`゚益゚以「……」
('A`)「イトーイ」
114
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:08:13 ID:Eo9hzRWw0
以`゚益゚以「あのね、ボク、スクラップを使って盗聴器、作ったんだ」
(;´・ω・`)そ「盗聴……ッ」
以`゚益゚以「うん。それを、ビコーズに頼んで着けて貰った」
(;^ω^)「ビコーズって……」
( ∵)「……」
(;'A`)「こ、こいつか?」
以`゚益゚以「うん」
オイオイ名前あったのかよ。なんで犬が知ってて俺らが知らねーんだよ
待て待て、盗聴器?そんなもんどのタイミングで……あっ
(;'A`)「ハインの服に着けたクローバーのブローチか!!」
以`゚益゚以「そうだよ」
なんてこった用意周到過ぎる。本当にこいつお犬様か?有能なんてレベルじゃねーぞアフターケアまで考えて……
いや、例え盗聴だろうと干渉が過ぎる。もし問題があれば、こいつらは何をしでかすかわからない
(;'A`)「だ、ダメだダメだ!!放っておくのが一番なんだよ!!これ以上関わっても誰も得しない!!」
(;´・ω・`)「安心は出来るだろ!!憂いは残らない!!お前だって気になってる筈だ!!」
(;'A`)「ッ……いいか!!終わった!!終わったんだよ!!夢は醒めた!!バケモノに戻るべきなんだ!!」
(#´・ω・`)「お前ッ……!!」
(#^ω^)「うるせえお!!!!」ドンッ!!
(;'A`)そ「ッ!!」
(;´・ω・`)「ブーン……」
115
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:09:00 ID:Eo9hzRWw0
以´゚益゚以「キューン、キューン……」
(;^ω^)「あっ……ご、ごめんお……」
テーブルに叩きつけられた拳の音に、熱くなった頭が冷めていく
( ∵)「……」
喋らん奴……ビコーズだけが、静かにコーヒーを啜った
(;^ω^)「……ドクオの気持ちも、ショボンの気持ちもわかるお。でも、ここで言い争ってても平行線だお」
(;^ω^)「だから……一度確かめて見ても、いいじゃないかお?折角、安全圏から様子を伺える手段を、用意してもらったし……」
(;'A`)「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
クソ、結局……いや、ブーンの言う事も尤もだ。言い争っていても、ショボンは折れないだろう
これで納得するってんなら、時間を無為に消費せずに済むのだから
(;'A`)「……わかった」
(´・ω・`)「……」
(´-ω-`)「わがまま言って、悪い」
(;'A`)「……」
116
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:11:09 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「……」
マグカップの中身を飲み干したビコーズが立ち上がり、倉庫代わりの牽引車へ向かって歩き出す
持ち出したのは、捨てられた軍用車から拾ってきた無線機だ。ただのスクラップだと思っていたが、使えるようにしていたのか
蓄電器に繋ぎ、ダイアルを回して周波数を合わせる
( ^ω^)「離れていても使えるのかお?」
以`゚益゚以「たぶん」
特有のピーガー音を鳴らしながら、無線はじりじりとハインの居場所を探る
じれったい時間だった。いっそ、故障か不良で繋がらなければとも思った
この時、俺は『シュレディンガーの猫』を思い出していた
あれは確か、箱の中にいれた猫が一時間後生きているか死んでいるかは開けてみるまで分からないという思考実験だった筈だ
今、俺たちはその『箱』を開けようとしている。本当に、これでいいのか?
ショボンは確かめることで『安心できる』と言った。だがもし、向こうでのハインの立場が危ういものだったら?
不安を通り越して、『危機感』を覚えるだろう。じゃあ次に取る行動は?諦めて旅を続けてくれるか?
(;'A`)「……」
『開けてくれるな』。いっそのこと、わからないまま過ごすほうがいい
苦しんで死ぬかもしれないが、幸せに生きているかもしれない
じれったく曖昧な絶望と希望を、時間で風化させてしまえばいいじゃないか
(;'A`)「なぁ、やっぱり……」
『止めよう』。口から出た言葉を遮るかのように
無線機から、一発の銃声が響いた
.
117
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:12:05 ID:Eo9hzRWw0
('A゚)「」
≪……え……ガキ……こ……≫
待てよ、なぁ
≪誰……み……≫
『大丈夫』と言ったよな?『引き受ける』と、言ったよな?
≪……人……せ……やめ……≫
何を揉めてんだよ。そこは安全なんだろ?
ハインは、無事なんだろ?
118
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:14:06 ID:Eo9hzRWw0
(;´・ω・`)「なんっ……クソッ!!」
初めに動いたのは、ショボンだった。双眼鏡を手に、空港が見える場所まで駆けだした
呆然としていたブーンも後を追う。俺は動けずにいた
以#`゚益゚以「ウルル……」
イトーイは黒く染まった歯茎をむき出しに、無線機の向こう側へ威嚇をする
どうにもならないのだろう。ハインにつけたのは『盗聴器』だ。発信は出来ても受信は出来ない
ここでようやく、俺の足はゆっくりと動き出した。ショボンとブーンの元へと踏み出そうとしたが
( ∵)「っ」
ビコーズに肩を捕まれ、立ち止まった
('A゚)「なん……だよ……」
( ∵)「……」
無線機、いや、『スピーカー』を指さす
イトーイお手製といえども盗聴器の精度はそれほど良くなかったらしく、断片的な会話しか拾えなかったが
罵声と怒号の隙間に、微かだが、僅かだが、聞き覚えのある声が聞こえてきた
≪アア……ビァアアア……!!……≫
ハインの泣き声が
119
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:15:39 ID:Eo9hzRWw0
(;'A゚)「生き……」
生きている。『まだ』、生きている
別れてから一日も経っていないのに、ひどく懐かしく思える
( ∵)「……」
今度は力強く肩を抱かれ、ショボン達の場所へと連れていかれる
ビコーズの歩幅に俺の足は着いていかず、幾度か縺れながらもなんとかたどり着いた
(;´ ω `)「……」
(; ω )「……」
空港がデカい施設だと言えども、双眼鏡で内部の様子を詳しく伺えるワケが無い
にも関わらず、二人は全てを理解してしまったかのように呆然自失と立ち竦んでいた
猫の入った箱ではなく、『パンドラの箱』を開けてしまったかのように
肉眼でも、空港の異常は確認できた。これまでバラバラに動いていた無脳種が
まるでコミコンの開場を待つ参加者のように、一か所に集まり始めている
(;'A`)「貸せッ!!」
ブーンの手にぶら下がる双眼鏡を半ば強引に奪い取り、レンズを覘く
120
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:16:42 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「何だってんだよ……!!」
音や臭い、無脳種を引き寄せる要因は様々だが、一番はやはり『餌』を視認した時
奴らは罠も障害物も、距離も高低差も関係なく一心不乱に突っ込んでいく
食欲のみに支配された、無脳種特有の機械的な習性。例え女子供であろうとも
(;'A゚)「ッ……!!」
『窓からロープでぶら下げられ、泣き叫ぶ赤ん坊』であろうとも、習性には抗えない
(;'A゚)「……」
まるで『生餌』だ。生きたまま針に掛けられた小魚のようだ
無脳種の手の届かない位置にいるものの、それも施設内にいる生存者の采配次第で上下が出来る
何のために、何の意味があって、わざわざ赤ん坊を……!!
これが、お前の『終わり』なのか。ハイン
(;´ ω `)「……間違っていた」
ショボンから、絞り出すような声が聞こえる
(;´ ω `)「俺たちがゾンビだから……ハインは生存者だから……そんな枠組みで、あいつの居場所を決めつけたのが……」
(#´ ω `)「まだ……半日も経っちゃいねえんだぞ……それを……この扱いか……!!」
(;'A`)「ショボン」
(#´ ω `)「クソがッ!!」
121
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:17:57 ID:Eo9hzRWw0
俺の呼びかけを無視して、ショボンは車へと駆け戻っていく
(;'A`)「待て!!」
その場にいた全員が後を追う。ショボンはわき目も振らず運転席へ乗り込んだ
エンジンを掛けようとした手を、掴んで止める
(;'A`)「何をするつもりだ!!」
(#´ ω `)「何を……?決まってんだろ、取り戻しに行く」
(;'A`)「ッ、ダメだ!!言っただろ!!生存者に引き渡せば終わりだと!!何があろうとも関わらねえと!!」
(#´ ω `)「そんなもん……」
ショボンの左手が伸び、俺の胸倉を掴み上げた
(#´゚ω゚`)「聞けるかァッ!!!!」
(;'A`)「ぐっ……」
(#´゚ω゚`)「見ただろうがお前も!!あれが人のやる事か!?赤ん坊をバケモノおびき寄せるためにぶら下げてんだぞ!!」
(; A )「っ……」
とにかく、頭を冷やしてもらうしかない。それで当初の約束を思い出して、諦めてもらう他ない
しょうがねえだろ。生存者にも事情があって、善意だけじゃ動ける状態じゃないんだって
それに、取り戻すっつったってどうするつもりなんだ?今しがた、ハインと一緒に大量の武器をくれてやった
空港は無脳種に対応した要塞になってるはずだ。それに、ハンターだっている。四人と一匹で、何が出来るんだってんだ
(; A )「……だったら」
『説得』を、理性的に、なだめ掛けるようにしなければ
122
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:19:16 ID:Eo9hzRWw0
(#'A`)「だったら何だってんだよ!!!!!」
だが、激情が俺の冷静さを全て塗りつぶした
(#'A`)「俺らだって人間を食った!!良い奴だろうと悪い奴だろうと構わず、時にはふざけながらぶち殺した!!」
(#'A`)「何が違うんだよ!!俺らと空港にいる連中は!!それを棚に上げて、今更ヒーロー気取りか!?」
(#´゚ω゚`)「だっ……」
(#´゚ω゚`)「だからって放って置けるかァ!!ああ、俺らはバケモンだ呪われた死体だ!!地獄がお似合いのクソ野郎どもだ!!」
ショボンは俺の剣幕に一瞬怯んだが、すぐさま怒号を返した
(#´゚ω゚`)「だがハインは違うだろ!!こんなクソみてーな世の中でクソみてーな俺らに拾われて、それでもキラキラ笑ってた!!」
(#´゚ω゚`)「幸せになるべき『人間』だろ!!あんな、あんな結末で良い筈がねえ!!」
(#'A`)「誰にもあいつの結末を決める権利はねえ!!それに取り戻してどうするんだ!!どうせ待つのは感染か死だけだ!!」
(#´゚ω゚`)「それでも今!!!!死ぬよりはよっぽどマシだッ!!!!!」
(#'A`)「このッ……!?」
殴ってでも止めようとした瞬間、ぐいいと襟首を引かれ道路を転がった
(#'A`)「……お前もかよ、ブーン」
(;^ω^)「……」
這いつくばりながら、投げ飛ばした主を見上げる
ブーンは神妙な顔を此方へ向けることなく言葉を紡いだ
123
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:20:33 ID:Eo9hzRWw0
(;^ω^)「約束……破って悪いけど、俺もショボンと同意見だお」
(#'A`)「……」
(;^ω^)「銃声が聞こえた時、なんか、自分の中じゃ結構冷静だったお。『ああ、殺されたのか』くらいの認識だった」
(;^ω^)「で、でも、あの場所で生きていて、助けを求めて泣いてるのを見てたら、それはただ自分を誤魔化していただけに過ぎないって気づいたお」
(;^ω^)「別れたくない。助けに行きたい。これが俺の、俺たちの正直な気持ちだお」
(#'A`)「……」
どいつも、こいつも……!!
(#'A`)「それは、俺を裏切ってでも成し遂げたい物事か?」
(;^ω^)「違うお!!」
(#'A`)「違わねえよ!!現に今、危険を犯してまで助けに向かおうとしてんじゃねえか!!」
(;^ω^)「気持ちは同じだから!!!!」
(;'A`)そ「ッ!?」
124
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:21:17 ID:Eo9hzRWw0
(;^ω^)「俺たちは知ってる!!お前が誰よりも仲間想いだってことは!!だからこうして、気持ちに背いてまで俺たちの身を案じてくれている!!」
(;^ω^)「俺も、ショボンも!!ちゃんとわかってる!!これが自分の我儘だってことくらい!!お前が正しいことくらい!!」
(; A )「……」
(;^ω^)「だから……俺たちだけで助けに向かうお。一日経って、帰って来なかったら、その時は……」
(; A )「言うなッ!!やめろ!!」
行かないでくれ
(´-ω-`)「……怒鳴って悪かった」
行かないでくれ!
( ^ω^)「帰ってくるつもりだけど、『元気で』」
行かないでくれッ!!
(; A )「い……行くなァッ!!」
(;^ω )「……」
(´-ω-`)「……出すぞ、乗れ。ブーン」
125
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:50:52 ID:Eo9hzRWw0
そうだ、タイヤをパンクさせてしまえ
そうだ、あいつらの両足を切って、頭が冷めたころに治してやれ
そうだ、フロントに張り付いてダダこねてしまえ
様々な方法が浮かんだが、身体は実行に移さなかった
ドアが閉まり、エンジンが唸り、空港に向かって走り出した時になっても
(; A )「……」
( ∵)「……」
以´゚益゚以「クゥーン、クゥーン……」
その場には、蹲る俺と、ビコーズと、イトーイが残った
(; A )「……馬鹿が。赤ん坊なんて、また拾えばいいじゃねーか」
誰に聞かせるでもなく、口から文句が零れ落ちる
(; ∀ )「お、俺たちは腐れ外道のゾンビだぞ?一匹の、小腹を満たす程度の餌に何を執着してんだか」
面白くもないのに、口角は勝手に上がった
(; ∀ )「は、はは、でも清々したぜ。身勝手でうるさい連中が消えたんだ。ガキみてえな正義心に目覚めた痛々しい奴らなんて、こっちから願い下げだ」
言葉とは裏腹に、アスファルトを強く引っ掻いた爪が剥がれた
(; ∀ )「な、なぁ?ビコーズ?お前もそうだろ?こ、これから静かになるけど、落ち着いた旅が出来るんだ。なぁ?」
同意を求めようと、無口な仲間に声を掛けた
126
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:51:29 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「いいや、全く」
(;'A`)「えっ……?」
127
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:52:33 ID:Eo9hzRWw0
次の瞬間、顔面に膝蹴りが飛んでくる
ブーンに投げ出された時よりも強く地面を転がった
(;'A゚)「……???」
そんな事より、これまで一度も喋らなかったこいつが口を開き
あろうことか暴力まで振るったことに衝撃を受けた
( ∵)「黙って聞いてりゃ……さっきからベラベラとどうでもいい詭弁を並べやがって」
胸倉を掴み、持ち上げられる
華奢な見た目からは考えられない力強さに、喉が詰まった
(#∵)「あいつらは本心に従った!!お前はどうだドクオ!!」
(;'A`)「何を……」
(#∵)「答えろ!!」
(; A )「……」
本心?さっき言ったばかりじゃねえか。なんでわざわざ、終わった問題を掘り起こしやがる
俺が間違っているかのように、責め立てんじゃねえよ
(# A )「今、更……何も口出ししなかった奴がっ……偉そうに説教するんじゃねえ……ッ!!」
(#∵)「ああ!!俺は何も口出ししなかったさ!!だから今!!ここで!!お前に言うべきことを言う!!」
(#'A )「じゃあ言ってやるよカカシ野郎が!!赤ん坊なんてくだらねえ!!俺の命をかけてまで救ってやる義理はねえ!!」
(#'A`)「俺たちはゾンビだ!!人間を食らい、死者を増やし、世界を終わらせる存在だ!!ハインを拾って、食わなかったこと自体間違ってたんだ!!」
(#'A`)「欲望のままに貪って過ごす俺たちに!!生存者の子供を育てるなんて出来るわけねえだろ!!」
128
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:54:20 ID:Eo9hzRWw0
(#∵)「なら何故今まで食わなかった!!自分でケリを着けられた筈だ!!」
(#'A`)「知ったことかよ!!ただの気まぐれだ!!」
(#∵)「別れ際にハインに掛けた言葉も気まぐれだったのか!?」
(;'A`)そ「ッ!!」
ビコーズがポケットからインカムを取り出し、眼前に突き付けた
そうか、『盗聴器』。こいつ、聞いて……
(#∵)「生存者!!ゾンビ!!世界!!俺たちの命!!ハインの身!!そんな建前なんざ聞いちゃいねえ!!」
(#∵)「『お前』だ!!お前がどうしたいか!!それが『本心』だ!!ゾンビらしく、自分勝手に、自己中心的に……」
(#∵)「『欲望』を曝け出してみろよ!!!!」
.
129
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:55:08 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)
(; A )「っ……」
130
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:56:45 ID:Eo9hzRWw0
【 *(‘‘)* 】
最初に見た時は、衝撃だったな。こんなに可愛い赤ん坊に出会ったことが無かった
連れてきた父親を、放って置かずにちゃんと埋葬してやればよかった
【 *(*‘‘)* 】
ハインの為に物資を集めたり、設備を増やしたり
普段の狩りや探索と違って、新鮮だった。ミルクから感染しやしないかヒヤヒヤしたが、何事もなかった
【 (´^□^`) 】
面倒はショボンに任せっきりだったな。ミルクからオツムやら、夜泣きまで見事にこなしていた
ベビーシッターで培ったと言っていたが、本当はもっと別の理由があったかもしれない。聞けずじまいだったが
【 ( ^ω^) 】
あいつが最初にやらかした時は、頭が真っ白になった。本当に人騒がせな奴だ
でもその後は、ちゃんと弁えて遊んでやっていた。ハインも、ずっと楽しそうに笑ってた
【 *(*‘‘)* 】
名前を呼ばれた夜、実は少し嬉しかった。あれが無かったら、俺は自分の弱さに負けて食ってしまったかもしれない
それからハインを避け続けたのは、これ以上関わると引き返せなくなると思ったから。生存者に、引き渡せなくなると思ったから
【 *(;;)* 】
ああ、手放した時は泣いていたな。赤ん坊ながら、別れを察したんだろう
あの時、心に抱いたのは『罪悪感』だったか?いや、違う。有脳種になってから忘れていた、人間の……
身を引き裂かれるような『愛おしさ』だ
.
131
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:57:38 ID:Eo9hzRWw0
( A )「……いたい」
本音を塗り固めていた、嘘と誤魔化しのメッキが剥がれていく
目頭に、じんわりと熱が広がった。瞳の奥から、何かが込み上げてきた
(;A;)「一緒に、いたい……!!!!」
押し込んでいた想いが、涙と共に溢れ出す
(;A;)「ハインと、ショボンとブーンと……お前らともずっと一緒に旅をしたい!!」
(;A;)「おっ、お、俺だって!!助けたいさ!!助けて抱きしめて、『ごめんな』って謝りたい!!」
(;A;)「でっ、でも!!こ、怖いんだよ!!死んじまうかもしれない、お前らを失うかもしれないって思ったら!!動けなかった!!」
( ∵)「……」
以`゚益゚以「……」
(;A;)「俺は空港の、生存者たちを見た!!バンディットや他の生存者たちとは違って、あっさりと無脳種を狩っていた!!」
(;A;)「そんな連中に……クソ、クソォ!!俺ぁ、タマ無しの臆病者だ!!赤ん坊見捨てて逃げちまった方がいいって、そう思っちまった!!」
( ∵)「……」
以`゚益゚以「……」
(;A;)「ううう〜〜〜〜!!!!クソ、チクショウ……!!!」
132
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:58:41 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「……ドクオ」
胸倉を掴んでいた両手が、今度は俺の両肩を掴む
涙で視界が滲むのも本当に久しぶりで、ビコーズの顔はぼんやりと歪んでいた
( ∵)「俺も、あいつらも、お前が逃げても隠れても、責めたりはしない。お前の『怖い』という感情を否定しない」
( ∵)「だから、『選べ』。後悔しない選択をしろ。お前は本心を打ち明けた」
(うA )「……グスッ」
( ∵)「どこで、何をするか。欲望のまま選べ。確かに世界は終わっていて、生存者もゾンビも俺達も全部クソだ」
( ∵)「それでも、いや、だからこそ、今の世界は『自由』だ。誰にも縛られず、誰にも裁かれない。さぁ……」
( A )「……」
( ∵)「どうする?」
『どうする』?決まってる。泣いて喚いて、本音ぶちまけて……
ここで退いたら、男が廃る
('A`)「……」
133
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 12:59:38 ID:Eo9hzRWw0
そうだ、俺は『有脳種』。欲望のままに人を殺し、喰らうバケモノ
人の理性と感情と知性、ゾンビのパワーと不老不死を併せ持つ、『この世界に適応した存在』だ
何を恐れることがある。空港にいるのは多少活きの良い『餌』だ。パンにビビる奴どこにいるんだ?
('A`)「……」
生存者を……バンディットを狩った時と同じだ。バケモノの怖さを見せびらかし、上から押しつぶすかのように殺しちまえ!!
奴らの巣を徹底的に叩き、燃やし!!屈辱と苦痛を存分に味わわせてやる!!
('A`)「往こう」
覚悟は出来た。ショボンやブーンと同じく、『身勝手』を突き通す覚悟が
( ∵)「そうこなくっちゃな」
以`゚益゚以「ワンワン!!」
ビコーズがトラックの運転席に、イトーイが隣に座る。俺も助手席に乗り込んだ
( ∵)「音楽をどうぞ、Mr.DJ」
('A`)「ああ……一ついいか?」
( ∵)「なんだよ」
('A`)「どうして今まで喋らなかった?」
( ∵)「ああ、アッハッハ。いや、なに、ウケ狙いだ」
(;'A`)「……」
( ∵)「アッハッハッハッハ!!行くぞ!!」
開いた口が塞がらないまま、ウォークマンの再生ボタンを押した
134
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:00:16 ID:Eo9hzRWw0
♪Nickelback - Burn It To The Ground
http://blog.livedoor.jp/saqauten/archives/cat_605074.html
.
135
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:02:06 ID:Eo9hzRWw0
トラックが道路上の車を撥ね飛ばし、車体がガクリと揺れた
『少々荒いドライブになるぞ』。ほんの数分前の運転手の言葉だが、少々所の話じゃない。舌噛みそう
(;'A`)「無脳種の数が減ってる……」
( ∵)「ショボンが連れて行ったんだろう。もしかしたら、到着したころには既に地獄絵図かもな」
二人の後を直ぐに追ったつもりだったが、茫然としていた時間が思ってた以上に長く、ニ十分近くが経過していた
切り替え遅ぇんだよ俺。そんなんだから童貞のまま死んだんだよ。あれ?可笑しいなまた涙が
(;'A`)「俺も傍目でしか見ていないが、結構な要塞に仕立て上げられていた。無脳種の集団だけで攻め落とすには時間が掛かるぞ」
( ∵)「なるほど……所で、その要塞は大型車が突っ込むことも想定して築かれた物なのかな?」
(;'A`)「えっ、いや、わからん……バリケードとかは車やら椅子やらで作られ……お前まさか」
( ∵)「折角だ、派手に行こうぜ」
ビコーズは鮮やかな手並みでシフトレバーを動かし、ギアを上げていく
(;'A゚)「ヒィッ」
以`゚益゚以「ムグ」
思わず隣のイトーイを抱きしめてしまうほど、前例のない猛スピードでトラックは走る
右側のサイドミラーが標識のポールによって吹っ飛び、フロントガラスにはゴミやら小石やらなんやらがビシビシとぶつかって皹を作る
( ∵)「ハハァ!!見えたぜ!!」
(;'A゚)「はぇ?」
バリケードで覆われた玄関口には、無脳種が殺到していた
時折、『パパパ』と連続したフルオートの銃声が複数聞こえた
136
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:03:01 ID:Eo9hzRWw0
( ,;^Д^)
俺を誘導した見張りを始めとした、生存者の応戦部隊が戦っているらしい
(;'A`)「ショボンとブーンは!?」
(;∵)「そんな事より伏せろォ!!」
咄嗟にイトーイに覆いかぶさり頭を下げる
瞬間、フロントガラスとシートの背もたれに風穴が複数開いた
(;'A`)「撃たれ……無事か!?」
(;∵)b「大丈夫だ!!致命傷で済んだ!!」
(;'A`)「なら良……くねぇなぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!死ぬ奴だなそれ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
(;∵)「胸に一発当たったくらいで有脳種が沈むか!!」
まるで戦艦ミズーリ乗務員のような頼もしさだ。でも紛らわしいんで致命傷とか言うのやめて欲しい
(#∵)「つっこむぞ!!つかまれッ!!」ウォンッ
(;'A`)「ッ!!」
無脳種の列をまとめて轢き殺し、バリケードに衝突する
ひと際大きく車体が跳ねた後、ゆっくりと左手に傾き横転した
(;'A゚)そ「オギャーーーーーーーーーーーーーース!!!!!!」
フロントからサイドまで窓ガラスは全て粉々
荷台の物資や水のタンク、牽引しているオンボロ車、まとめて全滅だろう
137
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:05:03 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「痛った……くねえけど、無茶すんじゃねえよ!!」
以` 益 以「」
( ∵)「ぼんやりしてる暇はねえぞ!!このトラック吹っ飛ばす!!」
(;'A`)「ハァ!?何!?」
( ∵)「爆発させるっつってんだよ!!出るぞ!!」
以`゚益゚以そ「フゴッ」
(;'A`)「お、おう!!」
ビコーズはイトーイと一緒にフロントから、俺はドアを蹴破り、車内から飛び出す
後方からはなだれ込んだ無脳種のうめき声と足音、そして現在進行形で食われている生存者の叫び声が響いた
( ∵)「こんな事もあろうかと、イトーイと一緒にトラックを魔改造してて良かったぜ」
(;'A`)「どういう想定してんだよ……」
( ∵)「爆発オチを所望された時に一発ドカンとぶちかましてやろうと思ってな!!」
(;'A`)「え、ええ〜……」
( ∵)「さぁ走れ走……おっとォ!?」
ポップコーンの様に床が弾ける
二階へ繋がるエスカレーターから、無数の生存者がライフルを発砲しながら近づいて来ていた
( ∵)「こっちだ!!」
(;'A`)「ッ!!」
動きながらの射撃だ。命中精度が良いとは言えない
それでも流れ弾が頭に当たるだけでゲームオーバーだ。それに、受ける傷は少ないに越したことは無い
両手で頭を庇いながら低い姿勢で荷物預かり所の受付カウンターに身を隠した
138
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:06:08 ID:xx5fqGZI0
ずっと無言だった奴が急にこんな熱い奴になって戸惑うわ
139
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:06:09 ID:cAdFD4320
クッソ…おもしれえ…
今年はまた本気で優勝狙ってやがる…
上質なゾンビ映画の脚本みてぇだ
140
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:06:32 ID:Eo9hzRWw0
(;'A`)「ど、どうする?」
以`゚益゚以「キューン」
( ∵)「予定に変更は無い!!」
(;'A`)「い、いや、無脳種がこっちなだれ込んでくるから任せてもいいんじゃね?」
( ∵)「……」
(;'A`)「……」
以`゚益゚以「?」
( ∵)つ凸 スッ
(;'A`)「えっ何そのあからさまなボタン」
以`゚益゚以「起爆ボタンだよ」
(;'A`)「ご丁寧に説明どうも」
( ∵)「キラークイーン……」
(;'A`)「待て待て待て待てオイオイオイオイ」
( ∵)「第一のb以`>益<以∴「ヘブシッ」あっ」ポチッ
(;'A゚)「ピィ!!」
141
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:07:28 ID:Eo9hzRWw0
. -‐ニ ̄ニ‐- .
_/ \_
=二 ̄ / ',  ̄二= ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
 ̄7'' ―― ___ ―― 戈 ̄
――― 从,,i ; `. 、 .尢r、―――――― ンオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
/\じ'jl|此ト=メ i;_,,爻,,i| 刈ゞメ
``‐ヾ:;!Iヅ 〃!iメト辷-" ^
.
142
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:08:22 ID:Eo9hzRWw0
(;'A゚)「」
以´゚益゚似そ「キャインキャイン!!」
( ∵)「……」
(´∵)「ひえ〜……木っ端微塵や……」
(;'A゚)「ばっ、ば……馬鹿かお前!!!!!!!!」
腹の底まで響く爆発音、背中をドンと殴られたような衝撃、カウンターを乗り越えて頬を舐める熱風
チラリと様子を確認してみると、トラックは炎上。無脳種だか生存者だかわからねえ肉片が、チリチリと焦げながら壁に張り付いている
心地よい景観を作り出していたであろう天窓は吹っ飛び、鉄骨がむき出しになった天井から、大人一人を余裕で下敷きに出来るような瓦礫が落ちた
それより今まで一番大人しかった奴が一番のイカレだった時の俺の気持ちわかる?ブーンでもまだ多少弁えるぞ
( ∵)「だってやりたかったんだもん!!」
『もん』じゃねえよ気持ち悪いな
( ∵)「いや大丈夫だってそんな気持ち悪い表情作ってで睨むなよ」
('A`)「睨んでねえし、表情を作ってもいない」
( ∵)「個性があって羨ましいな……おおっと、こいつはやべえ」
瓦礫は落ち続けている。身体が燃えようとも構わず侵入してきた無脳種が押しつぶされ、枯葉色の華を派手にぶちまけた
ロビーはもうダメだ。いずれ全て崩れ落ち、進退ままならぬ場所になるだろう
143
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:09:04 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「敵……を、気にしてる場合じゃねえな」
( ∵)「俺は見てみたいぜ〜?トラックが爆発して天井から瓦礫が落ちて、それでも構わず突っ込んでくる無脳種をぶち殺す命知らずをよ」
('A`)「そんなイカレコミック・ヒーローみてーな生存者がいるわけが……」
<イイイイイイイイイイイイイイイイイハァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
('A`)「!?」
( ∵)「!?」
_
(#゚∀゚)「死ね死ね死ね死ねクソゾンビ共がァァァ!!!!!!!」
いたよ。腰だめに構えたミニミをぶっ放すイカレ野郎が
(;'A`)「ど、どうする?生存者はあいつ一人っぽいけど」
( ∵)「弾ギレ……を待つ暇は無さそうだな。かと言って飛び出せばお前の顔面よりはマシな肉塊が出来上がるだけだ」
('A`)「お前の顔面を個性豊かにしてやろうか」
( ∵)「……おい、待て。イトーイは?」
('A`)「は?」
い……ない!!マジでいない!!どこいった?瓦礫に潰された!?ちゃんと待てが出来る子なのに!!
少なくともブーンよりは賢い子なのに!!!!
144
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:09:28 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「理由もなく勝手に離れる奴じゃねえ……どこに……!!」
(;'A`)「……いたぞ!!あそこだ!!」
カウンターから頭を出して見てみると、瓦礫を掻い潜りながら軽快に走る
以`゚益゚以「ハッハッハッ」
イトーイの姿。その行き先は
_
(#゚∀゚)「ハーーーーーーーーーーハハハハハ!!!!」
銃声と建物の崩壊音で耳がバカになってるバカ
145
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:10:18 ID:Eo9hzRWw0
_
(#゚∀゚)「ハハハハハハ!!!!」
以#`゚益゚以「グルォアッ!!!!!!」
_
(;゚∀゚)そ「ハぁ痛ッんんんんんんあああああああああああああ!!!!!!!??????」
真横から飛びつき、首筋を肉食獣の牙が食いちぎる
仰け反った銃口が放物線を描き、弾丸が崩れた天井から覗く空へと吸い込まれていった
( ∵)「ワォ」
('A`)「グロ注意」
<ひぎゃあああああああああああああああああ!!!!!ひっあ、ひいいいいいいいいいいい!!!!!
<あ……がっ、ゴポォ、き……
バカの結末なんて大抵こんなもんだろう
( ∵)「とにかくチャンスだ!!行くぞ!!」
('A`)「おっしゃ!!」
カウンターを跳び越え、一目散に空港の奥へと走り出す。その時
(;'A`)「ッ!!イトーイ!!」
(;∵)「チッ!!」ダッ!!
以`゚益゚以「ワン?」
口元をバカの血で染めたイトーイがいる位置の天井が
(;'A`)「逃げろォォォーーーーーー!!!!!」
大きく、崩れ落ちた
146
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:13:26 ID:Eo9hzRWw0
(;∵)「来いッ!!」グイッ
以`゚益゚以そ「ワン!?」
真っ先に駆け出したビコーズが、イトーイを抱きかかえ
(;'A゚)「」
その姿を、瓦礫の雪崩がかき消した
(;'A゚)「……嘘だろ」
余りにも呆気なく、目の前で仲間が死んだ。二人も
(;'A゚)「……ぎっ」
ガクリと崩れそうになった膝を、叩いて無理やり力を込める
今にも喚きだしそうな口は、奥歯を食いしばり飲み込んだ
まだ、礼も言ってなかったのに!!
(;'A゚)「……クソ」
(#'A゚)「クソォォォーーーーーーーーーーー!!!!!!」
だが、俺は覚悟をした。身勝手を突き通すために、何かを失う覚悟を
二人の犠牲に、足を止めるわけにはいかない。ロビーの崩壊はまだ進行している
進もう。ハインが待っているから―――――
147
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:14:19 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
(;'A`)「迷った!!」デデドン!!
と、勇んで進んだのは良いが
来た事も無い空港じゃ土地勘もクソも無かった
今は国際線搭乗口付近。正面ロビーの地獄からは考えられないほど無脳種も生存者もいない
しかし、『いた』形跡は確かに残っていた。血、もしくは腐った体液を流して倒れる人型の肉がそれだ
(;'A`)「ええい、どうして空港ってのはこうクソ広いんだよ!!」
ハハ#ロ -ロ)ハ「フリーズ!!」
(#'A`)「うるせえクソビッチ!!口がお精子くせえんだよ!!」
女子トイレから飛び出してきたブロンド女が拳銃を向けて警告をしたが
そんなもん当然聞かず腹に蹴りをくれてやる
ハハ;ロ -ロ)ハ・'.。゜「ゲロッ!!」
手ごたえならぬ『足ごたえ』は十分だ。口からはゲロと血がニキビを潰した時の膿のように噴出し
背中からは血飛沫が舞った。真っ二つに折れた背骨が、肉と皮膚を貫通して飛び出したのだろう
(#'A`)「こいつは頂いていくぜ」
手を放れた拳銃を拾い、マガジンを抜き取り残り弾数を確認する。残り五発か
『SIG SAUER P220』。精度の良い拳銃だが、マガジン容量が少ないのが難点だ
(#'A`)「ねえよりマシか……」
いつものように背中側のベルトに差し込み先を目指す
こんな事なら拳銃置いて来なきゃよかった
148
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:15:02 ID:Eo9hzRWw0
辺りからは銃声や悲鳴が聞こえていたが、まともにかち合ったのはさっき殺した女が初だ
どれだけ遠くにいるのかわからないが、とにかく音が聴こえる方に向かえばいい
「ヴァアア……」ガンッ!!
「オオオオ……」ガンッ!!
('A`)「おっ」
二匹の無脳種が、スタッフ・ルームの扉を叩いているのを見つけた
奴らの行動原理は『食欲』。餌にしか興味を示さず動かない
('A`)「……」
足下を見渡してみるが、使えそうな物は落ちていない。拳銃は弾が勿体無い
('A`)「ハァーーーーーー……」
同胞を襲うようで少々……いや、やっぱ全然気もなんも引けねーわ
とにかく気にせず、頭を拳でぶち抜かせて頂いた。これだから無脳種は汚くて嫌なんだ
('A`)「……」
拳銃を引き抜き、左手でドアノブに触れる
一呼吸を置き、一気に開け放った
(#'A`)「ッ!!」
(メ;・∀・)「!!」
中には案の定『生存者』が。それも、血の臭いをプンプンとさせている
互いに拳銃を向け、一瞬の硬直。この男には見覚えがあった。ハインを受け取った優男だ
149
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:15:54 ID:Eo9hzRWw0
彼の傍らには
从 Xナ从
頭を撃ちぬかれたパンク・ガール
肩の『咬み傷』と、床と壁に付着した血しぶきを見るに、どうやらゾンビになる前に『ケリ』を着けたらしい
(メ;・∀・)「……君は、あの赤ん坊の?」
(#'A`)「ああ……」
男の拳銃を持つ腕にも、同様の咬み傷。最早長くは無い
手前の頭を撃ちぬかなかったのは、最後の一発を彼女に譲ったからだろう
(#'A`)「お前、言ったよな?『引き受ける』と。なら何故ハインをあんな目に遭わせた?」
(メ;・∀・)「っ……そうか、見ていたのか……だから彼らはッ……あんなに怒り狂って……」
(#'A゚)「ッ!!」
怒り狂っているのは、俺も同じだ
男の拳銃を蹴り飛ばし、自分が持つそれのグリップで頬を殴りつける
そして、胸倉を掴んで持ち上げた
(#'A゚)「その傷だと以て半日でお前は世界人口の大半を成す連中のお仲間になる」
(#'A゚)「頭をぶち抜いて殺すのは、今のお前にとっちゃ救いでしかねえ。だが、痛めつける事は出来る」
(メ; ∀ )「グッ……」
(#'A゚)「苦痛はお望みじゃないだろう?楽にして欲しければ、無駄口叩かずさっさと答えろ」
きっと、ここでの正しい質問は『ハインの居場所はどこだ?』だろう
だが、聞かずにはおけなかった。人間でありながら、悪魔の所業を行った
(#'A゚)「何故ハインをあんな目に遭わせた?」
生存者の腹の中って奴を
150
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:17:28 ID:Eo9hzRWw0
(メ;・∀ )「アレが……僕の本意だと思ってるのか……?」
(#'A゚)「じゃなきゃなんだ?無脳種の皆様にお披露目したくて、渋々あんな方法を取ったのか?」
(メ;・∀ )「違う……!!僕じゃない……!!」
ふと、靴に僅かな振動が起こった
(#'A゚)「……」
見ると、血の斑点がポツポツと出来上がっている
血の出どころは、咬まれた男の腕……ではなく、『太腿』から。脚を伝って滴り落ちていた
(#'A゚)「……撃たれたのか」
(メ;・∀ )「この場所は……既に終わってた……ハンターが現れてから……」
なるほど、無線から聞こえてきた銃声は『これ』か
(メ;・∀ )「確かにっ……彼らには武力があった……経験も……」
(メ;・∀ )「だが傲慢でもあった……空港を訪れた生存者も、病人や怪我人……彼らに取って『使えない』と判断を下された者は、受け入れを拒否された……」
(メ;・∀ )「常に見返りも……求められた……食料、水、酒に女……この城の、王……いや、暴君として……君臨していた……」
(メ;・∀ )「そんな彼らが……益にも得にもならないっ、赤ん坊を……受け入れるワケがなかった……良心が、残っていると信じていたが……」
(#'A゚)「……すると、てめぇはこう言いたいわけか?『僕は抵抗したがハンターがハインを窓からぶら下げた致し方なかったすまない許してくれ』と」
(メ;・∀ )「……」
(#'A゚)「……チッ」
151
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:23:22 ID:Eo9hzRWw0
例えどんな理由があろうと、ハインは危険に晒された
生存者に……目の前のこいつに対する怒りが収まる訳じゃない
俺は聖職者でもねえし、心が広い一般人でもねえ。自由で勝手な『ゾンビ』だ
(#'A`)「ハインの居場所は?」
(メ;・∀ )「展望フロア……廊下を右手に真っすぐ進み、突き当りをまた右……」
(メ;・∀ )「とはいえ、もう……遅いかもしれないが……」
(#'A`)「黙れ。俺は最後まで諦めない」
胸倉を突き放し、男に背を向ける。どうせ拳銃は弾ギレで、脚は使いもんになんねえ死にぞこないだ
そうだ、冥途の土産をくれてやろう。『彼ら』と言ったな。ハンターは『複数』いたって事だ
(#'A`)「……ミニミを担いだバカはハンターか?」
(メ;・∀ )「……ああ、そうだ」
(#'A`)「喜べ、奴は死んだ。バカに見合った、バカらしい死に方でな」
(メ;・∀ )「そりゃ……胸がすくような気持ちだ」
(#'A`)「……」
(メ;・∀ )「待ってくれ、キミは何者だ……?」
(#'A`)「……」
何度も何度も、殺す直前の生存者に聞かれた質問だ
俺はいつもこう答えた。『知ってどうする?』と
だが答えてやろう。ハインの為に脚を撃たれた、誠実な男の為に
(#'A`)「……『バケモン』だ。飛び切りのな」
振り返り、弾丸を一発頭にくれてやる
(メ ∀ )
('A`)「……礼だ。じゃあな『人間』」
152
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:24:20 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
(;'A`)「……どうなってやがる」
展望フロアはもぬけの殻だった。いや、確かに『激戦』を想像させる痕跡は残っていた
床を覆う無脳種の死体。八つ裂きにされた『食い残し』
( 、 メ川「ア、カヒュッ……」
その中で、まだ息のある女が残っていた
(;'A`)「おい、赤ん坊は!?」
( 、 メ川「だ……れ……?」
瞳は明後日の方向を向いている。まともに見ることも叶わないのだろう
左の鎖骨から腹にかけて、身と皮膚を抉り取られていた。これでもまだ生きているのは、『感染』が進んでいる証拠だ
しかし、こうなってからそう時間が経っているようでは無さそうだ
(;'A`)「赤ん坊だ!!お前らが窓から吊り下げた赤ん坊!!無事なのか!?」
( 、 メ川「……つ、れ……った……バケ、もの……」
(;'A`)「ッ……!!」
ショボンとブーンはハインを回収したらしい。だが、この目で確かめるまで安心できない
(;'A`)「どこへ……どこへ向かった!?」
( 、 メ川「カヒュッ……ゲボッ、アアア……」
最後の溜息を吐き、口からどす黒い血を大量に吐き出した女は
無脳種特有のうめき声を鳴らし始めた。時間切れだ
153
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:25:12 ID:Eo9hzRWw0
<アアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!
(;'A゚)そ「ッ!!」
ショボンの声だ。無脳種をおびき寄せる、あの特有の叫び声!!
このエリアから更に奥から聞こえてきた。移動して……いや、恐らく『逃げている』!!
(;'A゚)「ショボン!!!!」
起き上がろうとした女の頭を踏みつぶし、声の元へとひた走る
頼む、間に合ってくれ。ビコーズやイトーイのような最後を見るのは、もう沢山だ
(;'A゚)「クソ……クソッ!!」
この期に及んで、自分の弱さが怨めしくて堪らない
俺があの時、怯えずにハインの救出に乗っておけば。ビコーズやイトーイに気を使わせず、同行させておけば!!
何にも変わっちゃいなかった。生前からの臆病さは死んでも治っちゃいなかった!!
(;'A゚)「ッ……!!」
(メ;´ ω・`)
(; ωメ)
――――見つけたッ!!!!
154
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:26:35 ID:Eo9hzRWw0
呼び寄せた無脳種の群れから、何かを庇うように蹲る二人の姿
(,#メ゚Д゚)「オラオラオラオラクソザコがァ!!」
(*;゚ー゚)「ギコ君、早く!!」
男女二人が、追いかけてくる無脳種の頭を的確に撃ち抜きながら階段を駆け上っている
(,#メ゚Д゚)「こいつはオマケだ」
男が腰のホルスターから、『卵』を抜き取り、ピンを抜いた
(;'A゚)「手榴……!!」
考えるより先に、腕が動いた。男が投球モーションに入ったのと、俺が駆け出し、拳銃を向けたのはほぼ同時
(#'A゚)「っっっっせるかァァァ!!!!!!!!!!」
残り少ない弾数を、構わず全部撃ち尽くす
(,;メ゚Д゚)そ「うおっ!?」
その内の一つが手すりに命中し、火花を散らした。驚いた男の手から手榴弾が零れ落ち
階段を一つ、二つと跳ね、床に転がった。二人の、すぐ傍に―――――
(;'A゚)「ッ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
引いてしまいそうになる脚に、更に力を込め加速する。無謀でも無茶でもここで前に出ねえと!!
こんな場面だが、俺は今まで観た映画のシーンを思い出していた
『キャプテン・アメリカ』や『キングスマン』。周りに遮蔽物がない場合、手榴弾の爆発をどう防ぐか。その答えが映し出されているからだ
155
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:26:57 ID:7CnT/yQ.0
ドクオは自分本位な考えだなー
156
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:27:40 ID:Eo9hzRWw0
(;'A゚)「ッッッラァ!!」
無脳種の一体にタックルをぶちかまし、そのまま手榴弾を覆い被さるように倒れ込む
爆破した際に八方へ飛び散る『破片』を、肉の盾で防ぐのだ
(;'A゚)「ッッッ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
歯をギュッと食いしばった。手榴弾の起爆は、ピンを抜いてから三秒だっけか五秒だっけか
クソ、『長ぇ』。たった数秒が、ここまで長くk
(; Aメ)そ「ガッ!!!!」
耳から脳内を貫くような、『ボン』という鈍い爆発音と共に、無脳種の腐った腸が汚泥の間欠泉のように噴出した
塞ぎ切れなかった細かな破片が、胸元から顔面までグサグサと突き刺さっていく
:(; Aメ):「カヒュ、ヒュウ……」
右側の視界が黒く染まっている。どうやら、『潰れちまった』らしい
157
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:28:23 ID:Eo9hzRWw0
(;^ωメ)「!!!!!」
(メ;´・ω・`)「!!!!!!」
や、やいのやいの、言うんじゃねえよ。耳も少々怪しいんだ
待ってろ、今そっちに行くからよ
:(#'Aメ):「 !!!!!」
無事な左側の視界も、左右に揺れている。脚は痙攣を起こしたかのように震えていた
二人を中心に集まってくる無脳種に、軽く押されるだけでぶっ倒れそうだ
:(#゚Aメ):「 !!!!!」
それでも前に、前に、前に!!
無脳種を掻き分け、肘で殴りつけ、二人の―――――
「おぎゃあああああああああ!!!おぎゃあああああああ!!!!」
;(;゚Aメ):「!!」
―――――三人の元へ
158
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:29:21 ID:Eo9hzRWw0
:(;'Aメ):「……!!」
後から後からやってくる無脳種に押し込まれるような形で
たった数メートル足らず先の『目的地』に、ようやく到達することが出来た
そこで、俺の足はガクリと崩れ落ち使い物にならなくなる
どうやら、ここが俺達の終着点らしい
(メ;´・ω・`)「ハ、ハハ……遅、かったじゃねえか……」
ショボン
(;^ωメ)「待ち……くたびれた、お……」
ブーン
*(;;)*「おぎゃあああああああああ!!!!おぎゃああああああああ!!!!」
そしてハイン
(メ;´・ω・`)「しくっ……じ、ちまった。怒りに任せて、無脳種を呼びッ……このザマだ……」
:(;'Aメ):「……」
俺達は、けたたましく泣き声を上げる奴らにとっての『ご馳走』を守るかのように肩を組んだ
四方八方から手が伸び、服を掴み、皮膚を削ぎ、肉を徐々に剥がされていく
ショボンは無脳種を『遠ざける』事も出来るが、この物量とハインの泣き声があっては、その手は意味を為さないようだ
159
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:29:58 ID:Eo9hzRWw0
(;^ωメ)「首謀者の……ハンターも、逃がしちまったお……ごめん……」
:(;'Aメ):「ア……」あやまるな
:(;'Aメ):「……」
クソが、声帯もやられてやがる。今際の際に言葉を交わすことも許してくれねえってのか。神様
これが罰ってんなら、甘んじて受け入れてやる。だが……
*(;;)*「びえっ、びええええええええええ!!!!」
この子だけは、この子を巻き込むのだけはやめてくれよ
:(;'Aメ):「……」
祈るだけ、無駄か。最後に、こうして出会えただけでも救いなのだろう
:(;'Aメ):「……」
(メ;´ ω・`)「……」
(; ωメ)「……」
オイオイお前ら、これから地獄に逝くってのに
:(;'∀メ):「……」
(メ;´ ω^`)「……」
(;^ωメ)「……」
笑ってんじゃねえよ。全く
160
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:30:32 ID:Eo9hzRWw0
:(;'∀メ):「……」
(メ;´ ω^`)「……」
(;^ωメ)「……」
.
161
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:31:25 ID:Eo9hzRWw0
(;'∀メ)「……」たのしかったぜ
(メ;´ ω^`)「俺もだ」
(;^ωメ)「俺も」
.
162
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:31:49 ID:Eo9hzRWw0
.
163
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:32:16 ID:Eo9hzRWw0
「グルルルルゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
.
164
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:33:13 ID:Eo9hzRWw0
「イーーーーーーーーーーーーーハァ!!!!!!!!ハレルヤァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
.
165
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:35:08 ID:Eo9hzRWw0
(;゚Aメ)そ「ッ!!」
地獄の番犬のような唸り声、オツムが焼き切れた悪魔のような高笑い
黙示録を思わせる弾丸の咆哮が俺達の頭上を通り過ぎ、イナゴの如く無脳種を食い荒らしていく
(;^ωメ)そ「なんだお!?誰だお!?」
(メ;´・ω・`)そ「誰の声だ今の!?」
(;゚Aメ)「……」
俺が、俺だけが聞いた声だった
「本日フライト予定の『F・U・C・K13号便 地獄行き』は、急な弾丸の嵐によりキャンセルですっと」
俺を奮い立たせ、愚直に仲間を助けに走り、死んだと思っていた男――――
「ワンワン!!グルルルル!!」
率先して窮地から道を切り開き、瓦礫に押しつぶされたと思っていた愛犬――――
( ∵)「ビコーズ・エアー。またのご搭乗をお待ちしています」
ビコーズと
以#`゚益゚以「あっち行け!!ウウーー!!」
イトーイの、姿が
166
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 13:37:29 ID:6zGwL1k.0
ビコーズイケメンすぎかよ………
167
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:37:36 ID:Eo9hzRWw0
(メ;´・ω・`)(;^ωメ)「「喋らん奴ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」」
( ∵)「ビコーズな。チッ、しつけぇクソ共だな……こっちも弾ギレか」
銃口から煙を上げる『ミニミ』を手放したビコーズは、奥から新たに走り寄ってきた無脳種の群れの前に立つ
( ∵)「食い止める!!ハインをあやしてサッサと追い払えショボン!!」
(メ;´・ω・`)「お、おうよ!!でもお前どうやって……」
( ∵)「俺の能力は『戦闘向き』だ。心配すんな……」
ビコーズが両腕を振るうと、仕込み刃のように手首から『鋭利な白骨』が飛び出す
(#∵)「よっとオラァァァァアアアアアアアアアイ!!!!!!!!」
先頭の無脳種の大口に右手の『刃』を押し込み、気合いの入った雄たけびと共に横に薙ぐ
刃の軌道上にいた数体の無能種の首が容易く断ち切られ、砂の入ったボールのように鈍い音を立てながら転がった
切断面からは焦げた臭いと僅かな煙が上がり、それが『高熱』によるものだと物語っていた
以#`゚益゚以「グルルルルルル!!!!」
イトーイも無脳種に飛び掛かり、顔面の肉を噛み千切る
(メ;´・ω・`)「よ、よぉ〜しよしよし、いい子だから、いい子だから泣き止んでくれ……!!」
*(;;)*「びええええええ!!びえっ!!びえええええええええ!!!!」
後は、ハインが泣き止んでくれれば……
168
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:38:41 ID:Eo9hzRWw0
しかし、相手は赤ん坊だ。『はいそうですか』とすんなりと泣き止むわけがない
ましてや、ゾンビの集団に狙われている最中だ。大人だって泣き叫びたくなるほどの恐ろしさだろう
『泣き止んでくれ』なんて、酷な話だ。怖いものは怖いのだから
(;'Aメ)「……」
(;^ωメ)「ドクオ……?」
例えば、クローゼットの中にいる『ブギーマン』に怯える子供に、親は何をしてやれるか
『あれはただの暗闇だ』と諭すか?明かりをつけたまま眠ることを許可するか?
お袋は違った。今やもう顔も、飯の味も思い出せないが
今、この時、この場に限って、救いの手を差し伸べるように鮮明に記憶が蘇っていく
*(;;)*「びえええええええええええええええ!!!!!」
小難しいテクニックも、面倒も無かった。お袋はただ、幼い『想像力』という悪魔に苛まれる俺の頭にキスをして
(;'Aメ) 大丈夫
(;'∀メ) ママがついている
と、笑いかけてくれたんだ
それが、どれだけ安心したか。どれだけ、救われたか
169
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:39:45 ID:Eo9hzRWw0
(;^ωメ)「は……ハハ、こ、こんな時まで笑わせるなお」
(メ;´^ω^`)「ククッ、相変わらずブサイクなツラだ。笑うと特にひでぇ」
二人から、いつもの軽口が飛んでくる。罵倒の一つでも飛ばしたい所だが、今は甘んじて受け入れてやる
なぁハイン。お前も俺の顔を見てゲラゲラ笑ってただろう?忌々しい顔面だが、お前が喜んでくれるならブサイクも悪かねえ
(;'∀メ) 頼む
*(;;)*「びえええ!!びええええええええええ!!!!」
(;'∀メ) 笑ってくれ、笑ってくれ
*(;;)*「びえっ、び……」
(;'∀メ) 笑ってくれ!!!!!!!
.
170
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:40:36 ID:Eo9hzRWw0
*(;;)*「……」
*(;;)*「どっく」
(;'∀メ)「!!」
*(;;)*「どっく、ヘッ、イヘヘ、どっく、どっく!!」
(;'∀メ)
ああ、神様。アンタって奴ァ
*(*;;)*「どっく!!どっく!!えひっ、えひひ!!」
俺が産まれた瞬間から、とっくに『特別』を与えて下さってたんだな
171
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:41:17 ID:Eo9hzRWw0
「ススススススススーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッア!!!!!!!!!!!!!!」
無脳種を追い払う、ショボン独特の気持ち悪い叫びが
この日、最後の記憶となった―――――
172
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:41:43 ID:Eo9hzRWw0
.
173
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:43:09 ID:Eo9hzRWw0
―――――
―――
―
*(‘‘)*「だー」
新しい『住処』であるトラックに荷物を積み込む手を止め、チャイルドチェアから呼ぶ声に応える
('A`)「どうした?」
*(‘‘)*「あう」
たどたどしい手つきで指さす先には、蝶々が一匹フワフワと飛んでいた
『もっと近くで見たい』と暴れ出す前に、抱きかかえてやる
('A`)「今年も暑くなるぞぉ」
*(‘‘)*「うー?」
174
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:43:58 ID:Eo9hzRWw0
夏の始まりを知らせる蝶は、風に揺られて気ままに飛び
そのまま、『人の原型』を僅かに残した黒焦げの山に止まった
『あの日』くたばった無脳種の成れの果てだ。傷も完治しない内に運び出してガソリンブチ撒いて燃やしたやつ
放っておいたら腐って衛生的にヤバいからな。クッソ適当だが、これもまぁ火葬ってことで勘弁して欲しい
生存者に関しては、今更説明するまでも無いだろう?あんだけ派手に暴れ回って電源設備が無事だったのマジで奇跡。冷蔵庫パンパン
( ∵)「赤ん坊を誘拐する事案発生」
売店からかっぱらったDVDが入った箱を持ってきたビコーズが、冗談めかして話しかけてくる
今までは無口で何考えてるかわからない野郎だったが、この一か月で結構なお喋りだと思い知らされた
俺らが見てない所で、イトーイとは会話をしていたらしい。なんでお犬様とのコミュニケーションを優先してんだよ
( ∵)「今夜はポイント・ブレイクかバッド・ボーイズ2、どっちにする?」
('A`)「俺向きなのは?」
( ∵)「どっちが先かだ」
('A`)「ホット・ファズで」
( ∵)「最高のチョイスだ」
サイモン・ペグとニック・フロストのコンビはどの作品も最高だ
175
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:46:05 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)「身体の調子は?」
('A`)「右目がちょいと不自由になっただけで、後は問題ねえよ」
( ∵)「お前の唾でその顔面がちょっとはマシになれば良かったのにな」
('A`)「ハイン言うたれ」
*(‘‘)*「め!!」
( ∵)「この仲良しさんめ」
この空港に一か月足止めされてたのは、主に治療とこの住処を用意するためだ
俺とショボン、ブーンの傷は……まぁ詳細は省くが端的に行ってヤバかった。俺とか顔面の右半分千切れかけてたし喉にも穴開いてた
それが唾つけただけで治るんだから有脳種って怖い。ただ、潰れた右目だけは再生できなかったので生存者の物を一つ失敬して癒着させた
若干見えづらくなったが、完全失明に比べりゃ御の字だ。これも唾着けて眼孔に押し込んだらちゃんと機能するって何なんだよこえーよ
('A`)「残りの荷物は?」
( ∵)「連中が持ってくる。積んだらいよいよ出発だな……っと、噂をすれば」
( ^ω^)「デブのご帰還じゃ!!道を開けろ!!」
(´・ω・`)「デブって歩くだけで邪魔だよな」
('A`)「止まってても邪魔」
( ^ω^)「常人の二倍の包容力あるんですぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜↑」
*(‘‘)*「ぱっぱ!!」
(*´^ω^`)「おお〜う!!おいでハインちゅあ〜〜〜〜ん!!パパがギュッとしてあげよう〜〜〜〜〜!!」
両手に抱えていたパンパンのボストンバッグを落として近づいてきたショボンに、ハインを手渡してやる
なんだかんだ言って一番懐かれてるんだから正直嫉妬してしまう。今度食事にウンコ入れよう
176
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:48:04 ID:Eo9hzRWw0
▼・ェ・▼「よいしょ」
('A`)「人間味よ」
トラックの最終チェックをしていたイトーイが、車両下から這い出てくる
姿が違うって?ちょうどダルメシアンの革で作ったコートが落ちてたもんだから、上手い事こう、な?
クルエラ・デ・ビルでもいたのかね?あんなガリガリのババア食っても不味そうだが
▼・ェ・▼「ガソリン満タン!!いつでも走れるよ!!」
( ∵)「ご苦労さん。さぁお嬢様方!!馬車に乗り込みな!!」
( ^ω^)「苦しゅうなくてよ」
( ∵)「お前の中のお嬢様感」
( ^ω^)「わっかんねーおそんなもん。謎のフリすんなお」
バッグを荷台に放り込み、簡単だが最終チェックをする
食料、水、オーディオにDVDの山。それと武器弾薬に、赤ちゃん用品
('A`)「荷物はこれで最後だな?」
着替えの入ったボストンバッグを置いて、確認を取る
(´・ω・`)「いいや、まだ残ってるぜ」
('A`)「あ?」
(´・ω・`)「一番大事なモンがな」
そう言って、ショボンは荷台に乗り込む。イトーイとビコーズもそれに続く
(´・ω・`)「さ、これで『全部』だ。運転よろしく頼むぜ。お姫様は特等席にどうぞ」
*(‘‘)*「うー!!」
('A`)「……」
177
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:48:49 ID:Eo9hzRWw0
なるほど
(´^ω^`)
( ^ω^)
( ∵)b
▼・ェ・▼
*(‘‘)*
『荷物』、か
.
178
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:50:31 ID:Eo9hzRWw0
( ^ω^)「行き先は?」
シートベルトを閉めながら、助手席のブーンが聞いてくる
そういや、次の目的地についてなんも話し合わなかったな。っつーことは、俺の裁量で決められるってワケだ
('A`)「さぁな?自由な旅だ。好き勝手やろうぜ」
( ^ω^)「おっお!!殺して、奪って、食らう!!」
('∀`)「ああ、お前が言った通り『今までと同じ』だ」
( ^ω^)「こいつぅ!!」
ゾンビに犬に、赤ん坊。ごった煮の『荷物』を積んで旅を続けよう
生存者にハンター、バンディット。それに無脳種まで敵に回っちまったが、上等だ
こちとら天下の有脳種。ゾンビのタフさに人間の知性
そして可愛い『お姫様』を抱えた、この世界に適応した最高のバケモノ――――
('∀`)「精々、楽しもうじゃねえか」
誰にも縛られず、誰にも裁かれない、自由でクソッタレな終末の世界を
.
179
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:50:59 ID:Eo9hzRWw0
(* ^ω^)「フフ……」
(*'A`)「フフッフ……」
(´・ω・`)「いやかっこつけてる所悪いんだけど早く出せよ」
( ∵)「すげー気持ち悪いわ」
▼・ェ・▼「キューン」
*(‘‘)*「へっ」
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「行くか……」
( ^ω^)「ヘコむわ……」
('A`)「腹は」
( ^ω^)「はいはいヘコまないヘコまない」
180
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:51:47 ID:Eo9hzRWw0
('A`)「さーて、そんじゃ……」
エンジンを掛け、アクセルをゆっくりと踏み
('A`)( ^ω^)(´・ω・`)「「「出発!!」」」▼・ェ・▼(∵ )
*(*‘‘)*「ぱつー!!」
ウォークマンの再生ボタンを押した―――――
.
181
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:52:38 ID:Eo9hzRWw0
♪
https://www.youtube.com/watch?v=4Ba_qTPA4Ds
.
182
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:53:36 ID:Eo9hzRWw0
CAST
♪
♪
('A`)
(ヽ )ヽ ドクオ
〜ノ ヽ
♪
('A`≡'A`)
/( )ヾ
< > ♪
♪
ノ
('A`)
( (7 ♪
< ヽ ピッ
183
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:54:01 ID:Eo9hzRWw0
♪ ♪
( ´^ω^) ))
(( ( つ ヽ、 ♪ ショボン
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
♪
(( (^ω^` )
♪ / ⊂ ) )) ♪
((( ヽつ 〈
(_)^ヽ__) ♪
184
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:54:54 ID:Eo9hzRWw0
∩
r( ^ω^ )ノ _<ハァーーーーー、ぽっちゃりぽっちゃり!!
└‐、 レ´`ヽ
ヽ _ノ´`
( .(´ ♪
`ー
ブーン
♪
m( ^ω^ )m<ぽっちゃりよーーーーーーーーーーーい!!
└‐、 r┘
ドシ ┌┘ └┐♪ ドシ
!l 」_ 」  ̄ ̄ {__L !
185
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:56:58 ID:Eo9hzRWw0
( ∵)<〜♪ ビコーズ
ζ
[ ̄]'E
.  ̄
186
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:57:23 ID:Eo9hzRWw0
以`゚益゚以 ワンワン!!
イトーイ増井
.r'"''、
iー 、 ,iー-、 .゙l l,,_
i゙ l /ヽ、 .!, .゙'" ヽ.
l ,l` l, ミ l , r .iヽ l
| ,l' ゙l, ゙l, ./ .l/ / .! .!
l' l _ ゙l ゙l │ i゙.l ,ト--″ l
'l l_,ノ゙ | l、 丿 .! .∨ .,..、 l゙
'l, ゙ l " l. : ,i┐゙‐'゛ ゙l
ヽ,,,,,,..ノ `''''" ヽ,,,,,,..-'―′
187
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:57:58 ID:Eo9hzRWw0
__
/ノへゝ
|\‘‘)*<あう〜♪
\_ ̄ ̄ヾ ハイン(ヘリカル沢近)
\__/
188
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:58:32 ID:Eo9hzRWw0
使用楽曲
♪Vanessa Redgrave - True Color
♪Tom Jones - If I Only Knew
♪NieR:Automata - 遊園地廃墟
♪Nickelback - Burn It To The Ground
ED theme
♪MKTO - Classic
.
189
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:59:18 ID:Eo9hzRWw0
原作
Cargo
https://www.youtube.com/watch?v=gryenlQKTbE
.
190
:
◆rUCCxWiwxg
:2017/08/26(土) 13:59:57 ID:Eo9hzRWw0
『CARGO!!』
THE END
191
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 14:01:12 ID:QFqRCOZ.0
最高でござった
とても面白かった
乙
192
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 14:05:15 ID:R7LBhfIc0
乙
優勝出来ると良いな(核爆)
193
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 14:05:28 ID:D6tCl7K20
どいつもこいつもイカレてるしイカしてたわ 最高だった乙
194
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 19:57:41 ID:RfqGJOE.0
読みおわったあとの爽やかな気持ちがたまらん
195
:
名無しさん
:2017/08/26(土) 20:47:40 ID:6Vl2kjM60
最高
196
:
◆TflJu3mvXc
:2017/08/27(日) 01:27:28 ID:8zNg4C9k0
【業務連絡】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
【
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1500044449/257
】
【
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1500044449/295
】
197
:
名無しさん
:2017/08/27(日) 04:47:29 ID:CPtGrPfg0
タイトル見ただけで分かってたけどこの世界観最高すぎだろ
198
:
名無しさん
:2017/08/27(日) 09:01:36 ID:wSE4372g0
乙
終わった世界で一番ゾンビになりきろうとしてたドクオが一番人間らしいと言うのが何ともな
めっちゃ面白かったぜ
199
:
名無しさん
:2017/08/27(日) 16:31:30 ID:GNZgj/GY0
イカれて逝かれてるけどイカしてる作品でした!
200
:
名無しさん
:2017/08/28(月) 03:25:13 ID:xQ7Ns5aY0
>>170
ここ大好き
201
:
名無しさん
:2017/08/28(月) 13:13:41 ID:d/Gzvc1Q0
乙
最高だった いろいろ狂ってて面白かった
202
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 15:25:21 ID:3qCnyyYE0
清々しい余韻、内容も最高に熱くて濃密だった
203
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 15:53:28 ID:qmlWP.iM0
控え目に言って最高だった
これハリウッドで映画化してもらおうぜ
204
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 18:15:14 ID:EqtAhZ5.0
ゾンビ版フルハウスって感じで楽しく読めた、乙
205
:
名無しさん
:2017/08/29(火) 18:33:12 ID:z4g8M1fg0
最高すぎる
もっと読まれてくれ
206
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 03:48:49 ID:janbl6520
おつ
ドクオの、ゾンビになったのに言い訳やら逃げやらで良くも悪くも人間らしいところが感情移入しやすかったし
ショボンやブーンも含めて三者三様で役割もハッキリしていた。
イトーイのメカニックなところが後の伏線になっているのや、ビコーズをあえて喋らないキャラにして……ってのも良かった。
ハインが大きくなっても皆一緒にいる幸せなイメージが想像できる。
とても面白かった。
207
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 12:48:02 ID:JCqZI5Eg0
乙
もっとだ
もっと読ませてくれえぇぇぇぇぇぇ!!!!
ほのぼのでいいからさぁぁぁぁぁ!!
208
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 13:20:17 ID:TzXwOPUg0
映画一本見たあとと同じ気持ちだわ
コメディで熱くて名作へのリスペクトもふんだんにあって最高
超面白かった! 乙
209
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 15:53:25 ID:Wz4zJ9pw0
面白かった
210
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 17:37:09 ID:7LHMboKM0
おつ
手放しに美しいとは言えない世界と人々だけど、とっても綺麗な物語だと思った
先の事を考えるとどうあがいても不安が付きまとうけど、それでも希望を願わずにいられない
211
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 22:21:46 ID:Gv6ctfjg0
断言すっけどこれが映画化されるなら俺は間違いなく万札出してでも見る。
212
:
名無しさん
:2017/08/30(水) 22:22:53 ID:IqkXrETQ0
ロードムービー&ゾンビパニック人情コメディとか欲張り過ぎでしょ
よくまとまってた、面白かったです。乙!
213
:
名無しさん
:2017/08/31(木) 18:48:32 ID:cZh.fDKA0
乙
214
:
名無しさん
:2017/08/31(木) 19:55:21 ID:TgUu5wVA0
乙!!!!!
215
:
名無しさん
:2017/08/31(木) 21:53:24 ID:UX7/KDxI0
ゾンビなのに人間ドラマって感じだった…最高だった乙
216
:
名無しさん
:2017/09/02(土) 09:22:07 ID:KyBTUEik0
乙
なにこれしゅごい…お世辞抜きで映画化してほしい
ゾンビモノは敬遠しがちだけど読んでよかった
217
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 05:25:16 ID:QuGO7uLc0
http://imgur.com/a/o3A7Q
投票はまとめてになるのでとりあえず支援
最高でした…
218
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 17:59:41 ID:CAlQLeXI0
>>217
すげえ好き
あんたも最高
219
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 19:26:53 ID:Y3K9JO7Q0
乙 なんて最高な外道共なんだ
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2428.jpg
220
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 20:49:22 ID:rGE7k/k20
>>219
かっけえええええ
221
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:01:30 ID:dCRw/Qo60
>>220
ビコーズがビコーズだやべぇ
これで深夜アニメでやって欲しい
222
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:02:01 ID:dCRw/Qo60
おうふ安価ミス
>>219
な
223
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:22:43 ID:QPS1QON20
http://i.imgur.com/TpXU9JU.jpg
こっちにも貼った方がいいのかしらん
悔しいけど最高だったよ
224
:
名無しさん
:2017/09/03(日) 21:52:08 ID:DcHmEb.c0
>>223
鉛筆なのにふいんきぱねぇ
ドクオめちゃくちゃ好き
225
:
名無しさん
:2017/09/04(月) 00:49:33 ID:vrG7ViWA0
>>189
いいねこれ
226
:
名無しさん
:2017/09/05(火) 20:56:59 ID:JTLZoduo0
数年前原作で泣かされた自分がそれ以上に号泣させられるとは思わんかったよ。
投票はまとめてのつもりなんで先に感謝をこめて貼らせていただく。
最高にイカす外道共をありがとう!
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2436.png
227
:
名無しさん
:2017/09/05(火) 22:54:47 ID:po4xwB920
ポップでいいね!
なのによく見るとエグいってところが作品にマッチしてていい感じ!
228
:
名無しさん
:2017/09/06(水) 01:22:26 ID:H9P4LG8U0
>>226
ええのうええのう
229
:
名無しさん
:2017/09/06(水) 22:31:06 ID:KZYCnuUM0
>>226
すごくすき
230
:
名無しさん
:2017/09/08(金) 23:36:02 ID:oIwu7QkI0
最高でした!
https://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1360867.jpg
作品絵を描かせていただきました
231
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 06:23:38 ID:EP0wiW3c0
最高やったよ
232
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 08:54:44 ID:6jsiz75g0
ロメロが亡くなった日、朝まで遊んでて家帰ってニュース観て愕然としたんだよなぁ。
途中で触れてくれてありがとう
233
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 14:23:44 ID:7vMN7O3U0
おめでとう!
234
:
◆HS4z8y6JHc
:2017/09/17(日) 20:59:14 ID:HV5vSS6I0
あとがき
結果発表から一日経ちましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか
僕はあの後テンション爆上がりの中ダーツ行ってパズドラ始めて一万円ぶち込みました。なんか風神ってのが強いらしいですね
お陰様で総合一位、MVP一位、作者四位を頂きました。まさか本当に優勝できるとは思わんやん普通
当初なら天華百剣元ネタにした男まみれ作品を書くつもりだったんですが、嘘予告に投下して間も無く更に本スレでも言及しちゃったんで
『アカン絶対バレる』と思い、前々から書きたかったゾンビ物に着手した次第です。天華百剣には既に六万円つぎ込んでます
このお話の元ネタは、本編の最後にお伝えした通り『Cargo』という、一風変わった短編ゾンビ映画です
ゾンビに噛まれた父親が、赤ちゃんを生存者に届けるためにゾンビの習性を利用して……ってストーリーですね。泣けるんだよなぁ
これがもしゾンビに拾われたらという、IFを独自設定を加えて書きました。ゾンビに知性を持たせたらアカンって荒木飛呂彦大先生も言ってたのに
元ネタはもう一つあります。ニコラス・ホルト主演のゾンビ映画『ウォーム・ボディーズ』です
ゾンビである『R』が生存者のヒロインに一目惚れをして、周辺のゾンビを巻き込んで徐々に変化していくというストーリー
赤ん坊に関わったことでクソウンコ野郎共だった有脳種が変化していく展開は、この映画の影響が大きいです
*(‘‘)*の名前をハインにしたのは、ラストで成長したハインを書こうと考えていたからなんですが
今のエンドの方が爽やかでいいなぁと思い結局本編で回収は出来ませんでした
続きはあるのかと言う意見もありましたが、この作品はこれ以上書くと間違いなく蛇足になるので無いです
最終的に宇宙とか行ってジェイソンと戦ったりなんてこともあり得るので無いです。鎮守府の続きすらまだ書けてないのに
きっちり映画一本分くらいのイメージで書いていたので、自分では綺麗にまとまったと思ってます
『映画化してくれ』という感想が多く目につき、作者としては大変嬉しい限りなのですが
そもそも原作のCargoがマーティン・フリーマン主演で映画化するんですよね
http://www.cinema-frontline.com/2016/09/movie-news-cargo.html
←これ
なので公開したらこれ観に行ってください。そして今絶賛上映中の韓国産ゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』も観に行け
https://www.youtube.com/watch?v=k3829dsZyzY
←予告編
僕の中のゾンビ映画ランキングを塗り替えた作品です。クソ泣けます
いつも通りクソ長いあとがきですが、主催、まとめを始め作品を読んでくれた方やMVP及び通常投票をくださった方
絵投票をしてくださった方々に感謝を申し上げます。絵は全部保存しました。嬉しみ半端なかったです
仕事が忙しかったり艦これSS書いてたりゲームしてたりで何かと頻繁な更新は出来ませんが
今後とも飽きるまで楽しんでくれたら幸いです。ありがとうございました
最後にひとつだけ言わせてください
235
:
◆HS4z8y6JHc
:2017/09/17(日) 21:00:18 ID:HV5vSS6I0
罰ゲームのクソ映画五本立てやりませーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!
\ 丶 i. | .l ヽ ../ /
\ ヽ i. .| .r ‐、 l ヽ ./ /
\ ヽ i | .| ○ |,.r'、__〉 ./ / お疲れさまでした
\ ,.rー⌒ト - イ、 /
人、__>´ `ー 、, ヽ' -‐
ー l r', |ヽ l、B l H|
__ l / │ ヽ―'^7' --
二 /,べ 〉==/⌒、 .= 二
 ̄ // / ノ  ̄
-‐ | ( ̄~7 ‐-
ヽ_l /ヽ
/ ソ ./ ヽ
/ ._,.へ_r・' ノ⌒、 ) ヽ \
/ 'ーー-l /ーー'´ .丶 \
/ / / ..し'.| i, 丶 \
/ / / | i, 丶 \
236
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 21:25:35 ID:Zn1LXZ8w0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ = 完 =
237
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 22:51:39 ID:o3I6UVik0
クソっ、チクショウめ!
238
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 23:18:39 ID:mW4lCqcg0
乙乙w優勝おめでとう
239
:
名無しさん
:2017/09/17(日) 23:47:09 ID:WbTQCkUA0
新感染良かったよねぇ。 父親の成長譚として最高。
日本でもアレくらい面白いゾンビ映画作られないかなぁ。。。
乙!
240
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/04(火) 23:53:28 ID:rNWdNHQU0
( A )
産まれたての赤ん坊は、真っ先に母の乳を求める
『食欲』。育つ為、生きる為、悦びの為に、誰一人の例外なく抗えない欲求
( A ) グチャ……ニチャ……
後に、終生の友となり家族となる『あいつら』も同じく
( A ) ボキ……ゴク……
始まりは、気が狂うほどの空腹―――『食欲』から始まったらしい
( A ) ジュル……ブチッ……
そう言った意味では、同じなのかもしれない
( A )「オ……」
『人』として産まれるのと、『ゾンビ』として産まれ変わるのは
241
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/04(火) 23:54:22 ID:rNWdNHQU0
('A )「オ……」
('A`)そ「オイやべえなんだ血まみれじゃねえかビビるわ」
('A`)「美味しい」ベロンチョ
.
242
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/04(火) 23:55:17 ID:rNWdNHQU0
Chapter.1 Lucky man
.
243
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:00:59 ID:flMwVd.20
ウォーキング・デッド。誰かが奴らをそう呼んだ。全く、上手い事言いやがる
世界の死は、『歩くような速さ』で進んでいるのだから
('A`)「全くなんだってんだ……」
住み慣れた汚ぇアパートの部屋はいつも以上に取っ散らかってる
ガラスバキ割れーのソファーぶっ壊れーの、知らんオッサンが腸グチャグチャになっておっ死んでやがりーので
('A`)「あーあー……」
俺ん家でパージでも開催されたのかよって位の荒れっぷりだ。いま正に世界中がエブリディパージフェスティバルみてーなもんなんだが
しかし解せない。生まれて二十数年が経つが、肥満の国らしからぬガリガリボディでナード界の最底辺に位置する俺が
割と恰幅の良いオッサンと『殺し合って』、『勝ち』、尚且つ『食う』まで達成するとは。人類史に刻むべき快挙なんじゃないだろうか
('A`)「ハァ……」
そもそも、殺されるまでも無く俺は死ぬつもりだった
エブリディパージフェスティバルが幸いして、大量のアルコールと睡眠薬が手に入ったのでサクッと逝こうとしたのに
クソ、役に立たねえなダニエル。この百数十年、散々酒乱の人生を台無しにしといて俺一人も殺せねえのか琥珀色の小便が
痛い思いしてでもこいつの角で頭ぶつけて死ねば良かったかもしれねえ。腹いせに空き瓶を軽く蹴っ飛ばすと、何かしらんが粉砕した
('A`)「ええ……?」
状況に対する困惑は当然ある。しかし取り乱す程でもなく、冷静を保ち続けられる奇妙な落ち着きもあった
この返り血で染まった俺の身体の事もあるし、さっきまで食いちぎってたオッサンの汚ぇ腕の事もある
脂肪たっぷりの上腕部には『Cindy』の入れ墨。うわわわわ、若い頃にテンション上がって恋人の名前掘った痛い男の腕食っちまったよ
('A`)「あーもー……」
お国柄を大げさに表現するのなら、『ああ、神よ!!』とでも喚き散らしてたのだろうが、代わりに口から出てきたのは下品なゲップの音だった
鉄の臭いが口内に充満する。奥歯に何かが引っかかってる感触があり、指で挟んで取ってみると分厚い人の皮膚だった
244
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:02:53 ID:flMwVd.20
('A`)「あー……」
パニックを起こして然るべきなのだろうが、依然として気分は落ち着いていた
第一に『満腹感』があったからだ。金さえあれば幾らでも飲み食いできていた時代とは違い、今は日々を食いつなぐのに精一杯
満たされているとは則ち『幸福』とも言い換えられる。久しく感じていなかった多幸感が、異常による恐怖を抑えているのだろう
('A`)「フゥー……」
そして落ち着きとは『余裕』だ。ここに到るまでの行程を正確に思い出すには最適の状態と言える
そもそも、俺は何故死のうと思ったのか。先ずはそこから考えよう
('A`)「えーと……」
確か、ゾンビから逃げてきたであろう女を色っけ出して助けようとしたのがそもそもの始まりだ
ブロンドのスタイルが良い美女が一人で行動してる時点で違和感を感じるべきだったが、長い孤独期間と溜まった性欲で感覚が麻痺してたのだろう
ヒーローさながらに救出し、あわよくば……などと飛び出したは良いが、あれよあれよと言う間に連中のお仲間に取っ捕まって手酷く痛めつけられた
まぁ、奴らが全部悪いたぁ言わねえよ。こんな世の中だ。誰だって人を欺いてでも生き延びたいに決まってる
だが因果応報という言葉もある。俺が持ってた物資を粗方奪い、さぁ後始末だとばかりに拳銃を突きつけられた瞬間、これまたタイミングよく『捕食者』が現れた
手垢の付いたB級映画かよってくらいの実に鮮やかな襲撃により、その場は大混乱。俺もなんとか『人』の手からは逃げおおせたのだが
245
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:07:27 ID:flMwVd.20
('A`)「うん……」
ゾンビにとっちゃ俺も餌の一つに過ぎず、右手にガブリと噛み付かれてしまった
まぁ、この場に原型とどめてボーッと突っ立ってる時点でそいつからも逃げられたのは察しが着くだろう
だが、古来から伝わる伝統的パターンを鑑みれば、噛まれた段階で『詰み』だと解くことも出来る
だから俺はせめて苦しまずに逝こうと睡眠薬を酒で流し込んで死のうとした
よくよく考えれば頭をぶち抜かないと蘇るじゃねえか。この期に及んでヘタレが先行していたらしい
で、意識が遠のいて目が覚めたらこのザマだ
薬と酒でオツムがイっちまったからと言って、腹一杯になるまでオッサンの肉を食らうか普通?
('A`)「そうだ、傷は……」
せめてもの抵抗として止血だけはしていた右手を確認する。痛みはなかった
暴れた時に緩くなったのであろう布を取っ払うと、そこには幾らか小さくなった噛み傷が残っていた
('A`)「ええ……?」
『治りかけている』。皮膚細胞が数多くの治癒行程を取っ払って直接結びついたかのような迅速さで
そしてもう一つ異常があった。肌に血の気が全くない。それは右手だけに留まらず、全身が『奴ら』のような有様だった
246
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:09:30 ID:flMwVd.20
('A`)「うむむ」
これは無事、世界人口の大半を占める連中の仲間入りを果たしたと言うことなのだろうか
いやいや、それにしても異常が多すぎる。傷のこともそうだし、そもそも俺は『思考』が出来ているではないか
『お仲間』も総じてそうなのか?まさか。頭を使って行動しているようにはとても見えない
それに、奴らの生傷は決して治らないままだ。四肢が捥がれても、肉を求めてジタバタともがき続ける悲しい存在の筈だ
('A`)「……」
よーく傷を観察してみると、ゆっくりとだが確実に塞がっている。何が作用したらこうなる?
左手の親指でなぞってみると、血の他の物が付着した。粘り気のあるそれは、血を舐めとった時についたのだろう
('A`)「……」
もしやと思い、その粘液を傷口に垂らしてみる。すると、活力を取り戻したかのように傷口の治癒は進み
ものの数秒の内に、目を凝らさないとわからないくらいに完治してしまった
('A`)「なるほどね」
『唾液』。これが謎の答えらしい
247
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:13:32 ID:flMwVd.20
('A`)「さて……どうしたもんかね」
以上の状況を整理すると、俺は立派にゾンビとして転生した。転生?胸に手を当てても心臓は動いてないけど、転生?まぁいいや
人を食う事に関してだけ言えば、胸を張って主張しても問題ないだろう。しかしオツムと唾液に関しては?
俺は別に奴らの研究者でもなんでもない。検証など一度も行ったことはないし、その余裕もなかった
つまり、考えるだけ無駄なのでは?解決策など有りはしないだろう。死人は絶対に生き返らないのだから
('A`)「……」
思考を持つゾンビ。なんかの映画で観たな。そいつらは総じて『生まれ変わって清々しい』と宣っていた
正直クソつまんねー映画だったが、まさか自分がそうなるとは。今となってはそいつらの気持ちもわからなくはない
物の試しに、空き瓶を拾ってみる。皹が入っていないことを確認し、強く握りしめた
('A`)そ「うおっ!?」
薄い氷でも割ったかのような手ごたえが広がり、瓶底が俺の足先に落ちた。痛くはないが反射的に右足を引く
なんてこった。生まれてこの方『パワー』なんてもんに縁がなかった俺が、たちまちスーパーマンじゃねえか
(;'A`)「ハハ……ハハハ……いやどうすんだよこれ……」
生前……生前?まぁ生前でいいや。生前もコミュニティとやらから逸脱していた人生だったが、まさか人でもゾンビでもない存在になるとは
さぁ、いよいよ孤独が加速してきた。どうする?これまで通り『人』として生きるか?それとも、『ゾンビ』らしく人を襲って食つなぐか?
(;'A`)「……へっ」
何をバカな。どっちにしろ同じだ。俺は一つの選択肢を選び、しくじった。『死ねなかった』
イエス様が直々に天国への階段から蹴り落とし、地獄の悪魔が慰めに贈り物をしてくれた
人を食うからなんだ?絶望したか?いいや、『NO』だ。むしろ胸の奥底からマグマのように高揚感が溢れ出してくる
(*'A`)「へへ……ははははは!!」
やれるとこまでやろう。行けるとこまで行こう
終わった世界で拾った命、コソコソと引きこもるのはやめだ
248
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:15:40 ID:flMwVd.20
('A`)「っしゃ!!」
頬を叩いて気合を入れ、汚れた服をその場に脱ぎ捨てクローゼットを開く
ボストンバッグに衣類と万一に備え隠していた水と食料、一応、余った『ダニエル』も放り込んで肩にしょい込む
おっと、ポスト・アポカリプスを生き抜くには先立つものも必要だな。季節外れのサンタクロースは、『飯』と一緒にプレゼントも届けてくれた
('A`)「こいつは貰っていくぜ」
ガバメントと替えのマガジンが差し込まれたホルスターを抜き取り、腰に回し着けた
狩猟用の二連式ショットガンを拾い、メイトリックス大佐さながらに担いで見せる
('A`)「様になってるか?ん?」
右頬が大きく裂け、虚ろな瞳を向けるオッサンは一言
「ヴァァ」
と返事をした。うむ、好評でなによりだ
('A`)「部屋は譲るよ。じゃあなMr.ミートパイ。シンディによろしく伝えといてくれ」
部屋の鍵を投げ渡し、颯爽と後にしようとして忘れ物に気が付いた
('A`)「おっと……これこれ」
人類が生み出した中で最も偉大な発明品。『ウォークマン』だ
(*'A`)「行ってきます!!」
住み慣れた我が家に永遠の別れを告げ、二段飛ばしで階段を駆け下りた
息は全く上がらない。脚に乳酸が溜まっていく気配もない。ロビーの扉を開け放った時には、世界から祝福されたかのような爽快感に満たされた
そして、アパートの前に駐車されている車を見て、思わず天に向かって投げキッスをしてしまった
249
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:17:40 ID:flMwVd.20
(*'A`)「ああ、ミスターミスターミスター!!アンタって野郎は最高にイケてやがる!!」
足まで用意してくれてるたぁ気前がいい。運転席に乗り込んでキーを確認すると、なんと挿しっぱなしであった
なんてこった。生まれ変わった途端、幸運の女神様から熱烈なアプローチを受けっぱなしだ
(*'A`)「オーケーオーケー……落ち着け……」
キーを回すと車が嘶きを上げた。実に甘美な響きだ。惚れ惚れする
シートベルトを締め、バックミラーを調整する。不意に映った俺の顔面は、血色の悪さとニヤケ面が加わり更に酷かった
構うものか。誰が俺をあざ笑えると言うんだ?今や俺以外の連中は死人か『パン』だ。笑えるものなら笑ってみろ
(*'A`)「さぁ、行くぜ行くぜ行くぜええええええええええええええええッ!!!!」
クラッチを踏み、ギアをローにいれ、アクセルを思いっきり踏み込む。映画さながらの急発進と共に
ウォークマンの再生ボタンを押した―――――
250
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:19:14 ID:flMwVd.20
CARGO RE:Member
.
251
:
◆L6OaR8HKlk
:2019/06/05(水) 00:23:42 ID:flMwVd.20
今日はここまでだし続きはいつでるかわからん
当初はおわはじ祭用に書いてたものなんですが、めんどくなって途中で投げた過去編です
百選ありがとうってことでプロローグだけ投下しました。本当にありがとうございます
じゃあ艦娘の続き書く作業に戻ります
252
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 02:38:08 ID:wQCTPmnQ0
まじかこれは期待
253
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 15:21:15 ID:l.BwGISI0
続き来るなんて予想できねぇよ乙
前日譚だけじゃなく後日譚も見たい(強欲)
254
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 17:32:48 ID:yj7y30u60
うわーまじか嬉しいぞおつおつ
楽しみにしてるよ
255
:
名無しさん
:2019/06/05(水) 18:01:14 ID:WtpeOdbg0
おつおつ
イトーイと喋らん奴と合流するところが楽しみだ
256
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 01:11:03 ID:sbMmLd9s0
おっつおっつ
こっちもあっちも楽しみやで
257
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 14:11:31 ID:BJqNHRrU0
うおお、乙
Mr.ミートパイって言い方めちゃくちゃ洋画で好き
258
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 16:36:24 ID:06ooiGyc0
楽しみすぎる
259
:
名無しさん
:2021/02/10(水) 12:22:25 ID:KlXba6Ag0
ブーン系で一番好きな作品
続き待ってるよー!!!!
260
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:09:57 ID:sUPUImyY0
不測の事態ってのは、大小の規模に関わらず対処しにくいもんだが、大きければ大きいほど迅速な処置が求められる
しかし案の定というか想定の範疇というか。この『日出る国』は初動からミスの連発だった
検討に検討を重ねて対応が追いつかなくなる及び腰の与党に、喚くだけで足を引っ張る役立たずの野党
頭にアルミホイル巻きたがりの一部の国民は、ここぞとばかりに声高々に陰謀論を唱え、考える事をやめたアホ共が続々と洗脳され、暴徒と化した
治安は日に日に悪化の一途を辿り、都心から次々と蝕まれるように機能を停止していった
たったの三年と少しで、この国はゾンビ蔓延るアポカリプスに早替わりってワケだ
お国が全部悪いとは言わねえよ。人が人を喰うような惨状、本来なら銀幕の中だけの出来事だ
例えバケモンになったとは言え、家族でも友人でもない他人だろうが頭なんざぶち抜きたくもねえだろうし、まともな連中には出来もしねえだろう
『感染』が、『愛』や『情』や『慈悲』を上回った結果が、ご覧の有様ってだけだ。最も、その三つが世界を劇的に改善した前例も、俺が知る限りでは無いんじゃなかろうか
その後はまぁ、お察し頂けるだろう。生き残った人々は、跋扈する生きる屍から身を隠しつつ、滅びた街で慎ましく暮らしている
崩壊前と変わらない点と言やぁ、生きる為の労働は相変わらず着いて回るのと
人口が激減しても尚……いや、『激減したからこそ』、他人を良いようにダシに使う連中は後を絶たない事だ
261
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:12:12 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「さて……」
生憎、俺という人間はどうにも賢しく立ち回れるお利巧さんじゃなかった。幸いにも腕っぷしだけには恵まれていたので、廃墟漁りやコミュニティからの依頼なんかでなんとか食い扶持を稼いでいる
Win-Winなんてご高尚なビジネス用語もあるが、人をこき使う側の要望はいつだって『無償の奉仕』だ。仕事に難癖付けて報酬をケチったり渡さなかったりなど日常茶飯事だった
なら、報酬を前払いで貰えばいいんじゃないかって?そんな気前の良い奴、崩壊前にだっていねえよ。だけど―――――
(;´メ)ω(メ`)「勘弁してクレメンス……勘弁してクレメンス……」
(;メ)ω(メ)「前が見えねえ」
(;メ)A(メ)「お顔パンパンマン」
クソ野郎に報復しても罪に問われないって点じゃ、少しは生きやすくなったんじゃねえかな
262
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:13:24 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「俺ぁ、ご要望の円盤をキッチリ持ってきてやった。JK、痴漢、ロリ、OL、寝取られ、人妻、熟女、キモオタが大好きなゲイポルノまで。わざわざゾンビの巣窟になってる買取MAXに潜ってな。ついでに『シリコンの穴』まで用意してやった。俺なりのサービスさ」
(´・_・`)「その見返りが、ツナ缶三つ?驚いたね。チンポ野郎が三人揃っても、勘定一つロクに出来ねえんだからな」
『お宝』が詰まった段ボールを蹴とばすと、中から赤裸々な女性が写されたパッケージが散乱した
小汚いずっこけ三人組は、情けない悲鳴を上げてそれらをかき集める。思わず笑いがこみ上げるほど滑稽な姿だった
(´・_・`)「どう落とし前付ける気だ?ええ?」
(;´メ)ω(メ`)「まま、待ってくれ先生!!報酬はこれだけじゃあない!!ちゃんと他にも用意してある!!」
(´・_・`)「イカ臭ぇ手垢のついた中古DVDならいらねえよ」
こいつらはご察しの通りアダルトビデオの販売で生計を立てている。サービス業の衰退により娯楽が限られる昨今、こういった映像媒体の需要は高い
『命を懸けるまでもない物』だからこそ、安全に手に入るなら多少値が張っても欲しくなる。消費者心理をついた商才には舌を巻くが、俺のような流れの『仕入れ担当』を甘く見たのが運の尽きだ
(;´メ)ω(メ`)「へへへ……この世界で最も価値のある報酬は何だと思う先生?」
(´・_・`)「命か?」
マチェットを床に突き立てると、商人共の顔から媚びるような薄ら笑いは掻き消えた
263
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:14:13 ID:sUPUImyY0
(;´メ)ω(メ`)「安全!!安全だ!!BBZに載ってたんだ!!ここから少し行った先に、物好きな女が一人で立てこもってるバンカーがある!!」
『Bulletin Board Zombi』。通称『BBZ』。徘徊する習性を持つゾンビに、情報を書いた紙やらホワイトボードやらを首からぶら下げ、不特定多数の生存者に向けて発信するイカれた『歩く掲示板』だ
主に生存者コミュニティの場所や、使用可能なセーフハウス、救助要請などが記されているが、大半が悪戯か罠で当てにならない
(´・_・`)「何かと思えば……」
(;´メ)ω(メ`)そ「待ってくれこれはガチだ!!俺らも何回か部下を遣わして取引もした!!奴さん、ガッポリ溜め込んでいるみたいで優雅な暮らしを送ってる!!」
(´・_・`)「ほぉー?その女をくれてやるから見逃せってか?見下げ果てたクズ共だな。やっぱ一人残らず殺すか?」
(;メ)ω(メ)「はい!!こいつクズなんですお!!ぶっ殺してくださいお!!」
(;メ)A(メ)「本当にクズなんです!!支払いケチろうって言ったのもこいつなんです!!一人なら余裕でぶっ殺せるだろって!!」
(;´メ)ω(メ`)そ「ハァーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!??????俺は冗談のつもりだったのに部下を焚きつけたのはお前らじゃねえかブサイク共が!!!!!!!責任転嫁やめてくれますーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!?????」
(´・_・`)「よし、わかった、いいから……ああ、要点だけ話せ。すぐに」
ヤバい本当に殺したくなってきた
264
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:15:49 ID:sUPUImyY0
(;´メ)ω(メ`)「その女が人手を募集してんだ!!それもとびきり腕の立つ用心棒をな!!俺の手下も何人か立候補したが、全員門前払いだった!!だ、だがアンタなら申し分ない!!しょ、紹介状も書いてやるよ!!な!?」
(´・_・`)「見返りは?」
(;´メ)ω(メ`)「タンマリ非常食を積んだ、水洗トイレとユニットバス完備かつ浄水機能付きのバンカーで、ブロンド美女との同棲生活だ!!これ以上ない暮らしが出来るんだぜ!?」
安全な水、腐ってない飯、清潔なトイレに熱いシャワー。かつて当たり前のように享受していた『普通』は、今じゃ手の届かない贅沢品となった
胡散臭いが、魅力的だ。騙されたと思って行ってみるのもアリかもしれない
(;´メ)ω(メ`)「へ、へへ!!千載一遇のチャンスだぜ先生!!AV数十本の調達なんて安いもんじゃねえか!?なぁ!!」
(´・_・`)「……」
何を早合点してるのか知らんが、『これで手打ち』とは一言も言っていない。奴らの『商品』が詰まったリュックを二つほどひっくり返し、中を空にして投げ渡した
(;´メ)ω(メ`)「へ?」
(´・_・`)「そいつがパンッパンになるまで、水と食料を詰めろ。バンカーまでの地図と紹介状も忘れんなよ」
(;´メ)ω(メ`)「あの、いや……チャンスを……」
(´・_・`)「裏切りの代償にしちゃ、安いもんじゃねえか?それとも、『もっと高い支払い』をご所望か?」
マチェットを引き抜くと、三匹のクズは弾け飛ぶように立ち上がって物資倉庫へと一目散に駆けていった
後に残されたのは俺と、ゾンビみたくうめき声をあげる、ぶちのめした十数人ほどの手下共だけだ
(´・_・`)「ボスは選んだ方がいいぞ兄弟」
ツナ缶を開け、遅い昼食を摂り始めた
265
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:17:13 ID:sUPUImyY0
―――――
―――
―
(´・_・`)「こんな住宅地にねぇ……」
愛車の軽トラを走らせること二時間。寂れた地方の住宅地に、件のバンカーはドンと聳え立っていた
高さ二メートルほどの塀と有刺鉄線で囲われた、コンクリート作りの豆腐建造物。正面入口も重厚な鉄のゲートで閉ざされており、蟻の子一匹も侵入させないという気概すら感じられる
(´・_・`)「それに……」
塀を登って侵入しようとした不届者も過去にはいたのだろう。周りには衣服が焦げた死体が幾つか転がっていた
有刺鉄線には高電圧の電流まで流しているらしい。この家の持ち主はよっぽどのプロレスファンとみたね
門にはインターホンと、あからさまな監視カメラが設置されている。排他的な佇まいに少々気が引けるが、意を決してチャイムを鳴らした
(´・_・`)「ごめんくださーい」
返事の代わりに、軋んだ音を鳴らしてゲートが開く。『来るもの拒まず』のスタンスか
背後に迫っていたエプロン姿のゾンビを蹴飛ばして、エンジンかけっぱの愛車に乗り込みお邪魔させてもらった
266
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:18:15 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「立派なお宅だこと」
車三台分の広々とした駐車スペースに乗り入れると、ゲートはすぐさま閉じられた
車から降りると、こうもあっさり迎え入れられた理由が一目瞭然だった
庭には一切の飾り気がなく、ただコンクリートの打ちっぱなしが広がっているだけ
同じ材質の建物には、本来正面にあるはずの『ドア』が見当たらない。その代わりかは知らんが、壁際に宅配ボックスらしき箱が設置されていた
窓は幾つかあるが、大の大人が通れるようなサイズはなく、室内の様子も窺えない
(´・_・`)「えーと……」
【どちら様かしら?】
(´・_・`)そ「うおっ」
宅配ボックスの辺りにスピーカーでも取り付けているのか、噂通り若い女性の声が聞こえてくる
この腐敗と自由と暴力の真っ只中に、『女』であることを隠さないとは随分と不用心だが、セキュリティが万全であるという証でもあるのだろう
(´・_・`)「あー、用心棒を探してると聞いてな。ビデオ屋の紹介状もある」
【紹介状?いらないわ】
(´・_・`)「ホンマ役に立たんな……」
期待はしていなかったが、クズなどこんなもんか
267
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:19:15 ID:sUPUImyY0
【私が求めているのは、信頼に足る力を示す事だけ。そこに他人の評価なんて一切介入する余地はないわ】
(´・_・`)「お手柔らかに頼むぜ面接官様。それで?ここでアンタの気が済むまでスクワットでもしようか?」
【結構よ。もうすぐ着くから】
(´・_・`)「はいy」
頭上に影が差し、咄嗟に車から離れた。程なくして運転席のルーフは、上空から降ってきた『ヒトガタ』に踏み潰される
(;´・_・`)「クソッ!!バッタか!!」
変異体、『バッタ』。異常発達した脚力で飛び跳ねる厄介ゾンビだ
垂直に6メートル跳躍出来るこいつなら、高々2メートル程度の塀など軽く飛び越えられる。嫌な奴に目をつけられちまったな
(;´・_・`)「おい嬢ちゃん!!俺が良いっつーまで出てくるんじゃねえぞ!!」
返事は無い。暖かい声援に涙を禁じ得ないよクソッタレ
268
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:20:01 ID:sUPUImyY0
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
血脂で汚れたスーツに、薄ら寂しい頭頂部。割れたメガネの中年リーマン風バッタは、社訓斉唱でもするかのように汚い声を張り上げる
(#´・_・`)「フーッ……」
「アアッ!!!!」
ぺちゃんこになった軽トラを蹴飛ばして、バッタは大口開けて突っ込んでくる
奴お得意の黄金コンボだ。『怯ませて狩る』。これで何人もの『ご馳走』にありついたのだろう
(#´・_・`)「シッ!!」
右袖と襟を取り、一本背負いで頭からコンクリートに叩きつける
受け身すら取れないザコのバッタは、投げられるがままだ。頭蓋と首の骨が折れる確かな手応えがあった
「ア……」
ここまでやれば暫くは動けない。腰の鞘からマチェットを抜いて、二、三度ほど頭を『小突いて』やれば、処置は完了だ
(#´・_・`)「……」
そのまま暫く後続を待ち構えていたが、今のところ他の気配は感じられない
そもそも変異種自体がレア個体だ。群れをなされてたまるか
(;´・_・`)「フーッ……」
目立った音沙汰は無い。野良ゾンビが騒ぐ様子も無さそうだし、警戒は解いても良いだろう
しかし、殺風景とはいえお庭を汚してしまった。車もお釈迦になったし、幸先が悪い。ごめんねってしたら許してくれるだろうか
269
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:21:25 ID:sUPUImyY0
【入って】
(;´・_・`)そ「うおお!?」
ダンマリだった彼女が、俺の苦慮を容赦なく切り裂く。口から心臓飛び出るかと思った。実はもう出てんじゃない?これ元の場所に戻せる?
建物へと向き直ると、ボックスのすぐ側の壁がポッカリと抜けて中へ入れるようになっていた
恐らく、自動ドアをカモフラージュしていたのだろう。盗人が塀を越えたところで、入口がわからなければ手の付けようがない。抜け目のない設計だ
(;´・_・`)「テストは良いのか?」
【終わったわ。次は面接】
(;´・_・`)「終わっ…………ああ、クソ……」
少々の時間を要して、ようやく事態を理解した。このバッタは偶然現れたのではない。『呼び出された』のだ。俺の力量を測るために
ここを紹介したビデオ屋は、当然知っていた筈だ。送り込んだ手下が『門前払いされた』ってこたぁ、後は言わずもがな
つまり、俺は二度もあいつにハメられたってわけだ。やっぱり皆殺しにしとけば良かった
【早くして】
(´・_・`)「労いの一つくらい掛けたらどうだ?人でなしさんよ」
【言い得て妙ね。気に食わなければ出て行っても構わないけれど?】
嫌な女だ。車もお釈迦になったってのに出ていけるワケもない
マチェットを鞘に納め、豆腐ハウスに踏み入れようとして、ふと足を止めてしまう
【どうしたの?】
(´・_・`)「いや……」
武装解除を指示してこない。余程の能天気か、それとも『家の中』までセキュリティたっぷりか
恐らく後者だろう。クズは俺に隠し事をしていたが、『安全である』事に偽りはなさそうだ
それと、奴は女を『ブロンド美女』と言っていたな。そんじゃ、人でなしの女がどんなツラしているのか、拝みに行こうかね
270
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:22:10 ID:sUPUImyY0
―――――
―――
―
ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい」
白衣を着た家主は、アイランドキッチンから盆を手に俺を出迎えてくれた
(´・_・`)「てっきり、俺はレーザーでサイコロステーキにされる廊下とか期待してたが」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさいね。予算が無くて」
殺風景な外観に反して、中はごく普通の内装の部屋だ。リビングに辿り着くまで罠らしい罠も無かった
空気の埃っぽさもなく、空調の効いた室内では、俺の小汚さが余計に際立つ。服くらい着替えれば良かった
ξ゚⊿゚)ξ「掛けて頂戴。お茶を淹れるわ」
噂に違わぬ金髪蒼眼。やや化粧は濃いものの、『美女』と呼ばれるだけはある気量持ちだが
汚い野郎が刃物ぶら下げて踏み込んできたってのに、眉一つ動かしやしない可愛げの無い女だった
(´・_・`)「お構いなく」
ξ゚⊿゚)ξ「そう身構えないで。別に取って食いやしないわよ」
(´・_・`)「アンタはどうだか知らんが、今し方『お友達』に喰われかけた所でね」
ダイニングチェアに腰掛けると、テーブルにティーカップとお茶請けのクッキーが並べられる
ポットから注がれる紅茶の香りに、一瞬だけ先程の理不尽を忘れてしまった
そもそも、彼女はゾンビけしかけるようなサイコ女だ。お茶に一服盛ってムカデ人間手術してくるに違いない。あんなもん観なきゃよかった
271
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:23:13 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「あんな真似しといて、よく落ち着いていられるな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。あなた、賢い人だもの。真っ先に逆上して襲ってこないのがその証明」
(´・_・`)「……」
どうやら、面接は既に始まっていたらしい。武装したまま踏み込ませたのもテストの内ってわけか
ξ゚⊿゚)ξ「賢さとは、何もお勉強の為だけにあるものじゃない。一歩立ち止まって観察し、目一杯思考を巡らせて、自分の中で最良の答えを見つけて行動する……」
ξ゚⊿゚)ξ「思慮深さもまた、賢者たる者の条件と思わない?」
(´・_・`)「知らねえよ」
オラ段々腹立ってきたぞ
272
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:24:13 ID:sUPUImyY0
(´・_・`)「俺は仕事をしに来た。それ以上でもそれ以下でもない。アンタと茶をしばきに来たわけでも、車をスクラップにしにきたわけでもねえんだ」
(´・_・`)「サッサと本題に入れ。無いなら俺はこれを飲んだら出て行く」
女は自分の紅茶を淹れ終えると、向かいの椅子に腰掛ける。防音がしっかりしているからか、壁に架けられた時計の針の音がクッキリと聴こえてくる
急かしはしたが、彼女は此方を品定めするかのようにジッと見据えるばかりで口を開こうとしない。これ以上は時間の無駄だ。アチアチのお茶をとっとと頑張って覚悟決めてカッコつけて一気に飲み干そうとカップを持ち上げ
(´・_・`)「……?」
何かこう、名状しがたい気色の悪さがふと湧いて出た。本来あるべきものがあるべき場所に無いような違和感
他人の家だとか初対面を相手しているとか、そういうレベルの話ではない。もっと人として大前提な部分で、何かが欠けている
(;´・_・`)そ「ッ!!!!????」
その正体に気づき、思わずカップを落としそうになる。時計の針の音が聞こえそうなほど静かな部屋の中で、本来聞こえねばならない音が欠けていた。彼女の『呼吸音』だ
ダースベイダーやウォーズマンほど大袈裟で無くとも、会話の区切りや、ふとした瞬間に『息遣い』は表れるものだ。どれだけ取り繕おうとも、『生き物は無意識のうちに呼吸をする』。特殊な訓練でも受けない限り、完璧なコントロールなど出来ない
目の前の女は微動だにしない。自分のカップを両手で包み、身じろぎどころか呼吸による胸郭の運動も見られない。息を止め、人形かロボットのように此方をジッと見据えてくる
何にせよ、気付いた以上『生き物』として見ることは出来なくなった。精巧なマネキンを相手にしているかのような悍ましさが背筋を伝う
273
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:24:59 ID:sUPUImyY0
ξ゚⊿゚)ξ「どうかした?」
(;´・_・`)「息してなくない?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。それが何か?」
あっけらかんと認められる。『さも当然』のような口振りがタチの悪い冗談に思えてきて、喉から乾いた笑いが漏れた
(;´・_・`)「あはははーはぁ……なんだ、その……息苦しくない?」
ξ゚⊿゚)ξ「お気遣いどうも。人前じゃ『する』ように心がけているわ。でも今は面接中だからね」
(;´・_・`)「関係あるのか?その……息を止めることに?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。観察眼と……バケモノを前にしてどのような反応をするか確かめる為に」
仕事がどうのこうの言ってる場合じゃないのかもしれない。自称『バケモノ』の女がマトモな例を見たことがないからだ。中学生くらいのガキならキショいだけで済むが、成人済みだと目も当てられない
カップを置いて、お暇しようと立ち上がる。すると女は、握手を求めるように手を差し出した
(;´・_・`)「あー……もうとっくにその段階は過ぎてるんじゃねえか?」
ξ゚⊿゚)ξ「これで最後よ。気に食わなければ出て行ってくれて結構」
274
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:25:50 ID:sUPUImyY0
女の眼光からは、『握手をしなければ、絶対に出ていかせない』という強い意志を感じる。随分とお気に召されたらしい
少し躊躇ったが、たった数秒くれてやれば済む話だ。サッサと終わらせて、悪い夢でも見たことにして忘れよう
(;´・_・`)「妙な真似はするなよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「何のためにオモチャを持ち込ませたと思っているのかしら?」
女はもう片方の手を、テーブルの上に仰向けにして乗せた。『何も握っていない』というポーズだ
相手は丸腰の女。片や俺は武装した男。本来なら警戒すべきはあちら側だ。彼女なりの意思表示か
(´・_・`)「エロビデオ屋の連中よりかは、マシな部類かもな」
ξ゚⊿゚)ξ「それは光栄」
バケモノかもしれないが、彼女の行為には気高さを感じられた。敬意を表す意味も込めて、差し出された手を握り返す
(;´・_・`)そ「ウワッ!!!!!!?????」
そしてすぐさま手放した
275
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:28:02 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「アンタ……」
冷たい掌であった。冷え性どうのこうのなんてものじゃなく、『氷でも握ったかのような』、骨身に染みる冷たさだったのだ
彼女はさっきまで、カップを両手で包んでいたのだ。俺が飲むのを躊躇うほどに熱い、淹れたての紅茶が注がれたカップを
俺に出されたカップと、彼女のカップを見比べれば一目瞭然だった。俺の紅茶は今だに湯気を上げているが、彼女の紅茶はこの短時間で冷め切っていた
(;´・_・`)「何のつもりだ?雪女にでも憧れてんのか?だったら出る作品間違えてんじゃねえのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「作品?」
(;´・_・`)「ああ悪い今のは無しで」
思わず妙なセリフを口走ってしまう。腰に手を当てて天井を仰ぎ、何とか気持ちを落ち着かせる
もっと的確な質問があるだろ。最早受け身対応が出来る余裕すらも消え失せたのだ。単刀直入に問わねばならない
(;´・_・`)「アンタ誰だ?何が目的だ?」
ξ゚⊿゚)ξ「津出 玲奈。元研究員。あなたには北海道網走までの護衛をお願いしたいの」
(;´・_・`)「研究員?網走?」
ξ゚⊿゚)ξ「この国で最も堅牢だった研究所がそこにあるのよ。尤も、今はどうなっているかわからないのだけれど」
(;´・_・`)「マジで言って……」
よりによって北海道の上の方。旅客機なんて飛んじゃいないから、陸路か海路で向かわねばならない
目的地に到着するまで、どれほどの旅程になるか見当もつかない。塞がれている道など無数もあるし、船を出せる生存者を見つけられるかも定かではない
勿論、どこに行ってもゾンビはうろついているし、物資目当ての賊にだって遭遇する。コミュニティに属さず旅をするってことは、襲われるリスクと常に隣り合わせだ
276
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:28:46 ID:sUPUImyY0
ξ゚⊿゚)ξ「少なくとも、補給に関しての心配は無用よ。ここのようなバンカーは全国に幾つもあって、私と一緒なら自由に利用できるから」
(;´・_・`)「そりゃあ心強いな。見返りは?」
ξ゚⊿゚)ξ「バンカーのマスターキーとアクセスマップ。目的を果たしたら、あなたは好きな土地で一生困らない水と食料に囲まれて、穏やかな最期を迎えられるわ」
(;´・_・`)「素敵だね……」
安全な住処に水と食料。この世界で考えられる、最も価値のある報酬だろう。それを全国どこでも使い放題とは、命を懸ける価値は確かにある
しかし、この依頼を受けるにはもう一つハッキリと確かめねばならないことがある
(;´・_・`)「アンタ、人間じゃないよな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。最初から説明するより、ある程度体験してもらった方が受け入れやすいと思ったから」
彼女は卓上のウェットティッシュ……化粧落としを一枚取り、頬を拭った。そこには―――――
(;´・_・`)「っそだろおい……」
血の気が引いた死体を連想させる、『青白い肌』が隠されていた
277
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:29:49 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「なん……?」
これまで俺は、様々な変異体と遭遇した。先ほどのバッタもそうだし、全身の筋肉が鉄のように硬直する『ブリキ』も、人の声真似をして誘き寄せる『インコ』にも遭遇した
だがこれまで、ただの一体も『意思疎通が出来るゾンビ』には出遭ったことがない。奴らは生存者を見るや否や、食欲に従って喰らいついてくる恐ろしい獣なのだから
ξ゚⊿゚)ξ「海外じゃ、何体か目撃例があるのだけどね。日本もこれから増えていくんじゃないかしら」
(;´・_・`)「増えていく……?」
ξ゚⊿゚)ξ「私の目的は、『私たち』を全滅させる手段を確立させること。そのカギは『ここ』に眠ってる」
彼女は額を指で小突く
(;´・_・`)「私たち……ってのは……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……殆どが元同僚。今となっては、生存者にとって最も警戒しなければならない敵」
ξ゚⊿゚)ξ「その名も『有脳種』。生前と変わらぬ思考力を保ちながら、人を喰らう『進化した個体』」
.
278
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:30:31 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「……」
言葉を失った俺を他所に、文字通り『人でなし』の彼女は話を進めた
ξ゚⊿゚)ξ「信じるも信じないも結構よ。恐ろしいなら、今すぐ殺してくれても構わない。でも、きっと後悔することになるんじゃないかしら?」
(;´・_・`)「後悔?世界を救う手段を奪うことに対してか?」
ξ゚⊿゚)ξ「まさか」
ここで初めて、彼女は微笑んだ
ξ゚ー゚)ξ「ゾンビを裏切ったゾンビと、綱渡りのような冒険の旅が出来るのよ?こんな楽しいこと、他にある?」
(;´・_・`)「……ッ」
エロビデオ屋の言葉を思い出す。『この世界で最も価値のある報酬は安全である』。ごもっともだ。反論の余地もない完璧な正論だ
しかし人は時にスリルを求める。ホラー映画もそうだし、ジェットコースターだってそうだ。法定速度を超過するまでアクセルを踏み込んでみるのもいい
彼女の殺し文句は、命知らずのバカへ向けたお誘いだ。アドレナリンドバドバの、過酷で血なまぐさい旅へのチケットだ
(;´^_^`)「ハハ……ハハハハハ!!!!!!」
腹の底から笑えるほどに、アホくせえものだった
279
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:31:38 ID:sUPUImyY0
(;´・_・`)「ハハ、ハァー……アンタ、相当の人でなしだな」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、あなたが言えた義理かしら?ここまで話を聞いて、逃げようとも襲い掛かろうともしなかったのは、あなたが初めてよ」
(;´・_・`)「だろうよ」
今度は此方から手を差し伸べる
(´・_・`)「小練 詩音だ。道中の護衛、しかと仕った」
ξ゚⊿゚)ξ「よろしく、詩音」
契約の締結として、考える死体と握手を交わした。相変わらずゾッとするほど冷たいが、不思議と気分は昂揚した
『斯くして、イカれた男と死体の女は、危険な旅への第一歩を踏みしめたのであった』。そんな洒落た語り口を思い浮かべながら―――――
280
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:32:04 ID:sUPUImyY0
CARGO!! ‐Reversi‐
.
281
:
◆L6OaR8HKlk
:2025/06/16(月) 23:32:37 ID:sUPUImyY0
続きは期待しないでください
282
:
名無しさん
:2025/06/16(月) 23:41:17 ID:1vOPuSn.0
投下!?!!!!?!?!?
投下!?!!!?!?!!!??!?
283
:
名無しさん
:2025/06/17(火) 20:00:41 ID:dkzER.7E0
うおーーーーー!楽しみだ!
284
:
名無しさん
:2025/06/17(火) 21:59:03 ID:yUcgFaoI0
投下やったーー
285
:
名無しさん
:2025/06/18(水) 02:04:28 ID:CPAL2vcA0
いいや期待するね!
286
:
名無しさん
:2025/06/22(日) 00:57:01 ID:3jmgtgX20
うおおおおおお!!!
287
:
名無しさん
:2025/06/23(月) 19:27:51 ID:NXGgTRxw0
変異体もゾンビもののロマンだよね!乙!
288
:
名無しさん
:2025/08/21(木) 00:30:54 ID:HqQ1q8ug0
これで期待しないは嘘だぜ
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