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海のひつじを忘れないようです

97名無しさん:2017/08/19(土) 22:45:20 ID:rN6ohdMg0
車輪の音が聞こえた。今度は幻聴ではなかった。

あの子だ。
車椅子乗りの、あの子
ぼくを糾弾した女の子。
陶器のように美しく――無機質な印象の少女。
アイスブルーの瞳。

彼女は車輪を回して、広間から出ていこうとしていた。
その様子はこの喧騒の中において奇妙なほどに冷静で、
彼女の周りだけ温度が数度、下がっているようにすら感じられた。
魔女。アニジャとオトジャが残した言葉を思い出す。

魔女でも、構わなかった。
優しく包み込む光よりも人を惑わし狂わせる暗黒の方が、
ぼくにはむしろ相応しい気がした。それに、彼女は何かを知っている。
小旦那様の――そして、ぼくの知らない何かを。

あなたの罪を、忘れてはならない。

ぼくは立ち上がっていた。そして、歩きだす。
車輪を回す、彼女の背に向かって。そこに佇む罪の在り処に向かって――。


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