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海のひつじを忘れないようです
9
:
名無しさん
:2017/08/19(土) 22:02:25 ID:rN6ohdMg0
風鳴りが、耳をつんざいた。俺は耳を抑えながら、振り向く。
トソンは立っていた。立って、こちらを見ていた。
彼女がいつも携帯している、その刃を手にして。
刀身に波の如き奇妙な紋様の浮かんだ、異国の短刀。
トソンが近づいてくる。一歩、一歩。着実に、ゆっくりと。
俺は動かなかった。動かずに、彼女が来るのを待った。
そして、俺よりもわずかに背の高い彼女の身体が、目の前で止まった。
「父は、“楽園”を目指していました――」
.
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