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海のひつじを忘れないようです

88名無しさん:2017/08/19(土) 22:41:38 ID:rN6ohdMg0
……いや、違う。違う、違う。気のせいだ。
あれは光の人ではない。あの時のことはおぼろにしか思い出せないけれど、
それでも違うと断言できる。光の人は大人だったし、そもそもそういう理解の及ばない何か、
どこかで、根本的に違っていた。

いま廊下を渡っている人物は、あの輝く光を放ってはいない。
よく見れば背もぼくとそれほど変わらない。
ローブで顔を覆っているため顔は見えないけれど、こどもであることは間違いなかった。

でも、それならどうしてぼくは、見間違えたのだろう。
それにこちらへと近づくあの人物は、一体誰なのか。

ぼくの頭に疑問が浮かぶ。
しかし二つ目の疑問については、すぐに解消されることとなった。

ローブをまとったその人物が、ついに広間へと入ってきた。
ちりんちりんとベルを鳴らして、広間の中を歩き始める。
その後ろを二人、カートを引いたこどもがついていった。
カートの中には何かのビンが、大量に運ばれている。

その内の一本を、ローブの人物が引き抜いた。
そしてその蓋を開けると、最も近くで座っていた少年の前でビンを傾け始めた。
こぽこぽと泡を立てて、赤黒い液体がビンからこぼれだしていく。
その液体は床へとこぼれることなく、
座っている少年の構える杯へと正確に注がれていった。

ローブの人が、ビンの口を上向けた。
少し垂れかけた液を拭い、わずかに移動し、
座っていた少年のその隣にいた少女の前で、再びビンを傾ける。
少女も少年同様、杯を構えてそれを受け取った。

この行為が、繰り返し、繰り返し、順番に、順番に、
ここに集ったこどもたちへと行われていった。一人の漏れなく、時間を掛けて。


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