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海のひつじを忘れないようです

87名無しさん:2017/08/19(土) 22:41:00 ID:rN6ohdMg0
ぼくの首が上がったのは、彼女ががつがつごいーんと言った時のことだった。
彼女の不可思議な擬音に反応したのではない。
広間の大扉が、重い音を立てて開いたのだ。

そして、それが合図であったのか、あれだけ賑やかだった室内が瞬時に静まり返った。
あれだけ饒舌に喋り続けていたワタナベさえも、
黙して扉の向こう側、長く続いた通路の奥へと視線を送っている。

その先に、何があるのか。目を凝らす。何も見えない。何も居はしない
――いや、何かが、何かがかすかに聞こえる。何かがこちらに近づいてきている。
ちりん、ちりりんと、軽い金の音が響いてくる。
そしてその音の主が、小さなベルを手に持ったその人が、
ゆっくりと歩むその全身を露わにした。ぼくは、目を見張った。


光の人――!

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