したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

海のひつじを忘れないようです

8名無しさん:2017/08/19(土) 22:01:59 ID:rN6ohdMg0
「小旦那様は大丈夫です」

俺の手が、トソンの両手に包まれていた。
傷だらけの指。俺のものとは異なる律動が、ほのかな温かみと共に伝わってくる。

「あなたは、やさしいから」

トソンが俺を見つめていた。真剣な顔で。
けれどトソンの言葉と態度を受け取るだけの心構えが、俺の方にはなかった。
俺はお前が思うような男じゃない。俺は……ただの、臆病者だ。

トソンの手を解き、立ち上がった。

「風が強まってきた。そろそろ帰ろう」

トソンに背を向ける。疾風が顔を、真正面から打った。
本当に風が強くなってきた。荒れるかもしれない。海も、それに人も。俺も。
けれどもう、いい。諦めてしまえば、それで済むのだ。
収まるべくして収まるところに、結局は落ち着くものなのだ。
だからもういいのだ。俺が大人になれば。罪を背負い、大人になれば――。



「私は父を殺しました」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板