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海のひつじを忘れないようです

77名無しさん:2017/08/19(土) 22:35:39 ID:rN6ohdMg0
心の中の回答を、しかしぼくは、言葉にしなかった。
その答えを小旦那様が求めていないこと、
それくらいのことはぼくにも理解できていたから。

それでもぼくは、小旦那様の望む答えを口にすることもしなかった。
そんなことは、口が裂けても言えなかった。いまのぼくにできるのは、
小旦那様の後ろについて歩く、従順なひつじでいることだけだった。

小旦那様は、真っ直ぐぼくを見つめたままでいた。
真っ直ぐな瞳。ぼくはそれを、直視することができない。
ただ気配だけが、小旦那様の諦念にも似た空気だけが、ぼくにも感じ取れた。

「もう、歩けるのか?」

あやまたず、ぼくは答える。はい、と。

「その言葉に虚偽はないな?」

「ありません」

そこでようやく、小旦那様が、その目を閉じて視線を切った。
深く静かに息を吸い、吐き、そして彼の目が、口が、開く。

「……ならば小旦那である俺からお前に、指令を与える」



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