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海のひつじを忘れないようです

7名無しさん:2017/08/19(土) 22:00:55 ID:rN6ohdMg0
「フォックスは親父を蛇蝎のごとく嫌っていた。
 大人になったらこの街を出て、一旗揚げてやるといつも言っていた。
 けれどあいつはいま、親父と共にいる。親父と同じ仕事をして、
 親父の代わりまで務め始めている。まるで、まるで……親父の、コピーみたいに」

良い兄ではなかった。
しょっちゅう問題を起こしていたし、乱暴も振るってきた。
ケンカをしない日がないくらいに、俺と兄は仲が悪かった。
いなくなれと思ったことも、一度や二度ではなかった。

けれど、本当にいなくなるとは思っていなかった。
これからもバカみたいに取っ組み合い、
ケンカし続けていくものだと根拠もなくそう信じていた。
フォックスはもう、俺に拳を振るうことも、街中を暴れまわることもなかった。
フォックスはもう、フォックスではなかった。

「大人になるとは、自分じゃなくなることなのか? 
 自分がなくなったら、そこには何が残るんだ?」

手首をつかむ。血管の脈動が、循環する血液が指の腹を打つ。
俺の中に流れる、俺でない者たちによって受け継がれてきたその血が。

「フォックスもそうだった。己に流れる血に負けた。
 俺もきっと、“通過儀礼”を果たしてしまえば、きっと――」


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