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海のひつじを忘れないようです

56名無しさん:2017/08/19(土) 22:26:17 ID:rN6ohdMg0
「あ、あの……」

ぼくは彼に声をかけた。
ぼくの胸辺り、ちょうどハーモニカの掛かった辺りを凝視したまま、
動かない彼に向かって。ぼくが声をかけても彼は、そこから視線を動かそうとはしなかった。

「いつか……」

彼が何かをつぶやいた。けれどあまりに小さいその声は、ぼくの耳にまで届かない。
ぼくはなにか、と尋ねようとした。しかし彼はそれを手で止め、
ようやく視線を、ぼくの胸から顔へと移した。

「いや、言い忘れていたことがあってね。それを思い出した」

メガネの奥の瞳と、ここへ来て初めて、正面から向き合った。

誰かに似ている、と、直感的に思った。
それが誰なのか。判明することはなかった。
ぼくが答えへたどり着くよりも先に、彼が、目をつむった。



 『ひつじの教会』へ、ようこそ。


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