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海のひつじを忘れないようです
55
:
名無しさん
:2017/08/19(土) 22:25:55 ID:rN6ohdMg0
モララーの手が、ぼくの首まで伸びてきた。
何かをしているわけではない。ただ触れているだけ。
なのにぼくは、そこからわずかにでも動けない、動いてはいけないという危機感を抱いた。
動けば、何か、よくないことが起きると。
小旦那様は、そんなモララーの視線を真っ向から受け止めていた。
そこには焦りや、恐怖心といったものの欠片も表れてはいなかった。
けれど結局、折れたのは小旦那様だった。小旦那様はため息を付いて、
それから、ぼくの足のあたりに目を向けながら、言った。
「来るなら早く来い。急げ!」
「は、はい!」
「ちょっと待ってくれるかな」
今度こそ立ち上がろうとしたぼくへと静止をかけたのは、やはりモララーだった。
モララーはベッドの下から何かを取り出し、それをぼくに渡してきた。それは杖だった。
自力で立つのが困難な時に身体を支えるよう設計された、医療用の杖。
彼はぼくを立ち上がらせ、ぼくの身体を支えながら杖の使い方を説明してくる。
「ここへ来たきみにはもう、必要ないだろうけれど。
骨まで折れる大怪我だったし、念のため、ね」
モララーはもう、元の様子に戻っていた。
彼は親切だし、頭もよいのだと思う。きっと尊敬に値する人物なのだろうと、
目覚めてからの短いやり取りの間だけでも感じ取ることができた。
けれどぼくは、どうしてもこの眼の前の人物に心を許すことができなかった。
先程彼が放ったあの異質な印象を、どうしても拭い去ることができなかった。
だからこうして彼が親切に面倒を見てくれていても、
ぼくはどうしても、強い居心地の悪さを感じてしまった。
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