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海のひつじを忘れないようです
486
:
名無しさん
:2017/08/22(火) 18:55:51 ID:AKaoAE960
アイスブルーの、その瞳。
文字が、にじんだ。文字の上に、水滴が落ちた。
ページの余白が、次々と円状の染みを作り始めていた。ぼくは、泣いていた。
涙が止まらなかった。そこに書かれたたった一○文字が、すなわち彼女そのものだった。
ツン=デレこそが、ぼくへと到る鍵だった。
「お嬢様はとある少年と約束を交わされておりました」
シラヒーゲの目が、ぼくの胸を、ぼくのハーモニカを見つめた。
「その少年も、あなたと同じようにハーモニカを嗜んでおられました」
シラヒーゲの目が、ぼくの顔を、ぼくの瞳を見つめた。
「亡命の折に名を変えられたそうですが、当時の彼は、
お嬢様からこう呼ばれておりました。彼は、彼の名は……」
シラヒーゲが、その名を口にした。
ぼくのルーツ足る、その名を。
その人の名を。
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