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海のひつじを忘れないようです

477名無しさん:2017/08/22(火) 18:51:22 ID:AKaoAE960
現政権は、密告を奨励した。
どころか告発をしない者には、スパイの嫌疑を掛けた。
スパイと断定された者は、容赦なく処刑された。人々は自分、
あるいは家族を守るために、無実の他者を告発した。
自分たちが生き残るための、生贄のひつじとして。

現政権は、長くは持たなかった。しかしその爪痕は深く、暗く、この国に禍根を残した。
人々の間には疑念と、そして負いきることのできぬ罪の重みが残された。
その痛みはいまもまだ、この国に重い影を落としている。

これらの惨劇を見ずに済んだ彼女は、あるいは幸運だったのかもしれない。
ある日、彼女はとつぜん目を覚ました。彼女が眠りに落ちてからすでに、
三○年近くの月日が過ぎ去った日のことだった。

呼吸もままならず、衰えた筋肉を動かせないため
痛みにあえぐこともできない様子の彼女が、それでも何かを訴えていた。
シラヒーゲはかすかに動く彼女の口元に、耳を近づける。彼女はいっていた。
ほとんど息しか漏れていない声で、それでも力強く、繰り返していた。


ペンと、紙を、と。


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