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海のひつじを忘れないようです

451名無しさん:2017/08/22(火) 18:38:20 ID:AKaoAE960
フォックスは当初、シナーの提案に渋る様子を見せていた。
市場の長としての面子もあったのだろう。
脱走者の処刑という筋を通すことに、やはり彼はこだわっていた。

しかし最終的には、ぼくの引き渡しを受けた。
裏でどのような取引が行われたのか、それはわからない。
けれどとにかくぼくは、シナーのおかげで生き残ることができた。

シナーが帰国するまでの三日間、ぼくは檻の中で周囲の様子を眺めていた。
何も変わりはないはずだった。ぼくがここを脱走する前と、後で。

なのに、何かが欠落している気がした。何かが足りない。
絶対的にそこに存在していたはずの、何かが。
でも、それが何なのか、ぼくにはどうしてもわからなかった。

その正体を得られぬまま、ぼくはこの街を、この国を出た。
そこにあったはずの何かを、痛切に思いながら。


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