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海のひつじを忘れないようです

437名無しさん:2017/08/22(火) 18:31:49 ID:AKaoAE960



「これが、私の罪……。私が犯した、私の罪です」

話し終えると同時に、船体が大きく傾いだ。
このまま転覆するのではないかと危ぶむも、
瀬戸際のところで船はバランスを取り戻した。

けれどそれも、わずかな延命にすぎない。
強い揺り返しが、身体を揺する。
大きな力に翻弄されて、気分が悪くなる。

雷の凄まじい稲光が、外界から遮断されたはずの船倉にまで届く。
もはや船が船としての機能を失っているのだろう。
彼が言うには、船はその中腹を基点として真っ二つに折れてしまったらしいのだから。

船に乗っていた人も、どれだけ生き残っているのかしれない。
彼も揺れる船内を為す術もなく転がるうち、ここまでたどり着いたそうだから。

彼。名も顔も知らぬ男性。
横転した貨物に隔てられて彼がどのような人物か確かめることはできなかったけれど、
声から察するに私よりずっと年のいった中年男性のように思われた。
その声色には威圧的なところや、不快なものはまったく混じっていない。

……少しだけ、記憶の中の父に似ていた。


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