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海のひつじを忘れないようです

431名無しさん:2017/08/22(火) 18:28:03 ID:AKaoAE960
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父は楽園を求めていた。

私の故郷に伝わる伝承。
海より生まれ出でたものは、その死を境に海へと還る。
すべての生命は、やがて母なる海とひとつになる。
そこには一切の悲も苦もなく、始原の波に揺蕩う安寧に満ちている。

父は母を愛していた。だから、母の死に耐えられなかった。
母を失くした現実を受け入れられず、そして、伝承に頼った。
伝承の楽園を求めて、海へ出た。海の男であった父は自らの船を駆り、
まだ言葉も満足に話せぬ幼い私を連れて故郷を捨てた。

多くの国、多くの街を巡った。扱う言語も、肌の色も違う人々の間を縫い歩いた。
騙され、煙たがれ、時には直接的な危険に晒さることもあったが、楽園は見つからなかった。
父は諦めなかった。諦めず、昼夜を問わず調べ通し、そして、病に倒れた。


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