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海のひつじを忘れないようです

43名無しさん:2017/08/19(土) 22:20:30 ID:rN6ohdMg0
ぼくが現実へと還ってきたことを見て取ったからか、
青年が深めた微笑をこちらへと向けた。
眼鏡の奥に湛えられたその微笑みに、不純なものは見受けられない。
けれど、それでもぼくは落ち着かなかった。彼がぼくの、知らない人だったから。

「ぼくはモララー。きみは……ギコくん、だね?」

ぼくの不安を読み取ったかのような回答と、それに重ねるように提示された疑問。
どうしてぼくの名を。反射的に飛び出しかけたその言葉。
しかしぼくがそれを尋ねるよりも早く、彼は答えを教えてくれた。

「彼から聞かせてもらったよ」

そういって、彼――モララーは、部屋の一角を示した。
あっと、声が漏れた。小旦那様が、壁にもたれかかっていた。

「あ、あの、ぼく……!」

慌てて上体を起こす。意識が一挙に覚醒する。
そうだ、ぼくは身勝手に取り乱してしまったんだ。
ぼくは、自分勝手に意識を失ってしまったんだ。
ぼくは、ぼくは――小旦那様に迷惑をかけてしまったんだ。
そんな権利などない、ぼくが。ぼくごときが。

償わなければ。償わなければ。償わなければ。
でも、どうやって?


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