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海のひつじを忘れないようです

409名無しさん:2017/08/22(火) 18:16:13 ID:AKaoAE960
静かな声が、波紋を生む。

「……もう大丈夫です。あなたがいなくても、ぼくはもう一人で歩けます。
 ぼくはもう、あなたじゃないから。だから、母なる人よ――」

彼が、笑った。

「いままでありがとう。そして……さようなら」

一度だけ。
ただ、一度だけ。
牧師の手が、光のその手が、彼の頭を、撫ぜた。

それで、終わりだった。
人の形は消え、生命の泡が弾けた。

散逸した光が泡なる泡を、
生命なる生命を呑み込んで、
そして――


――たぶん、きっと、それこそが。
『私』が『私』であると自覚することこそが。
“大人”になる条件だと、私は思うから。


――そして、鐘の音が、止まった。
海が、凪いだ。


.


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