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海のひつじを忘れないようです
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:
名無しさん
:2017/08/19(土) 22:19:08 ID:rN6ohdMg0
父さん。
その人の指が、ぼくを指していた。それでぼくは気づく。
自分の身体が、どこも欠損していないことに。
泡も、傷も、どこにも存在していないことに。
そうだ、解体されたのは、ぼくでなく――
その人が、暗闇の一点を指し示した。
予感があった。
そこに何がいるのか、ぼくにはわかっていた。
見たくなかった。
なのに、僕の身体は、ぼくの意志とは無関係にそちらへ振り向いた。
目を閉じようとしても、まぶたは絶対に下りなかった。
だから、ぼくはそれを見た。見てしまった。
そこにはひつじがいた。
ひつじの頭が転がっていた。
転がったひつじの頭が、ぼくを見つめていた。
ぼくも、転がったひつじの頭を見つめていた。
視線と視線が、交錯していた。
視線と視線を交錯させて、ぼくは、何もいえなかった。
視線と視線を交錯させて、ひつじは、口を開いた。
小さく、かぼそく、その音を、漏らした。
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