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海のひつじを忘れないようです

398名無しさん:2017/08/22(火) 18:09:44 ID:AKaoAE960



空が剥げ落ちた。闇も、悲鳴も、後には何も残らず、
そこには当たり前のように砂浜が広がっていた。
彼の主は変わらず砂浜に腰を下ろした格好のまま、彼方を見つめている。

私は、ひざを折っていた。身体の芯から怖気がして、知らず自身を抱きしめていた。
彼は、まだ立っていた。かろうじて、といった様子で。
彼もまた、同じものを知覚<観た>のだろう。その顔は青白く、血の気がない。
何かを言おうとするも言葉にならないのか、
その口が声の開閉を弱々しく繰り返している。


ママ……。


砂を踏む足音が、聞こえた。ママ、ママ、とささやくその声と共に、聞こえてきた。
ヒッキーが、そこにいた。泡を拭き上げ、失いかけたその身体を
左右にふらふら揺らしながら、ヒッキーがそこに、現れた。
その手に危うく持ちながら。奇妙な波模様が浮かぶ、あの短刀を持ちながら。


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