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海のひつじを忘れないようです

39名無しさん:2017/08/19(土) 22:18:40 ID:rN6ohdMg0
ぼくは眺めていた。
泡粒が浮かび上がっていく、その光景を。
じっと、ずっと、動くことなく、動くことできずに。
そして、気がついた。昇っていく泡粒に埋め尽くされた空。
そこに、泡のような、泡でない何かが混じっていることに。

それは、空から地上へ沈んできた。
鈍い浮遊がその自重に耐えきれず、ゆっくり、ゆっくりと沈み落ちてきた。
そして、ぼくの目の前に落ちた。

それは、水を吸った羊毛だった。

悲鳴を上げていた。
ひつじの毛はひとつだけではなく、次から次からこの底の底へと沈み落ちてきた。
大量に降り注ぐ、雪のような――いや、泡のようなひつじの毛。

ぼくは転がり避けた。悲鳴を上げて、無様に、みっともなく転げ回った。
それを恐れて。それに触れることを恐れて。
それに触れない、ただそのことだけに集中して。

だから、気づかなかった。
背後に立つ、その気配に。ぼくはそれにぶつかった。
そして再び、声を失った。


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