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海のひつじを忘れないようです

389名無しさん:2017/08/22(火) 18:05:05 ID:AKaoAE960


……でも。


見上げる。彼方の根源へと飛び立つ泡の群れを。その一粒一粒を。
その一粒に描かれた膨大なる一言一句を、私は見つめる。

思い出す。いや、覚えている。
安寧の幸福へと消えていく彼らを、私は、覚えている。
私だけが、覚えている。

なら――。

「……だれに頼ることもできない」

このまま全部なかったことにして、
なにもかも忘れ去ってしまうことが私の望みか?

「それが私の望みなら」

否。私は喪失を望んではいない。

「私が見つけた、私だけの望みであるならば」

彼らの喪失を、私は望んでいない。


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