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海のひつじを忘れないようです
38
:
名無しさん
:2017/08/19(土) 22:18:11 ID:rN6ohdMg0
声は、でなかった。足も、止まっていた。
意識も、世界も、全部、固まっていた。
固まった世界の中で、ぼくは腕をもぎ取られた。
傷口から大量の泡が浮かび上がる。
今度は反対側の腕がもぎ取られ、そこからもまた、泡がこぼれ出た。
ぼくを捕まえた何かは、ぼくの身体を乱暴に千切り取り、
バラバラに解体していった。ぼくの身体が細切れにされていく度、
ぼくを待っていたはずのその人の姿が、暗闇の向こうに隠れていった。
肩が、足が、頭が、暗黒の先へと消えていく。
そしてその姿の一切が見えなくなった時、ぼくは、頭だけの存在となっていた。
目から耳から鼻から、泡が溢れだしていた。
口を開けると、解放された泡粒が一気に上空へと昇っていった。
ぼくはその光景をぼんやりと眺めながら、思っていた。これで良かったのだと。
ぼくはこうして朽ちていくのに相応しい、卑怯で、卑劣で、最低な人間なのだから、と。
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