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海のひつじを忘れないようです

376名無しさん:2017/08/22(火) 17:57:51 ID:AKaoAE960



「ぼくは……ぼくじゃない……」

彼の身体が、崩れ落ちた。
鮮血を、撒き散らしながら。

「ぼくが……ぼくじゃないなら……」

のどから下腹部にかけて、ぱっくりと裂かれている。
口からも、ごぷりと血を漏らしている。

「だれかが……ぼくだ……」

それでも彼は、息をしていた。
焦点の合わせないうつろな顔で、ぜいぜいと呼吸していた。

「ぼくの……だれか……」

ヒッキーが、瀕死の彼の肩をつかんだ。
そして、もはや波模様など見えないほどに汚れたその短刀を、再び振り上げた。

「だれかは……お前だ……!」


とどめを、刺すために。


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