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海のひつじを忘れないようです

359名無しさん:2017/08/22(火) 17:49:19 ID:AKaoAE960
勝手だと思った。
私を置いて、私の行けない場所へ行こうとする彼を、とても勝手だと思った。
だから、そう言った。あなたは勝手だと言った。口汚く罵ったし、
思いつく限りの罵詈雑言を吐いた。そうすれば彼が思い直してくれるんじゃないかと、
たぶん、そんなことを期待して。
願いは叶わないなんてこと、よく知っていたはずなのに。

従者が扉を開いた。それが、別れの合図だった。

さよならもなかった。彼が、部屋から出ていこうとした。
遠い場所へ、私の手の届かない場所へ、彼が行ってしまう。
二度と会えなくなってしまう。もう、二度と。

いやだ、と、私は叫んだ。

彼と、彼を送ろうとしていた従者が立ち止まった。
振り向いたその顔に、私はありったけの言葉をぶつける。
いままで生きて、学んで、覚えてきた、つまらなくて仕方のなかった彼の話も駆使して、
とにかく、とにかく言葉をぶつけた。言葉の音は、多様になった。
だけどその意味するところは、結局同じ。究極一語の、「いかないで」。

ぼくだって……!

絞り出された彼の声。ぼくだって、なに? 
ぼくだって。その言葉のつづきは? 
言葉を待つ。私の期待する、その言葉を。


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