したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

海のひつじを忘れないようです

350名無しさん:2017/08/21(月) 22:46:15 ID:vG2lH35Y0
「ナベ、あたしね。いま、とても踊りたいんだ」

ぼやけたナベの虚像が、ためらいがちに近寄ってきた。
一人では立つことすらまともにできない、あたしの前へ。
あたしは彼女をつかむように、さらに遠くへ、ぼやけて消えてしまいそうな彼方の世界へ、
腕を、まだあたしのものであるその腕を、伸ばして、伸ばして、伸ばした。

「だから、お願い」

彼女の手が、あたしの手と、触れた。

初めて姉に踊りを教わった日のことを思い出した。
姉を真似て踊ってはみたものの、まるでうまくいかなかったあの日の思い出。
いまのあたしは、あの時よりもまともに踊れているだろうか。
それとも、もっと下手くそになってしまっただろうか。

どっちでも構わなかった。楽しかったから。踊ることは、楽しかった。
たぶん、きっと。姉があたしに教えてくれたのは、単純に、そういうことだったんだと思う。
彼が彼の父や、ひつじのしぃからそれを教わったのと同じように。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板