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海のひつじを忘れないようです
349
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:45:54 ID:vG2lH35Y0
「ナベ、あたしの手を取ってくれる?」
ぼやけたナベの虚像が、ぶんぶんと首を振る。
あたしにはその資格はない。あなたに触れる資格なんて。
そう言っているかのように。
「あたしね、とても大事なことを思い出したんだ」
ナベの首振りが、止まった。
「あたしをここへ連れてきてくれたのは、ナベ、あなただったんだね」
鎖を外してくれたのも。店から逃してくれたのも。
何度も倒れかけたあたしを、支えてくれたのも。
「あなたがあたしにかけてくれた言葉を、
あたし、覚えてる。思い出した」
伸ばした手を、あたしはけして降ろさない。
彼女があたしを、見捨てなかった時のように。
「『あなたが一人で踊れないなら、わたしも一緒に踊るから』」
あたしを、救ってくれた時のように。
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