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海のひつじを忘れないようです

347名無しさん:2017/08/21(月) 22:44:59 ID:vG2lH35Y0



彼は行った。あたしを置いて。
こうなることを望んでいたとはいえ、それでもやはり、さみしかった。
走れる彼が、羨ましかった。

「ナベ、いるんでしょ?」

森の一部が、ゆらいだ。ゆらいだ辺りに、視線を向ける。
あたしはそのまま、視線を外さなかった。しばらくの間、
そうして止まっていた。木々が、割れた。そこから人影が現れた。
ぼやけた視界の中では、それが誰なのか判別できない。
けれど、気配でわかる。そこにいたのはやはり、ナベだった。

「……いいの?」

なんのこと? 
と、あたしは知らないふりをして返す。

「だって、あなただって、ほんとは……」

わかってる。あなたの言うとおりだって、あたし自身にも。
あたしだって、もどれるものならもどりたい。帰れるものなら帰りたい。
あの頃に。おねえちゃんがいた、あの時に。彼のように。だけど――。

「あたしはもう、踊れないから」


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