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海のひつじを忘れないようです

341名無しさん:2017/08/21(月) 22:41:24 ID:vG2lH35Y0
彼女の言葉に、鼓動が早まった。

「あたしがあたしを殺すことは、
 おねえちゃんがあたしにくれたものを忘れてしまうのと同じだって、思ったから」

これ以上聞いてはいけない予感がした。

「よく聞いて、ギコ」

耳を塞ごうとした。

「ううん。ギコじゃない、あなた」

走って逃げようとした。

「しぃはほんとに、『助けて』って言ったのかな。
 『死にたくない』って叫んだのかな」

叫んでかき消そうとした。

「あたしには違う気がするんだ。
 しぃは、しぃはさ、本当は――」

母の声を反芻させようとした。

「あなたに――」

――ぼくは、何もしなかった。


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