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海のひつじを忘れないようです
326
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:34:33 ID:vG2lH35Y0
「ただね、しぃが歌うにはひとつ条件があったんだ」
彼女は一人では歌わなかった。
彼女が歌う時には必ず、父がそばにいた。
しぃは、父のハーモニカに合わせて歌っていた。
父のハーモニカはとても上手なものだった――と、思う。
少なくともぼくは父のハーモニカが好きだったし、
ハーモニカに合わせて歌うしぃのことももちろん好きだった。
それに、ちょっと悔しかった。
ぼくもその環に加わりたくて、父からよくハーモニカを借りた。
「ぜんぜんうまくいかなくて、よくふくれていたけどね」
けれど吹くこと自体をやめようとはしなかった。
やめたいと思ったこともなかった。ハーモニカの演奏は、楽しかった。
それに、しぃもいた。
度々つっかえたり全然違う音を出してしまうぼくの演奏にも、
しぃは一緒に歌ってくれた。むしろうまくいかないもどかしさで憤るぼくを、
自身の歌で教え、導いてくれているようだった。いや、導いてくれていた。
朝から晩までしぃと一緒にいた。時には寝るのも一緒だった。
いつも一緒で、いつでも歌っていた。ぼくらはいつも一緒だった。
ぼくらは兄弟だった。
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