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海のひつじを忘れないようです

322名無しさん:2017/08/21(月) 22:32:21 ID:vG2lH35Y0
「気づいたら、ここにいた。自分をおねえちゃん――ハインと思い込んで」

長い、長い物語を語り終えたミセリが、
少し疲れたように寄りかかる力を強めた。
肩にかかる重みが増す。その重みは、
彼女が辿った人生の重みそのものなのかもしれない。

「きっとね、自分の罪を受け止めきれなかった防衛反応だったんだと思う。
あたしはおねえちゃんを殺したミセリじゃないし、
そもそもあたしがハインなんだから、
ミセリの犯した罪そのものがなかったことになるんだって」

事実そのものを消し去ることによる罪からの解放。
それがきっと、『ひつじの教会』の本質なのだろう。
だからここに住むこどもたちは過去に犯した罪の記憶を忘れ、
やがてはその根源となる自分自身をすら忘却する。魂を、救済する。

「あたし、それが間違ってたとは言わない。
でも、正しかったとも思わない。だから――」

ささやくように森の葉を揺らしていたミセリの声が、
明確にぼくへと向かい、放たれた。


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