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海のひつじを忘れないようです
315
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:29:00 ID:vG2lH35Y0
「ミセリ!」
どうしてという疑問が、真っ先に思い浮かんだ。ハインがいた。
ハインが森のなかにいて、叫んでいた。ミセリの名を叫んでいた。
どうして。なんで。だって、あたしは、いらない子のはずじゃない。
どうしておねえちゃんが、ここにいるの。
「いるんだろミセリ! 頼むから返事をしてくれ!」
悲痛な色を帯びたハインの声は、
ミセリの知っているハインのそれと変わりなかった。
けれどミセリは、飛び出していくことができなかった。
「怒るのも当然だよな。信用出来ないのも当たり前だよな。
あたしだってそう思うよ。あんな……あんなひどいこと言ってさぁ!」
だって、また捨てられるかもしれない。
だって、またいらない子にされてしまうかもしれない。
忘れられてしまうかもしれない。
それは、いやだった。
いやだったから――。
「でも、でもあの時はああするほか、お前を――」
その躊躇が、永遠を別った。
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