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海のひつじを忘れないようです
314
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:28:36 ID:vG2lH35Y0
「出て行け!」
ハインが壁を叩いた。それがスイッチとなった。
動かないはずの脚が、動き出した。意志なんかとは無関係に
しっちゃかめっちゃか好き放題に走って、走って、走り回って、
気づくとミセリは、森の入口に立っていた。深く暗く、死を匂わせる森。
躊躇なく、足を踏み入れた。
死のう、と思った。
だってあたしは、いらない子。
いなくなっても、悲しむ人はいない。
だれも。
だれも――。
けれどミセリは、死ななかった。
緩慢に腐り行きつつも、かすかなその生を手放すことはなかった。
彼女は、生きていた。
生きていたから、その声も聞こえた。
自分を呼ぶその声が、聞こえた。
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