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海のひつじを忘れないようです
296
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:19:15 ID:vG2lH35Y0
そんな自分自身が生み出した妄想に囚われると、無意味だと思っていた
この時間を失いたくないという強い気持ちが、胸の奥から奥から押し寄せてきた。
うまくやらなきゃ、失敗しないようにしなきゃと、そんな思いが強まった。
けれど焦れば焦るほど身体は意志を離れ、
ぎくしゃくとレッスンを始める以前の状態へともどっていってしまった。
そして、あの箇所。どうしてもうまくできないあのステップに、挑戦した。
結果はやはり、変わりなかった。
ハインの目が失望に染まった――気がした。
もうダメだと思った。ハインはあたしを見限ってしまったと、そう思った。
そう思うと全身から力が抜けて、そのまま座り込んでしまいそうになった。
座り込んでしまいそうになりながら、ミセリは思い出していた。
ハインが初めて踊ってみせてくれた日のことを、思い出していた。
もう一度見たかったなと、思った。
確かこんなふうだったなと思い返しながら、
記憶の中のハインを自分の身体を使って辿ってみた。踊ってみた。
何も考えず、ただ彼女の動きを真似した。そうしたらなんだか、
身体がとても軽くなっていた。ミセリは軽快に踊っていた。
あんなにつまづいていたあの箇所も、あっさりとこなしていた。
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