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海のひつじを忘れないようです
292
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:16:09 ID:vG2lH35Y0
「ミセリはさ、すごく丈夫な脚を持ってるんだな」
ハインの言葉の意味がわからず、あたしはとりあえずもう一度謝った。
そんなあたしを一笑に付して、ハインはあたしとの距離を取った。
そしてハインは、踊りだした。
.
初めて目にする舞踏というものに、ミセリは目を奪われた。
それは幻想的な光景だった。言ってしまえばただ人が一人踊っているだけだというのに、
たったそれだけのことで空気が、空間が別世界になっていた。
草木も、土も、風も雲も虫も、
そこにあるすべての存在が彼女の味方となり、彼女を輝かせていた。
彼女を取り巻くその一帯のすべてが、光り輝く神話の世界に変貌していた。
彼女の脚が、止まった。自然が、空間が、現実の時間へともどっていく。
けして急激にではなく、徐々に、徐々に、
浸透した余韻を世界中へ分散させていくように。
それが自分の中へも潜り込んできたことを、ミセリも確かに感じ取っていた。
玉汗を浮かべたハインが、笑いかけてきた。
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