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海のひつじを忘れないようです

287名無しさん:2017/08/21(月) 22:13:21 ID:vG2lH35Y0
「そんなあたしの運命を変えてくれたのがおねえちゃん――ハインなんだ」

ミセリが誰にも祝われない五歳の誕生日を迎えた数日後、
彼女は新しい家族としてミセリの家へやってきた。
彼女は綺麗で、洗練されていて、なにより身体中から溢れ出した
活き活きとしたエネルギーのようなものが、とてもまぶしい女性だった。

事前にどのようなやり取りが成されていたのかは判然としないけれど、
ミセリの両親は当初、彼女の来訪に難色を示していた。
ハインの家とミセリの家には遠い血縁関係が在るらしかったものの、
碌な交流もなく、ミセリの両親にとってみればハインはただの他人に過ぎなかった。

どこの誰とも知らない娘を引き取る余裕などうちにはないと、
両親は長い旅の果てにここまでやってきたハインを、その場で追い返そうとした。
けれど両親は、ハインが持参したものを見るとすぐさま態度を変えた。

ハインが持ってきたもの。それは宝石だった。色とりどりの宝石。
慌てて持ってきたので価値があるのかどうかわからないけれどとハインは言っていたが、
父がいまの生活を死ぬまで続けてもこの中の
たった一つであろうと手に入れられないことは明白だった。


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