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海のひつじを忘れないようです

286名無しさん:2017/08/21(月) 22:12:53 ID:vG2lH35Y0



ミセリは貴族家の流れを汲む一族の男女の下、
一男三女の四番目の子として生を受けた。

しかし彼女は、望まれて生まれたこどもではなかった。
没落して久しいミセリの家では
貴族であった時代の蓄えなど些かも残ってはおらず、貧窮に喘いでいた。

それ故ミセリの両親は手間ばかりがかかる赤ん坊のミセリを疎ましく思い、
井戸の中へ投げ捨ててしまおうかと本気で画策したことすらあったらしい。

両親の気まぐれによりなんとか一命を取り留めたミセリだったが、
その生活は当然恵まれたものではなかった。彼女は他の兄弟と明確に差別されて育った。

同じ食卓につくことは許されず、食事は家族の残り物や
腐って廃棄するしかなくなった食べ物とも言えないようなものしか与えらなかった。
寝床も牛馬の臭い漂う藁をかき集めるしかなく、それすら意味もなく取り上げられ、
土の上で眠るしかない日も少なくなかった。

自分はいらない子なんだろうな。

ミセリは両親の意を、直に言われるまでもなく汲み取っていた。
私は、生まれちゃいけなかったんだな、と。希望はなかった。
その代わり、絶望もなかった。これが当たり前だと思っていたから。

兄や姉が潰した虫を見て、自分もいつか、
こんなふうに潰されて死ぬんだろうなと漠然と思っていた。


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