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海のひつじを忘れないようです

278名無しさん:2017/08/21(月) 22:09:02 ID:vG2lH35Y0
私は。

最後にその言葉を放った彼女は、
何かをつかむかのように伸ばしていた手を収め、口を閉じ、そのままうつむいた。
そして彼女はとうとう、閉ざした口を二度とは開かなくなる。

ひつじが一声鳴いた。

「ジョルジュ。彼女を連れて行ってやれ」

ギコの小旦那様からとつぜんの指名を受けたジョルジュは、
ぽかんとした顔をして、しばらくそのまま動かなかった。

「ママがお前を待っている」

ジョルジュがこくんとうなづいた。
そして車椅子の取っ手を掴み、魔女と共に前を行くひつじを追った。
部屋を出る時、あたしとひつじ、それに魔女とジョルジュはすれ違った。

魔女は、魔女ではなかった。
うつむいて、打ちのめされたただの女の子が、そこにいた。
ジョルジュは無表情だった。心なしか視点も定まらず、
彼の操る車椅子の軌道も左右に蛇行していた。

あたしは、何もできずに、彼らを見送った。


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