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海のひつじを忘れないようです
277
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:08:35 ID:vG2lH35Y0
「魔女よ」
しんと静まり返った場内に、少年の声がエコーした。
声の主は、ギコの小旦那様。ひつじの傍らに佇む彼が、
魔女に向かって問いかける。
「最後に言い残すことは?」
「私、は……」
広間中の視線が、一斉に彼女へと集まった。
車椅子の車輪が、わずかに後退する。
「私は……私は……」
しぼりだすような彼女の声も、物音一つない広間では隅々にまで響き渡った。
その大きさに本人自身が狼狽するかのようにのどを抑える仕草をした後、
さらに小さく、か細い声を上げる。
「わた、しは……わたし、は……わたし、わたし、は……
わ、わたし、は……わたしは、わたしは……わたしは………………」
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