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海のひつじを忘れないようです

275名無しさん:2017/08/21(月) 22:07:53 ID:vG2lH35Y0
思った通り、足はまともに動かず立ち上がるのも困難だった。
それでも壁に寄りかかって時間さえかければ、何とか移動することはできる。

そういえばここへ来た時も、こんなふうに寄りかかっていたんだっけ。
森の外から、ここへ来た時。


どうして忘れていたのかな。
あたしが、あたしだっていうこと。
あたしの、大切な人のこと。
おねえちゃんのこと。


考えている内に、目的地へと到着した。
還泡式が行われている広間。けれどそこへ来てもなお、
こどもたちの喧騒は聞こえなかった。だれもいないわけではない。
確かにみんな揃っている。なのにみんな、どこか居心地悪そうに、
騒ぐこと、楽しむことを躊躇していた。

壇上では、ジョルジュがハーモニカを吹いていた。
いや、吹こうとして、吹けていない。不揃いな音が
断続的に羅列されているだけで、それはけっして
一個のメロディーとはなりえなかった。

ジョルジュはまるでジョルジュではない顔をして、
泣きそうになりながらハーモニカを吹こうとしていたけれど、
でも、焦れば焦るほど、うまくやろうとすればするほど、
彼の努力はから回って、余計に音は、意味をなさない騒音となっていった。

胸が苦しくなった。


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