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海のひつじを忘れないようです

269名無しさん:2017/08/21(月) 22:05:29 ID:vG2lH35Y0
奇妙な感情が、わたしの中を駆け巡っていた。
敵意を向けた眼の前の男から受け取った、予想とは異なる感覚。
それはけして、嫌悪感や恐怖感といったマイナスの感覚ではない。
もっと大きく、絶対的で、揺るぎのない存在感。

言葉にするならば、あえてするならば、それは、おそらく――安心?

気づけばわたしは、ミセリを彼に預けていた。
彼の手はあくまでやさしく、ミセリを抱え、包容していた。

その身体から、全身から、光のような、
暖かさのような力が放射されているみたいだった。
彼はわたしの知らない、かつて出会ったことのない存在だった。

「魔女よ、見ろ」

彼が、魔女に向き直った。
魔女は、彼の腕の中のミセリを見つめていた。

「これが“ギコ”を棄てた時の姿だ」

それだけいうと、彼は魔女に背を向け歩きだした。
教会に向かい、その重力を感じさせない足取りで。
わたしはその後を追おうとして進めかけた歩を、一度、止めた。
振り返る。閉じた森のその暗がりに、魔女と、ギコがいる。
暗がりで佇む魔女とギコに――ギコに、告げる。


もう二度と、“ハイン”に近付かないで。

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