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海のひつじを忘れないようです
268
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 22:04:56 ID:vG2lH35Y0
「貸せ」
目の前に、手が差し伸べられた。少年の手が。
自分と、ミセリと、ギコ以外の人間がここにいたことに、
私はこの時初めて気がついた。そこにはあの車椅子の魔女と、
ギコの主の姿も存在していた。ギコの主が、わたしに手を差し伸べていた。
わたしからミセリを奪おうと、その手を伸ばしていた。
「だれが……!」
力なくうなだれるミセリの身体を、強く抱きしめる。
その身を少しでも隠せるように、敵の視界から見えなくなるように、と。
お前も同類だ。
ギコや、車椅子の魔女と同じ。わたしたちの平穏を喰い荒らそうとする敵だ。
それを今更どのような了見で、味方面を振る舞おうというのか。
ミセリは、わたしが、守るんだ。
そのような思いで、敵を睨んだ。
睨んだ、はずだった。
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