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海のひつじを忘れないようです
258
:
名無しさん
:2017/08/21(月) 21:59:37 ID:vG2lH35Y0
「見よ!」
自由を奪われた私の身体が、男の一声によって意志とは無関係に動かされた。
私は振り返り、背後の木々へと目を向けた。
「これこそがお前の、偽らざるお前自身の心象だ!」
木々が、葉が、蔦がみちみちと蠢き、絡み合っていた。
絡みひしめきあったそれは一個の生命のように穴隙なく重なり、
厚く、固く、重く強く痛々しく私の目の前で顕現した。
それは、壁だった。外界を閉ざす、絶対の壁。拒絶の証。
私、そのもの。
「わ、わたし、は……」
違う、私は。
そう言おうとするも、声が出ない。あいつが行使する魔術によって
――ではない。私自身が、声を、殺したのだ。私自身が、もう、認めてしまったのだ。
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