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海のひつじを忘れないようです

255名無しさん:2017/08/21(月) 21:57:43 ID:vG2lH35Y0
「あなたは、だれなの……?」

腕の内のノートから解放され力なく座り込んだ彼に、彼の主がそっと手を添えた。
二人のその関係はもはや一欠片の対等性も保持してはいなかった。
主と従者のように。父と子のように。守護者と庇護者のように。
そして――羊飼いと、ひつじのように。

この暗がりの森において、彼の主だけがいやにはっきりと、
その存在をこの場に示している。薄い燐光に包まれたその身体が、
暗がりを越えてかくあれとこの三次空間上に立脚している。

だというのにその顔だけが、その顔だけが曖昧に、
曖昧にその詳細をぼやかしていた。まるで、そう、まるであの光輝の塊。

牧師、その人のように――。

「あなたも、“接触”を――」

「お前はなぜ、ここにいる」


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