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海のひつじを忘れないようです

25名無しさん:2017/08/19(土) 22:11:56 ID:rN6ohdMg0
「――」

とっさに口を抑える。聞こえてしまっただろうか。
心配させてしまっただろうか。脂汗が、額から流れ落ちてくる。
しかしぼくの不安は、杞憂に終わった。

「俺はお前を見捨てない」

小旦那様の声は、平素と変わらず芯の通った固さを保っていた。
強く、確かな意志を感じさせるその音。先導する者の声。
そしてその声のままで、彼はぼくに、言葉を続ける。

「お前を“楽園”へ連れていく」

ぼくは返事をしなかった。返事をせずに、ただうなずいた。
背を向けたままの小旦那様にその動作は見えなかっただろうけれど、
きっと伝わると、そんな気がした。あの時と、同じだったから。
ぼくは痛む足に負担がかからぬよう身体をよじりながら、小旦那様への接近を試みた。

が、すぐに、その足を止めた。
小旦那様の歩みもまた、止まっていたから。


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